2013年 10月 No.95
ホームドクター通信

◆お知らせ

10月は台風が通過したあと、急に秋が深まりました。
もう10月も終わりに近づき、今年もあと2か月。来年のカレンダーや手帳、果ては年賀状やおせちの情報まで送られてきます。月日のたつのは本当に早い。街角ではクリスマスよりハロウィンのオレンジ色が目立ちます。ハロウィンも我々の子供のころは海外の行事でしたが、今はもう日本の行事に取り込まれたのでしょう。日本人はアレンジして取り 込むのが上手なんですね。
寒暖の差が大きいので、体調管理には十分御留意ください。

インフルエンザ予防接種

10月1日よりインフルエンザ予防接種を行います。
1回2500円、2回目は2000円、忠岡町在住の65歳以上の方は1000円です。
一昨年からWHO推奨を受けて、3歳以上13歳未満は成人量と同じ0.5mlの二回打ちを推奨しています。
13歳以上は0.5ml接種、1回または2回となっています。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないこと、です。ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。まだ当地ではインフルエンザの発症は報告されていません。
でも、かなり冷えるようになってきましたので、気をつけないといけません。ワクチンの接種を受けていても、日頃から手洗い・うがいをきちんと行い、流行時期は人ごみをさけて感染機会を減らすことが大事です。

特定健診

常時受付しています。メタボにフォーカスをあてた健診です。御希望の方は受付にお問い合わせください。

予約システムはまだ導入できておらず、御迷惑をおかけします。まだ業者選定中です。できるだけ早く導入しようと思っています。新しいシステムが入るまでは、電話での予約をお願いします。診療時間中と月〜金の昼の時間帯にお願いします。

無念の大阪マラソン。折角5倍の確率で抽選に当たったのに。
体調不良で、レースになりませんでした。制限時間5時間の泉州マラソンだったら、途中棄権したところですが、大阪マラソンは制限時間7時間。歩いたり走ったりを繰り返して6時間かかって、ゴールしました。情けない。まあ、仕方ないです。これも経験。ジョギング、マラソンをやめるつもりははまだないので、泉州マラソンでのリベンジをすべく、トレーニングの予定をたてます。11月に参加予定だった福知山マラソンが台風の影響で中止になってしまい残念。また、どこかのレース探して調整します。

11月16日(土) 学会参加のため休診いたします。
御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

今年度年末・年始休暇のお知らせ

12月30日(月曜日)-1月4日(土曜日)まで休診させて頂きます。
今回は例年に比べ、少し長めになっています。
予約診察がこの期間にあたる方は診療予約、薬の処方日数など変更させていただきます。
こちらも気をつけますが、定期薬服用中の方は休み中に薬が無くなるということのないようお願いします。
御迷惑をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

◆アネトス通信

日増しに秋の深まりを感じる季節となりましたが、いかがお過ごしですか。
「食欲の秋」と言われますが、実際、夏が終わり涼しくなってくると食べる量がふえ体重増加につながってしまう人が多いようです。(私はまさにその人です…)
そんな「食欲の秋」の中、食事が喉をとおらない、食べるのが苦痛であるという方に関わることになり、胃ろうについて考える機会がありました。
胃瘻とは、口から食事のとれない方や、食べてもむせこんで肺炎などを起こしやすい方に、直接胃に栄養を入れる栄養方法です。
「胃ろうしてまで生きたくない」日常の会話の中でも、こうした言葉をよく聞くことがあります。食欲がなくなり口から摂取できる量が減ってきた高齢者のご家族の方が、医療者から"胃瘻をつくる"という選択肢を示され、悩まれる場面に多く接することがあります。
ご家族は、口から食べられなくなったということは寿命を迎えつつあるのだから自然に逝かせてやりたい、本人の意思を尊重したい、でも、できることはしてあげたいという思いの中で悩まれていました。
本当に患者の尊厳を考えるなら、必要な治療を考え、胃瘻を含め情報提供を行ったうえで家族の思いや本人の希望なども総合的に判断し、治療方針を決めていく必要があります。挿絵
そうした経過を経て、胃瘻をつけないといった判断が出てきたのなら、それもひとつの答えだと思います。
しかし、胃瘻をつけたいか、つけたくないか… 本当の気持ちは、実際にその場になってみなければ分かりません。元気なうちは「胃瘻をしてまで生きたくない」と思っていても、いざ、その時がきたら「この苦痛から逃れられるなら胃瘻をしたい…」と気持ちが変わるかもしれません。
胃瘻を作っても口からごはんを食べることはできます。嚥下訓練を行い口から十分に栄養が取れれば胃瘻は不要になりますから除去することもできます。お風呂も入れます。胃瘻造設により栄養状態が改善し、その方のQOL(生活の質)が向上できるケースに関しては是非検討していただければと思います。
今月よりアネトス通信担当が小野に変わります。

◆膵癌

歌舞伎俳優の坂東三津五郎さんが、膵癌の手術を受け、舞台を降板されました。
2年前には私の敬愛するアップルのスティーブジョブス氏が肝移植まで含めた何回かの手術を受けられたのちに膵癌でお亡くなりになっています。今回は膵癌について書きます。実は私は大学勤務の頃は膵癌の癌遺伝子を専門にしていました。上司が膵癌専門だったことと、切除して取り切れたと思っても再発してくる膵癌の治療を考えるのが目的でした。10年以上前の話です。医学研究の進歩は早く、全く文献なども読んでいないので、今ではもう素人同然です。しかし、膵癌は今でも性質は悪いようです。

膵臓について

膵臓は胃の後ろにある長さ20cm、幅5cm、厚さ1-2cmほどの細長い臓器で、右側は十二指腸に囲まれており、左の端は脾臓に接しています。
右側は頭部と呼び、左端は尾部といいます。頭部と尾部との間の1/3ぐらいの大きさの部分を体部と呼びます。

膵臓の働き

膵臓の働きは、消化液の分泌(外分泌)とホルモンの分泌(内分泌)があります。膵臓から分泌される消化液は膵液といい、膵管という細い管を通して十二指腸に流れ出し、食べ物と混ざって消化していきます。膵液中の酵素にアミラーゼやリパーゼがあり、聞き覚えのある方も多いでしょう。一方、膵臓が分泌するホルモンの中では、特に血糖を調節するホルモンが重要です。血糖を下げるインスリンというホルモンは体の中で膵臓しかつくっておらず、この機能が低下すると糖尿病になります。
また、血糖を上げるホルモン(グルカゴン)や胃腸の働きを調節するホルモンも分泌しています。

 

膵癌について

膵臓から発生した癌のことを一般に膵癌と呼びます。インスリン、グルカゴンを分泌する細胞から出る腫瘍もありますが、膵臓にできる癌のうち90%以上は膵液を運ぶ膵管の細胞から発生する膵管癌で、通常、膵癌といえばこの膵管癌のことをさします。
膵癌の疫学
わが国では、毎年22,000人以上の方が膵癌で亡くなっており、癌の臓器別死亡数では5位となっています。以前は日本の膵癌の死亡率は低いレベルでしたが、1960年代から80年代後半まで増加して欧米諸国並みになり、横ばいに転じました。現在わが国では、毎年22,000人以上の方が膵癌で亡くなっています。
死亡率は、男性のほうが高く、女性の約1.7倍です。年齢別にみた膵癌の罹患(りかん)率は60歳ごろから増加して、高齢になるほど高くなります。

膵癌の原因・リスクファクター

膵癌になる原因は、他の多くの癌と同様わかっていません。
また、ほとんどの場合、遺伝も関係ないようです。唯一確定しているリスク因子は喫煙です。また、食事要因としては、高脂肪食や肉摂取がリスクを増加させ、また野菜・果物摂取がリスクを低下させる可能性が示されています。コーヒーや飲酒、糖尿病に関しても膵癌のリスクがあがるという報告がありますが、結論は出ていません。

膵癌の症状

膵癌は初期の段階ではほとんど症状はありません。
これが発見を難しくしている大きな要因で、症状が出たときにはかなり進行しているケースも少なくありません。初期の症状で多いのは胃のあたりや背中が重苦しいとか、なんとなくお腹の調子がよくないとか、食欲がないなどという漠然としたものです。また、場所や大きさによって、黄疸(尿や結膜(白目の部分)、皮膚が黄色くなる)、背部痛、腹痛、体重減少、糖尿病の悪化などの症状が現れますが、もちろんこれらの症状があれば必ず膵癌ということではありません。

膵癌の診断

膵がんは身体のまん中にあり、胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・脾臓などに囲まれているため、がんが発生しても見つけるのは簡単とはいえません。

画像検査としては

などがあります。
中にはからだに少し負担のかかる検査もありますので、必要に応じてからだの負担が少なく、簡便なものから行います。PET-CT検査が一番わかりやすいかと思うのですが、保険適応はなく、一般に10万円くらい検査かかります。また、血液検査では、膵の酵素、肝胆道系の酵素、腫瘍マーカーなどが参考になりますが、確定的ではありません。
これらの検査でがんの疑いがあれば、確定診断のため、病理組織や細胞診断を行います。

超音波内視鏡下針生検

膵管擦過細胞診、膵液細胞診 で癌細胞を証明するのが確定診断です。
いずれも内視鏡による操作が必要となります。
膵臓は胃や大腸と違い組織を採取するのが技術的に困難です。
しかし、早期発見が最も重要ですので、どうしたら早く発見できるかという研究が意欲的に続けられています。

病期(ステージ)がんがどの程度進んでいるかをあらわすには病期(ステージ)というものが使われます。
病期はおおまかにIからIVの4段階に分類されています。

<日本膵臓学会>

治療(1)手術

現在のところ、膵がんを完全に治す方法は手術による切除しかありません。
ですから、がんがある程度膵臓の周りにとどまっているときは、できるだけ手術による切除を行います。

膵頭十二指腸切除

病変が膵臓の頭側(十二指腸側)にある場合の標準術式です。頭側に腫瘍がある場合、通常膵臓のみを切除することはできません。
胃の一部から十二指腸、胆のうと下部胆管、膵臓の頭側3分の1から2分の1程度を一塊として切除します。切除する臓器が多い分、再建も多く複雑で、消化器癌の手術のなかでは最も難易度が高い手術の一つと言えます。最近ではできるだけ胃を温存する術式(幽門輪温存膵頭十二指腸切除)も多く選択されます。

膵体尾部切除(脾合併切除)

病変が膵臓の尾側(脾臓側)にある場合の標準術式です。こちらは膵臓の左側半分を切除しますが、リンパ節転移にそなえて脾動静脈や脾臓周囲のリンパ節を切除する必要があるため、通常脾臓とともに切除します。良性腫瘍や悪性でも初期のものについては脾臓を温存することも可能です(脾温存膵体尾部切除)。

膵中央切除、膵部分切除

明らかな浸潤がんの場合、上記2つの手術が標準術式となります。悪性度の低い腫瘍の場合、膵機能をできるだけ温存するために、膵臓の真ん中だけを切除したり(膵中央切除)、膵臓の一部のみを切除したりすることも可能です。

腹腔鏡を使った膵切除(主に体尾部切除)

腹腔鏡を用いる利点はなんといっても傷が小さくてすむため、からだへの負担が少なく、美容的にも優れているところです。しかし、安全性や切除範囲の制約などの問題もあります。

(2)術後補助化学療法

治癒をめざしてできる限り切除しますが、膵癌は悪性度が高く、切除後に再発、転移をきたすこがもあります。
これらを少しでも抑制するために、悪性度や進行度によって術後、抗がん剤による化学療法を行うことが勧められています。

(3)化学療法(抗がん剤療法)

がんが肝臓や肺など他臓器に転移している場合や、広範囲なリンパ節に転移している場合では手術によって切除することはできません。この場合、化学療法を行います。
標準的にはゲムシタビン、エルロチニブ、TS-1といった抗がん剤が単独あるいは併用で用いられます。
現在のところ、癌を完全に消失させることは困難ですが、最近新しい薬剤の開発や組み合わせが研究されおり、近い将来治療薬の選択肢が増える見通しです。

(4)化学放射線治療

遠隔転移はないが切除できないがん(局所進行切除不能膵がん)に対しては、化学療法と放射線治療を併用して治療することもあります。
以前は併用すると副作用が多いなどの問題もありましたが、放射線照射の技術も進歩し、副作用の低減もはかられています。
悪性度が高く、進行の早い膵癌なので、早期発見が何より重要。PET-CT検査が癌予防のためにも保険適応になるか、価格が下がればいいのに、と思いますが、まだ無理のようです。
超音波検査をなるべく年一度くらい受けるようにすればいいかもしれません。
それとタバコを吸っている人はまず禁煙、です。
膵癌が気になる方はまず御相談ください。

◆編集後記

ワンコイン健診しています。

あまり病院に受診しない方を対象としています。
500円で糖尿病、脂質異常症、肝機能、腎機能、貧血の検査をします。
健診を受けていない方が結構多くおられ、その方を対象に気軽に自分の健康状態を知ってもらおうと思って始めたものです。
あまり健診を受けていない、病院にかかりたくない人にお勧めしたいと思っています。
周囲に不健康そうだけど、病院に行きたがらない方がいらっしゃったらお勧めください。