2022年5月 No.198
5月も後半になりました。
会社によっては10連休というゴールデンウィークも終わり、日常に戻っています。
5月中旬は朝はひんやりしているものの、日の照っている午後はかなり暑く、寒暖の差が大きかったです。
5月の下旬になると暑い日が多くなってきました。
このまま梅雨、夏に突入しそうな感じです。
こう暑くなると、熱中症対策が必要になります。
水分補給、塩分補給、エアコン使用など気をつけて下さい。
政府は気温・湿度が高いときは、熱中症のリスクが高くなることから、屋外での人との距離が少なくとも2メートル以上確保できている場合にはマスクを外すことを推奨しました。
屋外で人との距離が十分に取れない場合でも徒歩で移動する際などに周りで会話が少ないか、ほとんどなければマスクの着用は必ずしも必要ないとしています。
さらに学校の体育の授業では、運動場やプール、体育館など屋内外にかかわらず、マスクを不要としました。
登下校時は、子供に会話を控えるよう指導した上で、マスクを外すように積極的に声をかけます。
また、休み時間の密にならない外遊びもマスク不要としました。
運動部活動も基本的にマスクは不要としました。
さらに5月23日、政府は屋内でも他者との距離(2メートル以上が目安)が確保でき、ほとんど会話しない場合は、マスク着用の必要がないことを発表しました。
マスクに関する規制が徐々に弱まってきています。
私はまだ診察室、交通機関利用時はマスクをします。屋外で一人のウォーキング、ジョギングはマスクをはずしてもいいかな、と思っています。
利用していたジムは筋トレマシン使用時も、ランニングマシン使用時もマスクしていました。
ちょっと苦しかったです。
この提言を受けてマスク規制緩和されるかな?
コロナ感染症は連休が終わった後、2月並みの流行が来るかな?と考えていましたが、意外と感染者数は増えませんでした。
大阪市内繁華街も人通りが戻りつつあるようです。しかし、感染者はちらほらまだ見かけます。
そんな中、4回目のコロナワクチン接種が報道で流れています。
3回目のコロナワクチン接種から5か月以上経過した60歳以上のの希望者、18歳から60歳未満の基礎疾患を有する方、その他新型コロナウィルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高いと医師が認める方へのコロナワクチン接種が令和4年5月25日より開始されます。
忠岡町においても、接種兼発送の準備を進めているところ、とのことです(5月25日現在)。
18歳から60歳未満は接種希望は自己申告制とのこと。
忠岡町の集団接種は7月、8月、9月に半日ずつを各一回ずつ。
ファイザー社製ワクチンの供給が見込めないことより、武田・モデルナ社ワクチンで実施する予定となっているそうです。
また、当院を含む忠岡町医療機関でも接種が予定されています。
こちらはファイザー社になるのか、モデルナ社になるのかはまだ分かっていません。
当院においても、なるべくワクチンロスが出ないように接種日を制限して、予定することになると思います。
接種兼が届き、ワクチン接種を希望される方は受付までご連絡ください。
東京大学の研究グループは、iPS細胞に変化しにくいというがん細胞の性質を用いて、個別のがんに効く分子標的薬探しへ応用する手法を開発しました。
研究グループは、「ほとんどのがん細胞が、iPS細胞を作成する初期化因子と呼ばれる遺伝子を導入しても、iPS細胞になりにくい」という特徴に着目しました。
担癌マウスを使った研究の結果、がんの原因遺伝子が作り出す分子が、初期化因子の働きを妨げていることがわかりました。
また、原因遺伝子の働きを分子標的薬で抑止するとiPS細胞を作り出せるになることも分かりました。
研究グループは、候補となる薬剤をがん細胞に投与して、iPS細胞化がどの程度効率よく進むかを指標にする手法を考案しました。
分子標的薬で原因遺伝子の働きを止めれば、iPS細胞を作成できることも証明されました。
がんの原因となる遺伝子変異やそれによって作られるタンパク質を抑えるために作られたのが分子標的薬です。
通常の抗がん剤は正常な細胞もダメージを受けてしまいますが、分子標的薬は正常の細胞にはダメージを与えにくいことが知られています。
効率のいい研究成果を期待しています。
喘息予防、管理ガイドライン2021を入手しましたので、概要を書いてみます。
内容は結構難しいですが、一般の方にわかる項目をピックアップします。
ご自身が喘息に罹患して吸入薬を使用しているという方もいらっしゃるでしょうし、自分は喘息はなくても、知り合いに喘息持ちがいるだとか、喘息で苦しんでいる人を見かけたことのある人は結構多いのではないでしょうか。
気管支ぜん息は気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄による喘鳴、呼吸困難、胸苦しさや咳などの臨床症状で特徴づけられる疾患です。
気道炎症には好酸球、リンパ球などによる炎症細胞加えて気道上皮細胞などの気道構成細胞、および種々の液性因子が関与します。
図:ぜんそくタウン[アストラゼネカ(AZ)]より。こどもになっていますが成人でも同じ。
気道炎症や気道過敏性の亢進によって生じる気道狭窄、咳は自然にあるいは治療により可逆性を示します。
持続する気道炎症は気道粘膜の障害とそれに引き続く気道構造の変化(リモデリング)を誘導し、非可逆性の気流制限をもたらします。
喘息は日本全国で約800万人が罹患していると報告されています。
いろいろな調査がありますが、概ね人口の6-11%くらいが喘息症状をもっていると推測されています。小児はもう少し高率です。
喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒューという)、息切れ、咳、胸苦しさの複数の組合わせが変動をもって出現します。この喘息症状は夜間や早朝に増悪する傾向があります。
また、喘息症状は感冒、運動、アレルゲン暴露、天候の変化、笑い、大気汚染、冷気、線香の臭い(強い臭気)などで誘発されます。
喘息症状のあるときの聴診所見は呼気性の喘鳴(wheeze)が特徴的です。
気道の狭窄の程度によっては吸気時にも聴取されることがあります。
喘息は症状の変動を特徴とする疾患ですから、診察時喘鳴が無くても喘息ではない、と言い切れるわけではありません。
未治療の喘息あるいは標準的な維持療法が未導入の喘息の重症度は、軽症間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型の4つに分類されます。
各重症度を症状の頻度および強度で分類しますと、喘息症状が毎週ではないのが軽症間欠型、毎週だが毎日ではないのが軽症持続型、毎日ではあるが日常生活に支障を来さないのが中等症持続型、毎日で日常生活に支障をきたしているのが重症持続型です。
各重症度に応じて、治療ステップがあります。治療のところで後述します。
喘息症状・増悪時(発作時)の症状強度の区分ですが、軽度(小発作)が苦しいが横になれる,SPO2 96%以上、中等度(中発作)が苦しくて横になれない、SPO2 91-95%、高度(大発作)苦しくて動けない、SPO2 90%以下となり、増悪強度の判定に有用です。
さらに、重篤という分類もあり、呼吸減弱、チアノーゼ、呼吸停止などで、会話も体動も不能な状態があります。
これは即座に救命処置、救急搬送が必要です。
喘息の治療目標は症状のコントロールとして1.気道炎症を制御する、2.正常な呼吸機能を保つことで、健常人と変わらない日常生活を送ることを目標としています。
もうひとつ将来のリスク回避として、1.喘息死を回避する、2.急性増悪(喘息発作)を予防する、3.呼吸機能の経年低下を抑制する、4.治療薬の副作用発現を回避する、5.健康寿命と生命予後を良好に保つことが挙げられています。
喘息の検査ですが、呼吸機能検査が一番にあげられています。
肺活量、気流制限を測定します。
当院でも検査可能です。
簡便なピークフローメーターという器械もあり、気流制限を毎日客観的に判断できます。
当院でも15年くらい前に導入してみましたが、患者さんの記録が全く続かないので、やめてしまいました。
次に喘息日誌、質問票があげられています。
当院ではACT(Asthma Control Test)という質問票を採用しています。しかし、使用している人、少ないというかいないな。
5つの質問から喘息のコントロール状態を客観的に評価するテストです。いずれもこの4週以内に
上記症状が全くない、コントロール完全にできた、で完全な状態(トータルコントロール)です。
治療中はこの状態の維持を目指します。
次に喀痰中好酸球比率が提示されています。
喀痰好酸球比率の増加(3%以上)は治療効果予測のため重要とされています。
専門施設での検査となっています。
呼気中一酸化炭素濃度(FeNO)測定。
簡便で有用だそうですが、当院ではできず、これも専門施設での検査となります。
末梢血好酸球、アレルギーの血液検査:アレルゲン検索のため有用です。これは当院でもできます。急性増悪時(発作時は)炎症反応があるかないかは血液で調べます。
必要に応じレントゲン検査もします。
個体要因として、遺伝、性差(小児期は男児が多く、成人期は女性が多い)、アレルギー素因、早産・低出生体重児、肥満(これは意外でした)があげられています。
環境要因として、アレルゲン暴露、呼吸器感染症、喫煙、大気汚染、鼻炎、人工乳が挙げられていました。項目だけ、さらっと書いてます。
このガイドラインでは、治療薬を抗喘息薬と呼んでいます。抗喘息薬は長期管理薬と増悪治療薬の2種類に大別されています。
長期管理薬は長期管理のために継続的に使用し、コントロール良好を目指す薬剤、増悪治療薬は喘息増悪治療のために短期的に使用する薬剤と定義されています。
長期管理薬の基本は吸入ステロイド剤(ICS)です。この薬剤の出現によって、喘息死が激減したといっても過言ではありません。
ICSの無かった私の研修医時代、多くの喘息発作で呼吸停止した患者が救急に運び込まれてきました。
気管内挿管してアンビューバッグを押そうとしても重くて入らず、力いっぱいバッグを押すと、キューという音がして驚いたことを覚えています。
中には小児、若年者の方もいて、親御さんは泣き崩れるし、蘇生をやめないでくれ、と嘆願されたこともありました。吸入ステロイドがあれば、悲劇は起こらなかったのに、と思います。
喘息の治療薬は吸入薬が主役です。
ICSのほかに長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、およびその配合剤があります。ちょっと多岐にわたりますので、次回吸入薬として院内報で書いてみます。
他に、ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、シングレア)、テオフィリン除法製剤(ユニフィル、テオドール)などの経口薬があります。
吸入薬に追加して使用します。
他、喀痰を排出促進させる薬(ムコダインなど)、マクロライド系抗生剤(クラリスロマイシン等)、漢方薬(柴朴湯、麦門冬湯)なども使用されることがあります。
注射薬でIgE、IL-4、IL-5に対するモノクローナル抗体もありますが、当院で使用することはありません。他、気道上皮から産生されるサイトカイン、TSLP`やIL-33 のモノクローナル抗体も期待されています。
増悪治療薬は短期作用性β2刺激薬(shortacting β2agonist :SABA)です。
商品名メプチン、サルタノール、吸入の気管支拡張薬です。発作時に使います。
治療はステップが提示されています。
軽症間欠型はステップ1:低用量吸入ステロイド(ICS)と必要に応じて経口薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン除法製剤)、増悪時のSABAを渡しておきます。
軽症持続型はステップ2:軽~中容量のICS、不十分な場合吸入薬LABA、LAMA(合剤可)ステップ1と同じ経口薬、増悪時のSABA
中等症持続型はステップ3:中~高容量のICS、ステップ2と同じ薬、抗IL-4Rα抗体、増悪時のSABA
重症持続型は高容量ICSに加えステップ3と同じ薬剤、経口ステロイド、各種モノクローナル抗体薬が使用されます。
薬剤の効果などをみて、ステップダウン、ステップアップを検討します。
いずれも無効な場合、気管支熱形成術が施行されることがあります。
喘息患者で、感冒、アレルギー暴露、気候変動により増悪がしばしば認められます。
家庭において喘鳴、咳、息苦しさが発現した場合、渡しているSABA(メプチン、サルタノール)を吸入します。
患者によりICS/LABA合剤(シムビコート)を処方している場合、発作時追加吸入が可能です。
軽快しない場合、受診が必要です。
当院に来られた場合は気管支拡張薬とステロイドの点滴、気管支拡張剤の吸入をします。
有難いことに岸和田市喘息疾患連携ミーティングより点滴、吸入のメニューが提示されています。
この点滴、吸入後、酸素飽和度が94%以下、呼吸苦、喘鳴が残る場合は病院に搬送することになっています。
以上をふまえて当院では喘息治療にあたっています。大事なのは、喘息死を回避すること。
そのために、吸入薬をとぎれさせないこと。
中等症以上、重症は早めに専門医に紹介することを心がけています。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
6月4日土曜日、岸和田徳洲会病院での緩和ケア研修会にファシリテーターとして参加するため、休診します。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。