2021年 8月 No.189
8月ももう終わります。
8月は暑い日が続いたかと思うと大雨もあり、各地で大雨による被害が出ました。
線状降水帯なんて聞きなれない言葉もよくニュースに出てきてました。
積乱雲が連続して発生し、上空の風の影響で帯のように連なると線状降水帯となるそうで、これが大雨の原因とか。
まだまだ暑い日が続きそうです。
今年も暑くあまり蚊は見かけません。
でも、虫刺され予防スプレーをするのを忘れるといつのまにか咬まれています。
まだ蚊の季節は続きますから、外に出るときはスプレーをちゃんとしようと思います。
熱中症に注意。
前回の院内報でも書きましたが、コロナの影響でマスクをすることが多いためさらに注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症の第5波は、デルタ株の猛威によって東京をはじめ首都圏で医療崩壊をもたらしています。
千葉県柏市で新型コロナウイルスに感染した妊娠中の女性が、複数の医療機関から入院を拒否された末に、一人で自宅で出産。
その後、赤ちゃんが亡くなったという痛ましいニュースもありました。
妊婦自身も酸素飽和度が91%まで落ち、中等症Ⅱに相当し、入院適応で保健所は入院先を探していましたが入院拒否。
不正出血、陣痛が始まったと保健所に連絡しましたが、それでも病院は受け入れてくれなかったそうです。
コロナに感染した妊婦さんは、産婦人科医と感染症の専門医が同時に必要で、大学病院や総合病院でなければ対応できません。
県外でも、ヘリコプターを使ってでも、受け入れしてくれる病院を探してほしかったです。
今後の体制づくりが必要です。
デルタ株の脅威に対して、1日でも早いワクチン接種が推奨されています。
既にワクチン接種のエビデンスは明らかで、2回接種後の重症化率は極めて低いとのデータが示されています。
また第4波と違い高齢者が少なくなっていて、若年者の発症が増えています。
しかし、ワクチン2回接種した方のコロナ感染もみられるため、まだまだ注意が必要です。
ワクチンによる抗体が3か月で減少するという報告もありました。
早く特効薬が出てほしいですね。
疥癬に使用されるイベルメクチンが有効との報告があり、早期に使うといいとのこと。
尼崎の長尾先生も東京都医師会長も有効と言われてましたが、しかし、米疾病対策センター(CDC)は、イベルメクチンを新型コロナウイルスの治療薬として使用しないよう医師や国民に注意を呼びかけています。
現時点でプラセボと比較した二重盲検ランダム化比較試験で新型コロナウイルス感染症に対する有効性は認められていません。
北里大学病院が実施中の医師主導治験、興和が実施中の企業治験の結果待ちという状況です。
製造販売元であるMSDも「新型コロナ患者に対する臨床上の活性または臨床上の有効性について意義のあるエビデンスは存在しない」と声明を出しています。
しかし、現時点で客観的な有効性を示すデータが得られていない以上、冷静に治験の結果を待つしかありません。
実は私は期待しています。
治験で有効性を証明し、堂々と保険薬で新型コロナウイルス感染症を治療できる武器となってほしいものです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への日本における4番目の治療薬として登場しました、モノクローナル抗体カシリビマブ(遺伝子組み換え)/イムデビマブ(遺伝子組み換え、商品名ロナプリーブ点滴静注セット)の抗体カクテル療法。
早期に投与すれば、重症化を防げると言われています。
非感染者への予防効果も期待されていることから、COVID-19対策の切り札と捉える声もあります。
しかし、今のところ病院でないと使用できないとのこと。
ホテルでの使用は始まっています。
自宅療養患者など早期の方への投与が望まれます。
今回は便に血が混じるというお話です。
通常、食物が消化吸収を受け、便として排泄される過程で血液が混じることはありません。
排便時に出血量が多ければ、便器の中を見るだけで出血していると容易に判断ができます。
肉眼的に便に血が混じっていることがわかるのを下血といいます。
消化管内に出血した血液の混じった便が肛門より排出されることをいいます。
下血は,タール便と血便(鮮血便・排便時出血)とに分けられます。
出血源の存在部位によって、口腔内から十二指腸乳頭部(膵管・胆管が開口する部位)までの出血は上部消化管出血、十二指腸乳頭部から回腸末端までは中部消化管出血、回腸末端より下部・つまりは大腸の出血は下部消化管出血に分類されます。
上部消化管出血は血液が消化液により変化し、タール状の黒色便となります。
下部消化管出血では消化液の作用を受ける前に便とともに排出されるため血便となります。
血便は、一般的に下部消化管からの出血を示唆しますが、出血量が多い場合には、中部あるいは上部消化管からの出血のこともあります。
下血を訴えられた場合、便の性状および全身症状やその臨床経過に加え、既往歴、治療歴、家族歴、薬物使用歴、飲酒歴、海外渡航歴などの聴取により出血部位の特定をします。
特に、消化性潰瘍の既往歴や、血液疾患・肝硬変など基礎疾患、および非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニンなどのNSAIDs)や抗血栓薬を含めた内服薬の使用は必ず確認します。
診察では、まずバイタルサインをチェックし、顔面蒼白、四肢冷感、血圧低下、脈の微弱、意識状態低下、呼吸状態の悪化などショック徴候の有無を的確に把握します。
ショック状態であった場合は、病院に救急受診となります。
視診では、貧血・黄疸の有無、肝臓が悪いときのサインである掌紅斑などを診ます。
腹部の圧痛・腫瘤などを確認します。
肛門診察で、直腸腫瘍や潰瘍・痔核、裂肛の有無,直腸内の血液や便の性状を観察します。
血液検査で血算で貧血の有無を確認。
凝固系・生化学検査、血性鉄、フェリチンなどスクリーニング検査します。
腫瘍が疑われる場合は、腫瘍マーカー(主にCEA)を追加します。
バイタルサインが安定していて、出血が続いている場合は、止血治療が必要なので、病院紹介受診して頂きます。
タール便の場合は上部内視鏡検査を、血便の場合は、グリセリン浣腸のみで下部内視鏡検査を施行されます。
緊急性がない場合は,通常,前処置を行ったうえでの下部内視鏡検査を予定します。
日本人の消化管出血に関する疫学データは少ないですが、部位別の頻度は、上部消化管出血の割合が約55~60%、下部消化管出血は約40~45%で胃潰瘍が最も多いことが報告されていました。
しかし平成26年度の厚生労働省の患者調査では、消化性潰瘍の受療患者数は、外来、入院ともに激減しています。
ヘリコバクターピロリ菌の感染率の低下およびプロトンポンプ阻害薬内服患者の増加によると考えられます。
下部消化管出血の比率が増加し、原因疾患の内訳も内視鏡治療後出血や憩室出血の頻度が高く、また高齢者では直腸潰瘍の頻度が高いことが報告されています。
出血が微量だと肉眼ではわかりません。
そこで採取した便に試薬を混ぜ、その変化で血液の混入判定を行う検査が便潜血検査であり、主に大腸で出血しているのかどうかを判定します。
便潜血検査は、スクリーニングとして広く普及しており、便をスティックで採取して提出するだけの非侵襲的な検査です。
健康診断の際、大腸がん検診として実施されています。
鋭敏な検査で、洗面器一杯の水に血液一滴垂らした状態で検査しても陽性にでます。
現在行われている検査方法は免疫学的方法で、ヒトヘモグロビンに対する抗体を用いて潜血の有無を検出します。
肉や魚の血液には反応しません。つまり、人間の潜血のみに特有に反応します。
胃酸や腸液などの消化液により、ヘモグロビンが変性する食道や胃などの上部消化管からの出血は検出されず、大腸からの出血のみを検出します。
便潜血陽性と判定された方は、消化管主に大腸に病変がある可能性があります。
便潜血陽性と言われたら、放置してはいけません。医療機関受診が必要です。
ちなみに2日法で、2回中一回だけ陽性の方も、受診が必要です。
便潜血検査が陽性であったのにも関わらず、適切な精密検査を行わずにそのまま放置してしまう方がいます。
自覚症状がないため、硬い便だったから肛門が切れた、昔から痔があるからなどと自分に都合の良い解釈をしてしまい、精密検査の機会を逃してしまう方が見受けられます。
便潜血陽性の方から大腸ポリープが見つかる確率が、50%前後と言われています。
大腸がんが見つかる確率は2~3%程度です。
便潜血検査陽性で受診した際、大腸内視鏡を勧められます。
この時、「もう一回、便潜血検査を受けさせてください」とお願いする患者さんもおられますが、あまり意味がありません。
潜血反応が1回でも陽性になったことを重視します。
大腸ポリープは稀ではない疾患です。
便潜血陽性となってしまった方は、自分勝手な解釈はせず、医療機関をを受診しましょう。
消化器病学会では一年に一度の胃内視鏡、2-3年に一度の大腸内視鏡を推奨しています。
カプセル内視鏡・大腸CT検査・大腸バリウム検査などの大腸検査も有用な方法ではありますが、やはり大腸内視鏡が最もすぐれた大腸検査です。
大腸内視鏡では、 5mm以下の小さなポリープを見つけやすい、 病変の切除や組織の採取が可能、 粘膜面の色調や細かい模様を観察できるなどの利点があります。
問題は、検査に一日かかること。
腸を綺麗にするための前処置が面倒なことです。
腸管洗浄液と呼ばれる液体を2000ml程度、2~4時間かけて内服します。
スポーツ飲料水のような味がします。
この液体を飲むのが一番つらいという患者さんも多いです。
私は冷やして飲むと普通に飲めます。
また、洗浄液を内服しながらトイレに7~10回行くことになります。
しかし、それを鑑みても大腸内視鏡検査が勧められます。
私が研修医の頃、大腸内視鏡は拷問のような検査でした。
する方もされる方も汗だくになってしていました。
こんな検査絶対受けたくないと思ったものです。しかし、ニューヨーク、ベス・イスラエル病院の新谷先生や昭和大学の工藤先生などが、腸管のヒダをたぐりよせながら、空気を送ることなく、腸を短縮させるように挿入していく技術を開発したため、苦痛がぐっと少なくなりました。
いまではほとんどの病院でこの挿入技術を使って検査しています。
さらに、静脈麻酔で寝ている間に終わってしまいます。
なので、恐れることなく大腸内視鏡検査を受けて下さい。私も今まで3回検査しています。
寝ている間に終わっていました。
今はコロナ禍で、急がない検査は待つように言われているので、次の大腸検査はいつになるかまだわかりませんが、また受けるようにします。
日本人の死因で、最も多いのはがんです。
その中でも大腸がんは、臓器別の死亡者数で上位に入ります。
大腸がんは、早期の段階で治療を行えば、高率に完治することができます。
しかも内視鏡治療だけで終わることも可能です。
大腸がんは早期の段階では、症状を自覚することがありません。
早期に発見するために、50歳以上の方、喫煙者、アルコールを多く飲む人、血の繋がった人に大腸がん患者がいる人、肥満の人は定期的に大腸がん検診を受けることをお勧めします。。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
今年の夏休みは、昨年に続き故郷である熊野大花火大会が中止となり、緊急事態宣言も継続中で、自粛が続いていたため、ほとんど自宅にいました。
外出は墓参りに行った程度でした。
いつまでこのような状況が続くのかと先が見えなく、不安になります。
新しい生活様式に慣れていかないと仕方ないのかなとも思います。
しかし、学会、飲み会、会議も本当は対面でしたいですね。