2023年 1月 No.206

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

新しい年が始まったな、と思ったのもつかの間。
もう既に1月も後半です。
本年もよろしくお願いします。

これを書いているのが、1月25日。
10年に一度の寒波が到来した日です。
昨日夜は南海電車が雪のため止まりました。
難波にいた娘が22時頃帰る予定が、実際帰ってき たのは午前2時でした。
やっと動いた電車も難波からの普通車で、ゆっくり ゆっくり走っていたそうです。

これでも結構びっくりしていたのですが、更に驚か されたのがJR京都。
線路のポイントの切換が雪のため動かなくなり、数 台の列車が立ち往生。トイレにも行けず、立ちっぱ なしで最大11時間過ごされた方もいるそうです。
救急搬送された方もいました。
災難にあわれた方にはお気の毒でしたが、今後同じ ようなトラブルが起こった時のマニュアルは整備し ておいてほしいものです。

 コロナに感染しました。 

令和4年12月28日・水曜日、昨年の最後の診療の 日でした。
午前中に外来をして、午後訪問診療をしてました。
訪問診療終了後、ちょっとした約束があったので、 近くの居酒屋に伺いビール一杯だけ飲んで帰りまし た。ビール一杯だけなのにちょっとふわふわするな と思って、熱を測ったところ37.4℃。
私にしては高いので、抗原検査したらコロナ陽性で した。奥田先生にラゲブリオとカロナール処方して もらって、隔離生活に入りました。
年末年始休み、すべてが隔離で誰にも会えませんで した。予定がすべてキャンセルされました。

自宅は娘が陰性なので近寄れず。娘が陽性だったら 、気にせず自宅に出入りできたところなのですが。
医院の隣の療養通所介護・アネトスで過ごしていま した。事務長がアネトスで休日出勤する日は診察室 に避難してました。

幸い37.5℃以上の発熱や酸素飽和度が低下するこ とはありませんでした。
咽頭痛が12月29日から1月1日までありましたが 、1月2日以降は無症状でした。
1月5日より通常診療を開始しています。

まあ考えようによっては、年末年始休みに隔離期間 でだったことは幸だったかもしれません。
診療期間中にコロナになったら、外来予定患者の受診日を変更したり、在宅患者の訪問予定を変更しな いといけないところでした。

 コロナが2類から5類に 

感染症法は感染症を危険性の高い順に1~5類に分 類しています。

1類はエボラ出血熱、ペスト

2類は結核、SARS

2類相当として、新型インフルエンザ感染症、新型 コロナ感染症が挙げられています。

ついでに書くと、3類はコレラ、細菌性赤痢、4類 はデング熱、日本脳炎、5類が風疹、季節性インフ ルエンザです。

政府は新型コロナウィルス感染症を現行の2類相当 から、5類にしようと検討しています。
背景には現在の8波がおさまりつつあること、重症化、死亡の率が低くなってきたことがあるようです 。

新型コロナウィルス感染症が2類から5類に引き下 げられるとどうなるのでしょうか。
入院勧告や指示、感染者や濃厚接触者への自宅療養 ・待機要請などができなくなります。
飲食店の営業制限や外出自粛要請もできなくなり、 社会経済活動の制約が大幅に緩和されます。

現在、医師は診断した患者のうち重症化リスクの高 い人の情報を保健所にに届け出ることが義務づけら れています。
コロナ5類移行で届け出が不要になり、政府は一部の医療機関だけが報告する定点把握の導入も検討し ています。

医療費の窓口支払い分は現在は公費負担ですが、5 類は通常、患者の自己負担となります。
ワクチンも自己負担が出ます。
しかし政府は公費負担を当面維持し、段階的に廃止 する方針のようです。
ワクチン接種についても公費負担を高齢者などに限 定することを検討しています。

また、新型コロナを診ます、入院させます、という 医療機関には補助金が供与されていましたが、これ が無くなる可能性が高いです。
しかし、政府は国民の受診控えや医療現場の混乱な どを避けるため、公費負担は特例的に継続し、段階 的に廃止する方針だそうです。

今後、どのような感染対策をいつまで続けるかなど を関係閣僚が検討する。
マスク着用については、自己判断でとのことです。

個人的意見ですが、5類相当にすることには賛成で す。
しかし、どの医療機関でも診療が可能とされていま すが、拒否する診療所、病院は多いと思います。
規制緩和により、感染が拡大することは懸念されま す。コロナ診療・入院受け入れ病院への補助金がな くなることで、今までコロナをみていた病院が今後 はみません、という危険もあるかと思います。

診療に自己負担が発生することで、受診控えになる ことも心配されています。政府にはこうしたハード ルを一つずつクリアーして行ってもらいたいです。
我々もできるだけ現場の声を上げるようにします。

看取りとACP

令和5年1月14日土曜日、泉大津市薬剤師会の主催の、イカロスネット(医療介護地域推進ネット)・多職種研修会に参加してきました。
本人の思いをつなぎ、叶える・人生100年時代の在宅医療というタイトルで、私に与えられたテーマは看取りへの取り組みについてでした。
発表内容の概要を記載します。

看取りとは

看取りとはもともとは、「病人のそばにいて世話をする」、「死期まで見守る」、「看病する」という、患者を介護する行為そのものを表す言葉でした。最近では人生の最期(臨死期)における世話・見守りをもって、「看取り」と言い表すことが多くなっています。

このため、看取りは緩和ケア、終末期ケア、エンゼルケア(亡くなった後に行う死後処理)、葬儀・埋葬と密接な関係にあります。

医療者(特に医師)は「死亡診断をする」ことを看取りと言う場合が多いです。

死亡場所について

戦前、戦後すぐは、人がお亡くなりになるところは主に自宅でした。
昭和26年では82.5%の方が自宅で亡くなっておられました。病院死亡は9.1%でした。
それが徐々に病院死亡が増え、昭和51年には自宅死亡と病院死亡は同数になり、以後病院での死亡が増え、平成21年には病院での死亡が約80%、自宅での死亡が約13%となっています。
他は老人ホーム・診療所等です。

各国の死亡場所の構成比を見てみます。
フランスは、病院死亡が58.1%、自宅死亡が24.2%、施設が10.8%でした。
スウェーデンでは、病院死亡が42%、自宅死亡20%、施設が31%です。
オランダでは、病院死亡が35.3%、自宅が31%、施設が32.5%とバランスよくなっています。

療養場所の選択

平成20年に行った厚生労働省の終末期医療に関する調査では、終末期に自宅療養を希望される方は63.3%でした。自宅で最後まで療養するのは実現困難と考える方は66.2%でした。

なぜ実現困難なのでしょうか?一番多い理由は、介護してくれる家族に負担がかかるということでした。
2番目が病状が急変したときの対応が不安であるでした。3番目、経済的負担が大きい、4番目、往診してくれる医師がいないでした。

療養場所の選択はその状況によって変わります。
例えば末期癌で、食事や呼吸が不自由であるが、痛みはなく意識判断力は健康な時と同様の場合と言う状況ですと、自宅で療養したいと言う方は47%でした。
病院で療養したい32.5%、施設で療養したいが10.7%です。

次に重度の心臓病で、身の回りの手助けが必要であるが、意識を判断力は健康な時と同様の場合と言う病状ですと、医療施設病院で療養したい方が48.0%と多く、自宅28.3%、介護施設は17.6%でした。

3番目に認知症が進行し、身の回りの手助けが必要で、かなり衰弱が進んできた場合は、介護施設での療養が一番多く51.0%でした。
次に病院26.2%、自宅14.8%でした。

このように、病状によって療養場所の希望が変わる場合があるということです。

当院の在宅医療事情

現在在宅患者数は、施設含んで85名前後です。
年間の在宅看取り数は約30例。昨年は33例。
内訳は良性疾患8例、悪性疾患(癌)25例でした。在宅依頼元は病院、訪問看護ステーションが多いです。

原則すべての在宅患者に訪問看護をつけてもらいます。自院では訪問看護をもっていないため、外部の訪問看護ステーションに依頼しています。
緊急時のファーストコールは訪問看護ステーションとしています。
救急車は呼ばないように、何かあったらまず訪問看護ステーションに連絡してくださいとお伝えしています。定期訪問は火曜から金曜の午後の時間帯としています。
当院看護師、運転手の3人で訪問しています。

夜間コールは平均月5件で、実際に夜間診療(ほぼ死亡診断)に行くのは平均月2件程度です。
不在時は強化型診療支援診療所の6施設に代理を依頼しています。

今年の年末から年始、1ページ目にも書きましたが、コロナになって自宅療養していました。
令和5年1月2日夜10時、1月3日朝7時の二回、心肺停止になった在宅患者がおられました。
訪問看護ステーションに診断書を預け、代理をお願いしていた長野正広先生に死亡診断していただきました。正直、正月休み明けまで大丈夫だろうと思っていたので、びっくりしました。

私が在宅医療を始めた経緯

平成19年、私が病院外科勤務のころ、胃がん末期患者さんがいました。胃全摘後再発で、食事は全くできず、高カロリー輸液をしていました。
また癌の浸潤なのか、チューブトラブルがあったのか、原因は不明だったのですが、一旦は閉じていた十二指腸断端が解離してしまい、膿瘍をつくってしまいました。身体の外から管を腹腔内に入れ、膿を外に出す処置をしていました。
あと余命数週間の末期状態と考えていて、家族には説明しました。
当時本人には癌という説明はしていませんでしたが、感づいておられてと思います。

こんな大変な状況だったのですが、本人ご家族より家に帰りたい、とのお申し出がありました。
犬を見たいというのと、家の改修が終わったのでとのことでした。
こんな状況で退院はとても無理だろうと考えていたのですが、当時病院で在宅診療を担当していた総合診療科に相談したところ、大丈夫でしょうということで転科させ、退院。
自宅で看取って頂きました。

2週間くらいだったと思いますが、本人、家族ともにとても喜んでおられたとのこと。へ-、そんなことができるんやというのが私の感想でした。

平成20年8月、私の父が胃がん末期、脳転移で岸和田徳洲会病院に入院しました。
私は医院継承のため病院外科を退職し、忠岡に帰ってきました。父はあまりいい状態ではなく、あと一か月くらいかなという状況でした。
上記の経験があったので、本人と母の意向を聞いて、家に連れて帰ることにしました。
色々準備して、9月11日退院。

当時の徳洲会内科部長の小西先生が看護師さんと一緒にほぼ毎日訪問して下さいました。
末梢点滴も麻薬処方もしてくれ、17日間自宅で過ごし、9月28日に息をひきとりました。

17日間の自宅療養でしたが、母・弟2人の満足感の高さに驚きました。それでこれは人に提供してもいい医療なのかなと考えるようになりました。

人生の終末期を考える

縁起でもない、と言われるかもしれませんが。
現代医学では治癒不可能な進行性の疾患と診断されたら、家族の顔もわからないほど認知症が進んで、食べられなくなったとき、など。
人生最後どんな療養をしたいのか、どんな医療を受けたいのかを考えておくのは大切なことです。

厚生労働省は、もしものときのために、これからの医療・ケアに関する話し合いをすることを勧めています。
自らが希望する医療やケアを受けるために、大切にしていることや望んでいること、どこでどのような医療やケアを望むかを自分自身で前もって考え、周囲の信頼する人たちと話し合い、共有することが重要です。
人生会議という愛称がついています。

ちなみに、私の信頼する人は娘です。
娘には私が呆けて食べられなくなったら、全ての医療は拒否すると伝えています。
呆けて、には意識不明の状態も含みます。
覚醒していても娘の顔がわからなくなった時、脳の障害、外傷などで意識が無くなり回復するみこみがないときなど。
輸液、胃瘻などは不要、と伝えてます。

呆けていても食べられるときは、食べさせておいてくれとも。食べられなくなったときは、呆けていれば何も処置はしなくてもいいです。

意識清明で食べられない時(神経難病など)はすべての医療を受けます。人工呼吸も受けます。
悪性腫瘍の場合は適当に。末梢輸液でいいです。
悪性腫瘍は基本、手術、ファースタラインの化学療法までは受けます。
効果ない時緩和ケアのみでいいです。
悪性腫瘍末期で輸液すると体内に貯留する場合は、輸液もしなくていいです。後は適当に考えて。
こんなことを娘に伝えています。

これが私のACPですが、基本的には多分この先も変わらないと思います。

在宅での看取りもしものときのために@ACP

自宅では家族と最後の濃密な時間が過ごせます。
残された家族の満足度が高いです。
独居でも可能です。

しかし、決して強制するものではありません。

最期まで家で療養するために

在宅医療・在宅ケアについては、ご本人・ご家族の希望に応じて、多職種が連携してサポートします。患者家族には説明は統一しておく必要があります。
各職種で違うことを言われると不安になります。

苦痛はできるだけ緩和します。
今後の療養で起こりうることは、急変なども含め、医師・看護師から説明します。
可能なら家族等や医療・ケアチームと、最期をどのように迎えたいかよく相談します。内容については、状況に応じて見直すことも大切です。

在宅医療を提供する医師、父を自宅で看取った家族としても、自宅で最期を過ごすのはいいものとお勧めしています。

 

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★休診のお知らせ★

3月4日土曜日
岸和田市民病院の緩和ケア研修会にファシリテーターとして参加するため、休診となります。
御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。