2019年 8月 No.165

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

8月も終盤になってきました。今年も暑かったです。
お盆の15日に台風が接近し、新幹線も止まってました。帰省にも影響が出たようです。
台風の影響で、毎年行っている熊野の花火大会も中止になり、今年の夏休みは近場でゆっくりしてました。

熱中症に注意

まだまだ熱中症には注意が必要です。
熱中症対策は体を冷やすことと、食事をしっかりとる、水分補給(汗をかいた場合は塩分補給も)です。
エアコンを使用して快適に過ごすようにしてください。
紫外線対策・虫刺され対策にも引き続き留意ください。
日焼け止めのスプレーと虫除けには私は今シーズン、イカリジン配合スプレーとディート30%配合(昨年までは15%だった)スプレーを使っています。
日焼け止めと虫除けスプレーを併用したい場合、どちらを先に塗るかですが、モストップの白井良和氏によると、日焼け止めは紫外線をブロックする製品で、虫除けスプレーは揮発した成分で虫を寄せ付けないもの。表面にあって欲しいのは、虫除けスプレーのほうです。
ですから、先に日焼け止めを塗って、その上に虫除けスプレーを使うのが良いと思います、とのことです。
実践しました。いずれも効果はあるようでした。
しかし、昨年同様蚊の出没頻度は暑さのためか、減っているような印象です。

注目しているiPS細胞関連のニュースです。

目の難病患者に対し、iPS細胞を用いた世界初の網膜移植治療を手がけた高橋政代先生が理研を退職され、神戸市の眼科専門施設「神戸アイセンター」内の企業「ビジョンケア」の社長に就任されました。網膜関連治療の実用化を進めるため軸足を移した、とのことです。
今後は新治療の早期実用化に向け、iPS細胞の研究を進める大日本住友製薬との連携を強化する方針を示し、網膜疾患の治療や視覚障害者の支援などの事業展開を図ります。
また、京都大のiPS細胞備蓄・提供事業について、文部科学省の専門家会合は8月8日、公益財団法人への移管を了承しました。
まずは京大が一般財団法人を設立して事業を引き継ぎ、その後、公益財団法人の認定を目指します。
京大の負担を減らし、細胞を安定的に供給できる体制を強化するのが狙いです。
事業を進めてきた山中伸弥・京大iPS細胞研究所長は会合で「実用化、産業化に適したベストな体制を速やかに作りたい」と語りました。
新法人の運営には山中所長も関与する予定だそうです。日本のiPS研究を牽引するお二人の今後の活躍に期待したいです。

令和元年度 在宅医療フォーラムのお知らせ

もう間近に迫っていますが、令和元年9月1日(日)14時から(会場は13時半)泉大津市のテクスピア大阪 小ホールで「人生100年時代 ~だからこそ人生会議してみませんか~」という講演会が行われます。
日本は、世界のどの国よりも急速に高齢社会を迎えるといわれています。
それとともに人生の最終段階における医療やケアについてあらかじめ話し合っておくプロセス「ACP(アドバンスケアプランニング、厚生労働省が決めた愛称は『人生会議』)」の普及がはじまっています。
万が一の時に備えて人生のこと、大切にしていること、治療やケアの望みについて、信頼できる人と繰り返し話し合い、自分らしい生き方や療養生活、最期の迎え方、準備しておくべきことなどを考えてみましょう。
講師はベルランド総合病院 緩和ケア科 部長 山﨑 圭一先生です。元外科医で、現在緩和ケア病棟を管理・運営されています。
お話は面白いので、皆様是非聞きにきてください。
講演後、参加者の方も交え「もしバナゲーム 」をします。
もしものための話し合いについてのカードゲームです。
もしもの時、縁起でもない、という理由で避けがちなこの話題。このカードゲームを通して、そんな難しい話題を考えたり話し合うことができます。

人生会議@市民フォーラム

性膵炎・慢性膵炎

膵臓は胃の後ろにある長さ平均15cm,幅3cm,厚さ2cm,重さ60-100gの淡黄色を呈した臓器です。
消化液を分泌する外分泌機能と、ホルモンを分泌する内分泌機能を持っています。
膵臓 外分泌機能としては、一日約800-1000mlにもおよぶ膵液を分泌し、膵管を通して十二指腸内へ送られます。
この膵液は糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素、核酸の分解酵素を含んでいます。いわゆる消化液です。
食事が胃を通過すると、胆嚢が収縮して胆嚢内の胆汁が十二指腸内に押し出されます。
この胆汁と膵液が交じり合って活性化され、消化液として機能します。
また、内分泌機能として、膵臓の細胞からは、糖の代謝に必要なインスリン、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンが分泌されます。
このホルモンは直接血中に乗って、インスリンは、血液中の糖を使ってエネルギーを作ります。
インスリンの不足、あるいは働きが弱くなると血液中の血糖値が高くなってしまいます。
血液中の糖(血糖値)が低下すると、グルカゴンが分泌され、肝臓に糖を作らせて血糖値を上昇させます。
インスリンとグルカゴンによって、血液中の糖の量が一定に調節されているわけです。

このように膵臓は、食べた食物を消化し、ホルモンによって糖をエネルギーに変えるという、2つの働きを調節する役割をしています。
膵臓の機能がうまく働かないと、消化不良、糖尿病になってしまいます。

「君の膵臓を食べたい」という本がありました。ちらちらとしか見てないけど、結局主人公の若い女性の膵臓の病気は何だったんだろう?と今でもわからずじまいです。
腫瘍、炎症疾患、変性疾患、自己免疫疾患、いろいろあります。
実写版の映画、アニメの映画もあったようだけど、見てません。
今度じっくり読み返してみます。

今回は膵臓の炎症について書いてみます。
いわゆる膵炎。
膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があります。
それぞれ、説明します。

 急性膵炎 

急性膵炎とは、膵臓の急性炎症です。
急性膵炎の2大原因は、アルコールと胆石です。
日本での発症頻度は、49人/10万人/年とされています。
男性が女性の2倍の発症頻度があります。
男性ではアルコール性の膵炎が多く、女性では胆石による膵炎が多いと報告されています。
胆石による膵炎は、胆嚢・胆管内にあった結石が膵胆管が合流して十二指腸に流れ込む十二指腸乳頭付近につまり(嵌頓)、膵管の出口が閉塞して膵液が停滞・逆流し、膵管の中で膵液が活性化してしまうためにおこります。
急性膵炎の最も多い症状は、上腹部痛ですが、背部まで痛みが広がることもあります。
ほか、嘔吐、発熱などの症状も出現します。
軽い症状でおさまることもありますが、重症になると、他の臓器にまで影響を及ぼします。
意識障害やショック状態などが出現することもあります。
重症の急性膵炎はかなりの上腹部痛、背部痛を訴えられます。
血液検査では炎症反応が高度に上昇するので、重症膵炎がちらりとでも頭をよぎったら、すぐに急性期病院に紹介します。
幸い当地では、消化器系の救急が充実していて、今まであまり紹介に困ったことはありません。
病院に入ったら、診断と並行して絶食・輸液、胃液を抜くための胃管の処置をします。
更に血液データと造影CTにより膵炎診断、さらには重症度判定が行われます。
急性膵炎の治療は膵炎の程度によりますが、絶飲食による膵臓の安静と、十分な量の輸液をします。
抗生剤、鎮痛剤を適宜使用します。
膵酵素の活性を抑える目的で蛋白分解酵素阻害薬も使用します。
重症膵炎においては、集中治療が必要ですので、対応可能な部署や施設で、輸液管理に加え、臓器不全対策、感染予防、栄養管理などが必要となります。
経過中、膵臓や膵臓周囲の組織が壊死化し、感染が生じることがあります。
また、感染した壊死組織は、壊死組織を除去する手術が必要です。

急性期が過ぎると、しばしば膵仮性のう胞(膵液などの液体が入った袋状の貯留物)が発症することがあります。
仮性のう胞は、感染や出血が生じた場合、のう胞の内容液を吸引する処置(ドレナージ)が必要となることがあります。
近年、内視鏡的治療の向上により、両治療(膵のう胞ドレナージ、壊死組織除去)とも腹腔鏡手術下にに行われることが多くなりました。
内視鏡的治療が困難あるいは難渋した場合は開腹による外科的治療が必要なこともあります。
膵炎を乗り切った場合、禁煙・禁酒を指示します。減酒ではなく、禁酒・断酒です。
フォイパンなどの蛋白分解酵素阻害薬もずっと継続して服用してもらうことが多いです。

 慢性膵炎 

慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵細胞が線維に置き換わる疾患です。
原因は、男性では飲酒が最も多く、女性では原因不明の特発性が多いとされています。
慢性膵炎では、膵液の通り道である膵管が細くなったり、膵管の中に膵石ができたりして、膵液の流れが悪くなり、痛みが生じると考えられています。

慢性膵炎イラスト

慢性膵炎の初期段階では、膵臓の機能は保たれており(代償期)腹痛が主な症状です。
慢性膵炎が進行すると、次第に膵臓の機能が低下し(移行期)、さらに進行すると、膵臓の機能は著しく低下し(非代償期)、下痢や体重減少、糖尿病の発症や悪化が生じます。
下痢は悪臭を伴い薄黄色クリーム状で水に浮く脂肪便となります。
これは膵臓の外分泌細胞が障害され、脂肪やたんぱく質の消化酵素の分泌が低下し消化吸収不良が生じるためです。
慢性膵炎は腹痛と膵内外分泌機能障害から生じる脂肪便、糖尿病を中心として病期・重症度分類されます。
診断には、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査が有用です。
膵管の拡張、膵管内の結石が確認できます。
慢性膵炎の治療は禁酒・禁煙を行い、腹痛に対しては鎮痛剤や蛋白分解酵素阻害薬を使用します。
糖尿病を発症した場合は、糖尿病の薬、インスリンなどが必要となってきます。糖尿病を契機に慢性膵炎がわかる場合もあります。
膵管が細くなっている場合は、内視鏡を用いて膵管を広げたり、膵石がある場合は、内視鏡による除去や体外衝撃波結石破砕術をすることもあります。
慢性膵炎は良性疾患であるため、可能な限り薬や内視鏡を使った方法で治したい病気ですが、これらの治療を行っても、痛みが治まらない場合は、手術を行います。
慢性膵炎に対する手術は、膵管減圧手術と膵切除術に分けられます。
膵管減圧手術は、拡張した膵管を切開して腸管とつなぎ、膵液を腸管に流して膵管内の圧を下げる手術です。

膵管減圧術

膵管の拡張がない場合は、膵管の狭窄が最も強い部位の膵切除術を行うこともあります。

以上、急性膵炎と慢性膵炎の概要、診断、治療について書いてきました。
膵臓にとって最もよくないのはアルコールのようです。
日ごろの節酒が必要です。
自制していくのが一番ですが、最近アルコール量を低減させる薬がでています。
アルコール依存症患者における飲酒量を低減する治療薬で、セリンクロという薬剤です。
アルコール依存症患者は多量な飲酒を繰り返すことで飲酒したいという欲求が強くなり、飲酒行動をコントロールすることが難しくなります。
セリンクロを飲酒の1~ 2時間前に服用することで、中枢神経系に広く存在するオピオイド受容体調節作用を介して飲酒欲求を抑える効果があります。
どの程度効果があるのか、ちょっと注目しているところです。

 

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

9月13日金曜日・夜休診します。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

住民健診(特定健診)、高齢者健診しています。
詳細は受付にお問い合わせください。