2023年12月 No.217

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

寒暖の差が激しいです。
先週の土曜日・12月16日は日中20℃を超えようかという陽気でした。
17日から次第に寒くなりはじめ、今日これを書いている21日は最低気温3℃です。
少しですが、雪も降っていました。
訪問診療していてもすごく寒いと感じました。
こう寒暖の差が激しいと身体も順応しにくいです。
産業医に行っている川本産業の社員さんから聞いたのですが、急に気温が下がるとぎっくり腰になりやすいそうです。
寒暖差ぎっくり腰というらしい。
知りませんでした。12月14日ひるおび(TBS)で放映していたそうなのですが、急激な気温差で血流が低下して筋肉が縮こまる。
その状態で急激に動くと筋肉が損傷し、ぎっくり腰が起きてしまうそうです。
対策のポイントは、血流を良くすること。
急に気温が下がったとき、外出する際には「背中」や「お腹」をカイロで温めるふくらはぎをほぐして血流を良くするなどの方法があります。
足のストレッチも有効らしい。
皆様もお気を付けください。

今年の漢字 ・流行語大賞

年末恒例の今年の漢字は「税」でした。
増税議論が活発だったことや定額減税、インボイス制度などの話題がつきなかったためだそうです。
私が選ぶ今年の漢字は「虎」。
もちろん阪神タイガース日本一だからです。
ちなみに流行語大賞はアレ(ARE)が選ばれています。プロ野球阪神タイガースの岡田監督の優勝を表す隠語です。「アレ」の起源は13年前にさかのぼります。
岡田監督がオリックス監督時代の10年、交流戦で勝利を重ねる中、選手が意識しすぎないように「優勝」とは言わず「アレ」という表現を使用。
コーチや報道陣まで「アレ」と表現し、初優勝を飾りました。
オリックス対阪神の関西・日本シリーズ11月23日の神戸・御堂筋パレードも盛り上がってましたね。

認知症治療薬・レカネマブ

エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)が12月13日、健康保険での使用を了承しました。
体重50キログラムの人が1年間使った場合の薬価は298万円となる見込み。
12月20日から医療現場で使用できるようになるそうです。

投与対象は早期のアルツハイマー病患者や軽度の認知障害がある人に限られます。
日常生活に支障はないが物忘れなどの自覚があるような人が対象で、意思疎通が難しくなった「中等度」や「重度」の患者には使用できない。
原因物質の一つとされるたんぱく質「アミロイドベータ」が脳内に蓄積していることを陽電子放出断層撮影装置(PET)や脳脊髄液(CSF)検査で確認する必要もあります。
治療できる施設はまだ公開されていませんが、エーザイによると国内1000か所くらいになるとのこと。大阪・泉州ではどこでしているのかな?まだ情報がありません。

今後、新たに早期アルツハイマー病として診断されるような人が対象となります。
日本の保険制度には、医療費の自己負担額が高額となった場合、一定の金額を超えた分があとで払い戻される高額療養費制度があります。
所得や年齢によって上限額が変わりますが多くの場合、月額の自己負担は数万円程度となるはずです。
70歳以上の高齢者で年収156万~370万円であれば、外来や入院を含めた毎月の自己負担額(世帯)の上限は5万7600円となります。
また外来での個人の自己負担額が年間14万4000円を超えた場合は超えた金額分が払い戻されます。

まあ、私のような開業医ができる治療ではないですが、対象者を見つけて治療に結び付けていきたいなとは考えています。

英科学誌ネイチャーは14日、2023年に科学分野で話題になった今年の10人に大阪大学の林克彦教授らを選んだと発表した。
林教授は雄マウスの細胞から卵子をつくり子どもを誕生させることに成功。
同誌は絶滅危惧種の保全に役立つ可能性がある「驚異的な成果」と評価しました。
林教授らは3月、哺乳類である雄マウスのiPS細胞から世界で初めて卵子をつくった研究成果を発表した。卵子を受精させ、雄の細胞だけで子どもの誕生にも成功しました。ネイチャー誌は「椅子から転げ落ちるほど驚いた」という海外研究者のコメントを紹介し、成果をたたえました。
絶滅危惧種のみならず、男性同性愛者、さらには自分のiPS細胞から作った卵子に自己受精し、自分だけの子供をつくるなんてことも可能になるのかな?代理母は必要でしょうけど。先天性異常のリスクはどうなのかな?興味はつきません。


夜間頻尿とは

夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。
夜間頻尿は、日常生活において支障度の高い(困る)症状です。
夜間頻尿診療ガイドライン(第2版・2020年4月)・日本医師会雑誌2023年12月号・夜間頻尿ー診断と最新治療・夜間、何度も排尿で起きる |日本泌尿器科学会 一般のみなさま・パンフレットからエッセンスを拾ってみます。

夜間頻尿は加齢とともに頻度が高くなります。
「排尿に関する疫学的研究委員会」の2003 年の発表では、夜間 1 回以上の排尿がある人は 40歳台では男女共約 40%ですが、80 歳台では80%を超えています。
また、夜間 3 回以上の排尿がある人は 40 歳台では男女共 10%未満ですが、80 歳台になると男性では約 50%、また女性では約 40%となっています。
同学会では 2023年以降、再度疫学調査を行うことを計画しているそうです。
米国での調査では 2005 年から 2016 年にかけて夜間頻尿有病率が上昇したとの報告もあるため、本邦でどのような結果になるか興味深いところです。
正直夜間一回排尿に起きるだけで夜間頻尿と言われるのはちょっときつすぎないかなと思っています。
でも、定義だから仕方がない。
せめて2回以上にしてくれんかな?

夜間頻尿の原因

夜間頻尿の原因として、排尿困難や切迫性尿失禁といった下部尿路機能障害に起因した前立腺肥大症のような疾患を考えがちでですが、実際には過剰飲水による生活習慣に起因したものや高血圧や潜在性心不全といった、内科的な基礎疾患による多尿・夜間多尿が原因である症例が多いです。
特に高齢者ではその傾向が強くなっています。

夜間頻尿の原因は、大きく分けて

1)多尿・夜間多尿、

2)膀胱蓄尿障害(膀胱容量の減少)

3)睡眠障害に分けられます。

これらの3つの原因によって治療法が異なるので夜間頻尿の原因をまずはっきりさせることがとても重要です。
しかし、この3つの原因のうち、2つが重なっていたり、3つともが関与している場合はあります。

1)多尿・夜間多尿

尿量が多いため夜間頻尿がおきることがあります。特に内科の病気が隠れている場合は、その病気に対する治療が優先されるため、注意が必要です。

①多尿による夜間頻尿
1日24時間の尿量が多くなるために、夜間トイレに何度も起きるものです。
1日の尿量が40ml/kg(体重)を超える場合(例えば60kgの体重の人は40ml/kg x 60kg =2,400ml)がこれに当たります。
水分の過剰摂取、尿量を増加させる薬剤を内服しているため、糖尿病、尿崩症などの内科の病気によるものがあります。

②夜間多尿
夜間のみ尿量が多くなり、夜間トイレに何度も起きるものです。
一つの目安として、65歳以上の方では、24時間の尿量に対する夜間尿量の割合(NPi)が33%を超える場合は、夜間多尿と考えられます。
寝る前の水分の過剰摂取、薬剤性のもの、ホルモンバランスの乱れ、高血圧や心不全、腎機能障害などの内科の病気によるもの、睡眠時無呼吸症候群(睡眠時に呼吸が一時的に止まる病気で、いびきをかく人によくみられます)があります。
利尿剤などの薬剤には気を配る必要があります。イラスト
また、潜在的な心不全で、夕方下肢の浮腫が起こっていて、この浮腫(体液貯留)が夜間仰臥位になることで静脈還流量の増加を生じ、結果として夜間多尿の原因となっている。
このようなうっ血状態は脳ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)の上昇として表れていると考えられます。
このような症例では昼間に体液過剰となるため昼間は尿が少なくなり、夜間臥床することで一転して多尿となる。
結果的にNPiが50%前後とかなりの高値になっているという特徴があります。
脳卒中、心筋梗塞予防のため、夜水分をよく摂ってから寝る高齢者も多いような気がします。

2)膀胱蓄尿障害(膀胱容量の減少)

膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるもので、膀胱が過敏になるために起こります。
一般的には、昼にも頻尿になることが多いです。

①過活動膀胱
膀胱に尿が少量しか溜まっていないのにも関わらず尿意を感じてしまったり、膀胱が勝手に収縮してしまう病気で、トイレに急いで駆け込む症状(尿意切迫感)があるものです。
脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄(せきずい)の病気で引き起こされる場合もあります。

②前立腺肥大症
男性特有の疾患で、前立腺が大きくなることで膀胱、尿道が圧迫され、膀胱容量低下、膀胱が過敏になることがあります。

③その他
間質性膀胱炎や骨盤臓器脱などで夜間頻尿になることがあります。

3)睡眠障害

眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くものです。

診断(自分でできるチェック:排尿日誌)

以上のように、夜間頻尿の原因は様々ですので、適切な対処をするためには原因を明らかにすることが必要です。
夜間の排尿の際に、毎回十分な尿量を排尿する場合(おおよその目安として200-300ml)は多尿もしくは夜間多尿による夜間頻尿、十分な尿量を排尿しない場合(おおよその目安として100ml以下)は膀胱容量の減少による夜間頻尿と考えられます。

排尿習慣を知るために、排尿日誌を用いて、ご自身でも正確にチェックすることが可能です。
朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップ(100円均一ショップで売ってる500㏄の計量カップ)1回の排尿量(膀胱に溜めることができる膀胱容量)と排尿回数を知ることができ、おおよその原因を知ることができます。
さらには、水分摂取量も記載できるといいですね。
排尿日誌は24時間連続、3日以上継続してつけることが望ましいです。

排尿日誌

しかし、私が患者さんに勧めると、すこぶる評判が悪い。面倒なんでしょうね。
家庭血圧測定は大分浸透してきたようですが、夜間頻尿の排尿日誌はまだまだ普及していない印象です。
何人か持ってきてくれた方がおり、それなりに評価可能でしたけど。
治療してもよくならず泌尿器科受診してもよくならずでやめてしまった方が多いです。
勧め方が悪いのかな?病態通り診断でき、治療できればいいのでしょうが。

一般的な検査(当院でもできる検査)

・必ず行うべき評価(基本評価一般):症状と病歴の聴取,身体所見,尿検査.

・症例を選択して行う評価(選択評価一般):質問票による症状・QOL 評価、排尿日誌、残尿測定、尿培養、尿細胞診、血清クレアチニン測定、男性では血清前立腺特異抗原(PSA)測定、BNP測定(当院ではNT-proBNP)などをします。

病院での検査になりますが、腹部超音波検査、腹部骨盤CT検査もすることがあります。

治療

1)多尿・夜間多尿

糖尿病、高血圧、心疾患、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因となっている夜間多尿の場合は、基礎疾患の治療が重要です。
また、水分を摂ると血液がサラサラになり、脳梗塞や心筋梗塞が予防できると信じて寝前や夜間にたくさんの水分をとる方がいますが、科学的根拠はなく、水分の摂りすぎで頻尿になっている場合は、むしろ水分を控えることが必要です。
最近では夜間の尿量を抑える薬(デスモプレシン)が使われるようになりました。私はまだ使ったことはありません。
尿崩症の診断、デスモプレシンの使用開始は泌尿器科・内分泌専門医でしていただきたいです。
泌尿器科での処方かな、と思って遠慮していました。

2)膀胱容量の減少

過活動膀胱では、抗コリン薬、β3作動薬を、前立腺肥大症では、α1遮断薬、PDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬を症状に合わせて服用します。
間質性膀胱炎や骨盤臓器脱は、手術を含めたもともとの病気の治療が必要となります。

3)睡眠障害

睡眠障害による夜間頻尿には、睡眠薬の内服も有効ですが、よく眠れるような環境の整備や生活リズムの改善も重要です。
睡眠剤の使用は夜間のふらつき、転倒の原因になることがあり、注意が必要です。

 

以上、夜間頻尿につき、概説しました。診療ガイドラインには専門医向けの診断アルゴリズム、治療アルゴリズムが掲載されています。
読んでみましたが、皆様に説明するには難解でしたので、割愛してます。この辺りは専門医受診になるのかな、と考えています。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★年末・年始休暇のお知らせ★

年末は12月28日(木)まで診療します。
12月29日(金)~1月3日(水)まで休診させていただきます。
1月4日(水)から通常診療となります。 
また、1月6日(土)は府中病院の緩和ケア研修会にファシリテーターとして参加するため休診となります。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。

★診療受付時間について★

予約なしの方の受付は午前診11:30 午後診19:30までとさせていただきます。
必ず受付時間までに受付をお済ませください。
発熱・咳・風邪症状などがある方は上記受付時間内に先にお電話ください。