2020年6月 No.175

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

6月です。梅雨入りしました。
今年の冬から春、異常事態となった新型コロナウィルス感染症。5月21日に大阪では非常事態宣言が解除されました。
学校も始まり、普段の生活が戻ってきているような印象を受けます。

それも束の間、大阪南のバーでクラスターが発生しました。
これにより我々・大阪の医療従事者の外出、外食、飲み会が自粛延期となったようです。
お世話になっていた飲食店にも貢献したいのですが、不義理が続いています。
もう少しの間ご勘弁ください、と心の中で謝罪しています。

まだスポーツジムにも行けていません。
もう少し外出は自粛することにします。
皆さんはいかがでしょうか?

非常事態宣言解除後でも感染に対する注意は必要です。三密(密閉、密集、密接)を避けてソーシャルディスタンスをとる。
マスク、手洗い、咳エチケットなどは必ず守るようにしてください。

前回も書きましたが、手は感染源となりますので、手洗いは十分していただくことに加え、手で粘膜を触らないようにしてください。
目をこする、鼻、口を触るのはウィルスが体内に侵入することになりますので、特に顔を触る癖のある人は注意してください。

当院では換気をよくすべく、入口に換気用の網戸を設置しました。当初、入口を開放していたのですが、虫が入ってくる、との声があり自動扉の横に設置しました。

熱のある人の診療については、事前に連絡してもらい、一般の外来患者さんがお帰りになったあとに、診察室とは別の部屋に誘導し、診察しています。
その際、我々は予防着を着て手袋をして、フェースガードをします。
診察で必要があれば、病院の発熱外来に紹介しています。

和泉保健所の所長以下職員の皆様は、新型コロナ蔓延時、大変な激務であったようです。
十三市民病院のスタッフの方々、発熱外来をされている病院のスタッフの方々、本当に頭が下がります。
今は少し落ち着いているようでなによりですが、第二波が来ないことを願っています。

今シーズン、ほとんどコロナ以外の医療ニュースは入ってきません。

コロナに関連して新しい動きとしては、大阪大学・森下竜一教授のグループと医療新興企業アンジェスが開発している新型コロナウイルス感染症のワクチンは、治験計画の届け出が国に受理されたと発表されました。
早ければ6月30日から治験を開始し、来年の春の実用化を目指しています。
国内で治験まで進むのは初です。

唾液を用いて30分程度で新型コロナウィルスを判定する検査方法が実用に向けて動き出しています。日本大学のグループが作ったウィルス検査で塩野義製薬と量産に向け開発しています。
これが完成するとPCRのような検出器を用いずインフルエンザのような検査で、すぐ結果がわかります。

この検査はSATIC法という検査で新型コロナウィルスのRNAと試薬中のDNAが結合して特殊な立体構造になって色が変色して検出できるというものです。
早ければこの秋の実用化を目指しています。

一般の病院・診療所でも検査が可能となれば、診断の効率は一気に高まります。

この方法は95度で約2分加熱した唾液を試薬に入れると新型コロナを検出した場合に20から25分で変色します。
目で見て感染の判定が可能で、PCR検査と違い検出機器や検査技師さんを必要としません。インフルエンザ検査と同じようになるようです。
期待できますね。

治療薬の検討も進んでいます。
アビガン、レムデシベルに加えて、私にもなじみのあるステロイド薬、セファランチン、フサン、なども候補に挙げられています。

また、コロナに対する抗体を検出する検査も開発されています。
抗体があるということは免疫があるということで、多くの場合次に新型コロナにはかからない、ということになります。
ウィルスの変異があればわかりませんが。
これも受けてみたい検査ですね。
陰性ならワクチンを打って抗体が出来るかどうか調べる、など。

ウィズコロナ、と言われます。
インフルエンザと同じように共生することになるのでしょうか。今後も注目していきます。

悪性新生物(がん)

今年の院内報2月号から5月号までは、患者数の多い疾病について、説明用の文書を作成しました。この病気の総関者数は厚生労働省の調査から引用しました。

一番多いのが高血圧性疾患の1011万人。
次が糖尿病の316万人、その次が脂質異常症の206万人でした。

これに上記の合わせ技であるメタボリック症候群・これはいわゆる内臓脂肪肥満ですが、これを追加して患者さん説明用としました。

この報告では虫歯、歯周病も結構多いのですが、これは除くとして、内科的疾患として次に多い患者数の病名としては、高血圧性のものを除く心疾患173万人、悪性新生物163万人でした。

高血圧を除く心疾患は心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患、心筋症、弁膜症、心房細動を含む不整脈などがあります。

悪性新生物も部位によってかなり様相が異なります。

今回は悪性新生物・がんを取り上げます。
ざっくりと主にがんの予防方法とがん検診について書いていこうと思います。

いまや、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなる時代です。
日本の死亡原因の1位はがんです。
以前はがんは不治の病と言う印象が強かったのですが、現在では早期に発見すれば完治も望める疾患となっています。

がんは遺伝子の異常が積み重なっておこります。遺伝子はよく変異が起こります。
変異のある遺伝子をもつ細胞は免疫系によって察知され、細胞死へと誘導されます。
その免疫系から逃れて増殖していくのが、がんです。がんは放置すると大きくなって他の臓器に転移をして、人の生命を脅かします。

では、がん予防について述べてみます。

がんの原因が遺伝子異常の積み重ねで、免疫系からすり抜けることにより増殖する、ということなので、遺伝子に変異を起こさせないようにする、免疫系を正常に保つ、ことが重要となります。
国立がん研究センターがん予防・検診研究センター・公益財団法人がん研究振興財団が2011年に発表したがんを防ぐための新12か条を紹介させていただきます。
すべてのがん治療の基本となる項目ですので一度チェックしておきましょう。

  1. たばこは吸わない
  2. 他人のたばこの煙をできるだけ避ける
  3. お酒はほどほどに
  4. バランスのとれた食生活を
  5. 塩辛い食品は控えめに
  6. 野菜や果物は不足にならないように
  7. 適度に運動
  8. 適切な体重維持
  9. ウイルスや細菌の感染予防と治療
  10. 定期的ながん検診を
  11. 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
  12. 正しいがん情報でがんを知ることから(詳しい説明はがん研究振興財団のホームページを参照してください。) http://www.fpcr.or.jp/pamphlet.html

やはり1番危険因子となるのはたばこです。
自ら禁煙するのみならず、周りの人が副流煙を吸わないようにする配慮も必要です。

次にお酒です。飲み過ぎは良くないです。
適度な飲酒は百薬の長と言われますが、飲み過ぎはがんのリスクファクターになります。

4条から6条は食生活に関するものですが、当たり前と思わずに見てください。
塩分の多い食品、脂肪の多い食品、加工品は少量なら良いですが食べ過ぎるとやはりがんの危険因子になってしまいます。
野菜は極力食べるようにしましょう。
適度な運動をして体重の維持をするのは、がんの予防だけではなくメタボリックシンドロームの予防にも大事です。

検診はがん早期発見のために大事です。
コロナ感染で検診を延期している方も多いかと思いますが、やはりできるだけ受けるようにしたいです。体の異常に気づいたらすぐに受診を、とあります。
痛みや不快感、食欲不振、倦怠感などがあれば受診していただくのが良いかと思います。

正しいがん情報ですが、今やネットに情報が氾濫していてどれが正しい情報なのかわからないかもしれません。
厚生労働省や国立がんセンターの情報などが信頼できます。怪しげな健康食品等の情報に惑わされないようにしましょう。
よくわからない時は受診時に聞いてくださいこの新12か条には取り上げられませんでしたが免疫系を維持する方法として休息を十分にとる、ストレスと上手につきあって押し潰されない、ことも大事かなと思っています。

がん検診について

早期発見のためにはがん検診は欠かせません。
一般的な健康診断も大事です。
ただ、今の特定健診はメタボにフォーカスをあてた健診となっていますので、がん検診についてはやや弱いです。
せめて胸部レントゲンくらいは健診に復活してほしいとは思っていますが。
しかし、一般的な血液検査で肝機能障害や貧血などがある場合は、さらに詳しい精査によりがんが発見できる場合がありますので、やはり受けていただくのがよろしいかと。

ここではがん検診について一般的なことを述べてみます。

前立腺がんのマーカーであるPSAは最も信頼できるマーカーです。PSAが低ければ前立腺がんの心配がほとんどないと言ってもいい位です。

胸部レントゲン、喀痰検査は肺がんの良い検診となります。
しかし今や肺がんの検診は胸部CTでするのがよいとされています。

胃がんのリスクファクターでヘリコバクターピロリ菌がありますが、血液検査でペプシノーゲン検査と組み合わせたABC検査も有効です。ヘリコバクターピロリ菌が存在する場合は胃がんの危険因子ですので、除菌をお勧めします。便潜血検査が陽性の場合、必ず大腸内視鏡検査を受けてください。

学会等は年に1度の胃内視鏡検査、3年に1度の大腸内視鏡検査を勧めています。
乳がん検診、子宮がん検診も有用です。
また、肝炎ウィルス検査も肝がんの危険因子のため重要です。

胸部レントゲン検査、胃のバリウム検査、便潜血検査、子宮がん・乳がん検診は忠岡町でしています。詳細は広報をご覧ください。コロナの影響で延期されているかもしれませんが。

PETとCT検査・これに胃・大腸内視鏡組み合わせると、最強のがん検診ですが、PETに保険が適用されないので高額になります。

がん検診で、まだ保険上は認められていないのですが、私が注目している検査について書いてみます。

3つありまして尿と線虫を使う検査、血液からマイクロRNAを調べる検査、唾液でDNAを検査するマイコードがんパックです。

一つ目の線虫検査です。
線虫検査 線虫は鋭い嗅覚を持っており、がん患者の尿に近寄って行きます。
部位は特定できませんが、線虫が寄ってくる尿を持っている人は、どこかにがんがある可能性が高いと言われています。

N-NOSEという検査で尿一滴を検査会社に送れば15種類のがんのリスクがあるかどうかを判定してくれます。
今年の1月から実用化されていて、9800円の費用でこの検査ができます。
ただし扱っている医療機関が非常に少ないです。現在のところ大阪には取り扱い医療機関が3カ所しかありません。
実は私も1月にこのN-NOSE検査を取り扱いたいとメールをしたのですが、メールを受け付けました・ただいまとても混雑しているので順次ご案内いたしますというメールが来たまま現在まで返事はありません。
もし返事が来て当院でもできるようになればまたお知らせします。

次にミアテストプラチナというマイクロRNAを使う血液検査です。
これは13種類のがんとアルツハイマー病のリスクが一滴の血液でわかる検査です。
あるホームページにはマイクロRNA検査は20,000円以下と書いてあったのですが、ある医療機関のホームページには13種類全部の検査をすると300,000円と書いてありました。
まだ非常に高額です。だったら線虫のほうがいいかなと思っていますので、こちらには申し込んでいません。2万円でできるのでしたら、申し込もうかなと思っているのですが、まだ問い合わせはしていません。

3番目の唾液で検査するマイコードがんパックは15000円程度。
ただしこれは危険性がわかるだけで、がんがあることを示すものではありません。
しかし、がん検診の動機付けにはなると思っています。

私としたら、N-NOSE検査(尿と線虫を使った検査)で、がんの疑いがあるとなれば、PETCT検査は保険診療でしてほしいと思うのですが、まだ無理でしょうね。

皆様もがんを防ぐための新12か条を実践しつつがん検診はできる範囲で是非受けてください。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★健診のお知らせ

本年度の特定健診、後期高齢者検診が始まっています。
ご希望の方は受付にお申し出ください。
前回も書きましたが、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性は風疹の抗体検査・予防接種の適応ですので、是非受けてください。

★夏季休暇のお知らせ

当院の夏季休暇は8月15日~8月18日までです。
8月19日より通常の診療を致します。
かかりつけの方の薬が休暇中に無くならないように当方も気をつけますが、ご自身でも確認するようにしてください。

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。