2019年 4月 No.161

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

4月です。
冬が過ぎ、過ごしやすい季節になってきました。
1月中に猛威をふるっていたインフルエンザも下火になりました。
しかし、当地域で現在、大流行とはいえませんが、B型インフルエンザに罹患される方がおられます。
まだ注意は必要ですね。
手洗い、うがい、マスク、咳エチケットです。
一回だけ内服するインフルエンザの薬・ゾフルーザ、今シーズン便利なのでよく処方しましたが、耐性(薬が効きにくい)ウィルスが出来やすいとのことで使用注意が出ました。
今シーズンはもう使うことはないのですが、来シーズンまでには使用基準が出ると思います。
感染症学会等で議論中です。
だんだん暑くなってきますので、熱中症に注意が必要になってきます。
環境省は平成31年度の暑さ指数(WBGT)の情報提供が始まりました。
「熱中症予防情報サイト」(http://www.wbgt.env.go.jp/)熱中症の起きやすさを示す暑さ指数で、「ほぼ安全」から「危険」の5段階で色分けして表示しています。
このあたりでは堺と熊取が計測地域になっています。
参考にしてください。
ほぼ安全以外の注意信号がでたくらいから涼しくして水分補給を。

また、虫の季節もやってきます。
昨年は虫除けスプレーでかなり効果がありました。
今年も虫除けスプレーを使って虫刺されから逃れたいと思います。
昨年と同じイカリジンを配合した天使のスキンベープ・プレシャワーを使用予定です。
花粉は現在ヒノキ中心でまだ飛散しているようです。
スギ花粉症の根本的治療となる舌下免疫療法は当院でも処方できます。
花粉の飛んでいる時期に開始するのは禁止されていて、スギ花粉飛散の終了した6月からの開始が望まれます。
スギのアレルギーが証明されている方はご考慮ください。
また、ダニアレルギーの舌下免疫療法もあります。
スギ花粉、ダニアレルギーでお困りの方、ご相談ください。

 iPS細胞で創薬 

全身の筋肉が衰える難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)を、白血病の薬で治療する臨床試験を始めると、京都大のチームが発表しました。
根拠となった研究の方法は、まずALS患者の皮膚からiPS細胞を作成し、ALSの特徴を持つ神経細胞に分化させます。
この細胞にALSの治療薬と期待される薬の候補1416種類と同時に培養し、反応させました。
結果、慢性骨髄性白血病の治療薬・ボスチニブがALSの治療薬の候補に挙がりました。
臨床研究ALS患者24人に対して行われます。
ALSは2017年度末現在、約9600人の患者がいます。
進行を遅らせる薬はありますが効果は限定的で、根本的な治療法はありません。

iPS細胞を使った創薬研究では、慶応大もALSを対象に別の薬で治験を実施中とのことです。
また、保存血液からiPS細胞を樹立することができたというニュースもありました。
東北メディカル・メガバンクには15万人分の血液が保存されています。
その保存血液の遺伝情報・その方の疾患を元に細胞を選択してiPS細胞を樹立し、それらを分化させることで、細胞や組織の機能に対する遺伝子型の影響を解析することが可能になります。
個別化医療の進展が期待されます。
iPS細胞を使った臨床研究が進みますね。

4月1日に次の元号、令和が発表されました。令和
5月1日から令和元年となります。
ラジオ・テレビ・ネット・雑誌では平成最後の○○という文言をよく見ます。
30年と4ヶ月続いた平成。
皆様にとってはどんな時代だったんでしょう。
平成元年(1989年)のニュースを見てみますと、バブル真っ盛り、リクルート事件、天安門事件、消費税導入、ベルリンの壁崩壊がありました。
当時は携帯電話もインターネットもなく、ポケベルなんて使ってたなと思い出しました。
令和、どんな時代になるんでしょうね。

5月の10連休。当院は4月30日、5月2日の午前中のみ外来診療を予定しています。
カレンダーの赤い日(4月28日・29日、5月3日~6日)と即位の日の5月1日は休診します。

GIST(消化管間質腫瘍)

平成31年3月26日にショーケンこと萩原健一さんがお亡くなりになりました。
享年68歳、まだまだ早すぎる死です。

萩原健一さんといえば、グループサウンズ時代、沢田研二さんのタイガースと人気を二分するテンプターズに所属されていました。
神様お願い・エメラルド伝説などのヒット曲がありました。
テンプターズはローリングストーンズのカバーが得意で、私には萩原さんとミックジャガーのイメージが重なっていました。
といっても、昭和40年代。
若い方はご存知ないでしょうね。
テンプターズ解散後は俳優として活躍され、傷だらけの天使とか、前略おふくろ様などに出演されてました。
傷だらけの天使のオープニングはかっこよかったし、水谷豊さんとの絡みも面白かったな。
その他、一杯出ててましたね。
役者としても評価の高かった方です。
私生活面においては永遠の不良少年でした。
ご冥福をお祈りします。

そんな萩原健一さんがお亡くなりになった病因はGIST。
Gastto-intestinal-stromal-tumor・消化管間質腫瘍です。
新聞にも出ていましたが、聞き慣れない病名だったかと思います。
患者さんは人口10万人に1人~2人と言われています。
いわゆる希少がんのひとつです。
希少がんとは年間発生数が人口10万人あたり6例未満の“まれ”な“がん”、“まれ”であるがゆえに診療・受療上の課題を有するがんのことです。
その種類は200にも及ぶとされています。
国立がん研究センターには希少がんセンターがあります。
GISTは間質に出来る腫瘍ということですが、間質とは、体内のあらゆる器官や臓器の“隙間”を埋めている組織のことで、それぞれの器官や臓器を支える役割を担っています。
胃腸でいいますと、胃腸は筒状になっていて、食物が通る面が粘膜(上皮)です。
その下に粘膜下層、筋層、漿膜の順番にできています。GIST図
胃がん・大腸がんは主に上皮(粘膜)から出来ます。
GISTは、粘膜の下に腫瘤を形成する粘膜下腫瘍の1つです。
胃の粘膜下腫瘍には、GIST以外に、平滑筋腫瘍や神経系腫瘍などの間葉系腫瘍、粘膜下腫瘍の形態をとる上皮性腫瘍(癌、カルチノイド、転移性腫瘍)、リンパ腫、のう胞(袋状の腫瘍)、線維腫、異所性膵、消化管のう腫、血管性腫瘍、脂肪腫、顆粒細胞腫、好酸球性肉芽腫など非常に多くのものがあります。
それぞれ、治療方針が違うため、詳細に調べる必要があり、さまざまな画像検査や病理検査・病理診断などを組み合わせることによって検査が行われます。
GISTは消化管壁の筋肉の間にある神経叢に局在するカハール介在細胞に分化する細胞はから発生します。
カハール介在細胞は、広く消化管に分布し、消化管運動のリズムをつくったり、調節したりする大切な細胞です。
「カハールの介在細胞」に分化する細胞において、細胞の増殖に関わるたんぱく質の異常がGISTの原因とされています。
主にKITまたはPDGFRΑと呼ばれるたんぱく質が関わっており、これらのたんぱく質の異常はそれぞれc-KIT遺伝子、PDGFRΑ遺伝子の突然変異によって発生します。
日本では、発生部位として胃の割合が70%と高く、次いで小腸20%、大腸および食道が5%となっています。
粘膜の下にできる腫瘍ですから、自覚症状が出にくいです。
上皮にできる胃がん・大腸がんでも初期のうちは無症状ですが、出血、痛みなどの症状がでます。
間質にできるGISTは症状が進行しても出にくいので、みつかりにくいです。
無症状のうちに、胃・大腸内視鏡で粘膜下腫瘍、として検出されます。
その後は施設によってまだ対応は異なりますが、腫瘍内部の構造を調べる超音波内視鏡検査が行われます。
さらに超音波内視鏡下における穿刺生検を行うことで診断が可能な場合があります。
超音波内視鏡観察での大きさ、潰瘍形成や辺縁不整の所見の有無も重要となります。
消化管の壁構造のどの層から腫瘍が発生しているのかよくわかるので重要な検査となります。
GISTは、固有筋層に形づくられている低エコー腫瘤の一種として認められます。
悪性度の判断として、不均一な内部エコー、辺縁不整の所見にも注意を払う必要があります。
腹部CT、MRI検査もされます。

ここで、良性腫瘍の平滑筋腫と診断されれば経過観察ですが、平滑筋肉腫、GIST、悪性リンパ腫などが疑われますと原則手術になります。
全身状態が悪い、転移があるなどで手術できない方は薬物療法になります。
手術が出来た場合でも、取りきれなかった、転移があった場合は薬物療法が術後にされます。
手術で取りきれた場合、悪性度の低いGISTは経過観察、高い場合は薬物療法です。
悪 性 度 は 大 き さ(2cm以 下、2-5cm、5cm-10cm、10cm以上)、細胞分裂の勢い(5視野で5つ以上の細胞に核裂がみられる)で決まります。

高悪性度の場合は薬物治療、低悪性度の場合は経過観察(定期的なCT検査)が行われます。
切除ができない場合や再発のリスクが高いと判断される場合は、分子標的薬を用いた薬物療法を行います。GIST治療法
分子標的薬であるイマチニブ(グリベック)は、延命効果が高いことが臨床試験の結果として報告され、手術不能な患者さん、または再発した患者さんの第一選択薬となっています。
また、再発高リスク群の患者さんを対象とした手術後の補助療法の臨床試験結果から、術後に3年内服した場合に無再発生存期間および生存期間が延長するということがわかりました。
そのため、高リスク群および腫瘍破裂が認められる患者さんには、術後3年間のイマチニブによる薬物療法が推奨されています。
再発した場合、あるいは初診時に転移がある場合や腫瘍が進行して手術ができないGISTに関しては、イマチニブを用いた薬物療法が行われます。
イマチニブは画期的なGIST治療薬で、全身性の治療が可能になり、多くの患者が一旦は安定した状態を得ることができるようになりました。

また、イマチニブの効果が得られない患者さん、あるいは長期使用により耐性(治療による効果が弱まること)ができた場合には、同じく分子標的薬であるスニチニブが推奨されています。
さらに、スニチニブの耐性によって効果が得られなくなった場合には、レゴラフェニブの投与が推奨されています。

分子標的薬を用いた薬物療法においては、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、浮腫、発疹、筋肉痛、皮膚の変色(黄色になる)や手のひら、足の裏の発赤・腫れ・痛み、血圧上昇などが起こることがありますが、症状を和らげる薬を用いたり、減量して投与をすることにより多くの患者さんでは治療を継続することが可能です。
また、白血球の減少や血小板の減少、貧血などが起こることもありますが、同様に注意して行います。
そして、これらのほとんどが一時的なもので、治療を終了すると順次改善していきます。
2003年に承認されたグリベックにより、全身性の治療が可能になり、多くの患者が一旦は安定した状態を得ることができるようになりました。
ですが2年半で約半数の患者が薬剤に耐性となる事が分かっており、その後も耐性となると次の薬を服用し、また耐性で次の薬へ・・という「いたちごっこ」を長年強いられています。
薬物療法は今3つの分子標的薬が承認されています。
第4の薬、TAS-116の治験が進行中です。
早く承認されることが期待されています。

GISTの概要、治療につき、今回ご紹介しました。
GISTのような希少がんは、東京の国立がん研究センターが医療・研究の主要な拠点です。
その中の中央病院の院長、西田俊朗先生はGISTの専門家であり、日本のGIST研究の第一人者です。
西田先生は大阪大学第一外科の出身で、私の医局の先輩にあたります。
大阪警察病院に副院長として勤務されていたのですが、東京に引き抜かれ、国立がんセンター東病院院長を経て、現在国立がんセンター中央病院の院長です。
実は西田先生は忠岡町在住です。
東京に転勤されてからも、家は忠岡にあるようで、2年前に忠岡駅でお見かけしました。
忠岡町役場に、忠岡の生んだ著名人で、大リーグの前田健太投手と、花人・赤井勝さんが展示されています。
私だけかもしれませんが、西田先生も展示してくれないかなと思っているところです。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

6月8日土曜日は岸和田徳洲会病院の緩和ケア研修会のため、休診にさせていただきます。
ファシリテーター(進行役)として参加します。

また、当院のISO9001の審査が6月10日・11日に行われます。
少し外来を制限させていただきます。

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。