2024年 1月 No.218

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

新しい年になりました。
本年もよろしくお願いします。
昨年末、私はインフルエンザに罹患してしまい多くの方に迷惑をかけ申し訳ございませんでした。
今は元気で正月も普通に迎えることができました。
新年早々、大変なニュースが2つ飛び込んできました。
能登半島地震と日本航空機と海上自衛隊の航空機衝突事故です。
1月1日16時10分に石川県能登半島で震度7の地震が観測されました。
この地震により道路が分断され、孤立集落ができ、電気、水道などのライフラインが通じない地域ができました。
また、多くの家屋が倒壊し、下敷きになった方もおられました。懸命な救助活動により救出された方々も多くおられますが、現在のところ232人の死者が確認されています。
1月22日に書いているのですが、能登半島地震から3週間が経過し、孤立集落がなくなったとのことです。
中学校も再開され、輪島市からも水道が出たと言うニュースが入っていました。

日本航空と海上自衛隊航空機の衝突ですが、1月2日17時47分ごろに羽田空港で起き、海上保安庁の乗組員が乗員が5人亡くなる大惨事になりました。
乗客は大丈夫だったんだろうかとずっとテレビ見てました。幸いなことに日本航空機の乗客乗員379人の全員が脱出できたことは安堵させられました。
乗務員の適切な判断指示があったものと感心しました。そんなこんなで大変な令和6年の幕開けとなってしまい、正月のテレビ特番はほぼ延期になり、正月ムードと言う雰囲気ではなくなってしまいました。能登半島、一刻も早い復興をお祈りいたします。

アルツハイマー病の新薬レカネマブ東京・大阪で治療開始

東京都健康長寿医療センターは令和5年12月25日、アルツハイマー病の新薬レカネマブ(商品名レケンビ)の治療を、都内の50歳代女性に行ったと発表しました。
レカネマブは日本の製薬企業エーザイなどが開発。
アルツハイマー病患者の脳内に蓄積する異常なたんぱく質アミロイドβベータを取り除くことで、認知症の進行を遅らせる効果が初めて認められた薬です。
ただし、低下した認知機能を戻す効果はなく、対象は早期の患者に限られます。
都内の女性は、令和4年秋に早期のアルツハイマー病と診断され、脳内のアミロイドβの蓄積も検査で確認されています。
12月25日、1時間余りかけて点滴を受けました。
今後も2週間ごとに通院、点滴します。
定期的に脳MRI検査も受け、脳内に微小出血などの副作用が起きていないか確認する予定です。
大阪公立大病院でも12月21日に50歳代男性にレカネマブ治療が開始されました。
若年性認知症外来に通っていた方で、同病院の脳神経内科によると、事前に、画像診断に当たる放射線科や看護部などと副作用対策の検討会を開くなどし、投与に向けた準備を進めてきました。
東京、大阪とも今年に数人に投与する予定があるそうです。
まだ、治療薬の効果、副作用情報が出ていませんが、是非有効性を期待したいです。

つわりの原因

つわりは妊娠中の母親が胎盤を通じて胎児から受けとる成長分化因子15:GDF15 (GrowthDifferentiationFactor15) というホルモンに関連しているという研究論文が、英科学誌『Nature』に掲載されました。
GDF15は通常時から人の体内に存在し、加齢、炎症、低酸素、紫外線、喫煙、組織障害、発がん物質などのストレス、メトホルミンという糖尿病の薬などで高くなることが分かっています。
GDF15タンパクは、抗炎症、心筋保護、神経保護作用を有します。
また、食欲・代謝を調節する働きがあります。
つわりは妊娠初期に多く70%の女性が経験するとされます。
軽くすむ女性もいる一方で、飲食ができず、体重減少や脱水などで入院しなければならないほど重症化する人も中にはいます。
研究チームが妊婦の遺伝子や血中成分を解析したところ、妊娠中に吐き気や嘔吐を経験した人は、そうでない人に比べて、GDF15の値が高値でした。
このGDF15の大部分は胎児に由来していたとのことです。
また、妊娠前のGDF15の値が低い女性はつわりが重症化するリスクが高かった一方で、遺伝性血液疾患・βサラセミアなどによりGDF15が慢性的に高い女性は、つわりをほとんど経験していませんでした。
胎児への影響がないという必要はありますが、GDF15を標的にしたつわりの治療の可能性が出てきました。

間質性肺炎

「舟唄」「雨の慕情」などのヒット曲で知られ、艶っぽくハスキーな歌声で「演歌の女王」と呼ばれた歌手の八代亜紀さんが令和5年12月30日、急速進行性間質性肺炎のため死去されました。
ブルースやジャズなど幅広いジャンルを歌いこなし、華やかなルックスと気さくな人柄でCMやバラエティー番組でも親しまれました。
トラック野郎の女神とも呼ばれていましたね。
全国の女子刑務所や少年院への慰問もライフワークとしていたとのことです。
ご冥福をお祈りいたします。

今回は間質性肺炎を取り上げます。
間質性肺炎で、歌手の美空ひばりさん、上岡龍太郎さんも亡くなられています。

どのような病気か

間質性肺炎は難病に指定されています。
私たちが吸った空気は、気道(気管・気管支など)を通過し、最終的に肺の奥にある肺胞と呼ばれる風船のような部屋に運ばれます。
この肺胞には薄い壁があり(肺胞壁、あるいは間質)、その中に毛細血管が流れています。
そこで、吸気中の酸素が血液に取り込まれ、同時に血液中の二酸化炭素が肺胞の中に排出されます。
間質性肺炎は、さまざまな原因からこの肺胞壁に炎症や損傷がおこり、肺胞壁が厚く硬くなり(線維化)、ガス交換がうまくできなくなる病気です。

病型がいくつか分類されていますが、専門的すぎるので、ここでは省略します。
また、線維化が進んで肺が硬く縮むと、気道が代償性に拡張して蜂巣肺といわれる蜂の巣に似た穴(のう胞)だらけの肺になってしまいます。
肺線維症と呼ばれる状態です。


 

最近の国のデータベースと用いた研究では特発性間質性肺炎は10万人あたり100人程度といわれており、経年的な患者数の増加が示されています。

主な症状としては、痰を伴わない咳(乾性咳嗽)と労作時にみられる呼吸困難があります(労作時呼吸困難)。
労作時呼吸困難は、安静時には問題なくとも、坂道や階段、平地歩行中や入浴・排便などの日常生活の動作の中で呼吸困難を感じることです。
病気が進行してくると、安静時にも呼吸困難を感じるようになります。
また、経過中、急激に呼吸困難が悪化することがあります。
これは「特発性間質性肺炎の急性増悪」と呼ばれています。

間質性肺炎の原因には、関節リウマチや皮膚筋炎などの膠原病(自己免疫疾患)、職業上や生活上での粉塵(ほこり)や、カビやトリなどの抗原の慢性的な吸入(じん肺や慢性過敏性肺炎)、病院で処方される薬剤・漢方薬・サプリメントなどの健康食品(薬剤性肺炎)特殊な感染症など様々あることが知られています。
八代亜紀さんの場合は膠原病が原因であったと考えられます。
皮膚筋炎は指定難病の一つですが、その中でも八代亜紀さんが罹患した抗MDA5抗体陽性の症例は、急速に進行する間質性肺炎を高率に合併し、6ヶ月以内の致死率が最も高いことが知られています。 現在、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎に伴う間質性肺炎には、早期に複数の薬剤を併用した強力な免疫抑制治療を施すことで救命を図りますが、感染症など多くの副作用や後遺症を乗り越えなければならない上に、救命率も未だ十分とは言えません。
いろいろ詳しく調べても原因がわからない間質性肺炎を「特発性間質性肺炎」といいます。
頻度からすると「特発性肺線維症(IPF)」が最も多いとされています。
特発性では現時点では原因がわからないという意味です。
その診断は、既往歴・職業歴・家族歴・喫煙歴などを含む詳細な問診、胸部診察での肺雑音、肺機能検査、血液検査からなる臨床情報、CT検査の画像情報、最終的には気管支鏡での肺生検からえられる病理組織情報から総合的に行います。

危険因子

特発性間質性肺炎のうち治療が難しい特発性肺線維症は、50才以上の男性に多く、患者さんのほとんどが喫煙者です。
喫煙は特発性肺線維症の「危険因子」であると考えられています。
やはり喫煙者に多い「肺気腫」という、肺が壊れて拡がっていく病変と、肺線維症が合併した「気腫合併肺線維症」という病態が、喫煙歴があって息切れを自覚する患者さんに認められて問題になっています。
八代亜紀さんはたばこを吸ってたイメージがありましたが、吸われてなかったそうです。

治療

特発性肺線維症の場合、抗線維化薬(ピルフェニドン・商品名ピレスパ、ニンテダニブ・商品名オフェブ)が使用されます。
進行抑制が期待できます。
当院では病院呼吸器内科に処方導入をお願いしています。
導入後は当院で処方可能です。
また、抗線維化薬は進行抑制だけでなく急性増悪の抑制効果も示されており、特発性肺線維症の生存期間を延長することが期待されています。

ごく軽症で息切れなどの自覚症状がない場合は、喫煙者であればすぐ禁煙し、病態進行の程度を数ヶ月観察することもあります。

一方、特発性肺線維症以外の間質性肺炎では、ステロイド薬などの炎症を抑える薬がまず使われます。
さらに、病気が進行し、酸素を十分取り込めないようになった場合には、在宅酸素療法といって日常生活で酸素を吸入する治療法が実施します。
また、必要であれば呼吸リハビリテーションも行われます。

肺病変の影響で心臓の負担が増加している場合(肺高血圧、右心不全など)にはその治療もあわせて行います。
年齢が比較的若いにも関わらず、呼吸不全に至るような患者では、一定の厳しい基準を満たすことを確認した上で、肺移植の適応も検討されます。

特発性間質性肺炎・診断と治療の手引き2022、にはかかりつけ医のための診療・病診連携のアウトラインという項目が設けられています。
それによると、かかりつけ医における間質性肺炎の重要なポイントは聴診所見で、両側肺野で聴取する捻髪音(finecracle)であるとの記載があります。http://www.jrs.or.jp/haion
日本呼吸器学会では、日常診療での聴診(捻髪音)の重要性を啓発する目的で、資料を作成しました。
二次元バーコードから捻髪音を聞くことが可能です。

この図は呼吸器科専門医からかかりつけ医に間質性肺炎を見逃さないようにというメッセージを込めた資料です。

【疾患啓発資材】間質性肺炎・肺線維症?日常診療で、背中の呼吸音を聴いてください

捻髪音、私らが学生のころはベルクロラ音と習っていました。
ラ音はまあ肺雑音のこと。
ベルクロはマジックテープともよばれており、面ファスナーのことです。

マジックテープ・ベルクロをはがすときに起きるバリバリ音、これが捻髪音に近いです。
捻髪音に加えてばち指、爪の付け根が肥大し、爪の先が手の平側に曲がって大きくなる状態で、手の指が太鼓のばちのように変形することがあれば、間質性肺炎の可能性はさらに高くなります。

症状・所見があれば、胸部レントゲンを撮ります。
主に下肺野で網目状の印影、輪状影、すりガラス影、浸潤影などが認められることがあります。

認められたら、胸部CT検査をします。
また、血液検査ではKL-6を測定します。

間質性肺炎と診断された場合は専門医への紹介が必須と書かれてありました。
無症状であっても紹介が望ましいようです。
その上で無症状、軽症であればかかりつけ医での経過観察を。
治療が必要な例であれば、専門医での経過観察が勧められています。

専門医でのフォローであっても、感冒症状(コロナ・インフルの検査は必要ですが)、予防接種などはかかりつけ医の受診が勧められています。
当院では、間質性肺炎の方に病院との連携を取った診療をしています。
気になる方はご相談ください。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★診療受付時間について★

予約なしの方の受付は午前診11:30 午後診19:30までとさせていただきます。
必ず受付時間までに受付をお済ませください。
発熱・咳・風邪症状などがある方は、 市販のキットでコロナ抗原検査しておいてください。

できる方だけで結構です。
できない方は当院で検査します。

上記受付時間内に先にお電話ください。

忠岡町・65歳以上の方のインフルエンザ予防接種は 1月末までです。ご希望の方は受付に連絡してください。