2023年 4月 No.209
4月も終わりだと言うのに寒いです。
これを書いているのが4月26日水曜日。
今日も寒かったです。
昨日は久しぶりに診察室にストーブを入れました。
先週あたりは夏日もあり、もう初夏から夏に入るんじゃないかと思われる日もありました。
寒暖の差が激しいので、皆様も体調管理には充分ご留意ください。
新型コロナウィルス感染症は少なくなってきている印象を受けていたのですが、報道によりますとここにきて緩やかな増加傾向になっています。
新型コロナウィルス感染症対策アドバイザリーボードにおける専門家からの資料では、今後再び感染が流行し、第9波に突入する可能性が指摘されています。5月7日より新型コロナウイルスの感染症法上の分類が現在の「2類相当」から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられます。
これに伴いコロナ検査の公費負担が無くなり、自己負担が生じます。
参考資料では、3割負担(75歳未満)の場合、今までは2,590円の負担が、3,710~4,170円程度になります。インフルエンザ同時検査の場合、少し負担が増えます。
新型コロナ治療薬の費用は、急激な負担増を避けるため公費支援を一定期間継続します。
当院は内服薬のみ対応していますので、ラゲブリオ・パキロビッド、ゾコーバの自己負担分は公費で補助されます。もし抗ウィルス薬の公費支援が無かった場合、ラゲブリオ処方・3割負担で、32,010~32,470円になるそうです。
一定期間補助は今年の9-10月に見直されることになっています。補助がなくなったらきついですね。
また、個々の陽性者についての発生届が廃止となります。隔離のための宿泊療養施設は位置づけの変更と同時に終了します。
コロナの療養機関が短縮されています。
令和5年5月8日以降、新型コロナ患者は法律に基づく外出自粛は求められません。
外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。しかし、自宅療法はしてほしいです。
位置づけ変更後の新型コロナ患者の療養の考え方
1.発症後5日間が経過し、かつ解熱および症状軽快から24時間経過するまでは外出を控えることが推奨されます。
2.発症後10日間が経過するまでは、マスクの着用等周りの方へうつさないよう配慮をお願いします。
この根拠となるデータは、発症後のウイルス排出量の推移を分析したところ、6日目(発症日を0日目として5日間経過後)前後の平均的なウイルス排出量は発症日の20分の1~50分の1となり、検出限界値に近づくからだそうです。
濃厚接触者の考え方(参考)
令和5年5月8日以降は新型コロナ患者の濃厚接触者として法律に基づく外出自粛は求められません。
同居のご家族が新型コロナにかかった場合には、ご自身の体調に注意してください。
コロナ禍では、病院や高齢者施設で外部との面会が厳しく制限されてきました。
終末期や看取り期を迎えた患者や入所者が、家族らと会えないまま、かけがえのない時間が過ぎ去る事態に陥り、面会は骨壺に入ってからという悲しい思いをした人も少なくありません。
厚生労働省は、面会の再開を促すパンフレットや動画を公開しました。
面会を「利用者の基本的権利」と位置づけ、認知機能の改善や意欲の向上が期待できるため、換気や手洗い・マスクなどの感染対策をとって面会を実施するよう促しています。
しかし、病院や施設は「感染が広がる懸念がある」「患者ごとに対応を変えれば不公平と批判を受ける」などを理由に、面会全面解禁には遠い状況です。
5月8日以降どうなるか、注目されるところです。
マスクについては先月も書きましたが、当院内ではマスクの着用をお願いします。
厚生労働省も医療機関ではマスクの着用を勧めています。
令和5年5月8日以降に接種対象者が変わります。
5月8日からは令和5年春開始接種では初回接種を完了した
1.65歳以上の高齢者、
2.5~64歳の基礎疾患等を有する方、
3.医療従事者及び高齢者施設の従事者等、
が対象となります。令和4年秋接種開始の方は初回接種を完了したすべての方になります。
5月7日までに使用しなかった3回目以降の接種券をお持ちの方の上記1から3の方は、5月8日以降も引き続きご使用いただけます。
忠岡町においてはオミクロン株対応のワクチンを既に1回接種した65歳以上の方に接種券を発送いたします。令和5年5月2日に約3000人の方へ接種券送付を予定しております。
基礎疾患をお持ちの方、医療従事者、高齢者施設の従事者の方、新たな接種券をご希望の場合は忠岡町新型コロナワクチンコールセンター(072592-5720)にて申請を受け付けております。
使用ワクチンはオミクロン株対応2価ワクチンだそうです。オミクロン株対応2価ワクチンの一般の方への接種は5月7日で終了します。
オミクロン株対応2価ワクチンの接種がまだお済みでない方は、今のうちに接種をご検討下さい。
詳しいことはお問い合わせください。
今回コロナ関連のみになってしまいました。
来月、次期の国民健康づくり計画「健康日本21」を紹介します。
先月の院内報で電解質ナトリウム・カリウムを取り上げたので、今回はカルシウム、マグネシウム、リンを書いてみようと思って調べてみました。
しかし、カルシウムだけでもかなりのボリュームになってしまい、まとまりがつきませんでした。
今回はマグネシウム(これも電解質ですが)を取り上げたいと思います。次回はカルシウムについてもう少しまとめて書きたいです。
マグネシウムは古代ギリシャのマグネシアと言う地域で採掘されたことから、その名前がつけられました。
人体に必要なミネラルの1種で、リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、体内の様々な代謝を助ける機能を持っています。
成人では体内に20から30グラム存在し、その約6割はリン酸マグネシウムや炭酸水素マグネシウムとして骨や歯に含まれ、残りは筋肉や脳神経に存在しています。
体内で起こる300種類以上もの酵素反応やエネルギー産生をサポートするミネラルで、骨形成の面でカルシウムとの関係性も深いです。
1.補酵素として機能
酵素は体内でのさまざまな反応に関与しています。マグネシウムは種々の酵素反応において補酵素として働いています。
マグネシウムはからだの機能維持に「補助的」に関わる存在と言えます。
2.骨の弾性維持
骨はカルシウムだけでなく、マグネシウムやリンなどによっても構成されています。
マグネシウムは骨の弾性や密度の維持に関与しているため、不足すると骨折などのリスクが高まる恐れがあります。
3.ホルモンバランスを維持
マグネシウムはホルモンの分泌を促す働きがあります。例えば、骨の代謝を抑制する副甲状腺ホルモンの調整もします。
4.筋肉を動かす
筋肉は収縮したり、弛緩したりすることで動くもので、マグネシウムには筋肉を収縮させる働きがあります。
マグネシウムは1日摂取量目安ですが、2019年の国民健康、栄養調査によると、マグネシウムの平均摂取量は男性で261mg/日、女性で235mg/日と報告されています。
成人の摂取推奨量と比較するとちょっと不規則傾向にあるようです。
マグネシウムは通常の食事では過剰摂取を起こしづらいとされています。
マグネシウムのサプリメントなどを過剰摂取した場合は、腸からの吸収が抑えられ下痢や軟便になりますが、この作用を生かして便秘に対する医薬品として用いられることは良く知られています。
いわゆる便を柔らかくする薬です。
酸化マグネシウム製剤は便秘薬や制酸薬として広く使われています。
便秘のガイドラインでも推奨されています。
私も便秘にはまずマグネシウム製剤を使います。
使用は本人または家族、施設のスタッフに排便状況を見ながら調整してもらいます。
胃内で制酸作用により胃酸を中和するとともに、腸内では水分の再吸収に抑制的に働き、腸管内容物が膨張し腸管に刺激を与えることで、排便を容易にします。
同剤の年間の使用者数は約4,000万人と推計されています。
もしマグネシウムが体内に過剰に吸収された場合でも、尿と一緒に排泄されるので下痢、軟便以外の症状が起こる事はほぼありません。
しかし、腎機能が低下している場合は、体内からマグネシウムをうまく排泄できない可能性があります。
血清マグネシウム濃度の基準範囲は施設により異なるが、おおむね1.8~2.4mg/dLです。
当院で採用している検査会社では、1.4-2.6mg/dlとされています。
基準範囲上限を上回れば高マグネシウム血症と診断します。
血清マグネシウム濃度が5mg/dL以上に達すると高マグネシウム血症による症状が出現します。
5mg/dL~:悪心・嘔吐、倦怠感、深部腱反射低下、心電図変化
10mg/dL~:深部腱反射消失、四肢麻痺、腸蠕動運動低下、血圧低下
15mg/dL~:意識障害、呼吸筋麻痺、心停止と記載されています。
高マグネシウム血症のほとんどがマグネシウム製剤による医原性です。
腎機能低下例へのマグネシウム製剤投与時には、定期的な血清マグネシウム濃度の測定が必須です。当院では、スクリーニングの血液検査にマグネシウムを測定するようにしています。
どのくらいからマグネシウム製剤を中止すればいいのか、調べた限り記載している記事はありませんでした。
私は3.0mg/dl以上でマグネシウム製剤を中止し、他の薬に変えるようにしています。
ちょっと変更が早すぎるかな、という気もしています。
せっかくいい調子で排便できていたのに、薬が変わったからスムーズに出なくなった、薬を戻してほしいというクレーム・恨みもよく聞きます。
しかし、副作用怖いですからね。
以前は高マグネシウム血症による死亡例も報告されています。
「重要な基本的注意」の高マグネシウム血症に関する項目には「必要最小限の使用にとどめる」「症状が現れた場合には医療機関を受診する」が追加されています。
便秘や腸閉塞のために大量のマグネシウム製剤が腸管内で停滞すると、マグネシウムが血液中に急激に吸収され、腎機能低下がなくても致死的な高マグネシウム血症を生じることがあります。
高マグネシウム血症の治療ですが、軽度の場合は原因薬剤(ここでは酸化マグネシウム製剤)を中止すればもとに戻ります。
高度の場合は利尿剤、カルシウム製剤の注射。
緊急を要する場合は血液透析です。
マグネシウムは緑黄色野菜、海藻・魚介類、豆類に豊富に含まれ、他にも幅広い食品に含まれるため、通常の食生活ではマグネシウム欠乏による症状がみられる事はほとんどありません。
低マグネシウム血症の原因は①摂取不足、②腸管吸収障害、③尿中排泄亢進に分類されます。
マグネシウム摂取不足の原因として過度な偏食、神経性食思不振症、長期間の中心静脈栄養が挙げられます。
腸管吸収障害の原因としてアルコール多飲、炎症性腸疾患、腸管切除後が多い。
胃薬で胃酸を抑える薬であるプロトンポンプ阻害薬の長期使用(おおむね1年以上)により低マグネシウム血症が起こることがあります。
マグネシウムの腸管吸収障害が原因と考えられています。
プロトンポンプ阻害薬の中止が必要となります。
尿中排泄亢進は利尿剤などの薬剤性が多いとされています。
骨を構成する成分の1つであるため、不足すると骨折のリスクが高まります。
また体内で起こる多くのエネルギー産生の補酵素としても働いており、循環器系、神経伝達や筋肉収縮、ホルモン分泌などもにも影響があります。
治療は軽症の場合はマグネシウム製剤の内服、重症の場合はマグネシウム製剤の注射です。
日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究があります。
国立がん研究センターと国立循環器病研究センターが共同で実施した「食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患発症との関連」研究では、魚や大豆などの食品に含まれるマグネシウムを多く摂取している人は、心筋梗塞などを発症するリスクが3~4割低いという調査結果がでました。
マグネシウムを多く含む魚や果物、野菜、豆類、海藻などをよく食べることが望ましいとのことです。
過去の研究では、食事でマグネシウムが足りないと虚血性心疾患の発症リスクが高まることが報告されています。
マグネシウムの欠乏は、血圧上昇、血糖代謝低下、動脈硬化促進、脂質代謝異常など、虚血性心疾患の要因と関連します。
動物実験では、高マグネシウム食を与えると血糖値と脂質値が下がるという結果になりました。
これらはマグネシウムを摂取することが、循環器疾患の予防に効果的であることを示しています。
研究チームは、「マグネシウムは魚、果物、野菜、大豆に多く含まれ、これらの食品を多く摂取することで、循環器疾患の予防が期待できる」とまとめています。
最後ににマグネシウムを多く含む食品をあげておきます(図:東京慈恵会医科大学 横田邦信先生ドクターマグネシウムと言われているそうです)腎機能の悪くない人は積極的にマグネシウムを摂るようにしましょう。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
6月10日土曜日は岸和田徳洲会病院の緩和ケア研修会に参加するため休診します。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。
先月の院内報で間違えて6月3日と書いてしまったようです。すみません。
6月10日休みが正しいです。
糖尿病の治療の指標であるヘモグロビンA1c検査が、まだ引き続き試薬の関係で院内でできなくなっています。
院外検査となり、結果判明するのは翌日です。
薬の変更などがあれば電話で連絡します。
やっぱり治療に直結する検査はすぐ出る方がいいですね。
恐れ入りますが、ご了承のほどよろしくお願いします。