2020年12月 No.181
12月後半になりました。
あと一週間で今年も終わります、というタイミングでこれを書いています。
一年がたつのは本当に早い。
12月にはいり、急に寒くなってきました。
豪雪で高速道路(関越自動車道・新潟)で2000台以上の車が立ち往生するニュースはこれは本当に日本?と思えるくらい衝撃的なニュースでした。自衛隊の活躍もあり、死者がでないだけでも幸でした。
解消されたのは50時間後だったそうです。
年末恒例の今年の漢字は「密」でした。
小池百合子都知事が近づく報道陣に対して手で制しながら『密です!』と言ったのが印象的だったようです。
ちなみに流行語大賞は3密が選ばれています。
私は今年の漢字、コロナ禍の「禍」を予想していました。「禍」は2位でした。
流行語、というわけではないですが、私の今年のキーワードは自粛でしたね。
コロナの一年でした。
今年はコロナに振り回されました。
いろいろな学会、集会、忘年会もすべて中止です。
リモートのZOOM飲み会などもしてみましたが、やっぱり対面がいいな、と感じます。
来年は是非。早く収束してほしいです。
現在コロナ感染症が増加し、第3波が到来しています。
大阪では府立急性期医療センター内にプレハブの30床の重症者病棟を作りました。
軽症・中等症の病床を病院に依頼しているところだそうです。
コロナ患者に立ち向かう医師・看護師さんには安全に気をつけていただいて、十分な休養を取っていただきたいです。また十分な補償も。
厚生労働省・大阪府よりかかりつけ医にもコロナ感染症、発熱患者の診療をするよう要請されました。
先月もお伝えしましたが、発熱・感冒症状で受診時にはまず電話をして下さい。
必要があれば、医院の外でコロナ唾液PCR検査用の容器をお渡しして、自宅で唾液を採取してもらい、指定された回収場所に持って行ってもらうという方法が開始されています。
発熱患者を安易に院内に入れないことが最重要であります。
できれば家族に容器を取りにきてもらい、回収場所に持って行ってもらうようにしています。
唾液の取れない発熱患者には、医院の外に設置した簡易の診察場でインフルエンザ検査のような抗原検査をします。
インフルエンザの同時検査が可能です。
当院はかかりつけ患者さんに限って、発熱の診療をするよう届け出をしています。
まだ始まったばかりで、試行錯誤の状態です。
発熱、感冒症状、呼吸困難のある場合はまず電話をお願いします。
米国ファイザーが開発している新型コロナワクチンの接種が海外で始まっています。
日本では、厚労省は2月にも承認の可否を判断します。
認められれば、2月下旬から同意を得られた医療従事者約1万人に接種してもらい、一定期間体調に変化があるかどうかを確認する安全性調査を実施する予定です。
その後、新型コロナの診療などに関わる医師らに、続いて高齢者3千万人~4千万人に接種をしていく方針で、一般の人の接種が始まるのは4月後半以降と予想されています。
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を優先的に受けられる対象について、年齢は65歳以上とし、持病に関しては慢性の心臓病や腎臓病、肥満、呼吸器の病気、糖尿病、がんなど免疫が低下する病気、睡眠時無呼吸症候群などとする案が検討されています。
できるだけ早い時期の接種開始が期待されます。
コロナ対策が奏功されているためか、まだ12月後半になってもインフルエンザの流行のニュースは聞きません。
でも、コロナのこともあり、インフルエンザワクチンはしておかれた方がいいです。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではなく、その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないことです。
新型コロナウィルス感染症で外出を自粛することを余儀なくされ、コロナ太りしてしまったという方も多いでしょう。
かくいう私も新型コロナウィルスで家にいることが多く、ワインの勉強を夜な夜なしていたためつい食べる量も多くなってしまい(特に夜)、肥満一歩手前まで来てしまいました。
また新型コロナウィルス感染症で重症化のリスクの1つに肥満が挙げられています。
そのため、新型コロナウィルスのワクチンを接種する優先疾患の中に肥満も入っています。
今回は肥満はなぜ悪いのかを書いてみます。
実は4年前の2016年12月の院内報に肥満の記事を載せました。2016年に新しい診療ガイドラインが出たからでしたが、それ以降新しい診療ガイドラインは出ていません。
なので、大きく変わることはないのですが、自分への戒めもこめて、この題にしました。
肥満とは脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態です。太っている状態であって、疾病を意味するものではありません。
肥満であるかどうかは体脂肪量によりますが、指標としてBMI(Body Mass Index・ボディ・マス指数・体格指数)が世界的に広く用いられています。BMIは体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)で算出される体格指数です。
身長170㎝、体重65㎏の人の場合、65÷1.70÷1.70で、BMIは22.49となります。
WHOによる肥満の判定基準は、BMI30以上が肥満です。
一方日本ではBMI25以上を肥満としています。
我が国では疾病合併率が最も低いBMI22を標準体重としています。
肥満は疾患ではありませんが、肥満症は疾患(病的な肥満)であり、医学的に治療が必要となります。肥満症とは、肥満のうち種々の健康障害と関連し、医学的に減量を必要とする病態を指し、疾患単位として取り扱われます。
肥満症の診断基準はBMI25以上で、11の肥満関連疾患:耐糖能障害、脂質異常症、 高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常、不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、運動器疾患、肥満関連腎臓病のうち1つ以上の健康障害を有すると判定します。
また、内臓脂肪蓄積がある場合も肥満症と診断されます。
またBMI35以上を高度肥満としています。
平成30年度の厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、20歳以上の人の肥満の割合は男性32.2%、女性21.9%となっています。
年代別にみると、男性では50歳代が37.2%と最も高く、次いで40歳代が36.4%となっています。一方、女性は年齢が上がるにつれて肥満者の割合が高くなり、70歳以上で27.7%と最も高くなっています。
肥満者の割合は、男女ともこの10年ほどほぼ横ばいで推移しています。
肥満の人は明らかに死亡率が高く、また色々な病気の合併も多くなっています。
肥満症のところで述べた肥満関連11疾患にかかりやすいです。
肥満で少ないのは自殺だけといわれています。
合併する病気のリスクについて、肥満の人は肥満でない人に比べて、糖尿病は約5倍、高血圧約3.5倍、胆石症約3倍、痛風約2.5倍、心臓病約2倍、脳卒中約2倍かかりやすいといわれています。
その他にも睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症、ヘルニアなど物理的に肥満が発症の原因になるものもあります。 また他の病気や事故などで手術が必要な場合などでも肺血栓症や縫合不全などの危険性も高くなります。
私は元外科医ですが、肥満は外科の敵、とよく言われていました。
手術時に肥満の方の脂肪の中から血管を見つけるのは、やせた人に比べて大変でした。
手術時間は長くなるし、出血量は増えるし。
それで合併症がやせた人に比べて明らかに多くおこります。肥満はこのように病気との関連ばかりでなく、動作が鈍くなったり、特に小児の肥満については精神的負担が大きくなるなど問題が多いです。
何より怖いのは、肥満により、高血圧、脂質異常症、糖尿病が合併する危険性が増え、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患の発症が誘発されることでしょうね。
メタボリック症候群として、啓発されているところです。
やはり、肥満症は放置してはいけません。
肥満症関連疾患が発症しているのであれば、その疾患に対する治療は必要です。
尚且つ肥満そのものに対しても治療が必要。
もちろん予防も必要です。食事療法・運動療法・行動療法・薬物療法・外科療法があります。
まず食事です。体重減少のためには食事摂取エネルギーの減量が有効です。
肥満症の人は現体重の3%以上、高度肥満の方は現体重の5-10%の減量目標(3-6か月)を設定します。体重、ウエスト周囲長は継時的に計測しています。
その上で肥満症の人は一日25kcal/㎏x標準体重、高度肥満の人は20-25kcal/kgx標準体重、以下の食事エネルギー量とします。
指示エネルギーの50-60%を糖質とし、5-20%をタンパク質、20-25%を脂質とします。
私がいいと思って実践している糖質制限食は、まだガイドラインでは有用性は未確立とのことで検討中のようです。
週3日以上(できれば5回以上)、一日30-60分、有酸素運動を主体で、筋トレ、ストレッチ、種々のエクササイズを併用します。
楽しめて習慣化できる種目をみつけるように。
食事は一日3回決められた時間に摂るのがいいです。
朝昼食べず、夜に一度に食べるのはよくありません。また夜食もしない方がいいです。
早めに寝る、睡眠時間を十分とることが勧められます。アルコールは控えめに。
食事・運動・行動療法を行っても有効な減量が得られない、あるいは合併疾患の改善がない肥満症症例に対して考慮する、とされています。
しかし、日本ではBMI35以上の高度肥満症に対する中枢性食欲抑制剤マジンドールしか使えません。
脂質の吸収阻害薬セチリスタット(商品名:オブリーン)は膵臓から分泌される酵素であるリパーゼを阻害し、それにより中性脂肪が加水分解されず、遊離脂肪酸の吸収が抑えられ、未消化のまま排泄される薬です。
私も4年前、販売を期待していたのですが、あまり効果が無いと薬価収載されず、お蔵入りになっています。残念です。
他にも、同じく脂肪吸収阻害剤のオルリスタット、中枢性食欲抑制剤のセロトニン受容体アゴニストのロルカセリン、モノアミン遊離促進薬のフェンテルミンと抗てんかん薬のトピラマートの合剤、糖尿病治療薬のGLP1受容体作動薬も欧米では肥満症治療薬として使用されています。
日本では使えません。我が国では未承認です。
肥満症治療薬ではないですが、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は体重減少をもたらすことが多いため、その適応症である2型糖尿病患者に対しては、血糖低下と肥満の軽減を期待して用いることが可能とはなっています。
胃のサイズを縮小させる手術、バイパス術、胃の上部をバンドで締める手術などが高度肥満の例に行われています。
手術できる施設が限られています。
今回私が注目したのが、切らない肥満症手術です。東京慈恵会医科大学のチームは、内視鏡を用いた肥満症の治療法の安全性や効果を確かめる特定臨床研究を始めています。
胃を縫い合わせて容積を小さくし、満腹感を得られやすくします。
従来の外科手術のように胃を切らずに治療できるため、より多くの患者向けに、比較的手軽に施行できる可能性があります。
米国で開発された「内視鏡的スリーブ状胃形成術」という手術で、口から入れた内視鏡を用いて胃を縫い合わせます。現在調査中です。
海外の報告では、合併症のリスクが少なく体重減少も数年間保てます。
とてもいい治療とは思いますが、まず食事療法、運動、生活リズムの管理をしてからですね。
まあ、手術は有効ですが、最終手段。
皆様も肥満にはご注意を。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
★年末・年始休暇のお知らせ★
年末は12月29日火曜日まで診療します。
12月30日(木曜日)~1月4日(月曜日)まで休診させていただきます。
1月5日火曜日から通常診療となります。
受診中の方の薬が切れないようこちらも十分注意しますが、皆様もお気をつけ頂きますようお願いします。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。