2023年 8月 No.213

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

残暑お見舞い申し上げます。
当院8月15日から8月20日(日)まで夏季休暇を頂いていて、8月21日(月)から通常診療に戻りました。

今年の夏は、危険な暑さの日か台風の影響の日か、いずれかであったように思います。
危険な暑さというのは今年の流行語に入らないかな。本当に暑い日が多かったです。

こんな時はやっぱり熱中症の予防が大事。
私は今年の夏は環境省の熱中症予防情報サイトをよく見ています。
熱中症警戒アラートの発表とか、大阪府堺市の暑さ指数(WBGT)などチェックしてます。

暑さ指数は単純に気温だけでなく、湿度や日差しの違いをも考慮して、熱中症予防につながる数値です。
暑さ指数の「日常生活に関する指針」や「運動に関する指針」でも、暑さ指数28以上で「厳重警戒」、31以上で「危険」になります。
暑さ指数が33を超えると熱中症警戒アラートが都道府県毎に発令されます。

熱中症を防ぐために暑さを避ける、外出や屋外での運動及び長時間の作業をやめる、こまめに水分・塩分の補給をするといった予防行動をとりましょう。

また今年の8月の台風の動きには驚かされました。
8月上旬に台風6号が沖縄に上陸し、一旦離れたもののコースを変え再上陸しました。
沖縄の被害は大変なようでした。
また空の便、船の便は大幅に乱れ、本州に帰れない人が続出しました。

次に発生した台風7号はなんとお盆に西日本を直撃し、盆休みの予定が変わった人も多かったことでしょう。
私は15日に墓と寺、親族との食事会があったのですが、すべてキャンセル。
8月17日に予定されていた熊野大花火大会に行くつもりだったのですが、延期となり、旅行もキャンセル。残念でした。
当地には台風被害があまりなかったのが不幸中の幸いでした。

 新型コロナウィルス感染症 

盆休みは海外の人を中心に、繁華街では人がごった返していたようです。
中国からの団体客も来日を許可されインバウンド再燃です。
花火、祭りも普通に開催されています。

暑さのためもあるのでしょうが、マスクをしない人も多くなってきました。
しかし、まだコロナがなくなったわけではないのでご注意を。
医療機関ではマスクをしてもらい、発熱、下痢、感冒症状のある方は電話をしてから受診の指示を仰いでください。
症状のある人はコロナの検査は必要です。
出来る方はコロナの抗原検査を購入しておかれて、症状のあるときは自宅で検査することをお勧めします。

乾燥組換え帯状疱疹ワクチン「シングリックス筋注用R」の接種対象者は、これまでの「50歳以上の者」に加えて、新たに「帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の者」が追加されました。
帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる者とは免疫機能が低下した者または免疫機能が低下する可能性のある者です。
上記以外でも、医師が本剤の接種を必要と認めた者も接種することが可能とのことです。
ある程度の理由は要りそうですが。

先月号で、 アルツハイマー型認知症の新しい薬 としてエーザイとバイオジェンが協同で開発したレカネマブを紹介しました。
認知症の一歩手前である軽度認知障害から、軽度認知症の患者さんが対象の薬で、アミロイドβをブロックする薬です。
厚生労働省の専門部会は8月21日、レカネマブの承認を了承しました。
専門部会の了承を受けて、仮に8月中に厚労相が承認した場合、年内には対象患者に使用できる見込みです。
承認後に実際の医療現場で使用するには、薬価を決める必要があります。
米国のレカネマブの薬価は年2万6500ドル(約390万円)です。さて、いくらくらいになるのでしょうか?

先月号で紹介した胃がんの新しい治療。私が講演を拝聴した府中病院外科センター・センター長の田中浩明先生の市民講座が令和5年9月21日(木)15時から府中病院東館1階健康教室で行われます。
タイトルは最先端の胃がん治療です。
ロボット支援手術、手術方法、化学療法などわかりやすく解説いただけるものと思います。
参加費無料・事前申し込み不要、途中入退場可能。
さらに、14時半から講座開始まで無料の血糖・血圧の健康チェックがあります。
是非、ご参加を。真嶋医院から紹介されて受講したとなれば私の顔も立ちます。

便通異常症診療ガイドライン 2023

慢性便秘症診療ガイドライン2017が発行され、当院でも2018年1月にこの院内報で慢性便秘症につていて、と題してガイドラインの内容をおおざっぱではありますが、紹介しました。

その後も、2017年にオピオイド(医療用麻薬)誘発性便秘症に対するナルメデジン(スインプロイク)、2018年以降は慢性便秘症に対してリナクロチド(リンゼス)、ポリエチレングリコール製剤(モビコール)、エロビキシバット(グーフィス)、ラクツロース(ラグノス)と、新たな治療薬の発売や適応拡大が続きました。

それを受けて、2020年7月に院内報で便秘として新しい薬剤の紹介をしました。
このガイドラインの発行以降、私の便秘薬処方も変わりました。
アントラキノン系の刺激性下剤、センナ、プルゼニド、ヨーデル、センノシドなどは最初から処方することはなくなりました。
まず、便を柔らかくするマグネシウム製剤、高マグネシウム血症があったり、腎臓が悪い人にはラクツロースかモビコール。
それで不十分な場合はアミティーザかリンゼスを追加といった処方になりました。
しかし、センナ系の薬剤の効きが自分に合っている、という昔からの患者さんは薬の変更は頑として受け入れられない方が多いようにも感じます。

そんな中、2023年7月に便秘に関する新しいガイドラインが発刊されました。
タイトルは便通異常症診療ガイドライン2023・慢性便秘症です。

便秘の定義は2017年度版では、「本来なら体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」とされていました。
今回のガイドラインでは、便秘は「本来、排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状態、硬便、排便回数の減少や糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されています。

慢性便秘症は「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも様々な支障をきたし得る病態」と定義されます。
欧米の便秘の診断基準であるROMEⅣを意識した定義になっています。
慢性便秘症の有病率は、地域、用いる診断基準の違いにによって大きくばらつきはあるものの、およそ10~15%と見積もられています。

あとは診断のフローチャートが出来たことが一番の改訂のポイントでしょうか。
図をそのまま載せてもダメだと思いますので、流れを説明します。

慢性便秘症の方が診察に来られたら、問診、身体所見、血液検査、便潜血検査、腹部X線検査をします。
問診では、排便回数、苦痛を伴う排便努力、残便感、腹痛、排便に要する時間、排便の補助の有無、排便しようとしても出なかった回数(24時間)、病脳期間を聞きます。

便秘スコアリングシステム(CSS)という問診票があります。
内容は聞いていますが、点数化したことはありませんでした。
今度からちょっと意識してみます。
ちょっとこれも日本人には合致しない。
日本人にあう問診票をつくらないといけないと今後の課題のようです。

CSS 便秘スコアリングシステム

あとは、便の硬さ。ブリストル便形状スケールで1がコロコロの便、7が水様便で、7段階に分けられています。
身体診察で、慢性便秘症の診療に有用な身体診察は腹部診察(視診、聴診、打診、触診)と直腸肛門診(視診、指診)と書かれていました。

私の場合、打診はしなくなりました。
排便困難の症状があれば、直腸肛門診察を行うと書かれてました。
便秘で薬もらおうとだけ思ってきた人にいきなり直腸肛門診察はちょっとね。
以前徳洲会の肛門外来をしていましたので、直腸肛門診察は私は抵抗はないのですが、患者さんによってはいきなりというのはかなり抵抗があるかも。

おなかが張って腸蠕動音も亢進している場合はレントゲンを撮って、腸閉塞の所見があるか、ガスが多い場合は初診でも直腸肛門診察はします。
その場合は直腸内に便があるか(あれば浣腸・摘便します、無ければ直腸より上部での通貨障害を考えます)、さらに直腸内に腫瘍が無いかを診るためです。

血液検査も最近してなければするかもしれません。
でも便秘の方全例にしたほうがいいかもしれません。
貧血があるかとか。

私は今まで、便潜血検査、腹部X戦検査は全員にはしていませんでした。
しないといけないかな。上にも書きましたが腹部膨満のある方はレントゲンは撮ります。
上記診察、検査後、警告症状・徴候・危険因子があれば、大腸内視鏡検査をします。

フローチャートには注腸、腹部超音波検査、CT,MRI検査も書かれていましたが、やはりまず大腸内視鏡検査と思います。
超音波検査はしておいてもいいかも。
いずれも病院での検査になります。

慢性便秘症の警告症状・徴候は、排便習慣の急激な変化、血便、6か月以内の予期せぬ3kg以上の体重減少、発熱、関節痛、異常な身体所見(腹部腫瘤の蝕知、腹部の波動、直腸指診による腫瘤の蝕知、血液の付着など)を代表とする器質的疾患を示唆する症状と徴候です。

大腸内視鏡で器質的な病変があれば、各疾患に応じた治療をします。
危険因子が無い、大腸内視鏡で異常が無い場合、次に原因となる薬剤を服用していないか調べます。

便秘になる薬剤は多数存在します。
有名なところでは、抗コリン薬(アトロピン、ブスコパン)、向精神薬、医療用麻薬など。
カリウムを下げる薬で便秘になったという人が2人いました。あとは咳止めも。

中止が可能な薬剤については中止して経過をみます。
医療用麻薬による便秘はスインプロイクという薬剤が発売されています。
原因と考えられる薬剤を中止しても改善しない、中止・変更できない場合、食事療法、生活習慣改善をします。

次に便秘の原因になる疾患があるかどうかをチェックします。

慢性便秘になりうる疾患も多数存在します。
甲状腺機能低下症、糖尿病、膠原病、パーキンソン病などの神経疾患、精神疾患(薬による場合もありますが)など多岐にわたります。
原疾患の治療が可能であれば、治療して経過をみます。無い場合は機能性便秘症として扱います。
薬剤を中止できない、中止しても改善しない、食事療法、生活習慣改善しても便秘が続く場合、機能性便秘として扱います。

機能性便秘には排便回数現象型と排便困難型があります。
ここで、機能性便秘・排便回数現象型とされた場合は生活習慣改善、食事療法をして、改善なければ、まずマグネシウムなどの浸透圧性下剤です。

腎機能が悪い場合はラクツロース、モビコール。改善なければ、アミティーザ、リンゼス、グーフィスに変更または追加。
私はマグネシウムは基礎薬として中止せず、上記薬剤を追加することが多いです。
整腸剤、膨張性下剤(ポリフル、コロネル)、漢方などの併用も可と書いてありました。

機能性便秘・排便困難型はいろいろ直腸肛門の専門的な検査、治療が書いてありましたが、全部説明するのは無理なので省略します。

ここで、少し疑問になったのは、警告症状、徴候、危険因子が無く、原因となる薬剤、疾患が無い場合は機能性便秘として薬剤処方なのですが、改善が無い場合でも大腸内視鏡をするという選択肢がなかったのです。しなくてもいいのかな?したほうがいいんじゃないかな?
また、診断で直腸内に便があるかどうかがわかるエコー検査機があるようです。
これがあれば、病棟の看護師が便秘で浣腸するかどうか判断するにもよさそうです。

あとは、専門的な検査が有用かどうかをいろいろ検証してました。
治療も薬は大体上に書いた通りですが、これで軽快しない場合の手術を含めたいろいろな治療法が紹介されていました。

専門的になりすぎるので省略します。
今後はこのガイドラインを参考に便秘診療にあたりたいと思います。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★診療受付時間について★

予約なしの方の受付は午前診11:30 午後診19:30までとさせていただきます。
必ず受付時間までに受付をお済ませください。
発熱・咳・風邪症状などがある方は上記受付時間内に先にお電話ください。

★休診について★

10月7日土曜日、忠岡町の祭礼の日
休診させていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。