2018年9月 No.154
すっかり秋の気配を感じる今日この頃です。
9月4日に、非常に強い勢力をもって近畿地方を通過した台風21号は泉州地域にも大きな被害をもたらしました。忠岡周辺でも、瓦や屋根が飛んだ、窓ガラスが割れた、シャッターが曲がった・標識・電柱が折れた、信号機が傾いた、信号がつかないなど多数の被害がでました。また台風通過後も数日に及んで停電、断水などが続く地域がありました。
関西空港の閉鎖、連絡橋にタンカーが衝突など衝撃的な映像もありました。本当に台風というのはこんなにひどいものなのかと思わせられました。今までちょっと台風を軽くみていたいたかもしれません。
関西空港は9月14日に一部再開し、18日には関西空港線も運転が再開しました。
幸い当院はあまり影響がなかったのですが、患者さんの中には4日間電気がこなかった、水が出なかった、エレベーターが止まったので外に出られなかったという方がおられました。
先月岐阜の病院で停電で数人の患者が熱中症で亡くなったというニュースがありました。
私の担当しているサービス付高齢者住宅でもまさに同じ状況となり、9月7日まで停電でした。
岐阜と同じことにならないかひやひやしていましたが、スタッフが水分補給に努めてくれて、なんとか事故なく経過しました。
現代の生活において電気がこんなに重要だったんだということを実感しました。
実際停電で診療できなかった医院もありましたし。
今9月後半ですが、ほぼ復旧しつつあります。
でも、瓦が飛んだ家の修理はかなり順番待ちだそうです。被害にあわれた方にお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧をお祈り申し上げます。
ずっと注目しているiPSです。
1. iPS細胞から、卵子のもとになる「卵原細胞」を作成京都大学のグループが世界で初めて報告しました。
ヒトの生殖細胞の発生の仕組みには不明な点も多く、今回の技術が将来的に不妊症の原因解明や生殖医療の発展に役立つ可能性があります。
グループは今後、卵原細胞から卵子へ分化させる技術の開発を目指します。
国の指針ではヒトのiPS細胞やES細胞からできた卵子と精子で受精卵を作製することは認められていません。
でもどうなるかは興味のあるところですね。
もはや、神の領域ですけど。
2. iPS細胞から間葉系幹細胞
富士フイルムは2018年度にも、iPS細胞を使った移植医療について臨床試験を国に申請し、2022年の製造・販売承認を目指します。
白血病の治療である骨髄移植や臓器移植の時に移植片対宿主病(GVHD・移植した骨髄・臓器に含まれる免疫細胞が宿主を異物とみなして攻撃する)が骨髄移植の約4割に起こります。
発症すると、皮膚炎や肝炎のほか、下痢や嘔吐(おうと)を繰り返し、致命的になることもあります。
このGVHDに対して、iPS細胞から軟骨や脂肪などに変化する間葉系幹細胞という特殊な細胞を作って患者に注射。
この間葉系幹細胞は移植した組織に含まれる免疫細胞が患者の体を攻撃するのを抑える効果があります。
富士フイルムが出資するオーストラリアのベンチャー、サイナータ・セラピューティクスが英国で治験を実施しており、途中段階ですが15人中14人で完治したり、症状が改善しています。
国内治験はサイナータのノウハウなどを引き継ぐ形で進めます。
この間葉系幹細胞の移植は、GVHD以外にも激しい下痢や血便の症状が出る潰瘍性大腸炎、動脈硬化や糖尿病がひどくなって発症する重症虚血肢、脳梗塞などの治療に効果があるとみられており、国内外で研究が進んでいます。
10月6日(土)、10月10日(水)都合により休診します。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
10月1日よりインフルエンザ予防接種を開始します。
今年は十分ワクチンがあるようですが、13歳以上の方は一回接種でお願いします。
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、一般の方、3000円です。
ワクチンの予防効果持続期間は5 ヶ月程度と推定されています。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないことです。
ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。
前回に引き続き人生の最終段階の医療について書きます。
9月22日の土曜日に表記の題で平成医政塾という会で、積極的に医療をしている医師対象にお話してきました。
和泉市・新仁会病院の鹿島先生、大阪市都島の訪問看護ステーションゆいかの錦織先生とご一緒させていただきました。
前回の院内報では、平成30年3月に改定された、厚生労働省の人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン・アドバンスケアプランニングについて説明しました。
今回は療養場所の選択、終末期の人がもつ潜在能力、ICTによる死亡診断、という話題をご紹介します。
療養場所の選択
平成26年12月の院内報にも書きましたが、在宅医療をしていて、自宅は療養場所、看取りの場所として、非常にいいと感じています。
もちろん、すべての人に在宅での療養を勧めるものではありません。
病院の方が安心できるという人も多いです。
病院でしかできない検査、処置、治療はあります。
どう頑張っても自宅で手術、血管造影、画像検査などはできません。
一日2回の抗生剤点滴をするのも難しいくらいなので、頻繁な看護もできません。
しかし、在宅療養では住み慣れた自宅では好きな家具、家族、ペットに囲まれて自分の時間が流れます。
何時に起床・何時に食事と決まったわけでもありませんので、自分の好きな時間にしたいことができます。
家族の生活の音が聞こえるのもいいと仰る方が多いです。
苦痛を取り除く緩和医療は在宅でも十分できます。
余命が限られているときどこで過ごしたいですか?という質問には何件かのアンケート調査があるのですが、どれも大体6-7割以上は自宅で過ごしたいと希望されています。
しかし、実際に自宅で最期の時を過ごせると思うというのは2割くらいになってしまいます。
5-6割の方は自宅で過ごすのが難しいだろうと考えておられすようです。
その理由として一番多いのが、家族に迷惑をかけてしまうということです。
日常の介護にしろ、緊急時など家族の負担が大きいと感じられているようです。
次は緊急時などの不安です。
病院ではナースコールをすると、すぐ看護師が来てくれますが、在宅では訪問看護師に電話してから来訪まで30分くらいかかります。
緊急時対応が不安な方は病院、施設での療養がいいのかもしれません。
介護保険を上手に使い、訪問看護や訪問診療を受けられていると、さほど緊急を要することは少ないと考えていますが。
ちなみに独居の方の在宅も可能と考えています。
在宅医療を受けるために
一般市民向けの講演などでは在宅医療、どうすれば受けられるのか全くわからない、情報がないという患者さんからのご意見をよく聞きます。
また、入院中の患者さんが自宅に帰りたいといっても、こんな状態ではとても無理だねと考える医師はまだ多いです。
医療者を対象とした緩和医療研修会では、忘れてはいけないこととして、
1.家に帰れない患者はいない
全ての患者が自宅に戻ることを希望しているわけではないが、自宅に帰りたいと希望する患者であれば全て在宅ケアに移行できる可能性がある
2.医療者がバリアとならない
医療者側で「退院できない」と判断するのではなく、「どうすれば自宅に帰すことができるだろうか?」とまず考えてみるというスライドがあります。
この研修はほぼすべての卒後2年目くらいの研修医が受けることになっていますので、在宅医療に理解をもつ医師が増えてくることが期待されます。
終末期の人がもつ潜在能力
人間の終末期は子どもの成長と逆の経過をたどります。
人は、亡くなる前に食べられなくなることにより、脱水状態となり、徐々に眠くなる時間が増えて、ADL(日常生活動作)が低下していきます。
なぜ、亡くなる前に食べられなくなるかというと、水分・栄養を体内で処理できなくなるからです。
このような状態で強制的に水分や栄養を取り入れていくと、身体がむくんだり、腹水がたまったり、痰がたまったりとかえって本人を苦しめてしまうことになります。
終末期の方には、生き物として穏やかに死にゆく力があります。自然の力です。
食べない、痩せる、脱水、眠る、意識の混濁が終末期の自然の状態です。
終末期の脳内にはβエンドルフィンなどの脳内麻薬が出ていることが知られています。
無理に医療を施すことなく、身体の状態にあったちょうどよい傾眠、ADL、そして体が欲するだけの食事があれば、呼吸も穏やかに最期を迎えることができると考えています。
老衰とは、「老いて心身が衰えること」とされています。
老衰死とは、高齢の方で死因と特定できる病気がなく、加齢に伴って自然に生を閉じることです。今の日本では、食事が摂れなくなったら「病院で検査を」となります。
すると、がんなどの病気が見つかることもあります。そうなると、手術や抗がん剤などの治療の選択肢を提示されることが多いと思います。
在宅医療では、無理な延命措置を行わず、あくまで自然に看ていきますので、苦痛を伴わず、呼吸も穏やかに枯れるように亡くなる老衰死に出会うことが多いです。
実は癌の末期でも、できるだけ枯れるように亡くなる老衰死を目指しています。
テレビで 2015年にNHKスペシャル 老衰死 穏やかな最期を迎えるにはという番組がありました。担当されていたのは先日お亡くなりになった俳優の樹木希林さん。
人生の終末期、どうしたら安らかな最期を迎えられるのか。老いがもたらす穏やかな死の謎と老衰のメカニズムに迫った番組でした。
人生終末期が来たら、人の身体は楽に逝けるよう、死の準備をはじめます。
身体はどうすれば楽に逝けるのかを知っています。前と同じように、食べられなくなったからといって、無理に食べなくてもいいのです。
身体は楽に逝くために体内の水分をできるだけ減らそうとしていきます。その時が近づいたら、体が求めるままにうとうとと眠り、食べたいものを食べたいだけ口にする。眠っている時間が増えて、家族はお別れのときが近づいていることを覚悟できるでしょう。
最近の話題です。
看護師による死亡確認が可能になりました。
平成 29年 9月に厚生労働省から情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドラインが示されました。そのガイドラインによりますと、患者さんの呼吸が停止したときに家族からの要請を受け、看護師が訪問。
死の三徴候(呼吸停止、心拍停止、瞳孔散大・対光反射の消失)、遺体の様子などを確認、タブレットかスマホなどで医師に報告します。医師がスマホなどをみて、死亡の確認、異常の有無の判断を行い、看護師に死亡診断書の代筆を指示します。看護師が死亡診断書を作成して家族に渡します。
ICTを利用した死亡診断ができる要件をクリアーしないといけません。
その要件とは
の 5つです。
また、看護師は特定の研修を受けないといけません。昨年度は 2回研修会が開かれ、約 60名が研修と実習を受け、死亡診断が可能になっているようです。
今年は約 80名の研修が予定されています。残念ながら大阪では開催されておらず、何人がその実習をうけたかは不明です。
少なくとも私の関わっている訪問看護ステーションにはいません。
私は在宅医を増やすのに有用なシステムと考えているのですが、22日に参加されていた医師は、最後はやはり医師が患者宅に行って死亡診断をして診断書を書くべきである、という意見を述べられていました。
また、あくまで要件 3にもありますが、医師が遠方などで速やかな診察が不可能なときに限られるようです。
まだ普及には時間がかかりそうです。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
ランニング再開
個人的な話ですが、一年半ほどランニングをやめてました。理由は趣味がインドア系になったこと。
でも、体重も増えて不健康を自覚するようになったので、ランニングを再開することにしました。
来年の2月の泉州マラソン、ハーフ(21.0975キロメートル)でエントリーしました。
フルマラソンと同じコースで岸和田城がゴール。
忠岡町は通過します。9 月 27 日に自分の健康診断があります。この日をどん底の日として、運動を再開し健康を取り戻すように、ハーフマラソンなんとか完走できるように精進します。