2022年1月 No.194

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

新しい年が始まりました。
本年もよろしくお願いします。
とはいっても、これを書いているのが1月27日の夜です。
もう正月休みモードもしっかりと抜けています。
今日から蔓延防止等重点措置が開始されます。
2月20日までです。
病床の状況により緊急事態宣言が発令されるかもしれません。

新型コロナウィルス感染症

現在オミクロン株が猛威をふるっています。
感染拡大の速度が非常に速く、現在全国的に新規感染者数が増加しております。
大阪府でも一日感染者数一万人を超える勢いです。オミクロン株が世界中で一気に広がった最大の理由は、人から人に移るスピードの速さであることが専門家の分析で明らかになってきました。
感染が広がる勢いは、ある感染者から他の人にうつすまでの日数を示す世代時間が関係し、短いほど次々とウィルスが広がります。

第5波をもたらしたデルタ株は約5日ですが、オミクロン株では約2日の世代時間と言われています。
オミクロン株は鼻や喉などの上気道でより増殖しやすくて発症する以前の早い段階から広げていくようであると指摘します。
鼻や喉で増えたウィルスがくしゃみや咳で出る細かい飛沫とともに大量に吐き出されている可能性もあります。
肺で増えにくい点は、オミクロン株が重症化しにくいという特徴にも関わっていると考えられます。
オミクロン株感染では、軽症者が多いいのですが、高齢者で、重症化のリスク因子となる疾患をお持ちの方は注意が必要です。

重症化のリスクは、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満(BMI30以上)、喫煙歴などです。

オミクロン株は従来有効とされていた抗体カクテル療法ロナプリーブが無効と報告されています。
代わりに内服薬ラゲブリオ、ぜビュディ点滴静注が有効とされています。
やはり重症化のリスクのある方には早めに投与または処方してあげたいと思っています。
しかし、現在の1番の問題はコロナ検査のキットが品薄であると言うことです。
11月より当院では国の補助を得て、NEAR法と言う遺伝子増幅機器・IDNOWを使用して診断にあたっていました。
約15分程度で陽性の場合は診断でき、陰性でも30分程度で診断できました。
非常に便利だったのですが、現在この検査キットが全く入って来ません。
なので、IDNOW検査が現在使えません。
発注をかけてますが入荷を待っている状況です。

代わりに以前していた唾液でのPCR検査をしています。
自宅で唾液を採取して、指定された場所に提出する検査です。
以前唾液ののPCR検査をしていた時は、診察当日唾液を提出すれば翌日早朝には結果が出ていたのですが、現在件数が増えすぎたため、3日程度の日数を要してしまいます。

でも今ある資源を使って診療しないと仕方がありません。抗原検査も品薄です。ラゲブリオなどの薬は発症5日以内に使いたいのですが、検査の結果を待っている間に使えなくしまうことも懸念されます。
一名、やや高齢の合併症のある方に、最後IDNOWを使用、予想通り陽性だったのでラゲブリオ処方しました。
後の方は唾液のPCR検査をして頂きました。
この方たちは陽性であったとしても重症化しないだろう、という予想のもとに。

一般診療が終わってから、発熱・感冒様症状の方を診ますので、結構遅くなります。

それが終わって訪問診療、午後6時から泉大津市医師会のコロナ在宅診療会議でした。
泉大津市医師会では、保健所の指導の下、訪問看護ステーションと提携して、コロナ在宅療養患者の往診等を施行するシステム作りを構築しています。
会議の内容については、次回またご報告します。来月までに終息していることを期待しますが。会議が終わってこれを書いてます。
結構忙しい一日でした。

繰り返しになりますが、感染拡大防止へのご協力をお願いいたしますオミクロン株についても基本的な感染対策が有効です。
ワクチン未接種の方は接種について検討をお願いします。

ワクチンを接種していても感染するブレークスルー感染によって、誰かに感染させてしまうケースも発生しています。
高齢者や基礎疾患のある方が感染すれば重症化するリスクも高まります。

在3回目のワクチン接種を進めております。
ワクチン接種後もマスクの着用や手洗い3密(密接、密集、密閉)回避換気など基本的な感染対策を徹底しましょう。また体調不良時は外出や移動を控えるなど感染拡大防止にご協力をお願いします。一人ひとりの行動が、大切な人と私たちの日常を守ることにつながります。

脂肪肝について

自覚症状は全くないが、肝臓の数値が高く、健診・腹部超音波検査で「脂肪肝」と言われた、という人は多いと思います。今回は脂肪肝について書きます

 脂肪肝とは? 

脂肪肝とは文字通り脂肪(主に中性脂肪)が肝臓にたまる疾患のことです。
フォアグラという食べ物があります。
キャビア、トリュフとともに世界の三大珍味の一つで、高級食材です。
フォアグラは鴨やガチョウに過剰にエサを与えて、肥満させ、その肝臓(脂肪肝の状態です)を食材にしたものです。
フォアグラとは、フランス語で肥えた肝臓という意味だそうです。

正常の肝臓は赤褐色ですが、フォアグラは脂肪が多いので黄色味をおびています。

人間の脂肪肝も同じで、フォアグラ状態でギラギラしています。
脂肪肝はアルコールが原因の脂肪肝であるアルコール性脂肪肝と、それ以外の脂肪肝である非アルコール性脂肪肝に分けられます。

アルコール性肝炎・脂肪肝は進行性で、アルコールをやめないと肝硬変、肝がんに進展していきます。

非アルコール性脂肪性肝疾患は英語ではnonalcoholicfatty liver diseaseで、我々はNAFLD(ナッフルディー)と呼んでいます。
NAFLDはアルコールを除くいろいろな原因で起こる脂肪肝の総称です。
脂肪肝の分類具体的には肝臓の中に脂肪沈着があり、アルコールやウイルス、薬剤などの疾患を除外したものが当てはまります。

非アルコール性脂肪肝は2001年では有病率18%でしたが、ライフスタイルの変化と共に年々増加しており、2012年の日本の報告では男性32.2%, 女性8.7%と増加しています。

NAFLDのうち80~90%は長い経過をみても脂肪肝のままで、病気はほとんど進行しません。
これをNAFLDの病気を意味する「D(Disease)」を除いてNAFL(ナッフル)といいます。
しかし、残りの10~20%の人は徐々に悪化して、肝硬変に進行したり、なかには肝がんを発症したりすることもあります。
この脂肪肝から徐々に進行する肝臓病のことを非アルコール性脂肪肝炎、英語では、nonalcoholic steato-hepatitisといい、我々は通称NASH(ナッシュ)と呼んでいます。ちなみにアルコール性脂肪肝炎をalcoholicsteatohepatitis(ASHアッシュ)といいます。

 脂肪肝の原因は? 

脂肪肝の最も重要な原因はアルコールと肥満です。特に内臓全体の脂肪量と肝臓の脂肪量は最も大きく関係します。
メタボリックシンドロームの関連疾患、糖尿病や脂質異常症、高血圧症は脂肪肝の進展にかかわります。
肝臓の役割の1つに、使いきれなかった糖分や脂肪酸などを中性脂肪やグリコーゲンとして蓄える働きがあります。
しかし、その後使わずに逆にため込み続けると脂肪肝になってしまうのです。

脂肪肝の検査や診断は?

血液検査で肝臓の酵素を調べるほかに、超音波検査(エコー検査)・CT検査などの画像検査で、肝臓への脂肪のたまり具合を判断します。
特にエコー検査は簡便でありながら、正確性も高く非常に有用です。肝腎コントラスト
脂肪肝の超音波所見:通常なら腎臓と同じ濃度ですが、脂肪肝の方だと明るく白くうつります。肝腎コントラストがあるといいます。

また前述の通り、非アルコール性脂肪肝の確定診断には、肝炎ウイルスや自己免疫性肝炎、薬剤といった他の原因に伴う脂肪肝を除外する必要があり、問診と採血で調べていきます。
また非アルコール性脂肪肝炎(NASH)への進展具合をみるためのスコアリングシステムがいくつかあり特に有名なのが、「Fib-4 index」と呼ばれるものです。
これは、年齢とAST・ALTという感酵素、血小板数によって算出されるマーカーであり、Fib4-index =( 年齢 × AST ) / ( 血小板数 × ALT^1/2 ) ^1/2は√Fib-4 indexの計算については、肝臓検査.comや佐賀大学医学部付属病院肝疾患センタ-というサイトからも計算できます。
お手元に採血結果がある方は一度計算してみるとよいでしょう。

この値が1.30未満であれば肝臓の線維化の可能性が低く、1.30以上2.67未満でで肝臓の線維化の可能性あり、2.67以上で肝臓の線維化の可能性が高いとされています。

この数値が高い場合、新しい肝の線維化マーカーであるM2BPGiを測定します。
M2BPGiはMac-2結合蛋白(M2BP) 糖鎖修飾異性体といい、肝臓の線維化ステージの進展を反映する糖鎖マーカーです。
従来、肝繊維化の診断は肝生検といって、体外から肝臓に針をさして、組織を採取し、顕微鏡で調べないとわかりませんでした。
近年、フィブロスキャン,MRエラストグラフィという技術が用いられ、肝生検しなくても繊維化の程度がわかるようになりました。
しかし、どこにでもある器械ではなく、大学病院とか基幹病院にしかありません。
M2BPGiは肝生検検査との一致率において、80%以上を示しました。
かなり有用な検査です。
保健適応があります。

肝線維化マーカーとして4型コラーゲン7Sも有用です。
5.5~6.0ng/mL以上で繊維化を疑います。
当院でも適宜Fib4-index計算して経過を見ており、高値の場合はM2BPGiを測定します。

さらにM2BPGi高値の場合、精査のため肝臓内科に紹介します。

 脂肪肝の改善方法 

生活習慣の改善、食事と運動です。飲酒が原因の脂肪肝はアルコールを控えることで改善します。
肥満の方は、カロリー制限、炭水化物か脂質を減らすことで標準体重くらいまで減量が達成できれば脂肪肝は改善すると考えられます。
また、コーヒーの摂取が脂肪肝の発症を抑制するとした疫学研究が複数みられており、注目を集めています。
運動では、私がおすすめしている運動は1回30分、週3回の時速5-6㎞程度の早歩きから始め、慣れてきたら歩く回数、時間を増やすというもの。できる人はウォーキングからランニングに移行して頂いてもいいです。
筋トレも有効です。

脂肪肝の治療

基礎疾患の治療が大原則になります。繰り返しになりますが、アルコールが原因の場合は禁酒、減酒。
肥満や内臓脂肪が原因の場合:減量や過度な食事を控える適度な運動糖尿病や高血圧・脂質異常症が原因の場合:それぞれの疾患の治療薬剤としては、ビタミンE:商品名ユベラ。
体内の活性酸素を除去し、肝組織を改善するため有用と言われています。
ただし、脂肪肝に対する保険適応はありません。
糖尿病を合併している脂肪肝の方では、糖分を尿からは排泄する薬・SGLT2阻害薬やインスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンが有効とされています。
いずれも脂肪肝単独には保険適応はありません。
糖尿病として治療する上での候補となります。
脂質異常症改善薬:スタチンが脂質異常症を合併する脂肪肝の方に肝酵素を下げる効果があり有用としています。
降圧薬(ARB・ACE阻害薬): 高血圧を合併する脂肪肝の方に有用としています。
現在、ウイルデオキシコール酸(ウルソ錠R)は、現ガイドラインでは常用量として有用性は認められていませんが、患者さんによっては有効な場合があります。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれており、病状がかなり進展していても自覚症状が出ないことが多いです。脂肪肝と診断された場合、アルコール性の場合は禁酒です。
非アルコール性脂肪肝の場合、肝臓の繊維化が進んだNASHになっていないかのチェックが必要です。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

3月5日土曜日、岸和田市民病院での緩和ケア研修会にファシリテーターとして参加するため、休診します。
御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

3回目のコロナワクチン接種が始まっています。忠岡町の集団接種は2月1日から予約ができるようになります。
当院での接種希望の方は接種兼(クーポン)が到着したら、電話で予約をお取りください。当面当院はファイザー社製のワクチンを使用します。提供中止になれば、モデルナ社製のワクチンの使用となります。