2023年 7月 No.212

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

7月20日(木)気象台は近畿地方が梅雨明けしたとみられると発表しました。
平年よりも1日遅い梅雨明けで、今年の梅雨入りは5月29日と早かったので梅雨の期間は平年よりも9日間長くなりました。
暦の上では、7月23日が大暑で8月8日が立秋ですから、今は大暑の候です。

暑中見舞いを書く時期ですが、暑中見舞い書かなくなり、受け取る暑中見舞いの葉書もすごく減ってます。
主に会社や病院からで、個人からの暑中見舞いはほぼなくなり、LINEやメールで送ることが多くなっています。これも時代の流れでしょうか?

 熱中症に注意! 

日が照りつけるとても暑い日が続きます。
毎年書いていますが、熱中症には充分ご注意ください。

①換気を確保しつつ、エアコンを昼夜を問わず使用してください。

②外出は暑い日や暑い時間帯を避け、無理のない範囲で活動を。

③屋外で人と十分な距離(2m以上)が確保できる場合は、マスクをはずしましょう。

④こまめに水分を補給しましょうのどが渇く前に、こまめに水分を補給します。
汗をかいたときは、スポーツドリンクや塩飴などで水分とともに塩分も補給してください。

⑤適度に運動をして、汗をかきやすい身体にしておくことが大事です。

熱中症の予防対策をしましょう

★体調が悪いと感じたときは、無理せず自宅で静養を熱中症を予防して、夏を乗り切りましょう。
また、こちらも毎年書いていますが、虫刺され対策、紫外線対策もお忘れなく!

 新型コロナウィルス感染症 

街は賑やかさを取り戻しています。
祭り、花見なども普通に開催されています。
しかし、コロナが無くなったわけではないのでまだ注意は必要。

医療機関ではマスクをしてもらい、発熱、下痢、感冒症状のある方は電話をしてから受診の指示を仰いでください。
症状のある人はコロナの検査は必要です。
出来る方はコロナの抗原検査を購入しておかれて、症状のあるときは自宅で検査することをお勧めします。

大阪府の新型コロナ感染者数の発生状況についてを見ると、泉州地区の5月の初めには定点あたり患者報告数は1.55でしたが、7月16日の週では、1.72と増加し当院においても少し増えてきたかなという印象です。

 認知症の新しい薬 

エーザイはバイオジェンと協同で、レカネマブというアルツハイマーの新薬を開発しました。
米国で既に承認されています。

治療対象となるのは、認知症の一歩手前である軽度認知障害から、軽度認知症の患者さんです。
治験での薬の効果は、期間・1年半の症状の悪化度を比べるとレカネマブは、プラセボよりも27%悪化が抑えられていました。

治験の結果から、早期の患者がより重い症状の認知症に進行するのを、2~3年遅らせることができると推定されています。

レカネマブが作用するのは原因物質の1つと考えられているアミロイドβと呼ばれるタンパク質です。
これは健康な人の脳でも発生しますが、通常は脳内のゴミとして分解・排出されます。
しかしアルツハイマー病では、その働きが衰えたり、アミロイドβが多く生み出されたりして、脳内に蓄積し、集まって固まっていきます。
これが引き金となり、最終的に神経細胞が死滅すると考えられています。

レカネマブは脳に届くとアミロイドβの塊にくっつきます。
目印となって免疫細胞に除去させたり、これ以上アミロイドβ同士が集まらないようブロックしたりするのです。

治験参加者の脳の画像を見てみると、治験後は、レカネマブの効果で確かにアミロイドβの量が減っていることが確認されました。

エーザイはレカネマブに続き、別の仕組みの新薬候補の臨床試験を2024年にも始めます。

複数の仕組みの医薬品をそろえ、早期治療できるようになれば認知症のかなりの部分はコントロール可能になることが期待できます。
薬が承認されたら、新しい認知症の治療としてこの院内報でも書いてみます。

胃癌の新しい治療

令和5年7月22日、私たちが以前から行っている泉大津外科の会で(コロナ禍で4年ぶりの開催)、今年4月に赴任された府中病院外科センター長・田中宏明先生の胃がんに対する最先端の外科治療と薬物療法と題する講演を聞く機会がありました。

私は座長を頼まれており、予習のため患者さんのための胃がん治療ガイドライン(日本胃癌学会編)を購入し、読んでました。
今回はそのエッセンスをお伝えします。

1950年代には胃がんは国民病とも言われ、男女ともに死亡率の第1位を占めており、胃がん検診が発足する理由の1つにもなっていました。

その後検診の普及により早期発見例が増えると同時に、ピロリ菌の感染率が減少し、1980年代以降、胃がんの罹患率、死亡率が急速に減少する傾向がありました。

2023年現在罹患率は、男性で前立腺がん、大腸がんについて3番目、女性で乳がん、大腸がん、肺がんについて4番目に位置しています。

死亡率は、男性で肺がんに次いで2番目、女性では、大腸がん、肺がん、膵臓がん、乳がんについて5番目に位置しています。

検診で胃がんが疑われた場合、上腹部痛や出血・通過障害などの症状がある場合は、上部消化管内視鏡検査が行われます。
何も症状が無くても1年に一回は胃カメラしなさいと指導している施設も多いです。

ここで胃がんが発見されれば、組織検査をして確定します。
さらに、腹部CT検査等で転移の有無を確認します。
場合により審査腹腔鏡が行われることもあります。
上記検査により、胃がんの進行度が判定されます。

胃がんの治療は進行度に応じて決定されます。
リンパ節転移がなく、早期胃がんである場合は、内視鏡治療が選択されます。

内視鏡治療としては、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。
現在は切除後の標本がの観察が確実に行える点から、ほとんどの患者さんでESDが行われているとのことです。

切除後の病理検査の結果でリンパ節転移のリスクがほとんどないと判断されれば、そのまま経過を観察します。
リンパ節転移のリスクが無視できないと判断された場合は、追加で外科的切除が行われます。

 手術療法 

内視鏡的治療が適用とならず、遠隔転移もない場合は、手術が選択されます。
手術の原則は胃切除とリンパ節郭清です。

従来胃切除はお腹を大きく切り開いて行う開腹術が標準とされてきました。
最近ではお腹に数カ所小さな穴を開け、そこからカメラや鉗子を挿入して手術を行う腹腔鏡下胃切除が普及しています。

私は元々消化器外科医で、平成12年の診療所継承までは胃や大腸の外科手術をしていました。
腹腔鏡下胆嚢摘出術がようやくできるようになったという状況で、次は腹腔鏡下大腸切除をということで、富士山の麓の研修センターに1泊2日で行ったことを覚えています。
犬だったか豚だったかの大腸切除はその時経験しました。

腹腔鏡下大腸手術を導入しようと思っていた矢先に消化器外科を辞めることになったので腹腔鏡下大腸切除はしていません。
ましてや腹腔鏡下胃切除術等はまだ想像もしなかったまま外科を終りました。

ロボット支援胃切除術は腹腔鏡下手術をさらに発展させた方法で、自由度の高い鉗子を3次元画像手ぶれ防止機能等により精査、精細な手術を行うことが可能です。

先日の講演では、府中病院のロボット支援胃切除術のビデオを拝見しました。
皆さんはUSJにあるターミネーターというアトラクションに行かれた事はありますでしょうか。
残念ながら最近終了してしまいましたが。
最初にホールに通され、ビデオが供覧されます。
そこではサイバーダイン社のビデオが流されるのですけども、その中でサイバーダインの遠隔システムによってどこからでも手術が行えます。
たとえ南の島からでも手術が可能ですと言うシーンがありました。

USJがオープンしたのは平成13年3月31日です。
ターミネーターのビデオを見て、こんなことができる時代が来るのかなあと思っていましたが、今はすでにできます。

ロボット支援下胃切除術では術者が患者の体に触れる事はありません。
コンソールと呼ばれるユニットに入り、画面を見ながら操作します。
かなり繊細な操作が可能です。

今後、ロボット支援下手術がどんどん普及すると思っております。

また胃がん手術に関して、現在では

と私が外科手術をしていたこととは相反する流れになっていたことを教えていただきました。

胃がん手術を受ける方も高齢化してきたため、できるだけ侵襲を加えない方向になっているのだと感じました。

 薬物療法 

切除不能な進行胃がんや、再発胃がんに対する標準治療は薬物療法であり、最近の進歩によって高い確率で腫瘍が縮小するようになりました。
薬物療法の対象となるのは、例外はありますが、パフォーマンスステータスが0から2と良好で、肝臓や腎臓などの臓器に障害がない場合です。

パフォーマンスステータス2とは、歩行可能で、自分の身の回りの事は全て可能な状態です。

パフォーマンスステータス3は、限られた自分の身の回りのことしかできなくて、日中の半分以上は寝て過ごしている状態です。

つまり、ある程度元気でないと薬物療法はできないということです。

最初の治療はHER2(ハーツー)というタンパク質を腫瘍が持っているかどうかで治療法が選択されます。
ハーツーは、細胞の増殖に関わるタンパク質のひとつです。
HER2遺伝子の数が増えると、たくさんのHER2タンパク質が作られてしまい、必要のないときにも細胞が増殖しがんが発生しやすくなると考えられています。

ハーツー陽性の場合はハーセプチン+S-1+オキサリプラチン(SOX療法)などの抗がん剤が一次化学療法として投与されます。
ハーセプチン陰性の場合はS-1+オキサリプラチン(SOX療法)+ニボルマブ(オプジーボ)が投与されます。

1次化学療法の効果が認められない場合や副作用等によって治療の継続が困難と思われた場合は、次の治療2次化学療法に移行します。
ここでは、腫瘍の遺伝子のマイクロサテライト不安定性の有無によって治療が選択されます。
遺伝子解析により判定します。
少し難しいので詳細は省略します。

胃癌薬物療法で、新しい薬も導入される見込みです。
抗PD-L1抗体薬・デュルバルマブと抗Claudin 18.2抗体薬・ゾルベツキシマブです。
いずれも分子標的薬で、臨床試験でいい成績を出しています。
田中先生も期待できそうとのコメントでした。

以上の薬物療法により、以前は化学療法だけしかできなかったケースが治療奏功して手術に移行できる場合がふえてきました。
コンバージョン(転換)といいます。

リンパ節転移だけの場合は薬物治療が奏功し、手術に持っていける場合があるとのことです。
腹膜播種がある場合はちょっと難しいかもとおっしゃっておられました。

以上、いろいろ新しいことを教えていただきました。
参考程度にですが。患者さんのための胃がん治療ガイドラインに医療費の記載がありました。

胃がんの治療費は、治療の内容や入院期間によって異なります。
早期胃がんで内視鏡治療を受けた場合は、7日間の入院で約60万円、腹腔鏡下胃切除を受けて、12日入院した場合は、約190万円かかります。
3割負担の場合はそれぞれ20万円、63万円となります。

薬物療法では1次治療としてS1、オキサリプラチン、ニボルマブを使用した場合、1コースあたりの薬剤費は、一般的な体格の方で約40万円になります。
自己負担額は3割の場合は、13万円程度ですが、月2回治療が行われた場合には倍の26万円になります。
しかし自己負担には1ヵ月の限度額が設定されており、限度額を超えると高額療養費制度が適用されます。
1年間で何回も高額療養費制度に該当した場合は、さらに減免措置が適用されます。

詳しくは相談支援センターに相談してみて下さい。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★診療受付時間について★

予約なしの方の受付は午前診11:30 午後診19:30までとさせていただきます。
必ず受付時間までに受付をお済ませください。
発熱・咳・風邪症状などがある方は上記受付時間内に先にお電話ください。

★休診について★

8月15日から8月19日まで
夏季休暇とさせていただきます。8月21日・月曜日より通常診療になります。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。