ホームドクター通信
2009年4月 No.41

◆お知らせ

4月も中旬を過ぎ、暑いと感じる日も多くなってきました。5月の連休も近づいてきています。
今年は桜の咲いている期間が長かったようで、当院療養通所介護アネトスを利用されている方にも何回かお花見を楽しみいただけました。

1月中アンケートにご協力いただき有り難うございました。まだ院内掲示は出来ていませんが、解析しました。
概ね皆様当院に対していい評価をしてくれているのでは、というコンサルタントのご意見でした。
励みにして、更に皆様に納得いただけるいい医療、院内でのサービス接遇を提供していきたいと思っています。

やはり一番評価の低い待ち時間についてですが、番号札の導入と今何番の診察をお知らせすることにより、大分改善されているという印象を持っています。
予約制を導入しているため、予約なしの方についてはどうしても待ち時間が発生するようでご迷惑をおかけしています。しかし、待ち時間を理由に肝心の診察・説明を省略・短縮してしまうのも患者さんに失礼なような気がしますので、とりあえず今のままの診療を続けます。

医師はわかりやすく説明しているつもりでも、専門用語が一般の方にはわかりにくい、という新聞記事をみました。気をつけているつもりなのですが、私が診療手帳の本日の診察説明のなかでもよく使う、CRP、炎症反応はわかりにくい専門用語に入っていました。言い換えが必要のようですが、すぐに答えは見つかりません。わかりやすい言葉を探しておきます。
また院内報で医療特集にわかりにくい専門用語解説などもいれようかと思っています。


特定健診
健診は3月末で一旦終了しました。同じ内容の健診が6月からスタートする予定で、4月・5月は健診がありません。


5月30日土曜日、院長研究会出席のため、11時半で診療を終了させていただきます。また、6月24日水曜日、ISO9001の継続審査のため、予約を制限させていただきます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。




◆アネトス通信

時折、汗ばむ季節となりました。

施設では、嚥下訓練をされている方もいらっしゃいます。今回は嚥下リハビリについてお話をさせていただきます。


★摂食・嚥下障害とは?

摂食とは食べ物を取り入れることで、不十分だと体の活動に不調をきたします。
嚥下とは飲み込みです。嚥下機能だけを見るだけではいけません。ですから、摂食・嚥下障害は食べること全体の障害です。

★摂食・嚥下のリハビリテーションの目的

利用者
 @脳への刺激になる。
 A目や鼻、口、手、呼吸などの協調運動の改善
 B体力や気力のパワーアップ
 C日常の生活行為の拡大と充実
 Dコミュニケーションの拡充
 E食べる楽しみ、精神活動に働きかけ満足感などの実質的なQOLの向上

★摂食・嚥下障害の働きかけ

 1.どうして食べれないか?
     気分やストレス、脳の障害、活動の低下、低栄養や脱水、長期に食べていないことの食欲低下や意欲の低下、
     胃腸障害、排泄障害。
 2.先行期→準備期→口腔期→咽頭期→食道期に分ける。
 3.フードテスト
     医療機関でする検査VF(ビデオ嚥下造影検査)やVE(ビデオ内視鏡検査)があります。
 4.医療機関(主治医や歯科医)や訪問看護、家族と連絡を取り合いながらケアをしています。


アネトスでは、食べることからも積極的に精神的活動に働きかけます。
利用者とともに食材を調達(買い物)調理し、人間が本来持ち備えている主体性、自主性、自由などを基調として対象者の良好化機能や強みに働きかけていくことをしています。







◆特集:肺結核について


     決して過去の病気ではない肺結核     2週間以上続く咳・発熱は要注意

若手の人気女性お笑いタレント(29歳)の肺結核の発症についての話題が大きく報じられました。
報道によると、その女性タレントは2008年12月ごろからせきや微熱などの症状がみられたものの、そのまま仕事を続け、ようやく09年4月3日になってから肺結核を発症していたことが判明したとのことです。このニュースを聞き、自分は大丈夫だろうかと心配している方も多いのではないでしょうか。


結核という病名を聞いて、どんなことを思い浮かべられますか?

・かつては不治の病であり、幾多の若い命を奪った。
・長く死因のトップで、国民病とも呼ばれた。
・人から人へと感染する怖い病気…。
・発症したらサナトリウムに隔離される…。
・村八分にされる。
・新撰組の沖田総司、たけくらべの樋口一葉、歌人の石川啄木、荒城の月などを作った滝廉太郎など、肺結核(当時は「ろうがい」 と呼ばれた)が原因で亡くなった。

など、でしょうか。

戦後、栄養状態がよくなり、薬も登場して死者は激減、結核が話題に上ることも少なくなりました。
でも、結核というのは決して過去の病気ではありません。昔と異なり、治療法は確立しています。
体力を回復させるといった対症療法ではなく、結核薬を用いた治療が行われ、完治する病気へと変わったと言えます。
しかし、治療には時間がかかりますし、約1割の方は亡くなります。


結核新登録患者数の推移を見ると、年々減少しているものの、直近の平成19(2008年)年度でも25311人もが結核患者として新規登録されています。

年代別の患者比率では、80歳以上が一番多く25.5%。次いで70歳代が22.4%、60歳代が14.6%と、年齢が高くなるほど発症者が多くなっています。これは若いころに感染し、生き残っていた菌が、免疫の低下によって活動し始めるのが原因のようです。社会の高齢化は患者数を押し上げ、栄養状態が悪く、医療からも遠ざかりがちな貧困層の拡大も患者増につながりかねません。


もう一つ気になる部分は、今回まさに問題となっている20歳代、30歳代の結核患者比率です。

10歳代では1.8%と少ない数値を示しているにも関わらず、20歳代になると7.6%へと急上昇。そして、30歳代では9.1%と一際高くなっています。20〜30歳代の患者比率が高いという傾向はこの数年変わらず高い比率を保っています。
幼少期にBCGは受けているものの、若い人には免疫がなく、閉鎖空間などで感染しやすいことを示しています。


さらに都道府県別に算出された結核の罹患(りかん)率。罹患率は、人口10万人のうち、何人が結核になったかを示す数値のことです。数値が高いほど、結核の発症者が高いことを示しています。

罹患率が高い都道府県を順に挙げると、大阪府の33.7、東京都の25.9、長崎県の24.6、和歌山県の23.5。対する罹患率の低い都道府県は、長野県(10.3)、宮城県(11.5)。
大阪がワースト1で最低の長野の3倍にもなっており、結核菌の暴露にあう危険性が大阪では高いことが示唆されます。


結核の感染経路とされるのは、結核患者のせきなどによって飛び散る飛まつ粒子です。
セキやくしゃみをすると、1m 近くも飛散します。
つまり結核患者の飛まつが運悪く口などから入り込み、
身体の免疫で退治できないと結核に感染してしまいます。

また結核の感染を防ぐ方法はなかなか難しく、
結核を発症した本人すら「風邪が長引いているだけ」と
思い込んでいる場合が多いからです。


一般的な結核の症状は、コンコンという咳が続いたり、痰が出やすくなったり、微熱が出たりといった程度です。
症状の程度には個人差はあるものの、たいていの場合、この程度の症状では仕事を休むほどの症状ではありません。このため周囲の人も、軽い風邪を引いているだけという印象を持つ程度です。

では、感染から発症へと転じるきっかけは何でしょうか。

結核菌の活動を抑え込む免疫系が弱った瞬間ということです。つまり不規則な生活 が続いたり、大きなストレスがたまったりして、病気への抵抗力が低くなると発病する危険性が高くなります。
体調管理が悪いと発症しやすくなるので、身体に負担がかかる生活は極力避けてもらいたいものです。

治療には、薬を半年間、毎日欠かさず飲む必要があります。
結核の症状は薬を飲み始めるとすぐによくなるので、途中で薬をやめてしまう人がいますが、これは危険です。
薬の飲み方が中途半端だと、薬が効かない耐性菌ができてしまうためです。
すでに、複数の薬が効かない多剤耐性菌が出現してきています。

今回のタレントの場合、自覚症状がみられてから結核と診断されるまでに約4カ月かかっています。実はこれはそれほど珍しいことではありません。

結核は過去の病気……。

そんな意識が患者自身だけでなく、医師の側にもあるのかもしれません。結核は診断しにくい病気になっている可能性があります。
我々診療する側も常に結核のことを意識しておく必要があります。

2週間以上咳・熱が続くようなら要注意、自己判断せず検査を受けるべき、ということを強調しておきます。







◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

4月号は大幅に遅れてしまいました。

もうすぐ5月になってしまいますが、毎月発行で頑張っています。

今月号は何かと話題の肺結核を特集してみました。

長く微熱や咳が続く方は一度ご相談ください。