ホームドクター通信
2012年 6月 No.79

◆お知らせ

梅雨の季節です。今年は早めの台風上陸など梅雨空が続き、太陽が恋しい季節です。といっても梅雨の合間の晴れ間でしょうか、真夏を思わせる日差しの強さを感じる時もあります。確実に夏は近づいてきています。今でも蒸し暑いし、今年は昨年より強力に節電が叫ばれています。
エアコンも使うのに気が引けるので、熱中症には十分注意してください。昨年も書きましたが、個人的には、高齢者の方は遠慮せずエアコンを使うべきだと思っています。若い人は涼しい恰好をして、水分・塩分を十分とり、エコな涼感グッズを使って我慢しましょう。

平成24年度の住民健診が始まっています。

特定健診で主にメタボにフォーカスをあてた健診です。
また、前立腺がん検診、肝炎ウィルス検診、大腸がん検診もしています。対象となる方は是非受けて下さい。
当院のエントランスにワンコイン健診始めました、という手書きのメッセージボードを置いています。当院に来院してこの院内報を読んでおられる方にはあまり縁のない話です。健診を受けていない方が結構多くおられ、その方を対象に気軽に自分の健康状態を知ってもらおうと思って始めたものです。あまり健診を受けて いない、病院にかかりたくない人にお勧めしたいと思っています。周囲に不健康そうだけど、病院に行きたがらない方がいらっしゃったらご紹介ください。

風疹患者が大阪で増加しているそうです。府内高校で集団感染が疑われる事例が発生していること、兵庫県や東京都でも風疹患者の増加が見られること、大阪府全域における風疹患者の発生届け出数が前年の同時期に比べて3倍の101例に達していることが示されています。今後、学校などでの集団感染事例が危惧されています。 これまで風疹にかかっていない方、予防接種を受けていない方及び妊娠適齢期の方には注意が必要です。当院では自費になりますが、風疹の抗体価測定、風疹の予防接種もしています。

小児心移植

富山大学付属病院で、2012年6月14日に、6歳未満の男児が、改正臓器移植法に基づいて脳死と判定されました。
この男児は、6月初旬に事故のため一時的に心肺停止となり、低酸素性脳症と診断され、高度な医療を受けるために、富山大学付属病院へ転院してきました。
病院では7日に、「脳死」という言葉は使わずに、家族に重篤な脳障害で回復が難しいことを説明。
その際、家族から臓器提供の意思が示されました。
男児からが提供される臓器の摘出手術は15日に行われ、心臓は大阪大学附属病院に運ばれ、 拡張型心筋症の10歳未満の女児へ移植する手術が、15日午後に無事に終了しました。
また、肝臓は東京の国立成育医療研究センターで、10歳未満の肝不全の女児に、 両方の腎臓は、富山県立中央病院で60歳代の慢性糸球体腎炎の女性に移植。
いずれも無事に終了しました(以上、新聞報道より抜粋)。
心臓が移植された大阪大学の心臓血管外科(旧第一外科)は私が研修を受けたところです。
当時はまだ成人の心移植も始まっておらず、川島教授が心移植再開に向け、いろんなところに働き掛けておられました。その甲斐あって、臓器移植の ための法案が成立、平成11年から心臓移植が再開されています。
再開というのは 過去一度日本でも心臓移植があったためです。昭和43年のことで、和田移植と呼ばれています。現在、成人の心移植については既に安定した成績が得られていると聞いています。
今まで小児の心移植は海外に渡航して受けるしか道がなかったので、今回初の小児移植が施行されたことは心疾患に罹患されている小児・親御さんにとって今後の希望になると思われます。
脳死が人の死かどうかはまだ異論のあるところかもしれません。脳死状態になっても髪・髭は伸びますし、排泄もありますので。医学の力を借りれば、脳死状態の人の子孫を残すこともできるでしょうから。
私は脳死は人の死と思っていて、臓器の移植を受けてでも生きていたい(あるいはいきていてほしい)と思う人がいて、脳死は人の死なので、臓器を提供しても いいと思う人がいて、移植のできる外科医がいるのであれば、この三者の行う臓器移植については誰も邪魔すべきではないと研修医時代から考えてました。
自分もドナーカード持ってます。臓器全部提供します、とは書いていますが、でも、使えない臓器もあるだろうな、とも考えています。

◆アネトス通信

蒸し暑い日が続きますが、皆様の体調はいかがですか?
今月は、梅雨の時期で過ごしにくい日が続きますが、あまり無理をせずに過ごして下さいね。
先日アネトスでは、「100円均一買い物ツアー」で、岸和田のセリアに行ってきました。  「少し外へ出て、気分転換に買い物をしよう」と利用者様と一緒に企画しました。
当日は看護師1名含め職員3名と、2名の利用者様が参加して頂けました。
アネトス来所後、お茶等を飲んで頂き、少し休憩をしていただいた後、アネトス号に乗車して出発!! 到着後、記念撮影を済ませてから、ショッピング開始(^^)
参加して頂いた利用者様は、どの方も買い物や外に出かけることが好きなお方で、手芸用品や日用雑貨等を色々と見て購入されていました。  帰りの車内では、「また、今度どこかに行きたい」と言って頂け、喜んで頂けて良かったです。

アネトスでは、ボランティアも随時募集しています。
利用者様のお話相手等、簡単な事でも大歓迎です。 少しでも興味があればご連絡下さい。

連絡先:療養通所介護アネトス  
〒595-0805 大阪府泉北郡忠岡町忠岡東 1-15-28
TEL 0725-32-2884 担当:榎谷

◆白癬・真菌感染症

人の感染症の原因で多いものに、ウィルス、細菌、真菌があります。
ウィルスは遺伝子(DNAかRNAの一つ)を粒子で包んだもの、大半の風邪の原因になります。有名なところでは インフルエンザウィルス、ノロウィルス、ロタウィルスなどがあります。
細菌は原核生物といい、細胞内に核がありません。いわゆるバイ菌で、膿の原因で抗生剤が効きます。
真菌は細胞内に核のある真核生物で、一般にキノコ・カビ・酵母と呼ばれる生物をまとめたもので、 原則として運動能力がなく、固着性の生物です。
今回はこの中の真菌・特に白癬菌についてお話します。

足白癬(水虫)

真菌・白癬菌感染症の中で代表的なものは水虫です。
梅雨時は高温多湿で水虫が増える季節です。

「水虫」の名は、田んぼで耕作をしていた人の足に水虫ができたことから、水の中にいる虫に刺されたと考えられたことに由来するという説があります。
イギリスやアメリカ合衆国等の欧米では日本人に比べ一般人には少なく、一方で運動選手に多いことから、“athlete's foot”(運動選手の足)という異名があります。

水虫の罹患人数ですが、日本人では、なんと4人に1人の割合で水虫罹患されているとのことです。
さらに8人に1人の割合で、治りにくいとされている爪の水虫(爪白癬)も併発しています。
男性のビジネスマンに多いイメージですが、女性にも水虫患者さんは多くいらっしゃいます。正確な人数は不明なようですが。
ある調査によると患者数を年齢別に見ていくと、30歳代で約2割の方が水虫です。
40歳代になると、その倍まで増えて約4割まで増加します。70歳代で水虫の人口はピークを迎え、なんと6割です。高齢者の半数以上の方が水虫を患っているということになります。
加齢により皮膚の免疫力が大きく低下してしまうのが原因と考えられます。

医学的に水虫が確認されたのは、欧米では19世紀の終わりごろとされており、 1890年代になって初めて水虫の研究がスタート。「カビ」によって起こる病気であることがわかったのは、1910年のことです。そして、日本では大正7年(1918) に東京大学皮膚科教授の太田正雄博士が、水虫の原因菌である「白癬菌:ハクセン菌」と呼ばれる「カビ」を分離培養したのが始まり。水虫の原因が発見されてから、まだ1世紀にも満たない新しい病気ということになります。

今日では水虫はごく普通の病気となりましたが、少しずつ増え始めたのは戦後日本が豊かになったころからと考えられています。 第二次世界大戦以前の日本では、一日中靴をはいているのは限られた人たちだけでした。一般人は草履や下駄 など水虫とはあまり縁のない生活をしていたことからも、水虫が広く蔓延したのは一般的に靴が履かれるようになってから、ということがわかりますね!

白癬菌はヒトの角質層(アカ)・毛・ツメなどに含まれるケラチンというタンパクを食べて生存します。
白癬菌の角質侵食が進み、皮下組織等まで到達すると炎症を起こし、かゆみ等が発生します。よって白癬菌に感染していると必ずかゆみ等の自覚症状がある訳ではない。また自覚症状も皮膚がぼろぼろになったりならなかったり、かゆみのみだったり、かゆみも耐え難い程から殆ど自覚出来ない程と幅があります。

水虫の病型・診断

自分で水虫と診断して医療機関に来られる患者さの1/3が別の病気といわれています。また、水虫ではないと思っていても実は水虫だったという逆の場合もよくあります。
よく間違われる病気としては、
汗疱(かんぽう)(手のひらや足の裏に小さな水ぶくれができる)、
掌(しょう)せき膿疱(のうほう)症(手のひらや足の裏にウミをもったブツブツができる)、
湿疹・かぶれなどの皮膚炎、角質剥離(かくしつはくり)症、があげられます。

足の水虫には大きく分けて
足の指の間にできる「趾間(しかん)型」、 指の間が赤くはれあがったり、皮がむけたりします。また、皮が白くふやけてジメジメし、赤くむけてただれてきます。
土ふまずなどに水ぶくれができる「小水疱(しょうすいほう)型」、 小さな水ぶくれ(水疱:すいほう)が集まってできています。そのまわりが赤くなり、腫れてくることもあります。
足の皮膚が分厚く硬くなる「角化(かくか)型(角質増殖型)* 足の裏から足のふちまでガサガサして角質が厚く硬くなり、ボロボロと皮がむけたり、 かかとがひび割れてアカギレのようになったりします。角化型は皮がむけ床に落ちるため家族への感染が多くなります。

上記3つが水虫の主な病型です。複数の型が混在する場合もあります。
水虫の診断には感染した場所での白癬菌の存在を証明することが必要です。
皮膚を顕微鏡でみて、白癬菌がいるかどうか。あるいは培養してみて白癬菌が増殖してくるかどうかをみます。

治療

治療は抗真菌薬です。おもに塗り薬で治療します。風呂上りに、やや広めに塗布するといいでしょう。症状がよくなっても、白癬菌は生きている場合が多いので、最低でも1-2ヶ月はぬり続けましょう。場合により飲み薬を使うときがあります。
一般の湿疹に使用されるステロイド剤は水虫に使うと悪化する場合がありますので、注意が必要です。

予防のポイント

清潔と乾燥につきます。
毎日足を洗って、しっかりと乾燥させること。
通気性のいい靴や吸湿性のよい靴下を履きましょう。職場では可能でしたらサンダルに履き替え、時々は靴を脱ぎましょう。5本指靴下も有効です。

また、足白癬は伝染しやすい病気とも言われています。白癬菌自体の感染力は弱く、白癬菌が長く皮膚に密着した上で多湿環境が維持されないと感染はしません。
しかし垢として角質ごと落下した白癬菌は数日は生存できるため、これがスリッパ・足拭きマットなどを介して非感染者の足裏などの皮膚に垢ごと付着、高湿度などの環境が整っていた結果として発症することは容易に想像されます。
このため家族などで水虫感染者が居る場合は、スリッパや足拭きマットを専用にするなどの配慮が必要です。こまめな掃除も大事で、白癬菌を含んだ皮膚の剥がれた角質が混じったほこりやごみを落ちたままにしないようにしましょう。
白癬菌は水に流れますので、入浴、洗濯を分ける必要はありません。

【水虫】バイエルのHPより拝借しました。
足以外の白癬菌感染症・新しい白癬菌感染症・トンズランスについても書こうと思っていましたが、 紙面が尽きました。
次回、また真菌症のことを書きます。

◆編集後記

また今回も遅くなってしまいました。
ギリギリにならないと仕事に取り掛かれない癖、先延ばし癖の対処方法を現在勉強中です。
脳科学からのアプローチ、いわゆる行動療法が必要なようです。効果のほどはこの院内報の発行日で評価することにします。 次回目標17日。医療記事のテーマが決まっているので、早いはず。

ISOの審査が8月3日に行われます。午前中の診療予約が少し制限されます。

お盆休み

8月15日(水)-19日(日)です。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。