2021年12月 No.193

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

12月も後半になりました。
今月はスタッフに言われて少し早めに書いてます。
といっても19日ですけど。
また医療の特集はこれもスタッフに言われて、コロナ禍の一年を振り返ってになりました。

今年の漢字

年末恒例の今年の漢字は「金」でした。
オリンピックがあったからでしょうね。
きん、ではなく、かね、と読むんだ、というご意見もあったようで。これも五輪がらみでしょうか。
ちなみに金という漢字は4回目の選出だそうです。

2016年リオオリンピックの年、2012年ロンドンオリンピックの年、2008年シドニーオリンピックの年に選ばれています。
オリンピックがあれば、今年の漢字は金なんでしょうね。私の予想は大谷翔平選手の翔でした。
ちなみに流行語大賞には大谷選手のリアル二刀流/ショータイムが選ばれました。

トップテンにはいっていたぼったくり男爵というのも面白かったんですけどね。
IOCトーマス・バッハ会長の呼称です。
米ワシントンポスト電子版が「IOCは商業主義で日本を踏み台にしている」と指摘。
記事内で使われた「Baron Von Ripper-off」にあてられた和訳が「ぼったくり男爵」だったそうで。訳者は最初は“追いはぎ男爵”がいいと思ったようですが、最終的にぼったくり男爵にしたとのことです。

痔瘻の注射薬(アロフィセル)が出ました。

痔瘻は直腸と肛門周囲の皮膚をつなぐトンネルができる痔のことです。
あな痔とも呼ばれます。
肛門腺が細菌感染すると、肛門周囲に膿がたまる肛門周囲膿瘍ができます。
膿瘍の排膿後慢性化してトンネルが残ると痔瘻になります。
膿が出ると痛みは楽になりほとんど症状はありません。

しかし、トンネルが残り痔瘻になると、再発したり複雑に広がったり、まれにがん化することもあるため根治手術を行います。
トンネルを切開開放する手術、トンネルをくりぬく手術、トンネルの中にゴムを通し、締めていく手術などがあります。

炎症性腸疾患のクローン病には痔瘻が合併しやすいことが知られています。
複雑な痔瘻になりやすく難治性のこともあります。
このクローン病の痔瘻の治療に注射薬ができたというので驚きました。
アロフィセルは武田薬品工業株式会社によって創製された健康成人の皮下脂肪組織に由来する間葉系幹細胞を単離・培養して得られたヒト脂肪組織由来幹細胞を構成細胞とする再生医療等製品です。
炎症を抑えて上皮を作るのだそうです。
聞くだけで高そうな薬です。

クローン病に伴う複雑痔瘻の治療には、薬物治療及び外科治療が用いられていますが、既存治療では効果不十分な患者が存在しています。
このことから、クローン病患者における複雑痔瘻の治療製品として開発が進められました。
しかし、クローンの痔瘻がコントロールできるんだったら、単純な痔瘻なんて手術しなくても、注射だけで治るんではないだろうかと思います。
しかし、まだクローンの痔瘻だけ。高すぎるんでしょうね。

iPS使い難病薬探し

iPS細胞を使って、難病などの治療薬を探す「iPS創薬」が進んでいます。
京都大学iPS細胞研究所のグループは全身の筋肉が衰えるALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者で進行を抑える効果を確認したと発表しました。
ALS患者のiPS細胞から病気の細胞を再現して新薬候補を探しました。

再現した細胞に約1400種類の薬剤をかけて効果を調べて、慢性骨髄性白血病の治療薬「ボスチニブ」が新薬候補になることを発見しました。
数は少ないですが、9人を対象に、会話や食事、歩行などの能力をもとにALSの重症度を評価。
5人で病気の進行が3カ月止まったとのことです。

ただ今回の報告は、少人数を対象に主に安全性を調べる第1相治験です。
有効性については、多くの患者に投与する2~3相治験で厳密に評価することになります。
研究チームは次の治験を検討中とのことです。

安全性を確認済みの既存薬は、有望な創薬候補になります。
研究が進めば難病患者の福音になります。

慶応大学のグループもiPS細胞でALSの治療薬を探しました。
約1200種類の薬剤からパーキンソン病の治療薬「ロピニロール塩酸塩」を見つけました。
21年5月、20人のALS患者に投与して、病気の進行を約7カ月遅らせたと発表されました。

がんなどに比べ、ALSなどの難病は患者数が少ないです。企業が創薬に多額の費用や労力をかけるのをためらうため、治療薬の開発が遅れがちとなります。iPSによる創薬が期待されています。

コロナ禍の 1 年の振り返り

令和元年中国武漢で始まった新型コロナウィルス感染症。
日本にも伝搬し、令和2年3月にタレントの志村けんさん、4月に女優の岡江久美子さんが亡くなったことは大きく報道されました。
マスク不足騒動、アベノマスク配布などもありました。
令和2年4月7日から5月21日まで一回目の緊急事態宣言が出され、学校は休校、百貨店・テーマパークなどは休業していました。
いろいろなイベント、学会、集会、忘年会もすべて中止、オリンピックも延期されました。

一般的に、メディアなどでは新規陽性者数が急激に増える感染のヤマを「波」と表現しています。
この波は昨年以来、今まで5回ありました。

最初の波は、全国の1日あたりの新規陽性者の報告数が720人を記録した令和2年年4月11日をピークとする流行(第1波)で、次は令和2年8月7日に1605人を記録した流行(第2波)です。
令和3年のコロナ禍を振り返ってみます。

 令和3年1月 

コロナ感染症が増加し、第3波が到来しました。
1月13日から2月28日まで2回目の緊急事態宣言が発令されました。
学校は休校にはなりませんでした。
開業医にもコロナ感染症、発熱患者の診療をするよう要請され、コロナPCR検査を始めました。
泉大津市、忠岡町では、医院の外でコロナ唾液PCR検査用の容器をお渡しして、自宅で唾液を採取してもらい、指定された回収場所に持って行ってもらうという方法を導入しました。
大阪府医師会でもこの泉大津市・忠岡町モデルは評価されて、他地域にも推進するよう推奨されています。
1月は大阪ではまだ重症者の入院ができないというところまでは来ていませんが、逼迫してきている状況でした。
このころ、 コロナワクチン接種に向けて泉大津市医師会でも行政との打ち合わせを重ねていました。

 令和3年2月 

2月は緊急事態宣言中で、不要不急の外出は避けるように勧告されています。
その効果のためか、全国的にコロナ感染者は減ってきています。
入院先の確保も余裕ありと聞いていました。
大阪府は2月28日に緊急事態宣言解除しました。
2月、コロナウィルスワクチンの医療従事者への予防接種が開始予定でした。
しかし、ワクチンが入ってこないため少し延期されました。

 令和3年3月 

3月に入り、は緊急事態宣言は解除されています。
しかし、まだ不要不急の外出は避けるように勧告されています。
コロナ感染症を診療している大病院の医療従事者へのコロナワクチン予防接種が始まりました。

 令和3年4月 

新型コロナウィルス感染拡大で、4月25日より3回目の緊急事態宣言が出て飲食店は原則20時までの営業で、アルコールを出すことは禁止されているため、ほとんどの飲食店は休業に追い込まれています。
大阪では連日1000人を超える新型コロナ感染症患者が確認され、そのほとんどが変異株感染でアルファ株が多かったです。第4波の到来です。

大阪では一気に医療崩壊が進み、中等症で入院、酸素吸入、ステロイド・レムデシベル治療が必要な方でも入院できず、自宅・ホテル待機が多くなってました。

私も保健所に依頼されて、自宅療養患者の訪問診療に行ってきました。
検査上明らかな肺炎で、酸素飽和度も90%前後と低く普通でしたら入院加療の適応なのですが、病床が無いとのことで自宅療養になっています。
医療崩壊を実感しました。

4月に私も一回目のコロナワクチン接種を受けました。
次は高齢者施設に入っておられる方です。
その次が65歳以上の高齢者、基礎疾患をもつ方の順となっていました。
また、重症のコロナ患者に肺移植をして経過良好とのニュースもありました。

 令和3年 5月

コロナ禍のため、大阪は4月25日より緊急事態宣言中です。
5月31日までの予定でしたが、延長しました。
不要不急の外出は控えるように言われており、飲食店は時短営業、アルコールの提供はできません。
閉めている飲食店が多いです。
大阪府内では新型コロナウイルスの感染が拡大した3月以降の「第4波」に、自宅で療養・待機中の患者が治療を受けられないまま亡くなるケースが続出しています。
また大阪府内では重症者のベッドが足りない状況が続いています。
医療崩壊が現実となりました。
中等症でも入院できず、約1万人が大阪府で自宅待機していました。

5月連休中も一度保健所からの要請があり、コロナ患者往診しました。
食べられなかったので点滴を訪問看護にしてもらいました。
幸い、その日の晩、入院することができました。
連休前に診ていた人は、点滴、酸素、ステロイド処方で何とか乗り切りました。

忠岡町では、5月16日・日曜日からコロナワクチンの集団接種が始まりました。
私も月3回程度日曜日に出務していました。

 令和3年6月 

当院でのワクチン個別接種開始しました。
なかなか最初は予約が取れなかったようです。

大阪は緊急事態宣言は6月20日に解除されました。

 令和3年7月 

あれだけ、本当にするの?、と言われてきたオリンピックが7月23日より始まりました。
国民の関心は高かったようです。
8月8日までオリンピックは続きました。

新型コロナウィルスは、徐々に感染者数を増やしてきています。
7月後半、非常事態宣言中の東京では7日間連続で1000人の感染者を記録しています。
大阪でも感染者は増え、吉村知事は7月26日、既に感染の第5波に入っている、とのコメントを出しました。

コロナワクチン接種ですが、高齢者への接種が順調に進み、基礎疾患のある方から希望される若年者まで接種ができるようになっています。

 令和3年8月 

新型コロナウイルス感染症の第5波は、デルタ株の猛威によって東京をはじめ首都圏で医療崩壊をもたらしました。
8月2日より4回目の緊急事態宣言が発令されました。

千葉県柏市で新型コロナウイルスに感染した妊娠中の女性が、複数の医療機関から入院を拒否された末に、一人で自宅で出産。
その後、赤ちゃんが亡くなったという痛ましいニュースもありました。
また第4波と違い高齢者が少なくなっていて、若年者の発症が増えています。

第5波は大阪では医療崩壊はおこりませんでした。
高齢者が少なかったためと、病床を準備したからと言われています。
関東は大変でした。
ワクチンによる抗体が3か月で減少するという報告もありました。
3回目のワクチン接種も検討されだしました。

抗体カクテル療法・ロナプリーブ が開始されました。
早期に投与すれば、重症化を防げると言われています。かなり有効な薬です。

 令和3年9月 

4回目の緊急事態宣言中。9月30日まで続きました。緊急事態宣言発出中の中、岸和田だんじり祭りがおこなわれていました。
無観客とされていましたが、報道を見る限り、観衆は結構いたように思いました。

 令和3年10月 

コロナは下火になり、緊急事態宣言解除。
しかし、10月9日・10日開催予定だった忠岡、泉大津はだんじり曳行は自粛されました。

大阪では10月25日より飲食店などへの営業時間短縮要請が解除されました。
酒類提供の制限もなくなりました。
1テーブル4人まで、との制限は残しました。
営業時間や酒類提供の制限解除、やっとかという印象でした。

忠岡町のコロナワクチン集団接種は10月末に一旦終了しました。
忠岡町からの要請を受けて、当院は11月以降、月曜・火曜のワクチン接種を担当しています。ワクチンロスがやはりあります。

 令和3年11月 

コロナ感染は大阪でも大分減っています。
このまま終息してくれればいいのですが。
南アフリカで急激に増えている新型コロナウィルスが出現し、オミクロン株と命名されています。
日本での感染も少しずつ報告されています。
当院では院内でできるコロナ遺伝子検査機器を導入しました。

3回目のコロナワクチン接種も始まります。
もうクーポンが送られている人もいるようです。

コロナ禍での一年を振り返りました。
私にとって一番印象的だったのは、4月-5月のコロナ患者往診、医療崩壊実感ですね。
おさまってくれてよかったと思います。

明るい話題は抗体カクテル療法が有効ということ。
ロナプリーブは皮下注射もできるという報告があり、特例承認されたようです。
しかし血管確保ができないなどの特別な場合に、とのこと。
在宅・外来ではまだ使いにくいですね。

コロナ禍、まだまだ油断は禁物。
専門家は第6波は必ず来る、と言っています。

引き続き三密を避ける、マスク、手洗いなど感染対策をお願いします。
また、発熱、感冒症状(咽頭痛、咳など)、下痢などある場合は、いきなり受診せず、まずは電話ください。
一般の患者さんと分けて診察します。
コロナ検査は積極的にさせていただいています。

新型コロナ新規陽性者数推移

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★インフルエンザの予防接種しています★
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円の費用負担で接種します。一般の方は、3500円です。
一回接種でお願いします。
今年はワクチンの供給が遅れたこともあり、年明けの接種期間延長が検討されています(昨年は1月末まで)。
まだ決定ではありませんので詳細がわかりましたら、またお知らせします。

★年末・年始休暇のお知らせ★
年末は12月29日(水)まで診療します。
12月30日(木)~1月3日(月)まで休診させていただきます。
1月4日(火曜日)から通常診療となります。

ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします