2020年7月 No.176
7月も終盤になりました。
例年近畿地方の梅雨明けは7月21日頃なのですが、7月28日現在、今年はまだ梅雨明けしていません。
今年も大雨被害があり、令和2年7月豪雨と呼ばれる熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生した集中豪雨がありました。
熊本県南部、川辺川・球磨川流域の人吉市や球磨村を中心に、死者数は60人以上となっています。近畿地方でも大雨、雷が多かったように思います。
しかし、7月中には梅雨明けするのでは、と予想されています。いよいよ夏本番です。
外に出ると、蝉の声が聞こえます。
今年も猛暑が予想されています。
熱中症に注意が必要な時期です。
今年は新型コロナでマスク着用が必要となり、より暑さを感じることが多くなりそうです。
5月25日、緊急事態の終了が宣言されました。
学校も始まり、段階的に社会経済の活動レベルが引き上げられていきました。
しかし、7月に入り、一旦おさまったかに見えた感染が再度拡大しつつあります。
第二波が到来したのではと考えられています。
大阪では20代を中心とした若年層に感染者が増えています。
7月23日に和泉保健所所長の新型コロナウィルスの現状と今後の対応について、という講演をお聞きする機会がありました。
コロナウィルス発生状況・大阪モデルの報告をお聞きしました。
今後はPCR検査受諾件数が増加するので、医師が必要とした場合は全例検査対象とする、と言われていました。
方法として、容器を患者さんに渡して、自分で唾液を採取してもらい、保健所に持って行ってもらうなどの方法を検討中とのことです。
また、地域外来検査センターの設置に向けて調整中とのことでした。
いずれもまだ決定ではありません。
引き続き、保健所、医師会、行政、市立病院と連携して、新型コロナ対策をしていきます。
厚生労働省より新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」が提示されています。
感染防止の3つの基本を守ってください。
①身体的距離の確保(できれば2m・最低1m) 「3密」の回避(密集、密接、密閉)
②マスクの着用
③手洗い
新型コロナウィルス向けワクチンの開発が大詰めに来ています。
今1番進んでいるのはイギリスのアストラゼネカがオックスフォード大学と共同で開発しているワクチンです。
新型コロナウィルスに対する中和抗体はワクチンの単回接種から1ヵ月後には91%の被験者に、2回目の接種を受けた被験者の100%に見られました。
安全性に対する結果としては特に重大な副反応はありませんでした。
アストラゼネカは本年9月の実用化目標をたてており、供給量は20億回分だそうです。
期待が持てます。
それに続くのが米バイオ医薬ベンチャーのモデルナで米国立衛生研究所(NIH )と共同でワクチンの治験を進めています。
これまでの小規模な治験では参加者全員にウィルスの働きを中和する抗体の生成を確認していました。
また、これに続くのがドイツのファイザーのワクチンです。日本では大阪大学とアンジェスの共同研究が進んでいて現在治験中です。
家の中では室温の目安は28度以内。エアコンを使用して快適に過ごすようにしてください。
直射日光が当たる屋外にいないといけない人は、日陰ができる休憩場所を整備して氷や水などで身体を適度に冷やすことのできるように。
今年はマスク着用しないといけないので、より一層の注意が必要です。
服装は風通しのよいものを。
汗をかいたら水分補給、塩分補給もお忘れなく経口補水液などで早めに水分を補給しましょう。
人類一番の外敵・蚊、刺されないように対処してください。
私は今シーズンもイカリジンが配合された虫除けスプレーを使っています。
効果はあるようです。
昔は日焼けして真っ黒な顔、身体が健康の象徴とされてきました。しかし、今は日光の紫外線による皮膚炎、シミ、皮膚がんなどのいろいろな障害があることがわかっています。
出来るだけ紫外線を避けるようにしましょう。
便秘について・新しい治療薬も含めて日本消化器病学会より『慢性便秘症診療ガイドライン2017』が発表され、この院内報でも2018年1月に紹介しました。
以後、新しいガイドラインはでていませんが、現在までの間にいくつかの新しい便秘薬が登場しましたので、それを含めて書いてみます。
「本来なら体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
この定義には排便回数や排便量が少ないために、糞便が大腸内に滞っている(残便感)、直腸内にある糞便を快適に排出できない(排便困難)、という2つの状態が含まれています。
慢性便秘は、原因から器質性か機能性に、症状から排便回数減少型か排便困難型に、病態から大腸通過正常型か大腸通過遅延型、便排出障害に分類されます。
便秘の有病率は日本の平成25年度厚生労働省の国民生活基礎調査では、便秘の有訴者率は男性2.6%、女性4.9%でした。
特に50歳以下の若年者では、女性の比率が高いです。
しかし加齢に伴い、男女ともに有病率が増加し、特に男性の比率が増え、性差が無くなる傾向にあります。
統計上、70歳以上で10人に一人くらいの割合のようですが、私の外来での印象はもう少し多いような気がしています。
治療は、器質性の便秘で手術などが必要な病態を除くと保存的治療を基本としています。
便秘の治療といえば、適切な食事と運動・朝食を摂る・水分をよく摂るなど生活習慣の改善をまず心がけます。
内服療法をする場合、臨床で用いることが多いのは、便をやわらかくする薬・浸透圧性下剤です。
浸透圧性下剤には、塩類下剤と糖類下剤があります。
一般的に使われるのはマグネシウムを含む塩類下剤です。
マグネシウムには腸内の水分保持作用があるので、便の量が多くなりやわらかくなります。
服用中は定期的な血中マグネシウムの測定が必要とされています。
高マグネシウム血症では、悪心・嘔吐,口渇,血圧低下,不整脈が出現することがあり、注意が必要です。
特に気にしなければならないのは、高齢者および腎機能が低下している人です。
血中マグネシウムが高くなれば、同じ浸透圧性下剤の糖類下剤(ラクツロース)が使用されます。
ラクツロースは、大腸で浸透圧作用により下剤効果を示すだけでなく、腸内での分解により発生した有機酸が腸蠕動を亢進させ、排便を促します。
乳酸菌を増やす効果、アンモニアを下げる効果もあります。
ラグノスNFというゼリータイプの薬もあります。
我が国で処方回数が多いのが刺激性下剤(センナ、プルゼニドなどのアントラキノン系下剤など)です。
市販薬のほとんどがこのタイプです。
この薬も推奨度が低くなっています。
非常に強力な薬剤ですが、習慣性、あるいは依存性といった問題があり、大腸粘膜が黒色になるのも知られています。
そのため刺激性下剤は頓用とすべきで、常用は控えた方がいいようです。
しかし、昔からこの系統の薬を常用されている方は他剤への変更を好まない方が多いように思います。
もうひとつ、刺激性の薬剤として液体のラキソベロンがあります。
今まではマグネシウムとラキソベロンを併用して調整するのがよい、とされていました。 ここ数年で、新しい便秘薬が相次いで登場しています。
新しい薬はいずれも便の水分を増加させ、便を柔らかくして、排便を促すタイプの薬です。
便は水分で膨張し、それが大腸の動きを活発に持ちます。
生理的な作用に近く、長く使い続けても薬の効き目が落ちてきません。
また、体にほとんど吸収されないか、吸収されても速やかに分解されるので、より安全です。
ガイドラインに掲載されていたのが上皮機能変容薬です。
エビデンスレベルAで推奨されています。
ルビプロストン(商品名アミティーザ)やリナクロチド(リンゼス)です。
アミティーザは小腸のクロライドチャネルという腸液の分泌に関わる受容体を刺激し、小腸内への水分分泌を増やし便を柔らかくする薬です。
リンゼスは、腸粘膜上皮細胞に発現しているグアニル酸シクラーゼC受容体に結合して活性化することにより、腸管分泌及び腸管輸送能を促進するとともに、内臓痛覚過敏を改善します。
リンゼスは最初便秘型の過敏性腸症候群のみでしたが、便秘にも使えるようになりました。
アミティーザは妊婦には使えません。
いずれも、作用機序は何のことかわからないかもしれませんが、薬剤が上皮に作用して、大腸内に水分を送る薬、ということでご了解ください。
ガイドラン発表後に発売された薬が2つあります。
グーフィス
大腸内の胆汁酸を増やす薬です。
胆汁酸は大腸内へ水分分泌を増やし、大腸の動きを活発にします。
効果をより良くするため、食事の前に飲むのがいいです。
胆汁酸は、肝臓でコレステロールから合成される物質のことです。
胆汁酸は肝臓で合成された後、胆汁の主成分として胆嚢に蓄えられ、食事に伴って胆管を経て十二指腸へ排出され、食物脂肪の消化、吸収に関与します。
排出された胆汁酸は小腸で約95%が再吸収され、門脈を経由して肝臓に戻り再び胆汁中に分泌されます。
いわゆる腸肝循環です。
一方、再吸収されなかった胆汁酸は大腸へ到達します。
大腸管腔内で胆汁酸が増加すると、胆汁酸の働きによって大腸管腔内へ水分が分泌され、また消化管運動が促進することが知られています。
胆汁酸トランスポータ阻害薬・グーフィスは、小腸での胆汁酸の再吸収を阻害しますので、大腸に流れる胆汁酸が増加します。
この薬は食前に服用することになっています。
モビコール
大腸内視鏡の前処置薬に似た成分の薬です。
浸透圧の差を利用して便中水分量が増加することで、便が軟化し便容責が増大して大腸を刺激し、蠕動運動が活発になって排便が促されます。
マグネシウム製剤と同じ浸透圧下剤に分類されます。
マグネシウムと異なり電解質異常を引き起こすことなく、体内にも吸収されないため安全性が高いとされています。
粉を水に溶かして飲む薬で、2歳以上の子供にも使えます。
新しい薬をどう使うか
「慢性便秘症」未治療患者への治療においてはまず問診で便秘の状態を排便回数・ブリストル便形状スケールを用いて便の形状・腹痛の有無などをしっかり把握することが重要です。
薬剤の選択には作用が穏やかな塩類下剤や刺激性下剤の頓服などから始め、徐々に増量、あるいは強い薬に切り替えていく。
どの薬が合うか誰も分からない。
時間をかけて合う薬を一緒に探しましょうと説明し、処方を開始します。
次回受診まで排便状態・満足感などをノートに記載して頂き再診時にチェックするようにします。
既治療患者への治療においては満足感が得られない理由をしっかり把握することが重要です。
これらの患者に対してはアミティーザやリンゼス、グーフィスなどが処方されます。
これらの薬剤は治療効果出現が早いので一日容量の半分から処方を開始し、2週間毎に受診、経過を観察し効果不十分な場合は徐々に増量していく。
増量にて腹痛や下痢などの症状が出る場合は既治療薬を徐々に減らし、新しい薬に切り替えて行くことで満足感を維持していくのが良いとされています。
慢性便秘症の治療は長期に渡ることが多いです治療中の腫瘍性病変の精査は定期的に施行することは忘れてはいけません。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
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現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
★夏季休暇のお知らせ★
8月15日土曜日から8月18日火曜日まで夏季休暇のため、休診します。
8月13日・14日は診療します。
8月19日水曜日から通常診療します。
当院受診される方、薬がきれないようにチェックをお願いします。
当方も注意しますが、例年1-2例、休み期間中に薬が切れたと連絡があります。
薬局に無理を言って準備してもらっていますが、対応が難しい場合もあります。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。