2019年11月 No.168

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

いつの間にか日の暮れるのが早くなっています。
午後5時にはもう暗いです。
診察室にも暖房が入りました。
11月も終わりかけです。
街はクリスマスモードに突入します。
今年も残すところあと1カ月。
年末年始に向けいろいろ準備しないといけません

 インフルエンザ 

厚生労働省は11月15日、インフルエンザが流行入りしたと発表しました。
11月4日~10日に全国約5000か所の医療機関から報告された患者数が、1医療機関あたり1.03人となり、流行の目安となる1人を超えたためです。
現在の集計方法になった1999年以降では、新型インフルエンザが流行した2009年を除いて最も早い 流行入りとなりました。
当地ではインフルエンザの方が出た、という報告はあまり聞きません。
でも、だんだん寒くなってきていますので気を付けないといけません。

インフルエンザ予防接種しています。
13歳以上の方は一回接種でお願いします。
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、一般の方は3000円です。
ワクチンの予防効果発現まで2週間、持続期間は5ヶ月程度と推定されています。
まだの方は早めに打つようにしてください。

 がん検診の一次スクリーニング 

血液1滴から13種類のがんを発見できる検査キットを東芝が開発しました。
東京医科大学や国立がん研究センターが開発に協力したそうです。
がんにかかっているかどうかを2時間以内に99%の精度で判定できるキットです。
2020年にがん患者を対象に実証試験を始め、21~22年に人間ドックの血液検査などで実用化することを目指しています。
2万円程度で検査できるようにする考えです。
がんができると血液中に増える「マイクロRNA」という物質を半導体などの技術を活用し、電気的な 方法で検出します。
過去に採取されたがん患者の血液での精度検証では、大腸がんや肺がん、膵臓がんなど13種類のがんについて、何らかのがんにかかっているかどうかを99%の精度で判定できました。
大きさが1センチメートルに満たない早期のがんも発見できたとのことです。
但し、どのがんにかかっているかの診断はまだできません。
検証試験、人間ドックで評価が得られたら、将来は国の承認を取得し、公的保険が適用されることを目指します。
13種類のうちどのがんにかかっているかを特定する技術の開発も進めるという。

同じようながんの一次スクリーニング検査で線虫を利用した『N-NOSE』という検査があります。
これは一度この院内報でもご紹介しましたが、線虫C. elegans (シー・エレガンス)の好きな匂いに近づき、嫌いな匂いから遠ざかる化学走性を指標にした検査です。尿を使用します。
線虫が反応することが分かっているがん種は201 9年8月現在で15種類のがんです。
費用は9800円。尿を一滴提供するだけで15種類のがんにかかっているかどうかを調べられます。
精度は85%とのことです。
また、この線虫を使用した検査でも、15種類のうちどれに罹患しているかはわかりません。
両方の検査で陽性に出た場合は、医療機関で検査を受ける必要があります。 上記の血液のマイクロRNAの検出、尿の線虫検査両方がん検診で使用できればいいですね。
また、両者の検査が陽性に出た場合、PET-CTが保険適用で受けれられるようになればいいな、と思ってます。

 iPS細胞研究:国からの援助中止(残念なお知らせ) 

拒絶反応が起きにくい再生医療をめざす京都大のiPS細胞の備蓄事業について、政府が年約10億円を投じてきた予算を打ち切る可能性のあることを京大側に伝えたことがわかりました。
ノーベル賞受賞から7年たって基礎研究から事業化の段階になってきたことや、企業ニーズとの違いが浮き彫りになったことが背景だそうです。
山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長は講演で、「これまでiPS細胞を使った再生医療で日本は世界の先頭を走っている。加齢黄斑変性などは手術まで行われてきているが、臨床までには多くの資金と時間がかかる。政府からの支援を減らされると困る」と述べました。
山中教授が研究拠点をアメリカに移す、と言い出さないよう祈るばかりです。

肺炎の予防

今回は肺炎の予防について書いてみます。
私たちが鼻や口から吸い込んだ空気中の酸素は、のど(咽頭・喉頭)を通り、気管・気管支を通って左右の肺に運ばれます。
最終的に肺の末端組織である肺胞と呼ばれる部分に運ばれ、ガス交換が行われます。
ガス交換とは肺胞で酸素を血管内に送り込み、二酸化炭素を血管から排出させることです。
口・鼻~肺胞に至るまでの管の部分を気道と呼び、そのうち口や鼻からのど(咽頭、喉頭)までの部分を上気道、それよりも先の管(気管・気管支)を下気道といいます。
健康な人でもよく経験する“かぜ”は、かぜ症候群、感冒、あるいは急性上気道炎とも呼ばれ、上気道に起こる急性感染症のことです。
主に原因はウィルスです。
一方肺炎は呼吸器の末端組織である肺胞を中心に起こる炎症のことです。
肺炎はウィルスが原因のこともありますが、多くは細菌性です。
感染症以外の原因の肺炎、間質性の肺炎などもありますが、今回は細菌性・誤嚥性肺炎を対象にしています。

肺炎と風邪

かぜと肺炎は異なる疾患ですが、まったく関係がないわけではありません。
ほとんどの肺炎は風邪、インフルエンザなどのウィルス性の上気道炎に引き続いて起こります。
言い換えれば、かぜやインフルエンザをこじらせると、肺炎になるということです。
インフルエンザも含めたウイルス感染は、気道の線毛細胞にダメージを与え、細菌やウイルスなどの異物を排除する線毛運動を鈍らせたり、停止させたりします。
その結果、気道の防御機能がが弱まり、細菌が排除されずにそのまま気道にとどまりやすくなり、そのため細菌が肺の末端の肺胞に達する確率も高くなり、肺炎発症のリスクが高まるのです。
それでは、今回のテーマの肺炎の予防について考えていきましょう。

 1.普段からの感染予防 

まずはかぜやインフルエンザにかからないよう、普段からの感染予防が大事です。
一番は手洗い、マスク。
次にうがいです。
身体は保温につとめてください。
空気の乾燥はウイルスの増殖しやすい環境です。
加湿器を使用したりして湿度管理しましょう。
外出から帰宅した際は手洗い、うがいをこまめに行いましょう。
風邪やインフルエンザの流行期には人混みを避け、人混みに出る際にはマスク着用してください。
感染した人からの飛沫感染は避けてください。
これは感冒・インフルエンザに感染した人への注意になりますが、他の人に感染させないよう、外出しないことを心がけてください。
やむを得ず外出する場合(インフルエンザはダメですよ)、咳エチケットを遵守してください。
マスクをする、ティッシュなどで咳を受ける、袖などで咳をカバーするなど。
咳の飛沫を手で受けるのはよくないのです。
ほかのものにつけてしまうかもしれないから。
咳しても何もカバーしないのは論外ですね。
咳をしているのにマスクしない、ティッシュ持っていない、カバーしない人には注意しましょう。
咳エチケット 咳エチケット、厚生労働省は盛んにアナウンスしていますが残念ながらあまり知れ渡っていない。
先日看護学生にも聞いてみましたが、誰も知りませんでした。
当院受診の方で咳をしている人にはマスクをお渡ししています。
診察室に入ると失礼だから、とマスクを外してしまう方も多いのですが、咳エチケットの普及の意味でマスクはしてもらうようお願いしています。
ひと昔前にはマスクをしている人は、危ない人か変質者のイメージでしたが、今やマスクをしていることは失礼ではありません。
咳をしているのにマスクをしないほうが失礼なのです。
手はウィルス伝搬の重要な危険因子です。
ドアノブ、吊り革、机、他人の触った車のハンドルなど、いろんなところにいるインフルエンザを含むウィルスがいます。
それを素手で触って顔の鼻、目、口などの粘膜に接触することにより、ウィルスが人間体内に入るのが、私は一番危険であると思っています。
いろんなところ触ったら、手洗いを。
何かを触った手で顔などを触らないようにしましょう。

 2.体調管理 

不規則な生活やストレス、疲労などは、免疫力を低下させます。
日頃から規則正しい生活を送り、十分な休養と栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
睡眠も十分とるようにします。
適度な運動を行うことも大事です。
低栄養は感染の危険因子です。
特に高齢者の方。
喫煙者は禁煙してください。
肺炎予防につながります。
ステロイド治療中、抗がん剤治療中、肝硬変、腎不全など免疫機能の低下が予想される場合は特に体調管理に気を付けてください。

 3.予防接種 

肺炎にはいろんな原因菌がありますが、その中で最も多いのは肺炎球菌です。
肺炎球菌の感染を予防するワクチンがあります。
忠岡町在住の方は65歳、70歳、75歳で補助が出ます。
はがきが来たら持ってきて下さい。
3000円で接種できます。
それ以外の方は7500円で接種します。
効果は5年ですので、5年毎に再接種が必要です。
補助は生涯一回です。
インフルエンザの予防接種も有効です。
インフルエンザワクチン接種により、海外のデータでは発症を50%抑え、死亡率を80%減らしたと報告されています。

 4.誤嚥の予防(高齢者の方に) 

口腔内やのどにあるものが声帯を越えて気道内に入ることを誤嚥(ごえん)といいます。
口腔内には多くの細菌が存在するので、誤嚥により肺炎が発症するリスクが高まります。
のどに食べ物や唾液がきた時に、のどの喉頭蓋という部分が気官に“蓋”をして、食道の方に入るようにしています。
これが嚥下反射です。
また、異物が気管内に入った時には咳をして取り除こうとそます。
これが咳反射です。
高齢になったり脳血管障害があると、咳反射・嚥下反射の低下します。
嚥下反射・咳反射が低下した場合には食事、飲み物にとろみをつけるとよいでしょう。
はっきりと覚醒した状態で食事をすることも大事です。
できるだけ寝たきりの状態は避け、上体を起こした姿勢を保つようにしましょう。
嚥下反射の低下は特に夜間睡眠中におこりやすいことがわかっています。
誤嚥性肺炎は、日中の食事中に気官に入った食べ物を、せきをして除く「むせこみ」が原因となる場合より、夜間、睡眠中に本人すら気付かないような不顕性誤嚥を繰り返して発症する方が多いことが指摘されています。
普段から口腔ケアをして、口の中の細菌を減少させておくことが大事です。
歯磨き、舌ブラシ、うがいなどしっかりするようにしてください。
毎食後、寝る前にしてください。

 5.胃食道逆流 

誤嚥性肺炎の原因として、胃液などの胃内容物が食道へ逆流する胃食道逆流も重要です。
食道裂孔ヘルニアがあったり、高齢者で下部食道括約筋の機能が低下している場合、慢性的に胃食道逆流が起こりやすくなります。
逆流した内容物には細菌だけでなく、酸や消化液も含んでいるので、その作用で気道の細胞や粘膜に障害を与えます。
こうして損傷した気道壁には細菌が定着しやすく、肺炎発症のリスクが高くなります。
胃酸を抑える薬を処方する場合もあります。

 6.風邪、インフルエンザになったら 

早めに受診して、検査・治療してください。
上気道炎の場合は症状を抑える薬だけですが(ウィルスなので抗生剤は効かない)、インフルエンザはウィルスの増殖を抑える薬が出ています。
症状発現時間が短くなります。
水分を十分摂って安静にして休養してください。

 7.肺炎が疑われたら(二次予防) 

肺炎は、早期発見・早期治療が何より重要です。
高熱や咳が続く、黄色っぽい痰が出る時は風邪かもしれませんが、肺炎も疑われますので、できるだけ早く病院・診療所を受診し、適切な治療を受けてください。
診療所では、体温、血圧、脈拍のほか、酸素飽和度を調べ、呼吸音で雑音があれば、血液検査で白血球、CRPなど炎症反応を調べます。
高ければ、胸部レントゲンで肺炎の有無を確認します。
高齢者は、肺炎の症状が出にくく、気づくのが遅れることがあります。
家族に高齢の方がいる場合は、食欲がない、元気がないなど、ふだんと違う様子がないか、日頃から注意しておきましょう。
以上、肺炎予防に必要なことを挙げてみました。
大事なのは感染予防だと思っています。
元気で冬を乗り越えられますよう皆様もお気をつけください。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★風疹抗体検査について★

昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性は、公的な制度として風しんの予防接種を受ける機会がなかったため、風しんの抗体価が低い可能性があります。そのため、抗体検査を実施し、検査の結果十分な量の風しんの抗体がない方は、定期予防接種(第5期)を行うことになっています。
対象で、忠岡町から案内が届いている方は、受付にお申し出ください。

★年末・年始休暇のお知らせ★

年末は12月28日土曜日まで診療します。
12月29日・日曜日~1月5日・日曜日まで休診させていただきます。1月6日月曜日から通常診療となります。
今年はちょっと長い休みになります。
当院スタッフと検討した結果この日程になりました。
受診中の方の薬が切れないよう、こちらも十分注意しますが、皆様もお気をつけ頂きますようお願いします。