2022年10月 No.203
10月も終わりに近づいてきました。
朝冷え込み、昼まあまあ暑く、夜はまた冷え込み、寒暖差の大きい日が多かったようです。
ここにきて急に冬の様相を呈してきました。半袖を着ることは無くなりました。
ようやく衣替えです。
秋が短く感じます。
今年もあと2か月。
来年のカレンダー購入しました。
本当に時のたつのは早いです。
インフルエンザ予防接種しています。
忠岡町在住65歳以上の方は無料で接種できます。
60-64歳で、心臓、呼吸器、腎臓、免疫能に重篤な障害(障害者手帳一級相当)を持っていることを身体障害者手帳または医師の診断書により証明できる方も無料で接種できます。
それ以外の方は3500円です。
インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの同時接種が可能です。受付にご相談ください。
今年の夏は南半球(特にオーストラリア)でインフルエンザの流行があり、日本でも流行するのではと危惧されています。
コロナ流行後、2年間はインフルエンザはあまり見ませんでした。
というか昨年は何件か検査しましたがゼロでした。
インフルエンザが流行しなかったということは、私たちのインフルエンザに対する免疫が下がっているということで、一度流行し始めると大流行になる危険性があります。
海外からの入国緩和もあり、今年はちょっと危ないかなと思っていますので、できるだけインフルエンザ予防接種受けるようにしてください。
オミクロン対応コロナワクチン接種始まっています。4回目の接種クーポン券が3回目の接種終了された方に年齢を問わず配布されています。
ワクチン接種後、次のワクチン接種まで今まで6か月だったのですが、3か月に短縮されています。
5回目のワクチン接種のクーポン券が届いている方もおられます。
私はワクチン推奨派で、聞かれたら接種をお勧めしています。私も4回接種しています。
5回目もクーポンが届いたら、打ちます。
反対派の方もおられるでしょうから、コロナワクチン接種は自己の判断でお願いします。
2020年11月16日以降、保健所業務の効率化のため、日々の感染状況の公表における個票を廃止したことに伴い、陽性者の正確な把握が出来なくなっています。
傾向として、現在第7波は終息しつつあるようです。大阪市ホームページによると、病床使用率は15.8 %で、重症病床使用率は2 %で少なくなっています。
大阪府新型コロナ警戒信号も緑色です。
このまま終息してくれたらいいのですが。
第8波を懸念する声も上がっています。
引き続き感染対策してください。
今年のノーベル生理学・医学賞の受賞者に、絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、人類の進化に関する研究で大きな貢献をした、ドイツの研究機関の研究者で、沖縄科学技術大学院大学客員教授のスバンテ・ペーボ博士が選ばれました。
ペーボ博士は絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、4万年前のネアンデルタール人の骨に残っていた遺伝情報を詳しく調べて、現代の人類であるホモ・サピエンスと比較しました。
その結果、ホモ・サピエンスはネアンデルタール人の遺伝情報の一部を受け継いでいることを突き止め、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人とで種が交わっていた可能性を明らかにしました。
さらに、絶滅した人類の遺伝情報は、標高の高い土地での生存を有利にしたり、ウイルスに対する免疫の反応の仕方に影響したりするなど、いまのわたしたちの体の仕組みをより深く理解するのにつながっています。
また、ペーボ博士の研究チームは、2020年9月、新型コロナの患者3000人以上を対象に分析した結果、重症化リスクを増加させることが確認された遺伝子が、ネアンデルタール人から引き継がれたもので、この遺伝子を持つ人ではリスクが倍増すると医学一流紙「ネイチャー」に発表しました。
また、2021年2月には、新型コロナに感染して重症化した患者2200人余りの分析で、同じくネアンデルタール人から引き継がれた、別の遺伝子がある人では、逆に重症化が22%抑えられることを明らかにしたと報告しました。
およそ4万年前に絶滅したネアンデルタール人の免疫システムが、現代の私たちに良い意味でも悪い意味でも影響を与えているのは驚きです。
狭心症とは、心臓を栄養する冠動脈が狭くなり、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養分が届かなくなる疾患です。冠動脈が細くなり、心筋に十分な血液が行き届かなくなると心臓から発するSOS信号として胸の痛みや圧迫感が生じます。
この症状がおさまる場合は狭心症。
冠動脈が完全に塞がってしまい心筋に血液が流れない状態が続くと、その部分の心筋が壊死に陥ってしまいます。この状態が急性心筋梗塞です。
狭心症には、労作性狭心症と冠攣縮性狭心症の2種類があります。
労作性狭心症では、運動など心臓が活発に動こうとしている時に、冠動脈の狭窄のため、必要な血液が心筋に供給ができないので、胸に痛みや圧迫感を覚えます。
労作性狭心症の原因はほとんどが動脈硬化です。
動脈硬化とは、動脈の内側にコレステロールなどがたまり、血管が詰まったり硬くなったりして内腔が狭くなった状態です。
脂質異常症、糖尿病、高血圧、タバコで動脈硬化が促進されます。
労作性狭心症の方は一般的な検査後、冠動脈CTで血管の狭窄程度を確認します。
狭ければカテーテル検査をして、狭くなった冠動脈を拡げる治療をします。カテーテル治療ができなければ、バイパス手術をします。
一方、夜間、早朝の安静時に冠動脈が痙攣により狭くなり、心臓の筋肉に充分な酸素を供給できずに起きるのが冠攣縮性狭心症です。
安静時狭心症、異型狭心症と呼ばれることもあります。
今回こちらを少し詳しくお話していきます。
最近検査・治療を病院にお願いした症例があり、冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドラインを改めて読む機会があったので、できるだけわかりやすいように書こうと思います。
狭心症や心筋梗塞を「虚血性心疾患」といい、日本全国で患者数は100万人を越え、毎年7万人が亡くなっています。
冠攣縮性狭心症の頻度は施設間で差がありますが、全狭心症例の約40%が冠攣縮性狭心症とガイドラインに記載されていました。
冠攣縮性狭心症の年齢分布を調べると、高齢者に比べ、比較的若い人に多い傾向が認められます。
日本人は欧米人に比較して冠攣縮性狭心症が多いと言われています(欧米人と比較して頻度が3-4倍高い)。
また、急性心筋梗塞後の患者を対象に冠攣縮薬物誘発試験を実施した国際共同研究では、欧米人の陽性率が37%であったのに対し、日本人では80%が冠攣縮陽性でした。
この人種差は他の研究でも指摘されており、冠攣縮が日本人の虚血性心疾患発症に大きく関与していることが強く示唆されます。
日本人では夜間の突然死の頻度も高いのですが、これにも冠攣縮の関与が示唆されています。
冠動脈の攣縮・痙攣の原因はいろいろあります。
そのひとつに一酸化窒素(NO)の合成・分泌低下が挙げられています。
NOは冠動脈中の血液の流れに応じて血管を拡張させたり、血小板の凝集や血液の凝固を抑える作用を有しています。
NOの冠動脈壁からの合成・分泌が、冠動脈中の良好な血液の流れを保っています。
なんらかの原因により、冠動脈壁の機能が低下し、NOの合成・分泌も低下することによって冠動脈が収縮しやすくなり起こるといわれています。
また、動脈硬化部位で攣縮が起こりやすいことも知られています。
一方、炎症が冠攣縮を惹起することも動物実験で証明されており、その機序として血管平滑筋細胞のRhoキナーゼ系の亢進に基づく過収縮が関与することが示唆されています。
このあたりは難しいので、この辺で。
冠攣縮性狭心症発症の危険因子として、喫煙、飲酒、糖尿・脂質異常症、ストレスが挙げられています。
遺伝的要因:以前は冠攣縮性狭心症には遺伝は無いといわれていました。
しかし、冠動脈疾患には家族内発症が比較的多く認められ、生活習慣が共通するためだろうと考えられていました。
生活習慣に問題がなくても発症する例もあることから、発症に遺伝要因も関与することが示唆されています。
近年、分子生物学の進歩により、疾患の病態に関わる遺伝子が次々とクローニングされ、ゲノム多型や変異も同定されるようになり、生活習慣病などの多因子疾患の分子疫学的研究が盛んに行われるようになりました。
冠攣縮性狭心症にも遺伝子異常がいくつか指摘されています。
今回の症例も家族内発症があり、母が冠攣縮性狭心症で投薬治療中でした。
今後遺伝要因が解明されていくと思われます。
自覚症状は労作時狭心症と同じく、狭心痛といわれる胸の痛み、胸がしめつけられる、胸の中が焼けつくといったような胸部絞扼感や胸部圧迫感、胸部重圧感等として訴えられることが多く、出現場所も胸部のみとは限らず、肩(特に左肩)、背中、首、頬、歯、後頭部、みぞおち等に出現することもあります。
症状の持続時間は、労作性狭心症では多くが数分以内に消失するのに対し、冠攣縮性狭心症の場合は症状の程度が強く、持続時間も数分~30分も続き、冷汗、吐き気、嘔吐、便失禁、さらに意識消失を伴うものまであります。今回の症例も失神があったため、救急搬送されています。
安静時心電図は撮りますが、胸痛の無い場合、正常であることが多いです。
24時間心電図で胸痛のあるときの波形でST上昇などの所見があれば、ほぼ確定できます。
冠動脈CT検査、冠動脈造影検査は必要となります。造影で狭窄が無い場合、冠動脈造影検査中にアセチルコリンまたはエルゴノビンを注射し、冠攣縮誘発試験を行います。
胸部圧迫感などの症状が出現し、冠動脈が痙攣して狭くなる所見があれば、冠攣縮性狭心症の確定診断となります。今回のケースでもエルゴノビン注射で冠動脈狭窄が再現されていました。
主に薬物療法が中心となります。
その前に、禁煙、禁酒、ストレスや冬場の寒冷回避が必要です。また高血圧、糖尿、肥満のコントロールも必要となります。
1.硝酸剤
硝酸薬は冠攣縮性狭心症例の冠動脈内皮機能の障害によるNO活性の低下を補います。
発作時にニトログリセリンが著効します。
ニトログリセリン(ニトロペン)を舌下投与(舌の下に薬を置き、舌の血管に直接浸透させる薬の飲み方)することや、スプレー(ミオコールスプレー)を口腔内噴霧します。
スプレーは口腔内が乾燥している場合や意識レベルの低下した状況においても投与可能です。
スプレー噴霧は、舌下投与に比べて血中濃度の立ち上がりが早いことが報告されています。
通常1~3分で発作は消失しますが、5分経過しても効果がみられない場合はさらに1錠(噴霧)を追加します。
これでも発作が解除できない場合は救急車で病院に行く必要があります。
発作は深夜から早朝にかけて多いので、寝るときは枕元にニトロペンかミオコールスプレーを置いておく必要があります。
発作の予防には長時間作用型硝酸薬(ニトロール、フランドルなど)が有効です。
2.カルシウム拮抗剤
発作予防に高血圧薬であるカルシウム拮抗薬を内服します。降圧剤として使用されるアダラート、アムロジピンといったカルシウム拮抗剤はジヒドロピリジン系と呼ばれます。
私が冠攣縮性狭心症で第一選択としているのは、ベンゾチアゼピン系のジルチアゼム・ヘルベッサーという薬です。
冠攣縮性狭心症の発作予防には、冠攣縮を予防する効果があるジヒドロピリジン系のニフェジピン(アダラート)、ベニジピン(コニール)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)が使われます。
血圧を下げたい場合はニフェジピン>ベニジピン>ジルチアゼムの優先順位です。
冠攣縮は夜間~朝方にかけて起きやすいので夕食後に長時間作用するニフェジピンCR、ヘルベッサーRを服用するのが効果的です。
長期間カルシウム拮抗薬の投与を中止した場合、症状が増悪すること(リバウンド現象)がまれならず報告されており、減量、中止の場合は段階的に減量して、その度ごとに24時間心電図などで冠攣縮の悪化がないことを確認するなどの注意を要します。
冠攣縮性狭心症には、一定期間経過したのちにカルシウム拮抗薬を中止しても発作が生じない、いわゆる自然寛解が一部の例に生じることが知られているそうです。
上記ガイドラインに書いてありました。
私は冠攣縮性狭心症では一旦発症したら、長期に渡り死ぬまでカルシウム拮抗剤は服用するものと教えられてきましたので、このガイドラインの記載は驚きでした。
実際今回の症例でも、一定期間ヘルベッサーを服用したあと、中止して、ニトロペン屯用で管理するとのことです。
3.ニコランジル
ニコランジルは、わが国で開発されたニコチン酸アミドの誘導体であり、選択的な冠動脈拡張作用と抗冠攣縮作用があります。
通常、カルシウム拮抗剤と併用して使用します。
以上主に冠攣縮性狭心症について概説しました。
夜中、明け方に胸部圧迫感のある方はまたご相談ください。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
年末は12月28日(水)まで診療します。
12月29日(木)~1月3日(火)まで休診させていただきます。
1月4日(水)から通常診療となります。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。