2019年10月 No.167
10月も後半です。急に寒くなってきました。
暑い日が10月初旬から中旬まで続いて、急に寒くなるのがこの数年、多いように思います。
これから、一気に冬モードに入るんでしょうね。
今年の台風は関西には大きな影響を及ぼしませでしたが、関東・千葉、長野では連日災害の様子が報道されていました。
昨年は大変だっただけに、被害に合われた皆様にはお見舞い申し上げます。
13歳以上の方は一回接種でお願いします。
13歳未満の方は、原則2回接種です。
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、一般の方は3000円です。
ワクチンの予防効果持続期間は5 ヶ月程度と推定されています。インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないことです。
ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。
今年、沖縄・東京でインフルエンザが流行したというニュースがありました。
まだ当地ではインフルエンザ流行の情報はありません。
インフルエンザが出たよ、という報告は医師会のメーリングリストで散見されます。
注意して診ていきたいと思います。
厚生労働省は毎年11月を「みんなで医療を考える月間」に制定しました。
上手な医療のかかり方について我々国民に普及させるため、毎年11月を月間として各種キャンペーンや付随するポスターやリーフレット、ホームページへの掲載など医療のかかり方の周知・広報に積極的に活用していきます。
元はといえば、医療従事者が健康で安心して働くことができる職場環境の整備を!という動きがあったから。
全国各地で、地域医療を守る会議、などが開催されています。
しかし、患者の適切な医療機関、診療科の選択が広く根付いているとは言い難い。
そこで厚労省は2018年から「上手な医療のかかり方を広める懇談会」を開催しました。
議論は「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト宣言!」として取りまとめられ、五つの方策の実施が提案されました。
医療者の疲弊が危ぶまれ、地域医療が厳しい状況に直面している中で求められるのは、国や自治体、医療者、市民などそれぞれが従来の枠や慣習にとらわれず思考し、行動することです。
救急をしている病院の医師は、夜間でも本当に献身的な医療をしています。
地域医療・特に救急を存続させるために我々に何ができるのか、考える月間となりそうです。
2019/10/23 大阪大学の澤芳樹教授らは、iPS細胞から育てた心臓の細胞をシート状にして重症心不全患者に移植する再生医療の臨床試験(治験)を近く国に申請する方針であることを発表しました。
臨床研究計画が既に認められていますが、より早い時期の実用化を狙い治験を実施します。
治験の計画は阪大の審査委員会を既に通貨しています。
国に認められれば1例目となる移植手術の早期実施を目指します。
阪大のチームはこれまで患者の大腿から取った細胞をシート状に育て心臓に貼る治療を実施していて、この治療法は、再生医療製品として条件付き承認を得ています。
iPS細胞を使った臨床研究計画は厚生労働省の専門部会が18年5月に大筋了承を得ています。
18年度中に最初の移植を実施する計画でしたが、大阪府北部地震の影響で遅れました。
研究チームは、臨床研究と並行しながら治験を進める計画です。
臨床研究と治験はともに安全性や有効性を確かめるのが目的ですが、治験を早く実施すれば保険適用される治療法として実用化の時期が早まる可能性があります。
iPS細胞を使う再生医療の臨床研究では、2014年理化学研究所などのチームが、目の網膜の難病患者にiPS細胞から育てた細胞を移植する世界初の手術を実施しました。19年7月には阪大が角膜の組織を患者に移植する手術をしている。
治験では、京都大学が18年にパーキンソン病患者の脳にiPS細胞から作った神経細胞を移植する手術を実施しています。阪大の医局は私も所属しているところ。
発展を期待したいです。
澤教授は、万博推進のための「こたつ会議」にも参加され、万博にはiPS細胞から作った心臓が拍動しているのを展示したい、と仰っておられました。
実現すれば、心臓移植が臓器提供なしに出来ることになります。まさに未来の医療ですね。
令和元年11月3日、役場で行われる忠岡町健幸まつりで認知症についての健幸ミニ講座をすることになりました。
昨年の健幸まつりで、認知症の予防についてお話しています。今回は違うテーマかなと思っていましたが、また認知症について発表するよう要請がありました。
やっぱり住民が一番気になっているのは認知症だからとのことでした。
認知症は一度正常に発達した認知機能が脳の後天的な障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態(意識障害のない時にみられる)です。
2004年、痴呆から認知症に名称変更されました。
痴呆が侮蔑感を感じさせる表現であること、病態を正確に表していないことが原因でした。
認知とは、生体が自己を含めた世界について知る過程と定義されています。
記憶、注意、思考、言語、感情、意志など、外から観察可能な行動以外のものすべてのことです。
認知症は上記日常的に無意識に使っている知的な活動が障害される疾患ということになります。
最近物忘れがひどくて、という方も多いと思います。
加齢による物忘れと認知症は違います。
認知症は脳の病気ですが、加齢による物忘れは脳に明らかな障害はありません。
忘れ方は加齢による物忘れは体験したことの一部を忘れ、ヒントがあれば思い出せます。
認知症はしたことをゴソッと忘れてしまいます。
また加齢による物忘れは自覚がありますが、認知症は忘れていることの自覚に乏しいです。
また認知症の人は何か質問されると、はぐらかしたり、取り繕ったり、周りの人に確認しようとします。
日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計されています。
認知症の前段階とされる「軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)」と推計される約400万人を合わせると、高齢者の約4人に1人が認知症あるいはその予備群ということになります。
団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。
予備軍を加えると、軽く1000万人を超えることが予想されています。65歳以上の高齢者の2-3人に一人は認知症またはその予備軍という時代が来そうです。
政府は令和元年6月18日、認知症対策を強化するため2025年までの施策を盛り込んだ新たな大綱を関係閣僚会議で決定しました。
「共生と予防」が柱となっています。
発症や進行を遅らせることを「予防」と定義し、認知症の人が暮らしやすい社会を目指す「共生」とともに2本柱の一つとして初めて目標に掲げました。
大綱では、認知症を「誰もがなりうる」として、予防については「認知症にならない」ではなく「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」と定義。
今後、認知症の発症や進行の仕組みを解明するため科学的な証拠を収集し、予防・診断・治療法の研究開発を進める方針です。
認知症を巡っては、(1)運動不足の改善(2)糖尿病や高血圧など生活習慣病の予防(3)社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持などが予防に役立つ可能性を示唆されています。
大綱は高齢者が集える公民館などの「通いの場」の拡充を重要政策の一つに位置付けました。
また、成年後見制度の利用を促進するため全市区町村に調整機関を新設することなども盛り込んでいます。
認知症で一番多いのはアルツハイマー型認知症で約50%、次に多いのが脳梗塞や脳出血の後遺症として起こる脳血管性認知症、幻視幻覚がよく起こるレビー小体型認知症、興奮しやすく衝動的になりよくキレる前頭側頭型認知症、以上が四大認知症と言われています。
ただ、認知症の症状を呈する疾患は上記のような変性疾患、脳血管疾患だけではなく、感染症、腫瘍、外傷、髄液循環障害、内分泌疾・代謝疾患、中毒・栄養障害、精神疾患など多岐にわたります。
忘れてはいけないことは、この中には治療により治る認知症があるということです。
たとえば、内分泌疾患の甲状腺機能低下症、外傷による慢性硬膜下血腫、髄液循環障害である正常圧水頭症、栄養障害のビタミンB1欠乏症などは薬、手術で治る可能性があります。
家族が認知症を疑う症状で多いのが、同じことを何回も言う、ものの名前が出てこない、いつも探し物をしている、意欲がなくなった、財布が無いなどと言う、怒りっぽくなった、いつもの道がわからなくなった、周りの人に見えないものが見えるというなどがあります。
このような症状のあった場合は、近くのかかりつけ医に相談してください。
かかりつけ医では、認知機能を計測する質問検査をして、血液検査をします。
血液検査項目は血球算定・生化学(肝機能、腎機能、電解質など)アンモニア、甲状腺ホルモン、ビタミンB1、B12などです。
また脳の状態を確認するため、病院での検査になりますが、脳MRI検査VSRAD(海馬の萎縮検査)をします。
上記の検査により、治る認知症を拾い出します。
また、どのタイプの認知症かを診断します。
その上で、病状により、治療、専門医紹介、脳血流シンチグラフィ(SPECT)などを考えます。
認知症と診断されたら、どこに相談したらいいでしょう?代表的なところは、地域包括支援センターです。
忠岡町は役場の中、泉大津は社会福祉協議会の中にあります。
相談して、必要と判断されたら、介護保険申請をします。
介護認定が出ている人はケアマネージャーに相談してください。
認知症には中核症状と行動・心理症状(BPSD)があります。
中核症状は脳の神経細胞が壊れることによって、直接起こる症状です。
具体的には、直前に起きたことも忘れる記憶障害、筋道を立てた思考ができなくなる判断力の障害、予想外のことに対処できなくなる判断力の障害、計画的にものごとを実行できなくなる実行機能障害、いつ・どこがわからなくなる見当識障害、ボタンをはめられないなどの失行、道具の使い道がわからなくなる失認、ものの名前がわからなくなる失語などがあります。
一方、周囲の人との関わりのなかで起きてくる症状を「行動・心理症状(BPSD)」といいます。
以前は周辺症状・問題行動・随伴症状といわれていました。
今は行動・心理症状が一般的で、我々はBPSDといいます。
BPSDは「認知症の行動と心理症状」を表わす英語の「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を取ったもの。
暴言や暴力、興奮、抑うつ、不眠、昼夜逆転、幻覚、妄想、せん妄、徘徊、もの取られ妄想、弄便、失禁などはいずれもBPSDで、その人の置かれている環境や、人間関係、性格などが絡み合って起きてくるため、人それぞれ表れ方が違います。
介護者が対応に苦慮する多くは、中核症状よりもBPSDです。
認知症患者はどのように感じているのでしょうか?当事者の声を聞いてみると、頭はぼんやりして、失敗するのではという不安がある、自分がどう変わっていくのか怯えている、何をするにも緊張と努力が必要。
物事をいくつも同時に処理する必要がるとパニックになる、慣れ親しんだことをするのもひどく疲れる、階段が怖い、一度にひとつのことしかできない、などが寄せられています。
では、家族またはお世話をする人はどのように認知症の人に接するのがよいのでしょう。
当事者の方の声から、家族のように接してくれると安心する。
さりげない見守りが有難い。
あまり手をかけられると傷つきますし、ほったらかしにされるのも困る。
また、認知症患者が言ったことに対して、一刀両断にそれは違う、と否定されると、この人は敵だと認識されてしまいます。
具体的な対応としては、見守る、余裕をもって対応する、優しく穏やかな口調で、傾聴、ゆっくりと、否定しない、責めない、プライドを傷つけない、以前と同じように接することが挙げられています。
安倍首相は関係閣僚会議で、「共生と予防を車の両輪として取り組みを強力に推進していく。誰もがいくつになっても活躍できる生涯現役社会の実現に向けて全力を尽くしてください」と指示されました。
認知症になっても住みやすい地域を構築していきたいものです。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性は、公的な制度として風しんの予防接種を受ける機会がなかったため、風しんの抗体価が低い可能性があります。そのため、抗体検査を実施し、検査の結果十分な量の風しんの抗体がない方は、定期予防接種(第5期)を行うことになっています。
対象で、忠岡町から案内が届いている方は、受付にお申し出ください。
年末は12月28日土曜日まで診療します。
12月29日・日曜日~1月5日・日曜日まで休診させていただきます。1月6日月曜日から通常診療となります。
今年はちょっと長い休みになります。
当院スタッフと検討した結果この日程になりました。
受診中の方の薬が切れないよう、こちらも十分注意しますが、皆様もお気をつけ頂きますようお願いします。