2020年9月 No.178

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

9月も後半です。

9月初旬はまだ暑い日が続いていましたが、9月中盤以降、急に涼しくなりました。
秋の深まりを感じます。鈴虫の声が聞こえ、朝夕は秋の気配になりました。
日中はまだ暑さを感じることもあり、寒暖の差が大きいため、体調には十分ご留意ください。
新型コロナの影響で、泉州のだんじり祭りも中止となり、寂しい思いをされている方も多いことかと思います。もうすぐ、10月。
早いもので今年もあと3ヶ月。もうおせちなどの宣伝も始まっています。来年のカレンダー、手帳は早々と入手しました。

 新型コロナ感染症 

まだ、影響が続きます。
現在のところ、国内の感染者計82413人、死者1550人とのことです。
新しい治療、ワクチンについても、水面下で進展はあるのでしょうが、まだ私たちにも新しい情報は伝わってきていません。
コロナの検査容器を患者さんに渡して、自分で唾液を採取してもらい、保健所に持って行ってもらってPCR検査をするという方法、現在、医師会、泉大津市・忠岡町、和泉保健所と協議中です。現在、発熱した患者さんは、時間をあけて受診して頂いています。
コロナPCRをしてくれる病院が何か所かあり、場合により紹介させて頂きます。
また、今年はインフルエンザの検査をせず、問診だけでインフルエンザの治療を開始してもよいという通知がでています。
発熱時の初診時、問診のみで唾液でのコロナPCR検査容器をお渡しして、解熱剤、インフルエンザ薬を処方するという方法が今シーズンは認められそうです。発熱した場合、直接医院に来るのではなく、まず電話してください

感染防止の3つの基本である

  1. 身体的距離の確保、
  2. マスクの着用、
  3. 手洗いの徹底

もお願いします。

9月21日は敬老の日でした。
新型コロナウイルスの流行で懸念されるのが、高齢者の孤立です。高齢者にはコロナ感染での重症化リスクがあり、行動は慎重にならざるをえません。家に閉じこもりがちの人が少なくありません。離れて暮らす家族の帰省もしにくくなっています。周囲の目が届きにくくなれば、万が一の異変も気づかれにくいです。
7月に発表された国民生活基礎調査によると、ひとり暮らしの高齢者は2019年、約736万9千人でした。30年前の4.6倍に増えています。
高齢の夫婦ふたり暮らしや老々介護も多いです。感染防止に配慮したうえで、どう高齢者を見守るか。「ウィズコロナ」に対応した仕組みづくりは急務となります。

地域住民の見守り、新聞・ガス、水道、電気の担当者などの見守りも期待されています。
今最も期待されているのはIT(情報技術)の活用とのことです。
介護施設では高齢者を見守る介護ロボットなどの導入が進んできています。
あらゆるモノがネットにつながるIoT機器の発達により、身近なものが見守り用に使えるようになりつつあるようです。人の動きや明かりの点灯などの情報を、遠方の家族らがネットやメールで確認できるようにするといったものです。高齢者にも使いやすい情報機器の開発が望まれます。
また、外出自粛に伴うストレスや運動不足は、心身の機能低下につながります。
閉じこもりがちになる高齢者の運動不足、フレイルにも気をつけたいです。

 インフルエンザ予防接種 

季節性インフルエンザワクチンの接種が始まります。インフルエンザワクチンは発病を必ず防ぐわけではありませんが、かかりにくくなる、重症化予防などの効果があります。

接種時期ご協力のお願い

今年は過去5年で最大量(最大約6300万人分)のワクチンを供給予定ですが、より必要とされている方に確実に届くように、ご協力をお願いします。10月1日から65歳以上の高齢者の方を優先的に接種するよう、厚生労働省から通達がきています。
65歳以上の方のほか、60歳から65歳未満の慢性高度心・腎・呼吸器機能不全者等の方も対象です。
上記以外の方は10月26日まで接種をお待ちください。
65歳以上の方の接種ができるよう、ご協力をお願いいたします。
接種に当たっては、あらかじめお電話での予約をお願いします。

潰瘍性大腸炎

令和2年8月28日、安倍首相が持病の悪化を理由に総理を退任されました。
総裁選を経て現在は菅政権が誕生しています。安倍総理を辞任に追いやった持病は、潰瘍性大腸炎です。
安倍首相は前回(平成19年)も潰瘍性大腸炎のために退任されてます。
今回は潰瘍性大腸炎につき概説します。

潰瘍性大腸炎は難病に指定されていて、日本では人口一万人あたり10人程度の患者数と言われています。
日本では、この40年間で潰瘍性大腸炎の患者数が増加しているそうです。
原因は不明ですが、家族内の発症があるので何らかの遺伝子異常ではないかとは言われています。まだ解明はされていません。
病態は大腸粘膜における自己免疫反応の異常です。大腸粘膜に白血球が集まる炎症がおこり、びらん、潰瘍が出現します。
発症年齢は若年層に多く、20歳代が最も多いです。
しかし高齢者の発症もあります。

病変の広がり肛門に近い直腸から炎症が始まり、人によっては全大腸に広がることがあります。
直腸炎型と言って病変は直腸だけに限られる場合(21.7%)、直腸から病変が広がる左側大腸炎型(37.4%)、病変が全大腸に広がる全大腸炎型(37.8%)に分類されます。症状は下痢、血便、腹痛です。
発熱、貧血、体重減少が出現することもあります。

腸管外の合併症としては関節、皮膚、目の病変のほかアフタ性口内炎、結節性紅斑などがみられます。
診断には血液検査、レントゲン検査などの基本的検査のほかに内視鏡検査が必要です。病変粘膜は発赤,浮腫状を呈します。
粘膜表面は粗造で細顆粒状です。
膿性粘液の付着がみられることが多く、炎症が強くなるにつれて,潰瘍形成が認められます。
内視鏡検査の際に大腸粘膜を採取して病理組織的検査を行います。
潰瘍性大腸炎特有のびらんや潰瘍が起こっているのを確認します。

潰瘍性大腸炎には重症度分類があります。
重症になると排便回数が6回以上、血便、発熱(37.5度以上)、頻脈(90/分以上)、貧血(ヘモグロビン10g/dl以下)、CRP3.0g/dl以上の炎症反応が認められるものを重症型とします。

重症度分類

さらに潰瘍性大腸炎には劇症型という重症の中でもさらに強い症状を呈するタイプがあります。劇症型になるとちょっと危険な状態になってきます。緊急手術になることもあります。潰瘍性大腸炎には重症患者は少なく90%が軽症から中等症です。

 治療 

内科的治療と外科的治療があり、主体は内科的治療です。内科的治療では腸の炎症を鎮め、症状をコントロールするための薬物治療が中心となります。

 1)内科的治療 

現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科的治療はありませんが、腸の炎症を抑える有効な薬物治療は存在します。治療の目的は大腸粘膜の異常な炎症を抑え、症状をコントロールすることです。潰瘍性大腸炎の内科的治療には主に以下のものがあります。

〈5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製薬〉

5-ASA製薬には従来からのサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)と、その副作用を軽減するために開発された改良新薬のメサラジン(ペンタサやアサコール)があります。経口や直腸から投与され、持続する炎症を抑えます。炎症を抑えることで、下痢、下血、腹痛などの症状は著しく減少します。5-ASA製薬は軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に有効で、 再燃 予防にも効果があります。安倍首相はアサコールを服用されていました。

〈副腎皮質ステロイド薬〉

代表的な薬剤としてプレドニゾロン(プレドニン)があります。経口や直腸からあるいは経静脈的に投与されます。
この薬剤は中等症から重症の患者さんに用いられ、強力に炎症を抑えますが、再燃を予防する効果は認められていません。

〈血球成分除去療法〉

薬物療法ではありませんが、血液中から異常に活性化した白血球を取り除く治療法で、LCAP(白血球除去療法:セルソーバ)、GCAP(顆粒球除去療法:アダカラム)があります。片方の静脈から血液を取り出して透析のような手法で、白血球を除去して別の静脈に返します。
副腎皮質ステロイド薬で効果が得られない患者さんの活動期の治療に用いられます。
安倍総理も受けたと報告されていました。

〈免疫調節薬または抑制薬〉

アザチオプリン(イムラン、アザニン)や6-メルカプトプリン(ロイケリン)はステロイド薬を中止すると悪化してしまう患者さんに有効です。
また、臓器移植後に使用される免疫抑制剤シクロスポリン(サンディミュン)やタクロリムス(プログラフ)はステロイド薬が無効の患者さんに用いられます。

〈生物学的製剤〉

抗TNFα受容体拮抗薬インフリキシマブ(レミケード)やアダリムマブ(ヒュミラ)といった注射薬が使用されます。効果が認められた場合は、前者は8週ごとの点滴投与、後者では、2週ごとの皮下投与が行われます。後者では自己注射も可能です。
安倍首相はレミケード治療されていたと報道されていました。活動性潰瘍性大腸炎の新規治療薬剤として、2018年に抗α4β7インテグリン阻害薬エンタイビオとJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤ゼルヤンツの使用が可能となっています。

 2)外科的治療 

多くの場合、内科治療で症状が改善しますが、以下のようなケースでは外科手術(大腸全摘術)が行われます。

(1)内科治療が無効な場合(特に重症例)

(2)副作用などで内科治療が行えない場合

(3)大量の出血

(4)穿孔(大腸に穴があくこと)

(5)癌またはその疑い

大腸全摘術の際には、小腸で人工肛門を作る場合もありますが、近年では、小腸で便をためる袋(回腸嚢)を作成して肛門につなぐ手術が主流となっています。
その場合、術後は普通の人とほぼ同様の生活を送ることができます。

潰瘍性大腸炎には、炎症が起こって症状が強く現れる「活動期」と、症状が治まっている「寛解期」があり、活動期には炎症を抑えながら寛解をめざす治療が、寛解期には寛解を長く維持するための治療が行われます。炎症を抑えることで下痢、下血、腹痛などの症状を軽減できます。寛解を長く維持するためには、症状が治まっていても毎日の服薬を欠かさないことが重要です。

活動期・寛解期

また発病して7-8年すると大腸がんを合併する患者さんが出てきます。
これは大腸の炎症のそのものが発癌の要因になるからです。症状が落ち着いていても定期的な内視鏡検査が必要です。

活動期においては消化が良く高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低繊維の食事が基本で、刺激物やアルコール、炭酸飲料などは控えめにし、乳製品の過剰な摂取も控えます。また、長期の旅行や激しい運動は控え、ストレスや過労、睡眠不足にも注意が必要です。

今回、安倍総理は新型コロナ禍の過労、ストレスが原因となり、アサコールが効かなくなり、再燃したと考えられます。
より強力な治療も必要となり、激務に耐えられないと判断されたのではないでしょうか。
長年にわたりお疲れさまでしたと思うと同時にストレス・過労から解放され、よい状態に戻ることを期待しています。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

平成2年10月1日に継承したので、今年は医院の20周年となります。

記念式典、記念旅行などを考えていたのですが、コロナ禍の今の状況では何もできません。

職員、かかりつけ患者の皆様に感謝の意を表します。