2012年 8月 No.81
ホームドクター通信

◆お知らせ

残暑お見舞い申し上げます。

今年の夏はオリンピックがあり、日本選手の活躍もあってなかなか楽しめました。
印象に残っているのはあるメダリストの、今までは肩に重圧がずっしりかかっていましたが、今は首にメダルがずっしりかかっています、というコメントでした。
やはり国を代表して試合に臨むというのは大変なプレッシャーなんでしょう。お疲れ様でしたといいたいです。
高校野球も大阪桐蔭が素晴らしいピッチャーを抱えて春夏連覇。このピッチャーが阪神に来てほしいと思うのは私だけでしょうか。
夏がゆっくりと終わりを迎えています。朝夕など涼しい、と感じるようになりました。日中はまだ暑いです。これからも暑い日が続きます。熱中症への警戒は解けません。

 昨年も書きましたが、熱中症の危険率が年々高まるのは、65歳以上の高齢者です。
これまでのデータ分析により、高齢者は気温35、36度付近で急激に発症する傾向があります。
 
更に若い方でも運動中の熱中症は30度以下の気温でも湿度が高まれば発症することがあり、暑さに慣れた8月下旬〜9月でも水分補給を徹底し、頻繁に休憩を取る必要があります。
夏の終わりは運動が活発になるこの時期であり、熱中症が起こりやすい時期ともいえます。
寒暖の差が大きくなり体調を崩しやすく、風邪など引きやすくなります。
体調の崩れは、熱中症を容易に引き起こします。暑さ寒さに合わせての服の増減や十分な睡眠などを心がけてください。 また、十分な水分補給を行ってください。
汗をかいた場合、水分補給は水よりも電解質の入っているスポーツ飲料が適しています。
更に部屋の温度をこまめに測定して、暑ければエアコンを使用しましょう。

ISO9001の継続審査が8月3日にありました。少し予約を制限し、御迷惑をおかけしました。特に不適合は認められず、認証が継続されています。
審査員の方からいくつかいい評価(Good Point)をされたことろがありました。
ひとつは在庫の管理。医薬品・物品の有効期限を把握する仕組みをつくっていたこと。これは事務・看護師ともによくやってくれています。
もうひとつは当院の待ち時間対策。 当院では受付にストラップ付き名札入れを用意して、診察券と受付番号を入れ患者さんにお渡ししています。医院内の患者さんの識別と順番管理に役立つものとして評価していただきました。
この方法は当院で採用していたもので、予約の順番取りと相俟って、なかなかいいシステムになったのではないかと自画自賛していました。自分の番号と順番がわかると、あと何人くらい、などが判定できます。ディズニーランドやUSJで順番待ちの人が文句をあまり言わないのは、待ってでも乗りたい・参加したいと
いう魅力的なアトラクションがあるのが一番ですが、待ち時間の目安が書いてあるのに納得して並ぶこと、並んでいてだんだん前にいけるのが実感できることが挙げられています。当院の受付でも大体の待ち時間を事前にお伝えするようにしているはずですが、、。他の病院の待ち時間対策システムも気をつけてみるようにしていますが、この方法が今のところ一番いいのではないかな、と思っています。如何でしょう。さらにいいシステムにすべく、実際お待ちになっている方の御意見を伺いたいです。 あと、指摘事項は何点かありましたが、早急に改善策を講じます。

8月15日から18日まで夏季休暇を頂いて、5年連続で生まれ故郷の三重県熊野市での花火を見に行ってきました。
天候にも恵まれ(翌日はゲリラ豪雨でした)、海上や世界遺産の鬼が城から打ち上げられる花火ショーを楽しんできました。また来年も17日だそうで、その前後に夏季休暇を頂くことになると思います。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
参考URL 熊野大花火 http://www.ztv.ne.jp/web/kumanoshi-kankoukyoukai/

平成24年度の住民健診が始まっています。特定健診で主にメタボにフォーカスをあてた健診です。また、前立腺がん検診、肝炎ウィルス検診、大腸がん検診もしています。対象となる方は是非受けて下さい。

ワンコイン健診しています。あまり病院に受診しない方を対象としています。
500円で糖尿病、脂質異常症、肝機能、腎機能、貧血の検査をします。
健診を受けていない方が結構多くおられ、その方を対象に気軽に自分の健康状態を知ってもらおうと思って始めたものです。あまり健診を受けていない、病院にかかりたくない人にお勧めしたいと思っています。周囲に不健康そうだけど、病院に行きたがらない方がいらっしゃったらお勧めください。

11月からポリオの不活化ワクチンの予防接種が始まります。詳しくは来月号でお知らせします。

◆アネトス通信

毎日、とても暑い日が続きますね(> o <) 皆様、夏バテはしていませんか?
きちんと食事をとり、十分な睡眠をとって、日射病・熱中症等には十分に気を付けて下さい。

今月号では、熱中症の予防のための 4項目をあげておきます。

  1. 休息・睡眠を十分にとる。
    睡眠不足や、疲労の蓄積は免疫機能の低下につながり、熱中症を引き起こしやすくなる事から、7〜8時間の睡眠時間をとる。
  2. 水分と塩分の補給を適度に行う。
    汗により、塩分も失うことから、水分だけでなく塩分も適度にとる。
    おすすめは、スポーツドリンク等です。
  3. 服装に気をつける。
    外で活動するときには、帽子をかぶりましょう。また、黒めの服装は避け、白めの服装をしましょう。
  4. 涼しい場所の確保。
    直射日光下での活動は、できる限り避け、日陰などの涼しい場所の確保をしましょう。また、適度な休憩もとりましょう。

今年も、 9月中旬頃までは高温の日が続くと言われています。無理な活動は避けて、十分に気をつけましょう。

そして、 8月より新たに職員 2名(看護師 1名、ヘルパー兼運転手 1名)が加わりました。今後も、宜しくお願い致します。

◆胆管がん

印刷会社で働いていた人が相次いで胆管がんになり、大きな社会問題になっています。
産業医科大学のグループが5月に学会で、大阪市の印刷会社で働いていた従業員に胆管がんを発症している人が多いと公表し、問題が明らかになりました。厚生労働省によると、これまでの関連調査で少なくとも全国で24人が発症、うち14人が死亡しています。労災申請をした人は29人になっています。

今回はこの胆管がんについて説明します。

胆管とは

胆管とは

消化液のひとつに胆汁があります。胆汁は肝細胞でつくられて、十二指腸に送り込まれて膵液とともに食物と混ざり、食物を腸管より吸収されるように分解します。この胆汁を肝臓から十二指腸に届ける管が胆管です。肝内の胆管を肝管ともいいます。呼び方は図の通り。
ここでは肝管も肝内胆管、上部胆管、下部胆管と呼びます。
胆汁を一時ためておく袋が胆嚢です。肝内・肝外胆管と胆嚢を含めて胆道という言い方もあります。

胆管がん

この胆管にできるがんが胆管がん。肺がんや大腸がん、胃がんなどに比べて患者数は少ないです。ただ、治療が難しく、毎年1万人近くが死亡します。主に50歳以上に多く、ピークは70歳代。今回印刷業界で見つかった胆管がんは30歳、40歳代のケースが多く、従来はとても少ないとされていた年代です。

胆管の発がんメカニズム

胆管の発がんメカニズム

胆管上皮の発がんははっきりわかっていません。胆管がんのひとつの危険因子に膵胆管合流異常という病態があります。胆管と膵管が十二指腸の壁外で合流する先天異常です。
すなわち十二指腸乳頭の括約筋(オッディ筋といいます)の作用が胆管膵管の合流部に及ばないため、胆汁・膵液の相互逆流がおこります。膵液と胆汁が混じり合うと活性化され、変異原物質が生成されます。そのため、胆管の炎症、胆管の拡張、胆石、膵炎などがおこりやすいとされています。ただ今回発症した人の中に膵胆管合流異常の方がいたかどうかはまだわかっていません。
今回の印刷会社の胆管がん例ではインクをふき取る洗浄剤に含まれる化学物質「ジクロロメタン」や「1、2ジクロロプロパン」が疑われています。
ただ、両化学物質とも発がんリスクは高くありません。国際がん研究機関(IARC)によると、ジクロロメタンは5段階の上から3番目(発がんリスクが疑われる)で、携帯電話の電磁波やガソリン排ガスと同レベル。
「1、2ジクロロプロパン」は4番目(発がん物質には分類されない)です。

因果関係を科学的に証明するのは容易ではありません。
喫煙や胆石も胆管がんのリスクファクターです。多くのがんはさまざまな要因が複雑に絡み合って発症します。原因や発症メカニズムを特定するのは難しいのです。
職場と発がんの関係が判明したケースとしてはアスベスト(石綿)による中皮腫、染料による膀胱がんなどがあります。胆管がんの場合は、体内に入った化学物質が肝臓で代謝されて胆汁として胆管を通る際に発がん作用を起こした可能性が指摘されています。
ただ、まだ詳細は不明です。

胆管がんの症状

胆汁にはビリルビンという黄色い色素が含まれています。胆管がつまると胆汁が十二指腸の流れなくなるので、胆汁のうっ滞がおこり、胆汁中のビリルビンが胆管上皮から吸収され、血中に流れ、黄疸がおこります。
その他、腹痛、発熱、体重減少、などがあります。

胆管がんの診断方法

血液検査では腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)、肝酵素の数値、胆道系酵素の上昇、黄疸(ビリルビンの上昇)から胆管がんを疑います。画像診断では、腹部の超音波検査、CT検査、MRI検査などが行われます。
MRI検査の画像処理で、胆管の状態が鮮明に見えるようになり(MRCPといいます)、胆管がんの診断にはとても有効です。そのうえで、内視鏡的膵胆管造影が行われ、胆汁から癌細胞を検出したりして確定診断します。同時に黄疸があれば軽減する処置(減黄処置)が行われます。

治療

胆管が閉塞して、黄疸が出現している場合は、減黄処置が必要となります。
つまっている胆汁を十二指腸まで流すか、体外に出すか、です。
具体的に胆汁を十二指腸に通すには内視鏡で十二指腸乳頭からチューブを胆管内に挿入し、(細い管なら閉塞胆管内を通過できることが多い)、体外に胆汁を出す場合は体外から肝臓を通して胆管内にチューブを入れ、体外に胆汁を誘導します。
胆管がんの治療はとりきれるものは手術がメインになります。
胆管がんの部位により、術式が選択されます。おもなものは下記2つ。

肝右葉切除術+胆管切除術:

肝門部胆管や肝臓に近い上のほうの胆管にがんがある場合(肝門部胆管がん),図のように網掛けの部分を切除します。
白癬・真菌感染症

膵頭十二指腸切除術:

胆管の下のほうにがんがある場合,下図のように網掛けの部分を切除します。
白癬・真菌感染症

図は消化器外科学会市民向けサイトより借用しました。

切除できない胆管がんには化学療法、放射線治療などが選択されます。

今回の印刷会社で発症した胆管がんについて厚労省は専門家チームをつくり、疫学調査を始めました。 過去にさかのぼって該当する印刷会社の従業員の作業内容や使用していた化学物質の量、期間などを洗い出し、がんの発症率や死亡率などを調べます。今年度中に中間結果をまとめる予定になっています。
  日本肝胆膵(すい)外科学会も全国約220病院で過去15年間で50歳未満の胆管がん患者の職業や化学物質の使用状況などを調べ始めました。

また大阪では大阪市立大学病院に職業性胆管がんの相談窓口を設置しました
http://www.hosp.med.osaka-cu.ac.jp/yet/tankangan01.shtml

厚生労働省の職業性胆管がんの相談窓口もあります。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/tankangan/

職業で健康被害にあわれた方の救済は十分にしていただきたいと考えています。

◆編集後記

これを書いているのは実は8月27日-28日です。昨年の院内報をみると書いていたのは8月31日でした。なかなか変われないものですね。行動科学もまだ使いこなせません。次はある達人の時間管理を参考にして、だらだら癖、先送り癖、ギリギリ癖を治したいと思います。
ギリギリなってしかできないのは、間際になり焦って作業をすると、出来たときの喜びがより大きくなるので、この喜びを知ってしまったあとはなんでも先送りするようになる、という記事も読みました。
これが一番あたっているかな、という感じです。だったら締め切りを早くすればいいだけで、その締め切りを破る罰、守れる御褒美を課せばいいとも書いてありました。とにかく誰かに監視してもらわないとダメなのかな、という境地 ですね。