◆お知らせ
寒い日が続きます。この原稿執筆時(2月後半)、バンクーバー五輪真っ盛りです。
選手たちはいろいろな話題を提供してくれます。見物している私たちは気楽でいいけれど、実際事故と隣り合わせといった競技もありますね。練習で亡くなった選手もいることですし。
私が興味深く見ていたのは、男子スーパー大回転。
オリンピック前のNHKスペシャル:滑降時速160km極限の恐怖に挑むという番組をたまたまジムのランニングマシンの上で見ていました。そこでノルウェーのスビンダル選手のオリンピックまでの道のりが紹介されていました。
最高時速160kmで急斜面を滑降。転倒すれば死…という恐怖と闘わなくてはならない競技です。そのスビンダル、一度転倒で大事故を起こしながら(映像も迫力がありました)、復活を遂げました。
並大抵の苦労ではないでしょうし、恐怖だって半端ではないはず。
彼は事故直後からそのコースをすべることをイメージし、実際、復活の場所としてその事故をおこしたコースを選択し、同じコースを早いタイムで滑りきることで復活しました。恐るべき精神力ですね。
スビンダルの脳を科学的に分析していました。MRIを撮りながらその事故をおこした場所のビデオをみると、扁桃体(恐怖を感じるところ)が活発に動き出しています。やはり脳は恐怖を覚えているのですね。しかし、逃げずに恐怖と向き合っていき、そのときの自分を超える、限界だと思う、安全装置を外すことで乗り越えていく。やはり最後の決め手は心の強さです。更に、滑走中の瞬きが1分間に1回とか。
そのスビンダル選手が男子スーパー大回転で金メダルを獲得。番組の内容を思い出して心の中で拍手していました。まさに筋書きのないドラマであり、アスリートの生き様を強烈に見せてくれました。
当院の患者満足の試みが書籍で取り上げられました。
志澤秀一(著)患者さんが満足できる病院経営―開業医のためのCS処方箋(学研)に当院が紹介されています。待合いに書籍を置いていますので、よければご覧下さい。
その患者さん満足のための活動のひとつ、アンケート調査を現在実施中です。
期間は2月末まで。すみませんが、ご協力ください。
3月に解析して、3月末のマネジメントレビューで取り上げ、改善を試みます。
◆アネトス通信
今回はアネトスのスタッフにリハビリとして実施していることを書いてもらいました。
リハビリに遊びの要素を取り入れたもので、業界では『アソビリテーション』といって言葉をもじって使用しています。
突然ボールを投げられると自然に反応してボールを受け取る、
この動作だけでも十分な手の運動になります。
施設で利用者はしぶしぶボールを取っていましたが、
次第に力強くボールを投げ返し、最後には振りかぶって、
声を出してボールを投げつけます。
リハビリに消極的な利用者には突然ボールを投げることで、
させられたリハビリでなく積極的に参加した有効なリハビリになります。
(介護福祉士の職員より)
◆特集:便秘について
便秘(べんぴ)とは、便の排泄が困難になっている状態のことです。
日本内科学会によると便秘の定義は「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」となっています。つまり、毎日排便が無くても便秘とは言わないのです。
分類
便秘はその原因から2種類に分類されます。
a.腸に障害がおきている場合の器質性便秘
b.腸管の機能低下、または機能異常による場合の機能性便秘
aの器質性便秘の代表は大腸癌ですね。
bの機能性便秘がいくつかの病態に分かれるのですが、その細分類が非常にわかりにくく、弛緩性便秘、けいれん性便秘、直腸性便秘という分け方。大腸便通過時間正常型、遅延型、排便障害という分け方。更に食事性便秘、薬剤性便秘が独立している分類法。結腸性便秘、直腸性便秘、など。理解はできるのですが、治療法に直結したピンとくる分類がないので、今回はパスします。また私の納得できるいい分類があったらご紹介することにして、宿題。
とにかく大腸に目に見える疾患の無く機能が落ちている状態と考えて下さい。
診察・検査など
さて、便秘の人の対応です。
実際に便秘なのか?便の性状、回数、量など排便日誌を書いて貰うのが一番わかりやすいようです。これに食事(とくに繊維質)とか水分とか運動などを書き加えていくと更にわかりやすいです。ちょっと面倒かもしれませんが。最近どの分野も日誌が流行りですね。
高血圧、糖尿、排尿障害、睡眠障害、頭痛、便秘、癌性疼痛などいろんな日誌がでています。
病態を医師に伝えるにはもっとも適当のような気はします。
診察室で便秘を訴えられたら、排便回数、便の性状、膨満感・痛みの有無、排便異常(残便感、便意切迫など)、粘液・血液の排出の有無、使用している薬などを聞いていきます。
その上で診察。アメリカの教科書には、便秘を訴える患者すべて直腸診をせよ、更にできるだけ大腸ファイバーを行えと書かれています。これは肛門科を兼務する私にとっても少し一般診察では気が重い行為です。
ちょっと下剤がほしかっただけなのに…と言われそうで。検査も便潜血検査、血液検査くらいでお茶を濁すことが多いです。
しかし、出血・粘液のある患者さんには直腸診察、大腸ファイバーをお勧めするようにはしています。大腸・肛門に何も疾患が無いことを確認するのはとても重要なことです。大腸癌を見逃してしまってはいけませんので。
更に、糖尿、甲状腺機能低下症などの全身疾患がないか、服用している薬の副作用がでていないかをチェックします。
便秘の生活習慣改善
そして腸に疾患がないと仮定して、程度によりますが、まず生活習慣の改善です。
1.繊維質(野菜、果物、繊維入りビスケットなど)の摂取
2.規則正しい食事(三食、米飯がよい)
3.水分を十分にとること
4.適度な運動
5.朝、食後便意がなくてもトイレに座る習慣をつける。でてもでなくても5分以内
6.便意を我慢しない(状況が許せばですが)
薬物治療
そんなことはもうしてるよ、と言う場合は薬になります。薬物は一般的に塩類下剤(浸透圧を利用して腸内の水分を増やす)のマグネシウム製剤などをまず使い、更に大腸刺激性の下剤を使います。
私は調節が楽なのでラキソベロンなどの液体薬を使います。
センナ、プルゼニド、ヨーデルなどのアントラキノン系の薬剤は短期使用ならいいですが、すぐに耐性ができ、効きが悪くなるのと、腸が黒くなるので、長期連用は好ましくないと教えられてきました。
なので、私の場合はまずマグネシウムとラキソベロンで調節、でした。
しかし、この併用でも効かない人がおられること、腎機能の悪くなった人にマグネシウム製剤を出し続けると高マグネシウム血症となり、不整脈を起こすことがあること(ちなみにマグネシウム濃度は当院で血液検査をしていただくときに一緒に測るようにしています)から現在は漢方薬に目が向いています。
麻子仁丸、大黄甘草湯、調胃承気湯、潤腸湯、桃核承気湯、大柴胡湯、防風通聖散、乙字湯など証(漢方でのみたて・体力、体質症状より判断)をみながら使い分けています。
結構効くものだな、というのが最近の印象です。もちろん漢方にも副作用がないわけではないので、気をつけて処方しています。
以下、代表的な漢方薬の対象者について
麻子仁丸:体力中等度ないしやや低下・高齢者、術後の虚弱者にもいい
大黄甘草湯:体力中等度・便秘以外に自覚症状なし
調胃承気湯:体力中等度・腹壁は厚く緊張感がよく、ときに膨満感を伴う
潤腸湯:体力中等度あるいはやや低下、高齢者、皮膚がカサカサして、硬便が触知される
桂枝加芍薬大黄湯:比較的体力の低下した人で、腹部膨満、腹痛、停滞感がある
桃核承気湯:体力が充実・女性のお血に対する処方
大柴胡湯:体格体力充実、苦満感を伴う場合
防風通聖散:体力充実、卒中体質、肥満
乙字湯:体力中等度の痔疾患のある場合
などを使い分けます。他にもたくさんあります。
直腸まで便が降りてきているのに出ない、と言う場合は浣腸、摘便です。
逆に直腸に便がなければ浣腸はあまり意味はありません。浣腸ですっと出てくれればいいですが、時に格闘になります。
当院はトイレがひとつしかなく、このタイプの便秘患者にトイレを占拠されるという事態が今まで何回かありました。
最近は裏のアネトスに広い障害者用トイレと熟練したナースがいるので、そちらにお任せして大変いい結果を得ています。
以上、便秘の対応について簡単に書きました。便秘はその症状、薬の効き方など個人差がありますので、相談しながら快適な毎日を過ごせるよう対応したいと考えています。
◆かかりつけ患者さん募集中
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
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