2020年1月 No.170

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

新しい年になりました。
本年もよろしくお願いします。
とはいえ、もう1月も下旬です。

今年は暖冬で暖かい日が多いです。
スキー場は雪が積もらなくて営業できないところが多いそうです。

インフルエンザが流行しています。
国立感染症研究所のインフルエンザ流行レベルマップをフォローしていますが、今年度の第3週は赤で示される警報レベルが多くの地域で報告されています。
うがい 小児をあまり診ない当院でもインフルエンザの方は多いです。
学級閉鎖の情報がよく送られてきます。
毎回いいますが、手洗い、うがいを励行してください。
マスクも有効です。
手で顔・粘膜(眼、鼻、口)を触らないことが大事です。もちろん、感染した人に近寄らないように。
インフルエンザウィルスは冷たくて乾燥したところに強いので、湿気を保つことも重要です。
加湿器の使用や、寝るときにマスクをするなど。

昨年のインフルエンザ治療は一回だけ 2錠(体重80kg以上は 4錠)服用するゾフルーザという薬を多く処方していました。
しかし、耐性ウィルスが増えるとのことで、今年度は処方しなくなっています。
以前よりのタミフルが多いです。
インフルエンザ、まだもう少し続くのでしょうか?早く終息してほしいです。

 新型肺炎 

連日中国武漢で発生した新型肺炎のニュースがトップニュースとして流れています。
これを書いている2020年1月29日時点で中国の新型のコロナウイルスによる肺炎の患者が5974人で、死亡した人は132人となりました。

新型肺炎の原因ウィルスはコロナウィルスです。
コロナウィルスは風邪の原因ウィルスとして、4種類が同定されています。

それに加えて、2002年と12年にSARS-CoVとMERS-CoVが感染症を起こしています。
この2つは下気道感染を起こすウイルスで、前4者とは明らかに臨床像が異なります。そして昨年12月下旬に、中国武漢市で7人の人間に感染を起こすコロナウイルスが発見されました。
肺炎患者から検体が採取され、コロナウイルス共通のRNAが検出され、新たなコロナウイルス2019-nCoVが同定されました。
電子顕微鏡による写真も撮影されています。
直径が60~140nmのウイルス。
全ての遺伝子配列も判明しています。
その結果、コウモリから検出されるベータコロナウイルスに似ているウイルスと判明しています。
ヒト-ヒト感染が確認されています。
遺伝子が変異した可能性もあるそうです。

このウィルス・2019-nCoVによる感染では上気道症状(鼻水、咽頭痛、くしゃみなど)があまり目立たず、下部気道への親和性(肺炎)が高いようですまた下痢などの消化器症状は軽いとされています。
二次性細菌感染が10%におこります。

母数がわからないので、2019-nCoVによる感染者の何%に肺炎が起こるかはわかっていません。
感染しても明らかな肺炎を発症しない人も多いはずですので。
現在のところ肺炎を起こした人の15%が重症化、致死率は約3%です。
潜伏期間は2-14日とされてます。
潜伏期間中の感染もあるようです。

主な感染経路は接触感染と飛沫感染なので、インフルエンザと同様適切な手指感染と咳エチケットが大切です。
治療は特異的な抗ウィルス薬はありません。
支持療法だけとなります。

現在武漢の方との暴露歴があり、肺炎を起こしている人だけ、保健所を通じて衛生研究所または国立感染症研究所に検体を送ってPCR検査をします。
今後感染症法・検疫法に基づく指定感染症・検疫感染症になります。

奈良県在住の武漢滞在歴のない60代男性の感染確定例がありました。
武漢市からのツアー客との接触があったようです。
また、武漢から日本人が帰国されてきます。
感染も中国全土に広がりつつあります。
今後の動向が注目されます。

 夜診について 

12月・1月の月曜の夜診、当院の都合で休診とさせていただいていました。
2月から再開予定だったのですが、都合がつかず2月以降も月曜日休診させていただきます。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。

神経難病在宅

令和2年2月6日に和泉保健所で、難病患者を支援するための連携体制構築の推進、難病患者の在宅療養支援について・かかりつけ医の立場からという発表をすることになりました。
神経内科医でもない私が神経難病患者の訪問診療をしています。
その概要について発表します。
今回はその発表の内容を書きます。

 神経難病とは 

「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平成26年法律第50号)において「難病」とは、発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって、長期の療養を必要とするものと定義されています。

現在難病情報センターによると、331の病気が国の指定する難病となっています。

神経難病とは、神経細胞が変性したため脳神経系に障害が生じ、さらに根本的治癒が難しい病気のことです。
筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、重症筋無力症、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症などが挙げられます。
四肢の脱力、麻痺、嚥下障害、呼吸機能障害、構語障害などが進行性に発症します。
そのため、日常生活動作の障害が強く、医療、看護、介護、リハビリテーションの必要性が高いと考えられます。

当院の神経難病訪問診療事情

地域のかかりつけ医として、神経難病の患者さんにかかわっています。
私はもともと外科医なので、神経難病の診察をしたことがありませんでした。
開業当時、筋委縮性側索硬化症と脊髄小脳変性症の違いが判らなかったくらいです。
今は少し勉強しましたが。

平成14年に忠岡病院から初めて神経難病の患者(筋委縮性側索硬化症・ALS)を紹介されました。人工呼吸、胃瘻状態でした。
コミュニケーションは指による筆談。経験することが今までの外科医生活にない状態で新鮮でした。何もわからないまま毎日診療してました。
思ったのは、人工呼吸を使用していれば安定しており、あまり普通の患者さんの診療と変わらないな、ということでした。
一度、気管カニューレと人工呼吸が外れるトラブルがありましたが、ご家族の方が寸前の所で気付かれアンビューバッグ換気により、なんとか事なきを得ました。
以後、当院には主に保健所から神経難病を紹介されるようになりました。

今までALS 20例、脊髄小脳変性症 7例、多系統萎縮症 5例、パーキンソン病(重症) 3例、進行性核上麻痺 1例、副腎白質ジストロフィー 1例、計37例の在宅神経難病患者を担当してきました。

当院は現在2名の入院中患者を含め、9名の神経難病患者の在宅診療をしています。
そのうち、7名が人工呼吸を使用中です。長い方はもう12年7か月も継続して訪問しています。

現在の神経難病訪問診療の指針ですが、まず神経内科との連携は不可欠です。
胃瘻の交換時期に合わせて、6か月に一度・一週間のレスパイト入院をさせていただいています。訪問診療は1-2週に一度曜日を決めて、当院看護師とともに定期的に行っています。気管カニューレの交換は原則2週間に一度、訪問時にしています。

保健所の難病チームの方にも関わっていただいています。
訪問看護との連携も必須で、患者家族からのファーストコールは訪問看護師にお願いしています。
その他、多職種との連携も必要です。

 専門医とかかりつけ医 

私には神経難病の診断はできません。
神経難病の診断は難病診療連携拠点病院などの神経内科専門医がされます。

多くの患者さんは診断を受けて一定の治療方針が定まります。
その後、協力病院との病院間連携や、かかりつけ医となるクリニックなどとの病診連携が行われます。
そして在宅療養が決まれば、多くの場合は難病の専門家でないかかりつけ医による日常診療が始まります。

かかりつけ医では、難病に関する薬物等の治療の継続に加えて、感冒、気分不快、軽度の消化器症状などの軽微な疾患の対応、血圧や血糖のコントロール、脂質異常症などの慢性合併症も同時に診療することになります。
人工呼吸器などの生命維持や病状安定のために欠かすことができない医療機器の管理も、かかりつけ医が担当します。
もちろん急変、トラブルがあったら、専門医・病院に診断治療をお願いします。
在宅で過ごす神経難病の患者さんは、専門医との関係をなくすことはできません。
普段はかかりつけ医に受診していても、少なくとも年に数回は専門医を受診して病状の評価と治療法の確認をすることが必要と思われます。

現在1名だけ、どうしても病院受診は嫌、という方(家族)がおられます。約10年家から出ていません。
この地域では、以前は近畿大学堺病院が中心となって神経難病の専門治療を行ってきました。
近大堺病院は閉院となりましたが、スタッフの先生が和泉市立総合医療センターに異動され、引き続き神経難病の専門医の役割を担ってくださっています。
他に、大阪府立急性期医療センター、近畿大学病院、馬場記念病院、和歌山医大、母子医療センター(小児・成長しても診ていただけます)などがこの地域の神経難病専門医として担当してくださいます。

神経難病は四肢の運動麻痺、球麻痺による嚥下障害、呼吸障害が起こります。
専門医には病気の診断以外に、呼吸困難・嚥下困難の評価をお願いしています。そのうえで胃瘻が必要か、人工呼吸が必要か、気管切開が必要かを判断していただきます。私が思うより専門医の先生方の胃瘻、気管切開の導入のタイミングは早いです。

 ICTによる多職種連携 

在宅医療が開始になりますと、訪問看護、訪問介護、ケアマネージャー、保健師訪問リハビリ、訪問入浴などの多職種連携が必須です。
現在、医療介護者用の連携ツール(メディカルケアステーションというソフト・アプリです)を使って情報共有の試みが始まっています。スマホやパソコンに記事を入力すると、参加している多職種の方皆が閲覧できます。写真などを添付することもできます。情報共有にとても有用で今後の普及が望まれます。

 療養通所介護 

当院に療養通所介護アネトスがあります。
在宅医療の一環として、重症患者、難病患者、癌ターミナル患者用のデイサービスがあれば有用かと考え、平成20年10月より開設しました。
療養通所介護とは、介護保険制度下の居宅サービス12種類のひとつである通所介護に含まれている通所系のサービスです。
アネトスとは、快適な空間を意味するギリシャ語で、アメニティの語源です。
午前9時から午後4時くらいまで、その人らしい過ごし方をしていただきます。
重症患者を介護している家族もフリーな時間がつくれます。
患者定員は5名の小さな施設ですが、看護師2名おりますので状態観察して報告してくれます。
私にとっても情報が得られ、有用な施設となっています。

今後の課題として、災害時の電源の管理、電源ステーションの設置など検討しないといけません。
これは平成30年9月の台風19号の時、広範囲な停電がおこりました。
人工呼吸器を装着しているご家庭2名にも停電がありました。
お一人は家族の自助で発電機を用いて停電期間を乗り切りました。
もう一人は急性期病院にお願いしましたが、病院も手一杯だったようです。
のちの会議で電源の確保だけで急性期病院を占領するのはいかがなものか、という議論があり、電源を確保するだけなら、ここにいけば電源があるという場所をリストアップしておくことが大事じゃないか、というお話になりました。
これは保健所主導で動いています。
停電時大事なのは、まず自助。
人工呼吸器をお持ちの方には発電機をなにかしら備えておいてもらうようにする必要があるのではないかと考えています。

当院の神経難病在宅患者につき主にかかりつけ医の役割について検討しました。
今後も在宅を希望される神経難病患者を神経内科専門医・多職種と協同して支えていきたいと考えています。
そのためにもメディカルケアステーションの使用を広げていきたいと思います。
神経内科専門医との連携もこれまで以上に密なものにしていきたいので、メディカルステーションの参加要請をしようかな、と考えているところです。
また、ご希望の方には療養通所介護アネトスも神経難病患者に更に利用していただこうと思っています。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★休診のおしらせ★

2月29日土曜日
岸和田市民病院での緩和ケア研修会に参加のため休診となります。

2月22日土曜日
都合により11時に終了させていただきます。

夜診察は火曜、金曜のみとなります。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。