2020年8月 No.177

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

8月も後半です。暑い日が続いています。

今年の夏休みは、例年行っていた故郷である熊野大花火大会が中止となり、また自粛が続いていたため、ほとんど自宅にいました。
外出は墓参りに行った程度でした。
いつまでこのようま状況が続くのかと不安に思いますが、この状況に慣れていかないと仕方ないのかなとも思います。
外出自粛の中で何ができるのかを考えていかないといけません。パソコン、スマホでZoomやLINEを使ったオンライン会議、オンライン飲み会などは結構使用できるようになってきており、私も何回か使いました。
飲み会も会議も本当は対面でしたいところですが、今は我慢です。

昨年も蚊が出ないほど暑かったと記憶していますが、今年も暑くあまり蚊は見かけません。
でも、虫刺され予防スプレーをするのを忘れると、いつのまにか咬まれています。まだ蚊の季節は続きますから、スプレーをちゃんとしようと思います。

熱中症に注意。今年はコロナの影響でマスクをすることが多いため、さらに注意が必要です。

 新型コロナウィルス感染症 

まだコロナの影響が続いています。
緊急事態宣言は終了したとはいえ、大阪でも第二波と考えられる感染者の増加が続いていますまだまだ注意が必要です。

コロナ診療において、診断にはかなりの進歩があるようです。新型コロナウィルス感染の診断に関しては、インフルエンザと同じような検査が既に販売されています。
クイックナビ-COVID19 Agという検査で、手順はインフルエンザ検査と同様です。
15分で結果が出ます。しかし、PCR検査ほとには感度はよくないようです。
コロナ陽性に出たら確実ですが、陰性だったら、PCR検査してもらうなどの措置が必要になります。FilmArray呼吸器パネル2.1という、マイクロアレイ法を用いた検査も保険適用になりました。
SARS-CoV-2や各種インフルエンザなど計21項目のウイルスや細菌を同時測定できます。
先月、容器を患者さんに渡して、自分で唾液を採取してもらい、保健所に持って行ってもらってPCR検査をするという方法が提示されましたが、まだ実現にはいたっていません。
予防接種は来年から接種できるようです。
特効薬の開発が期待されます。

新型コロナウイルスに感染し重症になる人がいる一方で、症状が出ない人もいます。
新型コロナへの免疫応答の研究で最前線に立つ米エール大学の岩崎明子教授は、炎症を引き起こすサイトカイン(細胞から分泌される生理活性物質の総称)が重症化を見極める上で重要と言われています。
エール大学の病院の100人以上の患者さんの免疫応答の長期的な解析を行った結果、炎症性のサイトカインを多く産生する患者さんでは病態が悪化することがわかりました。
重症化する患者ではウイルス感染に関係のない寄生虫に対するサイトカインがたくさん出て、それ以外にも悪いサイトカインも出ます。
いわゆるサイトカインストームがおきると重症化しやすいようです。
こうした物質を抑えれば重症化防止に役に立つ可能性があります。

また、岩崎先生の研究室では新型コロナに感染するマウスを開発しました。
マウスには免疫のデータ、遺伝子組み換えなど豊富な技術の蓄積があり、マウスで新型コロナの研究ができる意義は非常に大きいです。

また、コロナ感染後、長期に渡り深刻な体調の不良を訴える人がかなりいます。
倦怠感や頭痛などの症状で起き上がれないほどの重症の方もいます。
健康な若者にこうしたコロナ後遺症に苦しむ人が多く、男性より女性が多いようです。
岩崎先生はこの病態は免疫機構の暴走の末に、体内にできた抗体が自分自身の組織を攻撃してしまう、いわゆる自己免疫疾患ではないかと考え研究されておられます。
いろいろ取り組んでおられて期待がもてます。

敬老の日を前に、厚生労働省は令和元年簡易生命表の概況を公表しました。
それによると、平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳となり、前年と比較して男性が0.16年、女性が0.13年上回りました。
世界では、男性は第1位が香港82.34歳、第2位がスイス81.7歳、第3位が日本81.41歳。
女性は第1位が香港88.13歳、第2位が日本87.45歳、第3位がスペイン86.22歳となっています。長寿化が進みますね。

不眠症

不眠症夜寝つきが悪い、眠りを維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅く十分眠った感じがしないなどの症状が続き、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、疲れや種々の体調不良が起こる状態を指します。
日本においては約5人に1人が、このような不眠症状で悩んでいると言われています。
不眠症は、小児期や青年期にはまれですが、20~30歳代に始まり加齢とともに増加し、中年、老年と急激に増加します。
また、男性よりも女性に多いようです。
外来診療していても、最近眠れない、日中眠い、などの訴えはよくお聞きします。
前の日眠れなかったけど、次の日はよく眠れたのならいいのですが、日中眠いのが続くのは問題です。
睡眠負債、という言葉が出て、この院内報にも書いたことがあるのですが、見てみると2017年7月。もうあれから3年もたったのか、という感じです。
令和元年6月に睡眠障害の対応と治療のガイドラインが改定されたこともあり今回は不眠症について書いてみます。

 睡眠について 

地球上のすべての哺乳類が、生命を維持していくために睡眠を必要とします。
睡眠をとらないでいると生命の維持に危機的状況をもたらすことが動物実験で確かめられています。

実際眠らないとどうなるかと言う問題ですが、ヒトでは1965年にアメリカの17歳の男子高校生が参加した実験があります。
彼は11日と12分眠らなかったのですが、断眠開始後4日目には気分が沈みがちになりイライラが出現し、ものがヒトの姿になって見える幻視も出現し、自分が周りの人から嫌われていると言う妄想的な訴えも見られました。
7日目から8日目には言葉が不明瞭となり記憶力と集中力の低下が見られました。10日目には思考能力もかなり低下しました。
しかし様々な身体の機能には問題はなかったです。実験終了後彼は自宅で14時間45分眠り目覚めたときには全て正常に戻っていました。

睡眠についての生理的研究から、睡眠には2種類あることがわかっています。
現在、目がピクピクと活発に動いている時期をレム睡眠、そうでない時期ノンレム睡眠と呼び区別しています。
人は就寝し入眠後まずノンレム睡眠に入ります。ノンレム睡眠時は脳が休んでいる状態です。
その後、レム睡眠に入ります。
夢を見るのはレム睡眠の時です。
このレム睡眠とノンレム睡眠がおよそ90分から110分の周期で繰り返されます。

不眠症にはタイプがあります。

入眠困難
床についてもなかなか(30分~1時間以上)眠りにつけない。

中途覚醒
いったん眠りについても、翌朝起床するまでの間、夜中に何度も目が覚める。

早朝覚醒
希望する時刻、あるいは通常の2時間以上前に目が覚め、その後眠れない。

熟眠障害
眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡した感じが得られない。

なお、これらのタイプは同時に重なって現れることがあります。

不眠症を引き起こす主な原因

環境要因
時差がある場所、枕が変わる、また暑さや騒音、明るさなどの影響など

身体要因
年齢、性差、頻尿、痛み、かゆみなど

心の要因
悩みやイライラ、極度の緊張からの精神的ストレス、睡眠に対するこだわりなど

生活習慣要因
アルコール、ニコチン、カフェインの摂取、薬の副作用、運動不足など
また、睡眠時無呼吸症候群、ムズムズ足症候群も不眠の原因になります。
また、肺気腫、アトピー性皮膚炎などの身体疾患も不眠の原因となります。

ヒトという動物は、1.朝日を浴びて、2.昼間光を浴びて活動し、3.夜は暗い所で過ごし、4.規則的な食事をとるときに潜在能力が最も効率よく発揮されるような脳の仕組みを持っています。
この4点がよく眠るための基本、すなわち睡眠衛生の基本です。
夜になっても眠れない、あるいは昼間から眠いという方は、まずこの睡眠衛生の基本を、しっかりと確認していただきたいと思います。

また、睡眠障害対処 12の指針 というのがあります。
これは厚生労働省の研究班によって、睡眠障害を事前に防ぐための方法を12の指針としてまとめられたものです。
まずはこの指針を読みご自身が取り組むべき対処方法を確認してみましょう。

  1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困 らなければ十分
  2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリ ラックス法
  3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻に こだわりすぎない
  4. 同じ時刻に毎日起床
  5. 光の利用でよい睡眠
  6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
  7. 昼寝をするなら、15時前の20~30分
  8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
  9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
  10. 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
  11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
  12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

不眠の薬物療法は不眠のタイプによって薬を使い分けます。
入眠障害には超短時間作用型の睡眠剤が使われます。
現在使われる睡眠剤は大きく分けてベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン拮抗薬があります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬はハルシオンやデパスなどですが今まで多く使われてきており、今でも処方箋ベースで使用される睡眠剤の70%をしめます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は不安や緊張が強い場合には効果的ですが、ふらつきや転倒などの副作用に注意が必要であり、長期に使用した場合には耐性や依存性を生じる可能性があります。
高齢者には推奨されていません。

非ベンゾジアゼピン系はマイスリー、アモバン、ルネスタなどの商品名です。
ふらつきや転倒の副作用が少ないことが知られています。

メラトニン受容体作動薬(ロゼレム)は、脳内のメラトニン受容体に作用し、メラトニンと同様の作用をして、体内時計を介することによって、睡眠と覚醒のリズムを整え、睡眠を促します。

オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ、デエビゴ)は覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠を促します。

今後は非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬が登場し、今後はこの3つのクラスの睡眠薬を適宜選択して不眠症の薬物療法組み立てることになるだろうと思います。

私たちヒトは人生の3分の1の時間は「睡眠」で過ごすといいます。
寝ている間に身体及び脳の疲れを休息させ、修復再生させているのです。
健やかな生活を送るために、いい睡眠をとるようにしましょう。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

待合室から感染予防のため、雑誌・新聞などを撤去しました。

恐れ入りますが、ご自分で書物・スマホなどで待ち時間を過ごせるよう工夫をお願いします。

★休診のお知らせ★

10月12日月曜日、都合により休診させて頂きます。

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。