2022年12月 No.205

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

12月後半になりました。
あと10日で今年も終わります、というタイミングでこれを書いています。一年がたつのは本当に早い。年賀状の準備をしなければ。

12月中旬になり、急に寒くなってきました。
豪雪により、新潟で車が立ち往生するニュースがありました。2年前にも確か同じようなニュースがあったような。
これは本当に日本?と思えるくらい衝撃的なニュースでした。
寒い季節、車に乗る人は立ち往生対策をしてください。タイヤチェーン、簡易トイレ、携帯用カイロ、水など車の中に準備しておくようにしてください。
大阪は大丈夫だろうと思っている方は多いでしょうが、念のため。

 今年の漢字 ・流行語大賞 

年末恒例の今年の漢字は「戦」でした。
ロシアのウクライナ侵攻、北京冬季オリンピック、サッカーワールドカップがあったためのようです。

私が選ぶ今年の漢字は「再」。
コロナ禍ではありますが、いろいろな規制が緩和され、以前の生活に戻ろうとしているところ。
再出発、再生の期待を込めてといったところでしょうか。来年の漢字は「進」がいいなと思ってます。

ちなみに流行語大賞は村神様が選ばれています。
プロ野球ヤクルトの史上最年少三冠王の村上選手。
頼りになる神様のような存在だからでしょうね。
素晴らしい活躍でした。大リーグ希望とのこと。
阪神ファンからしたら、一刻も早く行ってほしいです。
流行語大賞、私としてはベストテンに入っていた「知らんけど」が選ばれてほしかった。

 新型コロナ感染症 

今年の10月以降感染者が減っていたのですが、ここにきてまた増えだしてきています。
12月20日の大阪の感染者数は12088人で、9月1日以降超えていなかった1万人を突破しました。
しかし、行動規制は無く繁華街には人が戻ってきていますし、外国からの旅行者もふえてきています。
分科会の尾身茂会長がコロナ感染したのはちょっと驚きでした。

もう新型コロナ感染症をインフルエンザと同じ5群にすればいいのでは、という議論が出ています。
第6波以降オミクロン株が主流となり、死亡率が低下してきています。
財務省の資料によると、60歳以上の死亡率はデルタ株が流行した昨夏の第5波では2.5%でしたが、今夏の第7波では0.48%(大阪府)となり、季節性インフルエンザ(0.55%)と差がなくなっています。

5類になれば、医療逼迫を軽減できる可能性があります。
現在発熱外来・入院加療は一部の医療機関に限られていますが、幅広い医療機関で対応が可能となります。
焦点となるのが、医療費やワクチン接種の公費負担の見直しです。
現在は自己負担はありませんが、5類になれば生じるようになるからです。
厚労省は病原性や感染状況などを踏まえながら、検討を慎重に進め、年内にも方向性を出す考えとのことです。
私としては日本医師会の見解と同様、見直しには賛成ですが、公費負担はやめるべきではないと考えています。

開業医で出来るコロナ治療法は増えています。
今まで抗ウィルス療法はラゲブリオだけでしたが、パキロビット、ゾコーバが使えるようになっています。
パキロビットは有効率は高いのですが、併用薬の規制が多くあります。
当院でも1例ですが使用しました。
ゾコーバは12歳以上の軽症・中等症患者が対象。
重症化リスクの低い人も使えます。
当院現在使用申請中です。

また、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザを同時に調べられる抗原検査キットを、薬局やインターネットで購入できる一般用検査薬として初めて承認しました。承認したのは、検査薬メーカー「富士レビオ」(東京)の製品。
発熱などの症状がある時に、患者が鼻の入り口付近の粘液を綿棒で採取し、感染の有無を判定します。
20分程度で新型コロナとインフルエンザの両方の結果が出ます。

 認知症の新薬 

製薬大手エーザイなどのチームは、開発を進めてきたアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の最終段階の臨床試験で症状悪化を抑制する効果がみられたとする論文を発表しました。
「レカネマブ」は脳内に蓄積する異常なたんぱく質「アミロイドβ(Aβ)」を除去する薬剤。
1年半にわたり2週間ごとにレカネマブを注射する集団と偽薬を注射する集団に分け、記憶力や判断力など認知症の悪化度合いの変化を比べた。

論文によると、レカネマブの方が偽薬より症状の悪化を27%抑制する効果が確認された。
同社は、11月30日の記者会見で「病気の進行を7か月半程度遅らせたことに相当する」と解説しました。レカネマブは日本来年3月までに承認申請するとしています。
しかし、高そうな薬ですね。いくらになるのかな?

敗血症

親しみやすい人柄でテレビや映画などで幅広く活躍した俳優の渡辺徹さんが11月28日、敗血症のため亡くなりました。61歳でした。
渡辺さんは11月20日に発熱や腹痛などの症状で細菌性胃腸炎と診断されて東京都内の病院に入院していましたが、9日後に亡くなったということです。同年代で、ずっとテレビでみてただけに驚きました。今回は渡辺さんの命を奪った敗血症について、概説します。

敗血症とは「細菌ないし細菌が産生したトキシン(毒素)が血中に侵入し、全身的な反応、臓器障害などを引き起こしている状態」と定義されていました(Churchill医学事典1989年版)。

私は診療所開業後20年、敗血症の診療にあたったことがありません。
敗血症は重症であることが多く、病院・集中治療室での治療が必要なことが多いためです。
なので、私の敗血症の知識は20年前から進歩していませんでした。
感染症で入院してきた患者さん、ちょっと重症感がする人は血液培養をして、血液中に細菌が確認されれば敗血症と診断していました。

しかし現在の考え方は、敗血症は血液中に細菌がいるかどうかは関係ありません。
血液中に細菌が証明されるのは菌血症。
敗血症=菌血症ではありません。

細菌感染によって全身反応が起こり、これによって重要な臓器の障害が引き起こされることが敗血症なのです。
1992年に「敗血症=感染+SIRS」と考えられるようになりました。

SIRS (Systemic Inflammatory ResponseSyndrome; 全身性炎症反応症候群)とは、
①侵襲に対して免疫担当細胞から産生された炎症性サイトカイン優位となった状態(高サイトカイン血症)があり、
②発熱、頻脈、頻呼吸、白血球増多などの全身的な炎症反応があり、さらに
③好中球や凝固系が活性化されている状態があること
によって、SIRSの重症化と遷延化が生じ、臓器障害が引き起こされると考えられます。

感染に対する生体の免疫系の過剰反応により、臓器反応が出現することが敗血症と定義されました。
今回は敗血症ガイドラインと日本集中治療医学会と日本救急医学会の敗血症情報サイト・敗血症.comから引用して敗血症について解説します。

敗血症は、感染症を発症された方の体内でおこる過剰な生体反応によって、組織障害や臓器障害をおこす致死性の病態です。
日本国内では敗血症で、年間約10万人(推定)もの方が亡くなっています。
敗血症の原因は感染症です。

原因となる感染症とは、微生物[細菌やウイルス、カビなど]が体内に侵入することを言い、微生物が侵入すると私たちの体は防御反応を起こして、微生物を退治し感染症を治そうとします。
ときには防御反応がコントロールできなくなり、自分自身の体の臓器(心臓、肺、腎臓など)が障害を受けることがあります。これが敗血症です。

 感染症 

病原体が生体内に侵入して、増殖することです。
病原性の微生物、細菌・ウイルス・真菌(カビ、酵母等)が、人の体内に侵入します。
具体例をあげます。

肺炎は多くが感染症によるものです。
中には自己免疫性に起こるものや、薬剤の副作用でおこるようなものもあります。医師は肺炎を見たら感染症かそうでないか、感染症だとしたら原因微生物が何かということを考えます。

下痢は感染性腸炎の症状としてよく見られますけれども、こちらも様々な原因で起こります。
多くはウイルス性腸炎かもしれませんが、細菌性、自己免疫、薬剤性のほか、過敏性腸症候群のようにストレスが原因になる場合もあります。

膀胱炎も感染症によるものと非感染症のものがあります。
腫瘍の治療で用いる放射線が原因となることもありますし、尿管結石などの異物が原因になる場合、薬剤性など原因は多岐に渡ります。
多くの急性膀胱炎は細菌感染によるものです。

傷の化膿は感染症によるものです。膿の正体は、感染性微生物に対抗すべく集められた白血球の塊のようなものです。

敗血症は早期発見が大切です。
肺炎、下痢、膀胱炎、傷の化膿などの身近な感染症を発端に次のような症状が出現する場合は、敗血症を疑います。
敗血症は、頭痛がする、咳が出る、痰が出る、ぶるぶる震える、高い熱が出てぐったりしている、関節が痛い、お腹が痛い、トイレが近いなど、まず「感染症かな」と、何か感染症を疑う症状があることを確認します。
「風邪っぽい」などという感染症を疑う症状に加えて、次の3つなどをチェックしてください。

《3つのチェックポイント》

①意識が変
意識がいつもと違い反応が悪かったり、頭がボーっとしたりします。話が鈍かったり、話が混乱したりすることもあります。

②呼吸が速くなる
敗血症を疑った場合には、1分間の呼吸の数を胸の上がり方や鼻息などから、数えるようにしてください。激しい息切れには、注意が必要です。

③血圧が下がる
現在、血圧計を置かれているご家庭が増えているようです。
血圧を計ることができるならば、収縮期圧(上の血圧)が100mHg以下となる場合、普段から血圧が低い方を含めて注意してください。

以上の3つをチェックを行ってください。
これらのどれかが当てはまるようでしたら、病院に行くことをお勧めします。

その他の注意としては、体温を測っていただき体温が高い、または体温が低い、また、脈を触れる技術があれば脈が速い、症状としてはフラフラする、ふらつきがある、皮膚の色がまだらに変色しているなどに注意してください。
感冒様症状に加えて、これらの症状があるときも病院を受診することをご検討ください。
これは病院にきてからのチェックポイントと同じです。

Quick SOFA score
1. Glasgow Come Scale 13点未満
2. 収縮期血圧 100mmHg以下
3. 呼吸数 22回/分以上
≪3項目のうち2項目を満たす場合に敗血症を疑い、臓器障害の評価を行うことが推奨されます。

GCS (Glasgow Coma Scale)の評価法
E(開眼)4点
V(言語反応)5点
M(運動反応)6点
の15点満点です。

Quick SOFA scoreが2項目事情の場合、動脈血液ガス、血液検査で血小板数、凝固系の検査、肝腎機能、心不全マーカーなどを調べます。
血液培養、感染が疑われる部位の検体の細菌検査、胸腹部CT(出来れば造影で)検査と同時に治療開始です。

敗血症患者は病院で治療を受けます。
医師は
①感染症をコントロールし、
②全身管理により血圧低下とそれに伴う臓器障害を防ぎます。
速やかに抗菌薬を投与します。

また感染により障害された組織を外科的に切除することもあります。
また血圧と血液中の酸素濃度を維持するために、多くの患者は酸素投与と大量の輸液による初期治療を受けます。
その他の治療法として、必要であれば人工呼吸器管理や人工透析などの全身管理も行うこともあります。

 敗血症にかかりやすい人 

免疫力が低下していたり慢性的な病気(たとえば糖尿病など)を持っている65歳以上で敗血症は最も起こりやすいとされています。
担癌状態、がん化学療法中の人は免疫力が低下していることが多いです。また免疫システムがまだ完成していない1 歳未満の乳幼児も敗血症のリスクが高いと言われています。

渡辺徹さんは30歳から糖尿病を発症し、虚血性心疾患、大動脈弁の手術をして、糖尿病腎症のため、週3回の透析をされていたそうです。
免疫力が低下していた可能性が高いです。
糖尿病については、妻である榊原郁恵さんが気をつけて食事を準備してくれましたが、隠れて丼飯3杯を食べていたという情報もありました。

 敗血症の予防 

一般的な感染症、コロナ予防とほぼ同じです。
頻回な手洗い。あなたはもちろん、周りの人にもしっかり手洗いを頻回にしてもらう。
人混みや風邪や感染のあるような人を避ける。
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン、コロナワクチンの接種。
毎日お風呂に入り、シャワーを浴びる。
皮膚の乾燥や肌荒れを予防するために、無香料のローションをつける。
柔らかい歯ブラシで歯磨きや歯茎の手入れを行う。
食べ物や飲み物、カップ、歯ブラシなどの器具を他人と共有しない。
肉や卵を食べる際には、殺菌処理し調理する。
生野菜やフルーツは丹念に洗う。
ペットや家畜の糞尿との接触を避ける。
手袋を着用している場合でも、動物やその排泄物を触った後には、速やかに手を洗う。
庭の手入れの際には手袋を着用する。
などが敗血症ドットコムで推奨されていました。

敗血症の急性期を脱した方は罹患前と同様の状態になることが期待できます。
そのためにはリハビリテーションが必要です。
個人にあったメニューを作成してもらって、社会復帰につとめます。

敗血症対策に必要な5つの柱
敗血症対策は
予防、
早期発見、
感染症治療、
全身管理、
リハビリテーション
が5つの柱になります。敗血症ドットコムではシンボルマークを作成しました。
5色の花弁で表現し、敗血症の啓発に努めておられます。

敗血症は死にいたることもある重篤な状態です。感染症や敗血症の症状がある場合には、速やかに医療機関を受診してください。
医学的に緊急を要します。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★年末・年始休暇のお知らせ★

年末は12月28日(水)まで診療します。

12月29日(木)~1月3日(火)まで休診させていただきます。
1月4日(水)から通常診療となります。 

ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。

★インフルエンザ予防接種★

新型コロナウィルス感染症との同時流行の可能性もあり、インフルエンザ予防接種が勧められています。
忠岡町在住の65歳以上の方は無料で接種します。
期間は令和5年1月31日までです。
一般の方は、3500円です。
一回接種でお願いします。