ホームドクター通信
2009年9月 No.46

◆お知らせ

すっかり秋めいてまいりました。

8月末に政権が自民党から民主党に交代し、医療福祉の分野はどうなるのだろう、と見守っているところです。
後期高齢者は廃止の方向だそうですが。これからの政策がいい方向に向くように期待したいところです。


新型インフルエンザが猛威をふるっています。免疫のないウィルスなので、広まるのも早いのでしょう。
病原性は弱いと報告されていましたが、15名以上の死亡例が国内ででています。
インフルエンザに感染した場合、発症日の翌日から7日の出席停止扱いになります。

また大阪府教育委員会の指導では、今のところ同居家族がインフルエンザに感染した場合、濃厚接触者であるお子様は発症の有無にかかわらず感染の拡大防止のため原則として7日間の自宅待機の協力を要請されているとのことです。

まずは自己防衛・手洗いうがいを頻繁に。外出時のマスク、咳エチケットの徹底を。

インフルエンザワクチンについてはまだ情報が錯綜しており、確定しておりません。
数が十分量無いため接種順番もあるようです。
新型のワクチンと従来のワクチンの同時接種は可能なのか、診療所に必要量供給されるのか、などもわかりません。
なので、まだ予約も受け付けておりません。わかり次第お伝えします。



糖尿病の方へのお知らせです。受診される毎にヘモグロビンA1c検査を院内で行っています。

このヘモグロビンA1cの検査は学会の決定で検査の基準、標準物質が変わり、以前よりも高く数値がでるようになりました。当院は院内検査でいち早くこの新基準を取り入れました。

しかし、検査会社、病院検査は従来の検査基準で続いているため、検査結果の解離がおこっています。
このため、患者さんからおかしい、という声もでることになったので、従来の数値に戻しました。検査会社、病院が新基準を採用してから当院も変更することにします。

ヘモグロビンA1cの値が急に高くなり驚かれた方も多かったようでご迷惑をおかけしました。しかし、時期は未定ですが将来的には高くなった数値を採用することになりますので、引き続き治療は続けてください。


インフルエンザの更なる拡大も懸念されています。寒くなってきますので、体調管理には十分ご注意ください。




◆アネトス通信


寝たきりの状態になると褥創ができたと聞いたことはありませんか?

褥創とは、身体の骨突出部で皮膚や皮下の組織が自分の身体の重さで圧迫され局所の血流が遮断され、その部分の組織が壊死に陥り、皮膚潰瘍を生じたものです。進行すると骨組織が露出し、治りにくいのが特徴で『床ずれ』とも言われ、長期間臥床を強いられる脳血管障害や脊髄系の障害による麻痺のある方、全身状態の悪い方などによく見られる合併症です。

アネトスを利用している数名の方が褥創の処置を受けておられます。

在宅療養ではラップ療法が推奨されており、医院のホームページでも紹介しています。

ラップ療法とは、家庭の台所にあるにラップを用いて、原因である重力にたいする重さの圧迫を避け、湿潤環境で創の治癒をはかる方法です。最近では台所の三角コーナーで使う穴あきラップを使用しています。

メリットは、家にある手軽な材料と管理が簡便なことです。

*なんといっても大切なことは、褥創を作らないことです!褥創は予防が出来るのです。











◆特集:しびれについて


手足がしびれるという症状は外来でお話を聞いているとよく遭遇します。
体には神経が張り巡らされており、神経のどこかが障害されると異常な刺激が脳に伝わり、しびれという自覚症状となって現れます。
しびれは神経が直接圧迫されてもおこりますし、何らかの原因で血流が悪くなりその先に酸素や栄養が十分に送れなくなった時もその部位の神経がしびれているという信号を脳に発します。しびれているという感覚は人によって違います。


大別すると以下の3つに分類されます。

1.異常感覚 : 正座をしたあとのようなジンジンした感覚。ピリピリ、ズキズキと表現される方もおられます。

2.感覚低下 : 麻酔をされている感覚だったり、自分の手足でないような感じ、熱さ・冷たさ・痛みを感じないなど
           感覚が鈍くなった状態。

3.運動麻痺 : 手足が動かしにくかったり、力が入りにくい状態をしびれていると表現される方もおられます。


上記のしびれが1つの場合もありますし、重なり合って出現する場合もあります。

御自分のしびれがどのパターンなのか伝えていただけると判断に役立ちます。
また、問診ではどの部位がしびれているのか、急に起こったのかずっと起こっているのか、いつ起こるのか、持続時間、運動すると悪くなるか、随伴症状があるか、などを確認します。

心配の無いしびれもあります。正座をしたあとに足がしびれた、肘をぶつけたら腕がしびれたという一時的に起こり、すぐに軽快するしびれは心配ありません。


病因からみたしびれの分類ですが、神経の障害、血管の障害、内科的な全身疾患に分けられます。

以下、代表的な疾患について説明します。

A:神経の障害

1.脳卒中:脳の血管がつまったり、脳の血管が破れて出血を起こす病気の総称です。

 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があります。脳は部位によって支配する体の部位が決まっています。そのため、脳卒中がおこってしびれが現れた場合、しびれている部位や範囲から脳が障害されている部位や障害の程度を推測できます。脳卒中では突然しびれが起こるのが特徴です。しびれの他、麻痺、言語障害も現れることがあります。脳卒中の場合、早期に治療を受ければ後遺症が軽減できる可能性が高まります。中でも脳梗塞は3時間以内であれば血管を閉塞している血栓を溶かすt-PAという薬が使え、後遺症の現れるリスクを減らすことができます。

急にしびれが起こった場合、特に手足が動きにくい、喋りにくいなどの症状が随伴する場合、早めに医療機関を受診するようにしてください。一過性脳虚血性発作の場合、しびれなどの症状が一旦治まることもありますが、疑われるときは脳の検査をお勧めしています。



2.頚椎症・腰椎症・ヘルニアによるしびれ

 背骨は椎骨という骨が積み重なってできており、首のまわりを頸椎、腰のまわりを腰椎といいます。

椎骨の間にある椎間板という軟骨がつぶれたり、亀裂がはいると髄核というゼリー状の物質が脱出して神経を圧迫することがあります。これが椎間板ヘルニアです。

また加齢などで椎骨が変形し神経を圧迫すると長引くしびれ、痛みが起こります。変形性脊椎症です。
頸椎に異常がある場合は首から片側の腕にかけてしびれます。
腰椎に異常がある場合は片側の腰から足、特に太ももの後側から足先にかけてしびれが生じやすくなります。



3.手根管症候群

手首の骨と靱帯に囲まれた空間を手根管といい、正中神経や腱が通っています。
手根管症候群とはむくみなどにより手根管が狭くなり、神経が圧迫されてしびれなどが起こる病気です。

手首をよく使う仕事や家事を行う女性に多く発症します。手首から指先・親指から薬指の半分までの正中神経の支配領域にしびれが起こります。
この場合はまず手をあまり使わずできるだけ安静に。サポーターが有効なこともあります。長く続く場合や筋肉萎縮が起こる場合靱帯を切開する手術を行うこともあります。




B:血管の障害によるしびれ

閉塞性動脈硬化症:血流が悪くなってしびれが起こる病気です。

主に足の血管が動脈硬化のために狭くなり、血流が悪くなります。片側の足がしびれることが多いですが、両足のこともあります。しびれは長く続き歩くと強くなります。

間欠性跛行といって長時間歩き続けると足のしびれや痛みで歩け無くなり、しばらく休むと症状がよくなり、またあるけるようになるという症状が現れることがあります。当院でもしている四肢の脈圧、脈波を検査することで診断はできます。
血管の詰まり具合によって血管を広げる処置をしたり、手術をする場合もあります。




C:全身疾患によるしびれ

糖尿病が進行しておこる神経障害によるしびれがあります。糖尿病の場合は手足の末端からしびれが始まることが多いです。
また、ギラン・バレーのような免疫異常による末梢神経炎、神経そのものの疾患によるしびれもあります。



以上のようにしびれといってもいろいろな原因があります。
脳、脊椎の検査、専門医による診断が必要な場合も多いです。
その場合は適切な病院、専門医を紹介しますので、症状がある場合はご相談ください。
















◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

今月も遅くなってしまいました。

もうすぐ10月になってしまいます。

新型インフルエンザの流行が心配です。

予防接種についても決まり次第お知らせします。

まずは手洗い、うがい、咳エチケットを心がけましょう。

来月号はもう少し早く、頑張ります。