2023年 2月 No.207
2月も後半となりました。
暖かい日が続いたかと思えば、寒波襲来でとても寒い日がありました。
一度暖かさに慣れると、寒い日が辛いです。
これを書いているのが、2月20日。
明日からまた寒波がくるそうです。
それを乗り切れば、2月24日頃より暖かくなるという報道があり楽しみにしています。
春の訪れですね。
それに伴ってというわけでもないですが、花粉も飛び始めています。
花粉症の方で鼻水が出だしたと薬を希望される方が多くなってきました。
花粉症の方は気をつけておいてください。
花粉症は昔に比べていい薬、いい点鼻薬がでているので、またご相談ください。
私は使ったことないですが、スギ花粉用の注射薬もあります。
また、スギ、ダニアレルギーの方には治癒が目指せる舌下免疫療法の薬があります。
当院でも数人処方していますが、手応えは結構あります。
いい薬だと思うのですが、何故もう少し普及しないんでしょうね?もったいない。
爆発的にというわけではないですが、新型コロナ、インフルエンザ感染症の方がぼちぼちでています。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられることを受け、自主検査や自宅療養の体制を縮小され宿泊療養施設も廃止されるようです。
自宅療養サポートセンターによる自宅療養者への食料品配送、パルスオキシメーターの貸与、陽性者登録センターなども廃止される模様。
一方、高齢者ら重症化リスクの高い患者への医療提供体制は維持され、高齢患者に特化した臨時医療施設や妊婦向けの宿泊療養施設の設置・運営は続けられそうです。
マスク問題も発生しています。
マスク装着は個人の判断で、ということになりそうですが、新型コロナウイルスに感染したことを示す抗体を持つ人の割合が、東京都や大阪府で約3割だったことが厚生労働省の調査でわかりました。
昨年2~3月の前回調査から大幅に増えたものの、欧米と比べて低い水準です。
ワクチンの接種と感染で新型コロナに対する免疫が高まるとされています。
政府はマスク着用の緩和方針を示したが、専門家は「日本は海外より感染が広がりやすく、適切な感染対策の継続が必要だ」と指摘します。
調査は昨年11~12月、5都府県で20歳以上の住民約8000人を対象に、抗体の有無を調べました。
その結果、感染した場合にだけ得られる抗体の保有率は、大阪が28.8%で最も高く、東京が28.2%、福岡が27.1%、愛知が26.5%、宮城が17.6%でした。
昨夏以降の感染拡大で、前回調査から特に宮城では約12倍に急増しました。
一方、海外では英国イングランドが約8割、米国では約6割などの報告があります。
日本のワクチン接種率は高いものの、感染による抗体保有率は低水準となっているのです。
大阪大の忽那賢志教授(感染制御学)は、感染とワクチン接種で強い免疫を持つ人が多い国では、マスクを外すなど感染対策を緩和しても感染が広がりにくいとし、「日本は今後も拡大期にはマスクを着けるなど対策にメリハリをつけ、小規模な流行に抑える必要がある」と語っています。
国立感染症研究所の脇田隆字所長も「感染対策を安易に緩和すれば、日本では感染が拡大しやすく、死者の増加につながる恐れがある」と訴える。
私もこの意見に賛成で、診療所内は高齢者が多く、抵抗力が下がっている方もおられるので、受診される方皆様にマスクをしておいて頂こうかなと思っています。
マスク拒否の方は受付で連絡先をお伺いして、順番が近くなればお呼び出しし、待ち時間の無いようにしようと思っていますので、ご協力頂ければと思います。
また、発熱、咽頭痛、下痢などの症状がある方についても一般の受診者とは一緒にせず、車待機か外の診療スペースでお待ち頂くか、院内の隔離が出来るスペースでお待ち頂くことになるか、一旦帰宅して頂いて受診可能な時間になったら連絡して頂くことになるかとと思います。
これはコロナ以前のインフルエンザ疑いの方も同じ対応でした。
隔離され、ばい菌扱いされたとお怒りの方もおられました。
しかし、この体制は崩したくないのでよろしくお願いします。
引き続き発熱、咽頭痛、下痢等の感冒症状のある方は、まず電話連絡してください。
今回自覚症状として比較的多い耳鳴りのことを調べてみることにしました。
2019年耳鳴診療ガイドラインというのが日本聴覚医学会から出ていたのでそれを読んでみました。概要を説明します。
これまでの疫学調査から、耳鳴り患者は全人口の15から20%とされ、65歳以上の高齢者では30%以上が耳鳴りで苦痛を感じていると言われています。
今後さらに高齢化が進み、社会環境の変化からストレス社会も進むと考えられ、耳鳴り患者はますます増加することが予想されます。
重度の耳鳴りは、苦痛、不安、不眠などの精神障害を伴いやすく、高齢者の認知機能にも影響することが指摘されています。
そのため、その対応は耳鼻科専門医だけではなく、一般診療医にも重要な課題の1つとなってきています。
耳鳴りとは明らかな体外音源がないにもかかわらず感じる異常な音感覚です。
代表的な音としてはゴー、ザー、ジー、ブーンというような冷蔵庫がするような低い音や、キーン、ピーという金属音や、セミの鳴くようなミーンという高い音などがあります。
慢性耳鳴りの定義はこのガイドラインでは3ヶ月以上続くこととされてます。
耳鳴は聴覚路(外耳-中耳-内耳・蝸牛-視床-聴覚野)のいずれかの異常興奮と考えられています。臨床的には耳鳴の多くが内耳性難聴に合併するため、内耳障害:蝸牛の自発放電の増加と考えられてきました。
しかし現在では、耳鳴は聴覚に対する脳の過剰反応によるものと考えられています。
実際詳しいメカニズムはまだわかっていません。
耳鳴は主観的な症状です。
耳鳴を訴える患者さんをみたら、発症時期、進行性、音の性状、部位などを聴取します。
重症度判定にはガイドラインではTinnitus Handycap Inventory(THI)耳鳴ハンディキャップという問診票が使われます。
耳鳴のために集中できない、聞き取りにくい、怒りを感じる、混乱する、絶望的になる、不満を訴える、眠れない等の25項目の質問事項に、ある、たまにある、ない、で点数化していきます。
この質問票で重症度の判定をします。
治療効果もこのTHIで判定します。
耳鳴は約8割に難聴を伴うので、聴力検査は必須です。
鼓膜所見で耳が原因の耳鳴かどうかを判定します。必要に応じて脳MRI検査。
専門的耳鼻科的検査(ピッチ・マッチ検査、ラウドネス・バランス検査など)を耳鼻科に紹介してしてもらうことになります。
難聴の原因も精査する必要あり、突発性難聴、メニエール病などの感音性難聴、中耳炎などの伝音難聴、無難聴性耳鳴を鑑別します。
慢性耳鳴に対する治療の目的は、耳鳴そのものに対する治療と耳鳴の苦痛に対する治療です。
聞こえの仕組み、器質的疾患の有無、耳鳴発生のメカニズム、耳鳴増悪のメカニズム、治療方法、治療目標、一般的な経過について説明します。
1)内耳機能の改善を期待する薬
①ビタミン製剤、②血流改善剤、③ステロイド
2)耳鳴または耳鳴苦痛度を軽減する薬剤
①抗けいれん薬、②筋弛緩薬、③局所麻酔薬、④抗不安薬、⑤抗うつ薬、⑥漢方薬が挙げられていました。
患者に合わせて処方するようで、特効薬のようなものは無いように感じました。
耳鳴は、ほかの音に紛れると目立たず、気にならなくなる傾向があります。それを応用した耳鳴の治療法が「音響療法」です。
音響療法は、あえて音のある環境を作って、相対的に耳鳴りの感じ方を軽くし、その状態に慣れていく治療法です。
音響療法では、マスキングの効果、順応の効果、ストレス・緊張を和らげる効果、注意をそらす効果、リラックス効果、耳鳴に関連する大脳皮質の再構築と活性化などが期待できます。
3-1 マスカー療法
古くから行われている治療にマスカー療法があります。
これは耳鳴りに似た大きな雑音を数時間聞いていただく治療です。
耳鳴りを雑音により遮断し、耳鳴りを気にしなくするだけでなく、使用後に耳鳴りが小さくなっているケースも見られます。
箱型補聴器に似たマスカー治療器がありましたが、現在は製造が中止され入手が困難になっています。またこの雑音を聞くという治療も後述のTRT療法へと発展し、現在はいわゆるマスカー療法は行われなくなりつつあります。
3-2Tinnitus Retraining Therapy(TRT療法)
耳鳴再訓練療法補聴器型の治療器(サウンドジェネレーター、TCI(Tinnitus Control Instruments ))と、心理学的カウンセリングを一緒に行う治療です。
マスカー療法との違いは、耳鳴りを隠すような大きな音を聞くのではなく、耳鳴りが気にならなくなる程度の小さい音を聞くこと。
また聞く音もノイズ音以外に、オルゴールやお寺の鐘の音のような環境音に近い音を出す機械もあります。
3-3補聴器
耳鳴を訴える人には難聴の方が多いです。
補聴器から音を入力することにより、中枢の過活動を制御する効果と、耳鳴のコントラストを少なくする効果があります。
補聴器によりコミュニケーションが改善されると、耳鳴の改善につながることになります。
複合補聴器(耳鳴治療器付き補聴器)TRT療法にあったサウンドジェネレーターがついた補聴器。各社から販売されています。
ティニトレアTTLという機種が片耳68,000円ででていました。
これが主流になりつつあるようです。
まだ保険適応ではないようです。
耳鳴りと精神状態の関連性は、耳鳴りが苦痛である場合、48~60%が抑うつ状態です。
特に抑うつ不安に関係が強く、抑うつ不安の程度と耳鳴りの苦痛を相関しています。
耳鳴りに対する心理療法は、耳鳴りの苦痛に対する治療であり、認知行動療法、バイオフィードバック、自律訓練法などがあります。
4-1認知行動療法
認知行動療法は、認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種です。
認知は、ものの受け取り方や考え方という意味です。
認知行動療法は精神疾患に対しての効果が報告されています。
厚生労働省のHPの「こころの健康」を参照してください。
4-2バイオフィードバック法
バイオフィードバック方は、筋電位、血圧、脈拍、肌の温度などの生理現象や音や光のなどの信号に変換して患者にフィードバックし、それをモニターすることにより、コントロールするようにする心理療法です。
耳鳴りに対するバイオフィードバック療法の有効性については報告はあるが、エビデンスの低さにより効果は確立されていません。
耳鳴に対する手術療法は、過去に第Ⅷ脳神経切断術、神経血管減圧術の報告があるが、効果に確実性がないこと、聴力喪失や開頭手術という手術侵襲のリスク等の点から積極的に行われていないのが現状です。
変化する磁場を使用して電磁誘導によって、脳の小さな標的領域を磁気で刺激する非侵襲的な治療方法です。
耳鳴りに対しては、2003年に高頻度刺激により57%で耳鳴りが抑制されたと報告されています.その後低頻度刺激も検討され、現時点では耳鳴り抑制のためには低頻度経頭蓋磁気刺激の方が期待できるとされていますが、持続効果が短期間であることが課題になっている。
耳鳴りに対するレーザー治療には低出力レーザーが用いられている。
低出力レーザーによる内耳血流増加、有毛細胞におけるミトコンドリア活性化の改善、蝸牛神経の興奮性抑制効果などが推察されている。
有効率報告は15~67%とばらつきが大きい。
以上、耳鳴について書きましたが、耳鳴が出現したら一度は耳鼻科で診察。
難聴の有無のチェック。
自分では難聴ではないと思っていても、聴力低下している場合があるそうです。
そのうえで、音響療法・サウンドジェネレーターまたはサウンドジェネレーターがついた補聴器でしょうね。
難聴が無く、気にならなければ放置でもいいかなと思いました。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
3月4日土曜日
岸和田市民病院の緩和ケア研修会にファシリテーターとして参加するため、休診となります。
御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。