2020年3月 No.172
3月になりました。
今年は暖冬でしたが、まだ寒い日があり、これを書いている3月29日 東京では雪が降っていました。
今月は新型コロナ一色で大変な事態になっています。
人の集まるイベントの中止、USJ・東京ディズニーランドの休業、休校、卒業式の中止、東京オリンピックの延期、不要不急の外出自粛、など報道されています。マスク不足もまだ深刻です。
米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が3月29日、世界全体で70万人を超えました。死者は約3万3千人。
現在感染者が最も多いのは米国で、13万人を超えています。欧州で最も大きな被害が出ているイタリアは依然、1日当たり数千人単位で増え続けており、感染者は9万7千人に上りました。
日本では、感染者数1693人、死亡者数52人、回復者数404人です。
大阪府でも感染者数は200人を超え、岸和田市、泉大津市でも感染者が出ています。
まさに爆発的なペースで拡大しています。
制御できない感染の連鎖が生じれば、どこかで爆発的な感染拡大が発生しかねません。
このオーバーシュートは避けなければいけません。
集団による感染のリスクを下げるため、第1に換気の悪い密閉空間、第2に人が密集している場所、そして第3に近距離での密接な会話。
密閉、密集、密接、この3つの密・いわゆる3密を避ける行動をお願いします。
スポーツ界でも阪神の藤波晋太郎投手、芸能界では志村けんさんが感染しています。
志村けんさんは、ECMOによる治療を受けていると報道されています。
志村さんは芸能界きっての酒豪で、ヘビースモーカーであったとのこと。
ECMOとはextracorporealmembrane oxygenation体外式膜型人工肺の略語です。
医療従事者はエクモ、と言っています。
体の外で血液の酸素化を行います。
呼吸器だけが悪い人は静脈から脱血して、静脈に返します。心臓も悪い人は静脈から脱血して、動脈に返します。
ECMOは呼吸と循環に対する究極の対症療法であり、根治療法ではありません。
通常の人工呼吸器治療では酸素濃度を維持できない方に使用されます。
とにかく肺を休め、回復を待つための装置です。
志村さんの回復を期待しています、と29日に書いたら30日、訃報が飛び込んできました。
残念です。ご冥福をお祈りします。
現在、治療薬やワクチンなどの開発に向けて、大学や民間企業でもさまざまな動きが出てきています。
新型インフルエンザの治療薬として承認を受け、副作用なども判明しているアビガンについては、これまで数十例で投与が行われています。
ウイルスの増殖を防ぐ薬であり、すでに症状の改善に効果が出ているとの報告もあります。
アビガンについては今後、臨床研究を拡大するとともに薬の増産をスタートします。
新型コロナウイルス感染症の治療薬として、正式に承認する予定とのことです。
喘息の吸入薬のオルベスコも病状の安定に有用との報告もあります。
エボラ出血熱の治療薬として開発されていたレムデシビルについては、日米が中心となった国際共同治験がスタートしています。
膵炎の治療薬に承認されているフサンについて今後、観察研究として事前に同意を得た患者の皆さんへの投与をスタートする予定です。
新型コロナ感染症のワクチン開発をめぐっては、GSKが中国企業と研究協力し、大量生産を視野に入れるなど、動きが活発化しています。
また、大阪大学は新型コロナウイルス感染症の予防用DNAワクチン開発に乗り出すと発表しました。
もう新型コロナウィルスの遺伝子配列がわかっているので、すでにワクチンの設計を終えています。
製造するのは協力を表明したタカラバイオです。
動物実験などを経て、最短で6か月後には臨床試験へと入りたい考えだそうです。
また、馬にDNAワクチンを接種し抗血清製剤を製造する考えも示されていました。期待したいです。
コロナウィルス感染者との接触のあった方で次の症状がある方は「帰国者・接触者相談センター」にご相談ください。
風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。
※ 高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合この地域の帰国者・接触者相談センターは
和泉保健所 0725-41-1342です。
ここで新型コロナウイルスへの感染を疑われた場合は、センターから病院の外来へ案内されます。
手洗い,うがい,咳エチケットなどの標準的な予防をして、3密を避け、不要不急の外出を避けること。
全然先が見えませんが早く終息してほしいですね。
血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪(トリグリセライド)が必要以上に増えるか、または善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減った状態のことを「脂質異常症」といいます。
以前は高脂血症と言われていました。
コレステロールは細胞を作る大切な物質です。
しかし、多すぎると余ったコレステロールが血管の内側に溜まり、動脈硬化を引き起こします。
コレステロールが高くても、あまり症状はありません。
でも、放置していると知らない間に動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの命にかかわる病気になることがあります。
健康寿命を延ばすためにも、コレステロールは管理したほうがいいです。
原因は生活習慣が80%と言われています。
あとは遺伝性のこともあります。
遺伝性の家族性高脂血症は心臓病のリスクが高いので、厳格に管理する必要があります。
コレステロールの中で、LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれ、動脈硬化を引き起こしやすいです。
それに対して、HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれ、血管の掃除をしてくれます。
脂質の中で中性脂肪はコレステロールとは別の系統で、エネルギー源であるブドウ糖が体内で不足した場合、それを補うためのものです。
食後は、食べた脂肪や糖質が血液中に入っていき、それらを材料として、肝臓で中性脂肪が合成されます。
中性脂肪は、血液によって全身に運ばれエネルギー源となります。
エネルギーとして使われなかった中性脂肪は、過剰となり皮下脂肪に蓄積されます。
肝臓で増え過ぎれば脂肪肝に、皮下組織で増え過ぎれば肥満につながります。
診断基準は、空腹時採血で、LDL140mg/dl以上が高LDLコレステロール血症、120-139mg/dlが境界型高LDLコレステロール血症、HDLコレステロールが40mg/dl未満が低HDLコレステロール血症、トリグリセライド(中性脂肪)が50mg/dl以上が高トリグリセ ライド血症、総コレステロールからHDLコレス テロールを引いたNon-HDLコレステロールが170mg/dl 以上を高non-HDLコレステロ ル血症、150-169mg/dlを境界型高nonHDLコレステロール血症と診断します 。
人によって下げる目標が違います。
今まで冠動脈疾患をおこしたことのある人(狭心症、心筋梗塞になったことのある人)は有無を言わさず、二次予防群になります。
無い場合でも、糖尿病、慢性腎臓病、非心源性脳梗塞(心房細動を伴わない脳梗塞)、末梢動脈疾患(閉塞性下肢動脈硬化症など)がある場合は高リスク群になります。
以上が無い場合、吹田スコアでのリスク判定をします。
吹田スコアは、年齢、性別、喫煙の有無、血圧、HDLコレステロールの数値、LDLコレステロールの数値、耐糖能異常(糖尿病・予備軍も)の有無、早発性冠動脈疾患の家族歴(父母・祖父母に年齢の若い時期に発症した心筋梗塞の方がおられるか)の項目で判定されます。
http://www.j-athero.org/publications/gl2017_app.html
アプリもあります。
二次元バーコードもつけてみます。
外来受診時に脂質異常症の人には下げる目標値をお伝えします。
冠動脈疾患二次予防のLDLコレステロール管理目値は100mg/dLですが、
「the lower, the better」の考えに基づき、高リスク病態ではさらに低い管理目標値を念頭においた厳格な管理の必要性を提示しています。
二次予防例のうち、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎臓病、メタボリックシンドロームの合併や主要危険因子の重複、喫煙の継続がある場合は、LDLコレステロール100mg/dL未満を管理目標値としています。
不安定狭心症・心筋梗塞などの急性冠症候群や糖尿病合併例においては、冠動脈プラークの退縮効果を認めるためにはLDLコレステロールを70mg/dL未満に管理することが必要です。
また家族性高コレステロール血症が極めてリスクの高い病態であることを踏まえ、二次予防例の中でも心筋梗塞、家族性高コレステロール血症を合併する場合は、LDLコレステロール70mg/dL未満を目標としたより厳格な管理を考慮します。
糖尿病患者の中で他の高リスク病態(慢性腎臓病、非心源性脳梗塞、末梢動脈疾患)を合併した例もこれに準じた管理をします。
まず生活習慣の改善 が必要です。
具体的には禁煙する、受動喫煙を回避する。
過食と運動不足に注意し、適正な体重を維持。
肉の脂身、動物脂、鶏卵、加糖を含む加工食品の大量摂取を避ける。
魚、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆製品、未精製穀類の摂取を増やす。
糖質含有量の少ない果物を適度に摂取。
アルコールの過剰摂取を控える。
中等度以上の有酸素運動を毎日合計30分以上する.上記が推奨されています。
タバコは脂質異常、高血圧が重なることで、心臓病のリスクが高まります。
肥満の解消には規則正しい食事、食べ過ぎないこと(腹八分目)、焼く、煮る、蒸すなど脂肪分を落とす調理法が勧められます。
食事は乳製品、チョコレートなどのお菓子、カップ麺などを食べ過ぎないようにすること。
キノコ、海草などの食物繊維を多く含む食品、青魚、野菜、大豆製品よく摂るようにしましょう。
運動はウォーキングがおすすめです。
やや速足で一回30分、週3回から始めてください。
慣れたら時間、回数ともに増やしていくように。
薬物治療はスタチンと呼ばれる脂質異常症治療薬がメインとなります。
商品名、メバロチン、リポバス、リピトール、クレストール、リバロなどです。
スタチンには、横紋筋融解症という副作用があり飲むと筋肉が赤くなって痛みがでる人がいます。
米国における調査ではスタチン服用者において筋肉痛は、2~7%で生じ、CK上昇や筋力低下は0.1%~1.0%で認められる。
重篤な筋障害は0.08%程度で生じ、100万人のスタチン服用者がいた場合には、0.15 名の横紋筋融解による死亡が出ていることになるといいます。
決して多いわけではないですが、重篤になることがあるので注意が必要です。
スタチン服用で筋肉痛が出る方は別の薬が処方されます。
新しい脂質異常症の薬として、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬が登場しました。
PCSK9阻害薬はエボロクマブ (商品名、レパーサ皮下注140mgシリンジ、同皮下注140mgペン7)注射薬です。
適応は高コレステロール血症で、心血管イベントの発現リスクが高く、スタチンで効果不十分な場合に限る場合です。スタチンと併用されます。
いずれにしろ、脂質異常症の方はまず生活習慣の改善。それでも自分の該当するリスクにあった数値まで下がらない場合は薬の使用を考えた方がいいようです 。
中性脂肪はあまり高いと膵炎の原因となります。
LDLコレステロールを下げてから治療を考えます。
運動、減量で中性脂肪は下がることが多いので、食べすぎに注意して、運動しましょう。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
今月はコロナ一色でした。
当院は4月から、胃腸科の標榜をやめました。
消化器の内視鏡検査もレントゲン検査も行っていないためです。
標榜は内科、外科になります。
外科もあまりしていないので、どうしたものか考えているところです。
4月25日(土)
都合により11時に終了させていただきます。
4月29日(水)
休診となります。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。