ホームドクター通信
2012年 3月 No.76

◆お知らせ

3月になりました。今年は寒い日が多かったですが、ここのところ風が暖かく感じることが多くなり、少しずつ春に向かっているのが感じられます。
花粉が飛んでいるようですので、花粉症の方は御注意を。今年は鼻の粘膜に直接塗布して花粉をブロックする市販の塗り薬・ダチョウの卵から抽出した抗体を使ったマスク、スプレーがトレンドとのこと。
花粉症の方は一度お試しになってはいかがでしょうか。

レントゲンデジタル化

診察室に入られた方はおわかりかと思いますが、大きなパソコンモニターが設置されています。レントゲンのフィルムを止め、デジタル化にしました。まだ透視の関係でいつでもフィルム現像できる体制にはありますが、導入以後一切現像はしなくなりました。画像も十分判定できるレベルのように思います。

肺炎双球菌のワクチンのお知らせ

65 歳以上の高齢者・基礎疾患があって抵抗力が落ちている方には、肺炎の原因微生物の約半数を占める肺炎球菌のワクチンの接種が勧められます。
今年の4 月からこのワクチンが公費負担になることがほぼ決定されています。ただし、全額補助ではなく半額の3500 円補助。年齢も70 歳以上になりそうです。詳しくは忠岡町の広報をご覧ください。来月また通知します。

以前も書きましたが、平成24 年4 月から過去1-2 カ月の血糖の平均を反映するヘモグロビンA1C の値に国際規格であるNGSP 値に変更されます。。NGSP 値(%)=1.02×JDS 値(従来の値)(%)+0.25 で計算され、ヘモグロビンA1C の値は5.0 〜 9.9%の場合、0.4%上がることになります。4.9% 以下の場合は+0.3、10.0 〜 14.9%の場合は+0.5 です。これに伴い従来の糖尿病の診断基準のひとつであったヘモグロビンA1C6.1%以上は6.5%以上に訂正されます。しかし、特定健診は一年間は従来のJDS のままとのこと。糖尿病のコントロールも優6.2%未満、良6.2-6.9%未満、可(不十分)6.9-7.4%未満、可(不良)7.4-8.4未満、不可8.4%以上と変更になります。しばらく混乱しそうですが、当院でも新しい値(NGSP) を採用しますが、当分の間従来の値を併記します。

祝!泉州マラソン完走

昨年に引き続き2月19日、泉州マラソンに参加しました。雲ひとつない晴天のもと、浜寺公園をスタートしました。堺・大浜を折り返して、旧26号線を南下し、りんくうタウンにでます。そこから臨海線に出て、泉南のりんくうイオンモールを折り返してりんくう公園までもどってゴール、のコースです。
臨海を通って泉南のりんくうイオンモールまで行ったことのあるかたはおわかりでしょうが、二つの橋があります。30kmを超えてこの橋を2回超えないといけません。これが結構きつい。昨年は歩いて橋を渡りましたが、今年は失速はしたもののなんとか走って渡りました。
タイムは4時間4分14秒。
昨年より30分近く縮めることができました。
今年は泉州国際市民マラソンのホームページ・第19回大会・大会結果にも掲載されています。
一般男子成績から真嶋で検索してもらうと証拠が載っています。
また、忠岡駅難波方面上り改札口入ってすぐ右手に忠岡町の特産品などを展示しているコーナーがありますが、そこに忠岡町住民の泉州マラソン記録が掲示されているそうです。何人かご覧になった方から指摘されました。

昨年は終わった直後から足が痛く、3日間ほど階段を手すりなしで昇ることができませんでした。
降りるのもひやひやものでしたが。それに比べ、今年はわりと平気です。ちょっと進歩したかな、と思ってます。
次は是非4時間を切るように練習します。
昨年・今年は走りこみの時期は月200kmの走行距離でしたが、来年度は250-300km走れるように予定したいと思っています。
沿道で応援してくださった方、ありがとうございました。実は忠岡通過時は集団の中に紛れるよう、目立たないよう走っておりました。でも、何人かには発見されてしまいました。
走っている間、なんでこんなしんどいことしてるんだろう、と思うこともありますが、終わった後の達成感、開放感は結構何物にも代えがたいものがあります。
ジョギングを趣味として楽しみ、いつまでフルマラソンに出場できるのかはわかりませんが、出られる間が出ようと思っています。

◆アネトス通信

気候の方もようやく春へと近づいて来ました。
今月は、女性が主役の雛まつりにはじまり、卒園式・卒業式等、また新たな道へ進む為の準備に追われるシーズンですね。

 先日アネトスでは回転寿司ツアーで、くら寿司に行ってきました。
  「施設から少し外へ出て皆で楽しい食事を楽しもう」と利用者様と一緒に企画しました。
当日は看護師2名含め職員5名と、3名の利用者様が参加して頂けました。
アネトス来所後、入浴等の午前のケア終了後、アネトス号に乗車して、いざ出発!!
  到着後、記念撮影を済ませ、食事スタート(^^)
  固形物を摂取するのが難しい利用者様も、茶碗蒸しやプリン・トロミをつけた赤だし等を楽しんで頂けました。
  帰りの車内では、「また、どこかに行こう」と言って頂け、内容のあるものにできて良かったです。

アネトスでは、若干の空きがございます。
施設内見学等、随時可能ですのでまたご連絡ください。
受付時間:月曜日〜金曜日(祝・祭日は除く) 9時〜17時
療養通所介護アネトス TEL 0725-32-2884 担当:榎谷

◆閉塞性動脈硬化症

最近歩くとすぐ足が痛くなって、立ち止まって休まなければならない。休むとまた歩けるようになる、という症状がある方はおられませんか?腰椎の疾患である腰部脊柱管狭窄症という疾患の症状のこともありますが、下肢の閉塞性動脈硬化症かもしれません。
近年、「メタボリックシンドローム」が話題になっており、住民健診である特定 健診もこのメタボリックシンドロームに焦点をあてています。、
高齢社会の到来や食生活の欧米化による生活習慣病の増加とともに、動脈硬化による病気が急増しているためです。動脈硬化では、狭心症・心筋梗塞や脳梗塞が有名ですが、実は足にも動脈硬化は起こります。今月は、足の動脈硬化である閉塞性動脈硬化症の診断・治療・日常生活の注意などを紹介します

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気で、手足にさまざまな障害が現れます。
特に多いのが足の閉塞性動脈硬化症です。

閉塞性動脈硬化症の症状は、血流が悪くなることにより、種々の症状が起こります。
Fontaine分類(フォンテイン分類)は、病期と症状を結びつけたものとして広く用いられており、その重症度により、4段階に分類されています。

 1度(もっとも軽症)

無症状のものから脚が冷たく感じる・しびれを感じるという程度の軽症のもの・下肢の冷感や色調の変化の出現。

 2度 間歇性跛行(かんけつせいはこう)

数十から数百m歩くと痛みのため歩行継続不可能になる症状。なお、腰部脊柱管狭窄症でもみられるため鑑別が必要。

 3度(安静時痛) 

歩行距離がだんだん短くなってきて、ついには安静に しているときにも脚が痛くなる。

 4度(もっとも重症)

足の趾(ゆび)や踵(かかと)などが黒く壊死したり、潰瘍ができる。
下肢の皮膚潰瘍。糖尿病などによる末梢神経障害がない限り、激痛があります。特に壊死や潰瘍があると、細菌感染を併発しやすく、ひとたび、感染が起こると、血流が悪くなり、より中枢側での切断が必要となったり、体に感染が波及して、全身状態が悪くなる(敗血症)ことがあり、早めの治療が必要となります。

閉塞性動脈硬化症の検査

身体検査として、脚の皮膚の色や動脈の脈拍が触れるかどうかが基本となります。
動脈硬化で血管が狭くなったり、閉塞したりした場合は、脈拍が弱くなったり、触れなくなります。生理的検査法としては、上腕・足関節血圧比(ABI)がよく使われます。通常、動脈硬化は脚の血管に起こりやすく、脚の血流が悪くなると、脚の血圧が下がってきます。
ABPI を測定することで、足の血液の流れを調べます。正常では、足の血圧のほうが高いため、ABI は1以上ですが、血液の流れが悪くなると、ABIは低下します。ABI が0.9以下の場合には、足に動脈硬化が起こっていると考えられます。ABIの低下があり、症状がみられるときは、下肢の動脈の血流の障害を疑います。20年前、私が血管外科の研修をしている頃は、左右上下肢の血圧をドップラー聴診器という超音波聴診器を使って測定していました。
詰まりかけの血管の拍動を拾うのは難しく、結構面倒な検査でした。今は上下肢の血圧、脈波が一度に測れる器械があり、当院でも検査ができます。
当院では足の症状があり、ABIが低下していると、病院の循環器科に紹介しています。
病院では、下肢のMRIによる血管検査・血管超音波検査などをして、下肢の動脈硬化、閉塞が考えられる場合、血管造影検査をします。
動脈に直接造影剤を入れてレントゲンをとる検査です。適応があればそのまま血管を拡げる治療が行われます。その結果血管をバイパスする手術が選択される場合もあります。

閉塞性動脈硬化症の危険因子

糖尿病、高脂血症、高血圧、喫煙、年齢などが危険因子となります。
性別では男性に多い傾向にあります。

閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化の一つの症状であるため、脳梗塞や心筋梗塞、腎臓の血流障害などを合併する場合もあり、注意が必要です。

治療は先に述べた血管内治療と手術療法のほか、運動療法・薬物療法があります。
閉塞性動脈硬化症の運動療法とは、主に「歩く」ことです。
太い血管が狭窄や閉塞を起こすと血液の流れが悪くなり、歩行時に筋肉(ふくらはぎが多い)が痛くなるので歩行に支障を来します。
しかし、無理のない距離を「歩く」ことで周囲の細い血管(側副血行路というバイパスとなる血管)が発達し、血液の流れが改善するので、長い距離を歩くことができるようになります。

・1回30分程度、1日2回で毎日行うのが理想的です。

閉塞性動脈硬化症に使われるお薬は、血液をサラサラにしたり、血管を拡げたりすることによって血液の流れを改善する作用があります。
最も多く使用されているお薬は抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)ですが、症状に合わせてお薬を使い分けたり、2種類以上を併用したりします。お薬には内服薬や注射薬があります。

閉塞性動脈硬化症の薬物療法は、下肢の症状改善だけではなく、脳梗塞や心筋梗塞といった命にかかわる病気の発症を予防することも目的に行われます。

【抗血小板薬】

血小板は出血した際に止血する役割を果たしますが、活発に働きすぎる場合、血栓((血の塊)ができたり、動脈硬化が進行したりします。これを抑えるのがこのお薬です。

【末梢血管拡張薬】

手や足などの血管を拡げ、末梢の血液の流れを改善します。

【抗凝固薬】

血栓ができたり、血栓が大きくなるのを防ぎます。

近年、新しい治療として、実験的治療:血管新生を促進するために、造血幹細胞移植が試みられています。
骨髄細胞、末梢幹細胞、CD34陽性細胞を特に純化させ局所に注射します。また血管新生を促すホルモンを産生させる遺伝子(HGF, VEGF)を筋肉注射して血管の誘導をはかる治験も行われています。
一部の治療は厚生労働省が規定する先進医療として認められており、特定の医療機関で保険診療との併用が認められているものもあります。
まず、歩くと足が痛くなる方は御相談ください。そのような方は禁煙も是非。


◆編集後記

インフルエンザ、やや下火に

今年の冬は昨年に比べ、寒さが厳しかったようです。
学級閉鎖などの情報はまだありますが、インフルエンザに罹患する方の数は少し減ってきており、終息に向かうのでは、と期待されています。
しかし、まだ寒い日が続きますので、ご用心を。
インフルエンザの予防接種も3 月31 日までしています。