2014年 2月 No.99
ホームドクター通信

◆お知らせ

大雪

 2月も終わりに近づいていますが、今年の2月は例年に比べても少し寒かったようで、例年に比べ、1-2℃気温は低かったとのことです。
 更に、2月14日は寒波が到来し、久しぶりの大雪となりました。朝出勤できない職員もいました。道路凍結、渋滞、スリップ事故などの恐れもあったため、当院の療養通所介護も臨時休業。利用者の方にはご迷惑をおかけしました。私は昼から大阪府医師会に行く予定だったのですが、いつもの車で行くのをやめ、電車にしました。電車は十分程度の遅れで特に問題なく動いていました。会議出席予定の3分の1の方が欠席されていました。豊能とか富田林の人は身動きがとれなかったそうです。関東の山梨などでも一週間以上は雪のため不自由な生活を強いられていたとニュースで伝えられていました。雪国のいつも大雪に慣れている地域の人はともかく、数年に一度の大雪は大変なことになりますね。大阪では翌日の土曜日は普通に生活できました。
まだ寒い日が続くようです。体調にはご注意を少し下火になりましたが、まだインフルエンザはでます。

ソチ五輪

2月7日から2月23日まで、ロシアのソチで、冬季オリンピックが開催されました。
競技時間が深夜だったため、寝不足だった方が多いのでは。私はあまりテレビを見る習慣がないのと、今年から睡眠時間を確保する習慣をつけるようにしたため、リアルタイムでは一度もみませんでした。
朝起きて、ネットでスポーツニュースを確認するのがオリンピック中の習慣となっていました。
浅田真央選手のショートプログラム失敗は、あんな若い頃から何度も世界の舞台に立っている方でも重圧に負けたのかな、と朝からとても残念な気持ちでネットをみていました。これで終わりかと思いきや、翌日のフリーは打って変わって素晴らしい演技・どん底から最高へ、立派ですね。感動しました。なんかこれだけ、リアルタイムで見たかったな、と思いました。しかし、実際リアルタイムでみたら、ハラハラして画面見られなかったかもしれませんが。選手の皆様にはお疲れ様でした、と言いたいです。

STAP細胞

小保方晴子氏らは 外からの刺激で体細胞を初期化することにより、すべての生体組織と胎盤組織に分化できる多能性を持った細胞(STAP細胞)を作製する方法を世界で初めて確立したと発表し、1月30日付の英国科学誌ネイチャーに掲載されました。
昨年ノーベル賞を受賞した山中教授のiPS細胞にもかなりびっくりしましたが、今回の幹細胞は遺伝子を入れずに、細胞をある環境におくだけでできるとのこと。
凄いことを発見したものですね。STAP細胞が再現性があり、人間の細胞でも樹立できるとなれば、細胞の癌化の問題も少なくなり、再生医療が一気に進みそうですね。女子力の高い小保方さんには、是非国内で活躍して頂きたい。
京大の山中教授の下に行く、なんてのはどうなのかな?彼女の今後の争奪戦にも注目です。しかし、うまくいけば5年後、ノーベル賞ですね、この研究。発展することを期待しています。

泉州マラソン

2月16日、泉州マラソンが開催されました。2日前大雪で天候が心配されましたが、好いお天気でなかなかいいコンディションでした。私はエントリーはしていましたが、11月の事故でまだ走ることが出来ず、棄権しました。スタート地点に行って、記念品だけ貰ってきました。あとは忠岡で仲間を応援していました。が、20人くらい出場しているはずなのに、10人くらいしか本人確認できませんでした。
4時間くらいのランナーって、団子で走ってきますから、認識不可能ですね。

大腸内視鏡

昨年の健診でひっかかったため、大腸内視鏡を受けてきました。開業した時に消化管の内視鏡検査を見学に行き、自分との技術の差に愕然とさせられた先生にお願いしました。以前より私が大腸内視鏡を受けるときはお願いします、と言っていたので。下剤を飲むのが大変、と皆仰いますが、私の場合は大したことがありませんでした。下剤2リットルと水2リットル飲みましたが、平気でした。それでも午後1時に行って、検査が始まったのが午後5時だから、4時間待ったことになります。待ち時間対策グッズをたくさん持っていったため、特に苦痛を感じることはありませんでした。ただ、病院の中、ネットがつながらず、予定していた仕事ができなかったのが残念でした。
検査が始まると、麻酔が効いて何も覚えていません。痛みも全く感じませんでした。ポリープが数個あり、良かったですね、と声をかけていただきましたが、麻酔のせいでぼーっとしていました。内視鏡検査後すぐに本人に説明するのはよくないようですね。あまり覚えていないので。肛門科をしていて、出血とか術前とか、多くの方に大腸内視鏡を勧めてきました。
それが、肛門科のひとつの使命かと考えています。20年前の大腸内視鏡はとても大変な検査でしたが、今は技術の進歩でかなり楽な検査になっているように思います。これから先も、当院受診される方には折につけ大腸内視鏡はお勧めしようと思っています。ちなみに、私は一年後も検査を受ける予定です。

都合で水曜日午後の診察を休診にしています。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

◆認知症

認知症の人と家族が住みなれた地域で住むのにかかりつけ医に必要なこと

3月1日に泉大津市医師会主催の認知症についての市民フォーラムがあります。
その時にお話する内容を準備を兼ねて書いてみます。

認知症は、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が低下した状態をいいます。
現在、いろいろな調査がありますが、認知症の有病率は65歳以上の方の10-15%とされています。かなり多い一般的な疾患になりつつありますし、今後更に増えていくことが予想されています。
認知症は本人が気付く場合もありますが、大半は周囲の人がちょっとおかしいのではと気付くことから始まることが多いです。
大阪府医師会の作成したポスターと家族が気づいた認知症の初発症状という表が参考になるかな、と思って出します。

もしこのような症状に気づいたら?

 地域包括支援センター相談、またはかかりつけ医を受診してください。いきなり専門病院を探していく必要はありま
せん。
私が今感じていることは認知症は今後、高血圧や糖尿病などと同じ一般的な疾患となるので、かかりつけ医がまず対応すべきと思います。

では、相談されたとき、かかりつけ医はどうするか?

問診で認知症の程度を推定します。
一番よく使われているのが、HDS-R・長谷川式簡易知能評価スケールと言われている30点満点の検査です。今日は何年何月何日何曜日ですか?今からいう数字を逆から言ってください、など記憶に関する問いに答えていって、20点以下が認知症といわれています。
最近では25点以下で軽度認知障害、といわれます。
その段階から治療したほうが反応がいいという意見があり、私もそう思っています。
HDS-Rの項目の中に3つの言葉を覚えて下さい、という質問があります。
その3つが言えたとします。
後でまた聞くから覚えておいてください、と伝え、次の質問にいきます。
計算問題、数字を逆から言う問題です。
それが終了してから、さっきの3つの言葉、もう一度言ってくださいといいます。
スラスラと答えられたらいいですが、つまづくようであれば、短期記憶が障害されている可能性があります。これが軽度認知障害の初発であると考えられています。

それで、認知症と推定されたら、次のステップは、血液検査と脳MRIです。
血液検査では一般検査の他に、甲状腺機能やビタミンB12なども測定します。
認知症の中には治る認知症があります。正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、などです。
脳MRIと血液検査でその治る認知症をチェックします。
また、脳MRIではアルツハイマーでよく見られる海馬の委縮の程度を計算してもらいます。
この検査でアルツハイマーか脳血管性の認知症かのおおまかな鑑別ができます。
レビー小体病を診断するさらに詳しい検査もありますが、アルツハイマーと治療が同じなので、この血液検査・脳MRIの結果で治療に入ることになります。残念ながら完治できる薬はなく、進行を抑える薬になります。今までアリセプトだけでしたが、現在は4種類の薬が使えます。

予防と進行遅延のため、
一番いいのは運動です。週3回、30分以上の早足ウォーキングしてください。
また、趣味や楽しみのある活動を続ける。
家に閉じこもらず積極的に外出し、地域や友人らとの交流を図る。
日記を書く、新聞を読んで気になる記事を人に伝える
一日の生活リズムを整える。
以前からの日課や趣味だけでなく「新しいこと」を始めることもお勧めします。
一日中テレビをじっとみているのが一番いけません。

また、認知症になってしまった場合、安心して住み続けるシステムが必要です。
厚生労働省においては、2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。
泉大津市・忠岡町でもいろいろな試みがなされており、3月1日のフォーラムでも他の発表者から報告があります。かかりつけ医もこのシステムに参画する必要があります。

認知症の治療目標は、生活機能の一日でも長い維持周辺症状(行動・心理症状といわれ、いわゆる問題行動・せん妄などです)の緩和家族の介護負担の軽減と考えています。

そのために、地域包括システムからみたかかりつけ医に期待される役割を考えますと、認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人や家族を支援することができる医師ということになります。
具体的には
(1)早期段階での発見・気づきができること
(2)日常的な身体疾患対応、健康管理をすること
(3)家族の介護負担、不安への理解し、軽減できるようにすること
(4)専門医療機関への受診誘導すること
(5)地域の認知症介護サービス諸機関との連携
が求められているように思います。
その対策として、かかりつけ医認知症対応力向上研修の実施・認知症サポート医・認知症相談医を増やし、住民にお知らせすること。
かかりつけ医機能、プライマリーケア・在宅医療の知識技術向上を図ること。
介護サービスを理解し、寄り添う態度を持って利用を促すこと医療連携(病診連携・診診連携)を活用すること。
ケアマネージャー、介護職、訪問看護など多職種と連携することが必要です。
当地の多職種連携は、顔の見える関係がかなり進んでいるほうと自負しており、イカロスネットというのが、3年前から発足しております。
5月第4週木曜日と12月第1週土曜日に医療介護連携の会をします。
12月は終了後、忘年会があり、ほかにも飲み会、ソフトボール大会なども予定されており、ユニフォームとなるTシャツも用意されています。今のところ固定メンバーになりつつあるので、新しく今まで参加してこなかった事業所にも声をかけていく予定にしています。

こんなことをお話してこようと思っています。


◆アネトス通信

立春とは申しますが、まだ寒さ厳しき日が続いています。春の訪れが待ち遠しいですね。
今月は、ご自宅で看取りをされたアネトス利用者様のケースを紹介したいと思います。
T様 73歳 女性 肝性脳症 肝細胞がんターミナル期
長女様の勤務している施設に入所中でしたが、病状悪化に伴い長女様の自宅に同居されることになりました。
長女様は看護師であり仕事で日中不在がちであった為、アネトス(デイサービス)の利用が開始されました。
施設では、特浴やアロママッサージなどリラクゼーションできるよう努め、調子の良いときはお茶しながらガールズトークをして盛り上がりました。利用中は、TVを観ながらゆっく過ごされ、昼食時はみんなと同じテーブル席まで移動し持参の弁当を遠慮がちに食べていました。控えめな方でした・・・
しかし、腹水貯留に伴い食事摂取量は日々低下していきました。そんな中、娘様より「お母さんの食べたいものを食べさせてください」との言葉がありました。スタッフが「何か食べたいものはありますか?」と尋ねると「チゲ鍋・・・」と小さな声で言われました。スタッフ同士顔を見合わせて「チゲ鍋ですか??」と聞きなおしたこと、意外な返答になんだかうれしい感じがしたことも覚えています。唐辛子には食欲増進の効果もありますが、その反面刺激も強いので準備はしたものの食べることができないのではないかと不安な気持ちで配膳しました。でも、その不安はすぐ解消しました。ここ数日、宅配弁当を3〜4口ほど食べるのが精いっぱいだったI様が、配膳されたチゲ鍋を「おいしい!」といいながら茶碗1杯半食べている姿を見たからです。その後、私たちスタッフは調子にのり次の利用日にはタコ焼きパーティーもしました。最初は「いらない・・・」といっていたのですが、焼きたてのタコ焼きを「熱い・・」といい笑いながら食べていたT様の顔が今でも忘れられません。
しばらくすると、口からは食事を全く取れない状態になっていました。
その日、お迎えに上がると意識レベルは低下し声掛けに何とかうなずく程度でした。
娘様は仕事で不在であったため電話で連絡を取り了承のもとアネトスへ向かいました。
昼過ぎまでアネトスで過ごしましたが呼吸状態も悪くなり、真嶋Drと相談したうえで「娘さんのところへ帰りましょうか?」とI様に声掛けすると意識が朦朧としている中「うん」としっかりうなずかれました。そのころ娘様も仕事の段取りをつけ自宅へ帰宅されており、帰宅後しばらくして自宅で娘様、訪問看護師に看取られお亡くなりになりました。娘様から「母がチゲ鍋を食べたことをすごく喜んでいた」「自宅で最期を看取れたのも周りの支えがあったから」
と感謝の気持ちを聞くことができました。
今回のケースは、自宅で看取りを行う上で娘様も不安や迷いがあったと思います。その中でも、I様の疾患や予後を理解したうえで死をしっかり受け止め自宅で看取ることができたのではないか感じました。

◆編集後記

3月水曜日、午後診療を休診します。

※午後休診日:5日・12日・19日・26日

午前診療は、通常通り行います。

予約日の調整・変更などご迷惑をおかけいたしますがご了承ください。