2023年 5月 No.210
夏の日のような暑い日があったかと思えば、朝はひんやりと冷え込む。
温度差の大きい日が続いています。
総務省消防庁は5月23日、熱中症により5月15~21日の1週間に全国で1763人が救急搬送されたとの速報を公表しました。
季節外れの暑さが続き、前年同期の約6倍。
気象庁によると集計期間中の5月17日最高気温が30度以上の真夏日となった地域も多く、5月18日には35度以上の猛暑日となった地域もありました。
この時期は体が暑さに慣れていないため、消防庁は小まめな水分補給など予防策を呼びかけています。
もうすぐ梅雨入りです。
体調管理には充分ご留意ください。
5月8日から新型コロナウィルス感染症がインフルエンザ並みの5類になりました。
世間も賑わいを取り戻し、コロナ前のような普通の動きにしていこうとしています。
しかし、コロナが無くなったわけではないのでまだ注意は必要。
医療機関ではマスクをしてもらい、発熱、下痢、感冒症状のある方は電話をしてから受診の指示を仰いでください。
症状のある人はコロナの検査は必要です。
出来る方はコロナの抗原検査を購入しておかれて、症状のあるときは自宅で検査することをお勧めします。
国内で「麻疹・はしか」の感染が広がりつつあるというニュースがありました。
はしかは感染力が極めて強く、発症すると重症化して命に関わることもあります。
4月27日インドから帰国した茨城県内の30代の男性の麻疹感染が確認されました。
その後、その男性と同じ新幹線に乗っていた東京都内の30代の女性と40代の男性の感染が確認されました。
麻疹は空気感染のほか、飛沫や接触を通じて広がることもあり、感染力は極めて強く、免疫がない場合、感染者と同じ室内・空間にいただけでほぼ確実に感染するとされています。治療法はありません。
最初2日ほど熱が出て、一旦はさがるのですが、また発疹とともに発熱が出現します。
解熱している間に口腔内にコプリック斑という粟粒のような斑点が出現します。
残念ながら私は実際には見たことはありません。
予防はワクチン接種です。
自分に麻疹の抗体があるかどうか調べて、抗体価が基準値以下だとワクチンを打ちます。
自費での抗体検査、ワクチン接種になります。
当院では麻疹単独の抗体価検査料は4500円です。
麻疹、風疹、水痘、ムンプス4種の抗体価検査は11,000円でしています。
ワクチン接種はMR(麻疹・風疹混合)ワクチンを使用し、9900円です。抗体価検査からのワクチン接種をお勧めしています。
厚生労働省は、2024年度から始める次期の国民健康づくり計画「健康日本21」で定める数値目標を固めました。
次期計画は専門家部会の了承を経て、6月に決定される見通しです。
厚労省によると、健康日本21は健康上の問題がなく日常生活を送れる「健康寿命」を延ばすことを目的としています。
項目としては大きい項目9項目。
それぞれに数項目の数値目標が挙げられています。
合計70小項目。
目標値の例を挙げると、「十分な睡眠時間」が確保できている人の割合は現在54.5%であるが、2013年には60%を達成することを目指します。
過剰摂取が指摘される食塩の量は1日あたり現在の10.1グラムから7グラム未満に減らすことを目指します。
食生活の改善では、野菜や果物の摂取量を増やすと、循環器病による死亡率が低下するとされる。
1日あたりの野菜摂取量は現状281gより約70g多い350g、果物接種量は現在99gの約2倍の200gをそれぞれ目標とします。
心身に好影響を与える「地域の人とのつながり」は、強いと思う人の割合を現在の40.1%から45%に上げる目標も設定。
女性に関する項目を新設し、骨折のリスクを高める「骨粗しょう症」の検診受診率を15%と現状5%より約10%引き上げます。
厚労省の担当者は「国と自治体で連携し、健康づくりや環境整備を推進したい。国民には高齢になっても元気に暮らせるよう、各目標を参考に生活習慣を改善してほしい」と話しています。
ミネラル・電解質シリーズ、今回はカルシウムについてです。
カルシウムは生体内に最も多く存在するミネラルで、体重50kgの成人で約1kg含まれています。
その99%はリン酸と結合したリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)として骨や歯などの硬組織に存在し、残り1%は血液、筋肉、神経などの軟組織にイオンや種々の塩として存在しています。
カルシウムは、骨や歯の主要な構成成分になります。
骨には血清カルシウム濃度を維持するための貯蔵庫としての役目もあります。
血清・細胞内カルシウム(機能カルシウム)は細胞の分裂・分化、細胞形態の維持、筋肉収縮、神経興奮の抑制、血液凝固作用の促進、骨石灰化の促進、血圧上昇の防止などに関与しています。
カルシウムは主に小腸で吸収されますが、吸収率は成人で20~30%とあまり高くありません。
残りは便中に排泄されます。
活性型ビタミンD、副甲状腺ホルモン、カルシトニン(甲状腺ホルモン)などの関与によって、腸管での吸収、血液から骨への沈着、骨から血液への溶出、尿中への排泄などが制御され、細胞や血液中のカルシウム濃度は一定範囲(8.5~10.4mg/dl)に厳格に保たれています。
血中のカルシウムが不足すると、一定に保とうとする機能が働くため、骨からカルシウムを溶出し(骨吸収)、血中カルシウムを補充します。
この状態が長く続くと骨のカルシウム分布が少なくなってしまい、骨が脆くなる状態(骨粗鬆症)になります。
日本人の食事摂取基準では、カルシウム摂取量を男性では700mgから800mg、女性で650mgと設定しています。
また、カルシウムの過剰摂取により高カルシウム血症など健康被害がみられることから、耐容上限量は18歳以上男女ともに、1日2,500mgと設定されています。
令和元年国民健康・栄養調査におけるカルシウムの一般食品からの1日の摂取量は504.9mgでした。推奨量に比べてカルシウムの摂取量は不足しています。
健康日本21では、カルシウムに富む食品の摂取量の増加が目標で挙げられています。
カルシウムは、魚介類、藻類、乳類、豆類、種実類、野菜類に多く含まれます。
植物性食品には、カルシウムの吸収を阻害するシュウ酸(ほうれん草に多い)、フィチン酸(豆、穀類に多い)などが含まれるので、牛乳や乳製品に比べカルシウムの吸収率はよくありません。
また、リンや食物繊維もカルシウムの吸収を阻害します。
リンは魚類、乳製品、大豆、肉類など一般的な食品に広く含まれている成分ですが、スナック菓子や冷凍食品、加工食品などに含まれる過剰なリンは、体内に入ったカルシウムを排泄してしまいます。リンの過剰摂取には気をつけましょう。
一方、吸収を促進させるものにビタミンD、クエン酸、CPP(カゼイン・ホスホ・ペプチド)という牛乳中のたんぱく質などが知られています。
効率的にカルシウムを摂取するのには牛乳や乳製品が最適です。
牛乳・乳製品を中心に、小魚、海藻、豆類、野菜などの食品からバランスよくとりましょう。
脂質異常症(高脂血症)などで脂質のとりすぎが気になる場合は低脂肪乳を利用したり、牛乳が苦手な場合は、チーズやヨーグルトでとったり、料理に加えたりして工夫するとよいでしょう。
しかし、カルシウムの摂取量が十分であったとしても、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が悪くなり、また運動などである程度骨に負荷をかけないと利用効率が低くなってしまいます。
ビタミンDを多く含む食品は、魚(イワシ、サンマ、サケ)、きのこ(キクラゲ、シイタケ)などがあります。
またビタミンDは、日光を浴びることで体内で生成されるため、外に出て歩くなどの運動をすることも大切です。
カルシウム濃度の調整に一番かかわっているのが、副甲状腺ホルモン(PTH)です。
副甲状腺は甲状腺の裏側に付着している4つの小さな(米粒大)内分泌臓器です。
副甲状腺細胞は血清カルシウム濃度の低下を感知し、これに反応してあらかじめ合成されたPTHを循環血液中に放出します。
PTHは、腎臓および腸管からのカルシウム吸収を増進し、カルシウムおよびリンを骨から迅速に動員すること(骨吸収)によって、数分以内に血清カルシウム濃度を上昇させます。
また、PTHは腎臓の遠位尿細管に作用し、カルシウム再吸収を増加させる作用があります。
更に、PTHは ビタミンDを刺激して最も活性の高いカルシトリオール(活性型ビタミンD3)へ変換することによって血清カルシウム値を上昇させます。
この型のビタミンDは食物中カルシウムの腸管吸収率を高めます。
PTHの検査方法としては、インタクトPTHのラジオイムノアッセイが推奨されています。
高カルシウム血症とは、血清総カルシウム濃度が10.4mg/dLを上回った状態です。
通常の食生活では高カルシウムになることは稀です。健康食品等でカルシウムを摂取しているときは注意が必要。
軽度の高カルシウム血症では患者の多くが無症状ですが、中等度の高カルシウムの症状としては多尿、便秘、筋力低下、食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛、イレウスなどがあります。
血清カルシウム濃度が12mg/dLを上回ると、情緒不安定、錯乱、せん妄、精神病、昏迷、昏睡が起こる可能性があります。
高カルシウム血症を見た場合、カルシウムを上昇させる薬剤・カルシウム製剤、活性型ビタミンD3製剤(エディロール、アルファロールなど)、テリパラチド(フォルテオ、テリボン注射)などを使用していないかチェックします。
使用していれば中止します。
悪性腫瘍の存在で高カルシウム血症が起こることがあります。
多発性骨髄腫、癌の骨転移でカルシウムが上昇しますのでそのチェックもします。
骨転移を伴わず、悪性腫瘍から分泌される副甲状腺ホルモン関連蛋白による悪性体液性高カルシウム血症という場合もあります。
高カルシウム血症を見たら、副甲状腺ホルモン(PTH)のチェックとともに悪性腫瘍の存在を疑うことも重要となってきます。
副甲状腺ホルモンが上昇している場合、副甲状腺機能亢進症の疑いがあります。
副甲状腺の腺腫、過形成、癌などをが原因で診断のために、超音波検査、CT検査などの画像検査をします。
薬剤性以外で、高カルシウム血症の最も頻度の高い原因は原発性副甲状腺機能亢進症です1つまたは複数の副甲状腺によるPTHの過剰分泌に起因する全身疾患です。
原発性副甲状腺機能亢進症の原因の約85%で副甲状腺腺腫です。
約15%が2腺以上の過形成によるもの。
副甲状腺癌は症例の1%未満に発生します。
副甲状腺腺腫、悪性腫瘍の場合、手術を含めた治療を検討します。
カルシウムの排泄を増強し骨のカルシウム吸収を抑制する治療では、生理食塩水、利尿剤、ゾレドロン酸(ゾメタ)などの薬物が用いられます。
低カルシウム血症とは、血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL未満の状態です。
症状としては、錯感覚、テタニー(筋痙攣)のほか、重度であれば痙攣、脳症、心不全などがあります。
原因には、副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、および腎疾患があります。
副甲状腺ホルモンの欠乏には自己免疫疾患で生じる場合、または甲状腺摘出術中に複数の副甲状腺が切除されて生じる場合があります。
ビタミンD欠乏症は、食事からの摂取不足や、肝胆道疾患または腸管での吸収不良による吸収低下による考えられ、小腸大量切除後の短腸症候群でも起こる可能性があります。
薬物(フェニトイン、フェノバルビタール、リファンピシン、ロモソズマブ)による場合、日光曝露不足に起因する皮膚での合成低下によっても生じることがあります。
治療はカルシウム投与により行い、ときにビタミンDを併用します。
以上、カルシウム代謝について概説しました。
まだまだカルシウム摂取は不足しているので、意識してカルシウムを摂ること、運動、日光にあびることに留意してください。
定期的に血液検査でカルシウムを測定すること、また特に女性では骨密度を測定するようにしましょう。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
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かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
予約なしの方の受付は午前診11:30 午後診19:30までとさせていただきます。
必ず受付時間までに受付をお済ませください。
発熱・咳・風邪症状などがある方も上記受付時間内に電話ください。
6月10日土曜日は岸和田徳洲会病院の緩和ケア研修会に参加するため休診します。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。
8月15日から8月19日まで
夏季休暇とさせていただきます。8月21日・月曜日より通常診療になります。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。