ホームドクター通信
2010年6月 No.55

◆お知らせ


ISO9001

今回も書くのが遅れ気味で、これを書いているのは26日の土曜日です。

6月24日・25日の2日間、ISO9001の審査が行われ、無事認証が継続されました。
今回も事務部門・看護部門が頑張ってくれ、審査員からいい取り組みだから継続してくださいという評価であるgood point を5つもいただきました。

残念ならがひとつ不適合がありました。

当院では健診の際に体組成分析もできる体重計を使用しております。しかし、健診などで町の保健センターなどに提出する際の体重は検定付きの体重計で測った数値を記載しなければいけないそうです。当院の体重計は残念ながら検定付きではありませんでした。早速検定付きの体重計を用意します。

体組成分析付き体重計も引き続き使用しますので、どうぞ利用してください。

診療所の業務改善のために始めたISO9001ですが、職員の意識も高まり、審査員からも高い水準で改善の仕組みが構築されているとお褒めの言葉をいただきました。これからも取り組んでいきますので、お気づきの点がありましたら、お気軽にスタッフまで声をかけていただくか、御意見箱にコメントでもお寄せください。


糖尿病・ヘモグロビンA1c

糖尿病の診断基準にヘモグロビンA1cが正式に加えられて、本年7月1日より施行されることになりました。

ヘモグロビンA1cは過去1〜2カ月の血糖の平均を示す数値として、いまや糖尿の診療には欠かせない検査となっています。当院でも治療薬を服用されていたり、インスリンを使用されている方には月に一度は院内で測定して薬、インスリン量を決定するようにしています。

このヘモグロビンA1cですが、今後日本以外で使われている国際的な検査方法に変更されます。今の数値より約0.4%高くなります。これにより、現在5人に1人といわれている糖尿病予備軍が更に増えることが予想されます。

実は当院は一度この国際標準化された値を採用して糖尿病診療をしたことがありました。しかし、病院、検査会社がこの変更に追従してこないので、当院も現在は従来の数値に戻しています。今後糖尿病学会が十分周知した段階で一斉に国際標準化された数値に移行するそうです。混乱が予想されますが、注意深く学会の発表を待ちたいと思います。


お盆休み

8月16日(月)・17日(火)・18日(水)です。 ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。







◆アネトス通信

梅雨の季節となりました。

梅雨はお好きですか?雨の日に家の中で作業ができる押し花やポプリ作りは、
作品を見て楽しみ、香りを楽しむことができます。
みたかった映画を観たり、書きものをしたりすることができます。

雨の日ならではのファッション
(両手を使わずにさせる傘やオシャレなコート・長靴)
を楽しむこともできます。

なぜなら、いつもと違う時間の使い方ができるからです。
もし梅雨がなかったら、植物の成長が悪くなり、
食材の高騰につながりますし、
雨で心が癒されることがなくなってしまいます。
だから、梅雨は楽しいと思います。
なんて、ポジティブ思考で乗り切りましょう。






◆特集:大動脈瘤について


今年の2月に作家の立松和平さんが、3月に俳優の藤田まことさんが相次いで大動脈瘤で死亡されました。

このニュースのあと、大動脈瘤ってどんな病気ですか?とか私に大動脈瘤はありませんか?というご質問が多くなりました。
今回は簡単に大動脈瘤についてお話します。


瘤(りゅう)というのはコブのことです。大動脈は心臓から全身に血液を送る大血管のことです。



大動脈はまず心臓から頭部に向かってでると(上行)、

脳に行く大事な血管を分岐しながら弓状にカーブを描いて(弓部)、

胸部の左よりを下に向かって(下行)走行します。

横隔膜を貫いて腹部に入り、臍の下あたりで左右に分岐します。

この間に各臓器に送られる血管が枝分かれしています。

横隔膜の上の大動脈を胸部大動脈、

横隔膜の下の大動脈を腹部大動脈といいます。




大動脈瘤は大動脈のいろんな部分にできます。
胸部、腹部、両方にまたがれば胸腹部。
胸部の中でも上行、弓部、下行大動脈に分かれていて、
できる部位によって手術方法(補助手段)も変わってきます。



大動脈瘤の主な原因は動脈硬化、動脈の老化現象です。

動脈硬化によって硬くもろくなった動脈壁に高血圧が加わり、動脈壁がこぶ状に膨らんでいくとされています。また大動脈の血管壁は内膜・中膜・外膜の三層構造になっていますが、この一番内側の内膜が裂け、内膜と中膜の間を血液が流れ込んできてこぶ状にふくらんだ場合、解離性大動脈瘤といいます。急激に解離した場合とても痛いです。

こぶがあるだけの場合、症状はほとんどありません。大きくなった拍動性のこぶを自覚する人もいます。破裂、解離すると話は全く変わります。大動脈瘤が破裂したら血液が血管外に大量に漏れるため、血圧が一気に低下して全身に血液が回らなくなります。激しい場合は急死です。完全に破裂せず、少量ずつ血液が流れる・解離が起こると痛みはとても強烈です。心筋梗塞と症状が似ているためよく間違われることがあります。


こうならないように、破裂しそうな大動脈瘤を見極め、破裂前に治療をしておく必要があります。なかなか普通のレントゲン写真だけでは大動脈瘤を見つけることは困難です。CT、超音波、MRIなどの画像診断が必要です。大動脈瘤は動脈硬化が原因で起こるので、高血圧、糖尿病、動脈硬化(メタボの病気ですね)のある方は一度はこのような検査で確認をしておかれたらいいと思います。

一般に破裂しそうな大動脈瘤は胸部では6cmくらい、腹部では5cmくらいが大体の目安です。この大きさ以上の大動脈瘤が手術適応とされます。大きければ大きいほど破裂しやすい、というのは統計上わかっていますので。またそれより小さくても経過観察中に大きくなるスピードが速いようでしたら早めに手術にもっていきます。

それ以下の大動脈瘤が偶然見つかった場合、定期的な画像検査で経過をみます。経過観察中大事なことは高血圧が破裂の危険因子となりますので、確実に治療して血圧を下げておくことです。破裂した場合、緊急手術になります。破裂した大動脈瘤の手術は成績がきわめて不良といわれています。



解離の場合も緊急手術になることが多いですが、下行大動脈の場合は安静、血圧管理などの内科的治療が優先されることがあります。ただし、臓器への血流障害、出血した場合は緊急手術です。



手術の方法

コブを人工血管に置き換えるのが大動脈瘤の手術です。ポイントはその人工血管に交換する間、その大動脈の血流を遮断する必要があることです。その血流が遮断されている間、脳などの重要な臓器への血流を途絶させないような補助手段が用いられます。問題となるのは脳へ行く血管を分岐する弓部大動脈瘤で脳保護、また脊髄への血管の保護も重要になってきます。

体外循環(人工心肺)、低体温、臓器冷却などを組み合わせて保護します。どこを遮断するかによって補助手段は変わります。胸部大動脈瘤は場所によっては大変大きな長い手術となることもあります。腹部大動脈は一般的に血流遮断による障害はほとんど起こらないとされています。


最近ステントグラフト内挿術というカテーテル治療が注目されています。

大動脈の存在する部分にカテーテルという管を挿入。カテーテルの中をバネ付きの人工血管を挿入し、動脈瘤部分でこのバネ付き人工血管をカテーテルから押し出して留置します。この人工血管をステントグラフトといいます。胸腹部を切開する手術と比べて、大腿部を数センチ切開するだけなので、体にとってはとてもやさしい方法といえます。ただ、できる場所が限られるので、実際の治療の際には専門医と相談する必要があります。

作家の司馬遼太郎さん・映画解説者の淀川長治さんも大動脈瘤破裂で亡くなられています。
避けられる突然死は予防するのが一番。
まず、自分に大動脈瘤が無いか?気になる方はまた診察室でご相談ください。











◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

Appleから発売されたiPad使用しています。

電子書籍の可能性を感じるデバイスで本、雑誌、新聞のありかたも変化することが確信されます。

医療の方面でも、カルテのあり方なども変わってくるだろうと考えます。

ネット上のカルテは時代の流れでしょう(現在当院ではカルテをネットにはつないでいませんが)。

そのネット上のカルテを作成することにより、病院・診療所の連携がよりスムーズになることは容易に予想されます。

患者さんのメリットになることですから急速にこの流れは進むのでは…。

そんなことを考えさせてくれるiPadです。快適です。