2021年 5月 No.186

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

5月も終わりになりました。
これを書いているのが、5月28日の夜。
5月の満月・フラワームーンにスーパームーンそれに皆既月食が重なるという珍しい夜です。
日本で皆既月食が見られるのは、前回の2018年1月から約3年ぶりですが、今回の皆既月食は2021年で最も大きい満月「スーパームーン」であることから、非常に注目されていました。雲がかからないかなと心配してました。
しかし、何回か見に行きましたが、雲に覆われて、全くみることができませんでした。
残念でした。

コロナ禍のため、大阪は緊急事態宣言中です。
不要不急の外出は控えるように言われており、飲食店は時短営業、アルコールの提供はできません。閉めている飲食店が多いようです。
5月31日までの予定でしたが、延長しそうです。東京オリンピックは開催の方向で進んでいるようですね。

連休中に新型コロナウイルスに感染した大阪市内に住む基礎疾患のない30代の男性が、死亡したと発表しました。
大阪市保健所は4月28日に男性がコロナに感染したことを把握しました。
男性は保健所から症状などを聞き取る疫学調査の連絡を自宅で待っていましたが、5月3日に容体が急変し、死亡したということです。

大阪府内では新型コロナウイルスの感染が拡大した3月以降の「第4波」に、自宅で療養・待機中の患者が治療を受けられないまま亡くなるケースが続出しています。
5月22日時点で計19人が確認されています。
また大阪府内では重症者のベッドが足りない状況も続いています。
医療崩壊が現実になっています。
中等症でも入院できない人がいて、約1万人が大阪府で自宅待機しているとのことです。

先月も書きましたが、私のところにも保健所から自宅にいるコロナ陽性患者を診てほしいという要請が数件ありました。
連休中も一度要請があり、浜寺公園まで行ってきました。
その方は酸素飽和度は98%くらいありましたが、食べることができませんでした。
訪問看護に頼んで、点滴してもらいました。
私が往診に行ったその晩に病院が決まり、幸い入院となりました。
連休前に診ていた人は、点滴、酸素、ステロイド処方で無事乗り切りました。
しかし、まだ酸素は外せない状況のようです。
なんとか保健所の要請には応えたいと泉大津市医師会としても対応を検討しています。

 コロナワクチン接種 

米疾病対策センター(CDC)は5月13日、新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人は、マスクをつけなくてもよいと定めた指針を発表しました。
米国内のワクチン接種が進んでいることや感染者数の減少のためです。
13日時点で18歳以上の45%が接種を終えています。
アメリカに比べ、日本はまだまだ遅れています。

忠岡町では、5月16日・日曜日から集団接種が始まりました。
午前中だけでしたが、私も接種しに行きました。特にトラブルも大きな副反応もなく、終了しました。次回5月30日にまた行きます。
集団接種でも予約が殺到して、なかなか取れないとのことでした。
当院の個別接種も6月から予定していますが、予約枠が少ないためもあって、既に一杯で今予約を中止しています。
もう少し多くの人に打てるか検討中です。
接種後の待機の場所のこともあり、また、昼から訪問診療に行くように予定しているため、なかなか思うようにはいきません。
当院かかりつけで予約できなかった方、もう少しお待ちください。

予約QRコードホームページから当院の受診予約が取れます。
ホームページのおしらせ欄からインターネット予約受付のバナーをクリックしてください。
バーコードを読み取っていただいても予約のページが開きます。
あとは画面の指示に従って、入力してください。メールアドレスもお願いします。

6月5日土曜日は、岸和田徳洲会病院の緩和ケア研修会にファシリテーターとして参加するため、休診となります。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

酸素飽和度・パルスオキシメーターについて

生きる上で必要不可欠な酸素。
人間を含め多くの生物は酸素を吸って生命活動をしています。
酸素は生物が生きて活動するために必要なエネルギー(ATP:アデノシン3リン酸)を細胞内のミトコンドリアで作り出すためのいわば燃料です。
そのために酸素は生命にとって不可欠な分子なのです。
口・鼻から吸い込んだ酸素は、肺の肺胞という部位で血液の赤血球中のヘモグロビンと結びつき、心臓の拍動によって全身の細胞にくまなく運搬されます。

血液が赤いのは、赤血球に含まれている「ヘモグロビン」という色素のためです。
このヘモグロビンは酸素とくっつく性質を持っています。
ヘモグロビン、酸素とくっつくと赤くなり、酸素から離れると黒くなるという性質を持っています。
肺で酸素をため込み心臓から飛び出したばかりの新鮮な血液(脈打つ血管・動脈の血)は色が赤いですが、全身に酸素を配り終えた後の血液(静脈血)は黒めの色となります。
血液検査で血を採られると、意外に血が黒いと思われるかもしれませんが、これはすでに全身に血液を配り終えた静脈血を採取しているからです。

動脈血の赤みを計測できれば、肺からしっかり酸素が取り込めているかどうかがわかります。
そのための医療機器がパルスオキシメーターです。

パルスオキシメーターで測る数値を動脈血酸素飽和度(SpO2)といいます。
これは血中のヘモグロビンのうち、何%のヘモグロビンが酸素と結合しているかを示しています。
最大値は100%です。

今までは、動脈血を採取して、機械で酸素(酸素分圧)を測っていました。
若い人の酸素分圧は95mmHg前後で、SpO2の98%に相当します。
また高齢者の酸素分圧は80mmHg程度で、SpO2では95%に相当します。
SpO2が95-99%だと特に問題はありません。
健常者のSpO2が93%になると酸素不足を考えます。

90%以下は酸素分圧に直すと60mmHg以下に相当し、呼吸不全とされます。

全身のいろんな臓器に十分な酸素を運べていない状態で、酸素吸入、場合により人工呼吸が必要となってきます。

コロナ感染症の場合も、SpO2が93%を切ってくると、中等症のⅡというカテゴリーに入り、呼吸不全あり、酸素投与が必要と判断されます。

保健所からの要請を受け、私の診察したコロナ患者は保健所からパルスオキシメーターが貸与されていました。
指に機械を挟むだけで、治療の目安がわかります。痛み無く、継続的に簡単に体内の酸素がわかってしまう素晴らしい機械といえます。

今では、世界中の医療現場で使用されているこのパルスオキシメーター、実は日本人が開発したものです。
今から50年近く前に、このパルスオキシメータの原理を発明したのは、日本光電の技術者、青柳 卓雄氏です。
先ほども述べましたが、ヘモグロビンは酸素と結びつくと鮮やかな赤色、結びついていないと暗い赤色になります。
色によって光の吸収しやすさが異なることを利用して、動脈血酸素飽和度を算出します。

指にセンサ(プローブ)を装着し、波長の異なる2種類の光(赤色と赤色外)を当て、吸収されずに指を通り抜けた光を測定して分析します。

当時の青柳氏の信念のひとつは、「患者モニタリングには無侵襲連続測定の開発が重要である」ということでした。
1972年、心臓から送り出される動脈血を測定する機器の改良をする中で、心臓の拍動(パルス)を利用することで動脈血の酸素飽和度を測定できることを発見しました。
青柳氏はこの発見について、後に「こんなうまい話がこんな手近なところにあるとは信じ難いことだった」と語っています。
試作機で研究を重ねた青柳氏は、この原理を1974年に学会で発表しました。
「おもしろい研究だと思う」という意見もありましたが、否定的な意見もあり、この発表は注目されませんでした。
翌1975年、日本光電はこの原理を用いた製品「イヤオキシメータ」を発売しました。

着想としてはまさに世界に誇るべき独創的かつ優れたものでしたが、光源は豆電球でセンサの感度も悪いなど、性能や使い勝手の面でまだ改良の余地が多く、需要が伸びないまま、諸事情により開発は中断しました。
開発を中断した以降の10年間に、世界では大きな動きがありました。
米国で手術の麻酔中の患者さんが酸素不足になって命を落とす医療事故が頻発し、パルスオキシメータの有用性が注目されるようになったのです。

多くの企業から、新しい技術を取り入れた小型の装置が競って発売されるようになり、パルスオキシメータは急速に普及しました。
この動きは1980年代後半に国内にも広がり、日本光電もパルスオキシメータの研究開発を再開し、1988年4月、新製品のパルスオキシメータを再び発売しました。

パルスオキシメータの先駆的な発明により、医療の質向上に多大な貢献をした業績が認められ、青柳氏は2002年に紫綬褒章、2015年米国電気電子学会も医療分野の技術革新に送る賞受賞しました。(日本光電のHP・青柳 卓雄氏とパルスオキシメーターより)。
日本光電の新パルスオキシメーターが発売されたとき、私は国立呉病院の外科にいましたが、当時の麻酔科部長がすごい機械ができたと興奮気味に語っていたことを思い出します。
ちなみに忠岡のやぎ医院の八木正晴先生も当時(もうちょっと前だったかも)国立呉病院の麻酔科にいらっしゃいました。

パルスオキシメータは指先で測ります。
特に寒い冬の時期、指先が冷えている方は少なくありません。
すると指先の血流は少なくなっていて、うまく測れないことも多いです。
温めて、血流をよくしてから再測定、あるいはつけたまま数分待つこともあります。
また、濃いマニキュアなどを塗っていると正しい血液の色が測定できません。
使用するときはマニキュアを落とします。足の指で測ることも可能です。
そして指を差し込むときにはしっかり奥まで差し込みます。

センサー部分が爪にあたっていないと正確な脈波が拾えません。
また指を動かしていると正しい測定ができません。
測定するときはパルスオキシメータを装着した指を机などに固定していただくといいです(できれば心臓と同じ高さで)。
測定すると数秒で値が出てきますが、しばらくは値が安定しません。
20-30秒後の時間が経ってからの値を読み取るといいと思います。

また、貧血があると、そのヘモグロビンの量が減ります。
するとそもそも酸素の乗っているヘモグロビンも少なくなるので、SpO2が保たれていても酸素が足りないということがあり得るので注意が必要です。

またSpO2が正常範囲でも絶対に大丈夫とは言えません。
パルスオキシメーターでは二酸化炭素の数値が測れません。
慢性呼吸不全の患者に不用意に高濃度の酸素を投与すると低酸素の呼吸刺激がなくなり、体内に酸素が過剰と判断され呼吸抑制がおこり、二酸化炭素が排出がなくなるために、呼吸不全、意識消失が起こることがあります。
CO2ナルコーシスと呼んでいる病態です。

過呼吸にも注意する必要があります。
酸素飽和度とともに、呼吸数、呼吸状態を必ず確認しないといけません。
パルスオキシメーターは今やネットでも買えます。
新型コロナウィルス感染症の重症化をいち早く察知するという報道が出てから、昨年末から今年初めにかけ、品薄になっていた時期もありました。

しかし、パルスオキシメーターは本当にいい医療機器で手術中のモニターや睡眠時無呼吸の検査にも使われます。
日常診療に欠かせません。
訪問診療でもSpO2はバイタルサインのひとつとなっています。

青柳氏にノーベル賞をあげてほしかったなと思います。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

コロナワクチン予防接種について

6/1より高齢者へのコロナワクチン予防接種開始します。
予約枠を少し増やして予約調整中です。

1回目接種の3週間後に2回目を接種します。

接種希望される方は、受付で予約をお取りください。