2018年7月 No.152

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

7月です。梅雨明け後、とても暑い日が続いています。
最高気温を更新したというニュースもありました。
熱中症で救急搬送され、お亡くなりなった方も多いです。小学生の熱中症での死亡のニュースなどは痛ましいです。あまり暑いときに野外学習などは控えるべきですね。いつも患者さんの診療手帳には、運動しなさい、早足で 30分、週 3回以上は歩くように、と書いていますが、こんなに暑いと外で運動しなさい、というのも言いにくいです。今年はあまりに暑すぎますので、高齢者の方、暑いときは無理をせずに外出しないように。
熱中症に注意水分補給を十分に。汗をかいた場合は、塩分補給もお忘れなく。暑さを我慢せず、特に高齢者の方は遠慮せずエアコンを使用しましょう。
若い人は涼しい恰好をして、水分・塩分を十分とり、エコな涼感グッズを使ってください。

今年は 6月 18日に大阪北部の地震があり、7月には中国地方を中心とした西日本に大きな被害がでた豪雨がありました。
私が以前住んでいた呉市、倉敷市の被害が大きくて心配していました。
幸い私の知り合いにはLINEで確認したところ、被害にあった人はいませんでしたが、以前の職場にお勤めの方で被害にあわれたかたがいるそうです。
一日も早い復旧を祈っています。

当院のインターネット回線がダウンし、業者にも入ってもらっていますが、なかなか回復しません。
ネット環境が無いと、業務上かなりの障害が出ます。
メールもリアルタイムには見られません。
電子カルテはネットを介していませんので特に支障はないのですが、私はカルテのパソコンの隣にネットにつながったパソコンを置いており、ここで今日の診療というサイトを主に使って、疾患や薬を調べています。
もうこれがあるのが当たり前になっていたので、無いと日常診療上非常に困ります。
スマホはネットにつながるので、スマホで今日の診療を見ることはできるのですが、診察中にスマホを触るのは何か失礼なような気がしてます。
訪問診療中は抵抗なく、スマホで医療情報を確認していますが、便利な時代になりすぎて、もう戻れません。
ネット依存ですね。
思い起こせば、平成 12年 9月私がこの診療所を継承したとき、当院は手書カルテ・手書レセプトでした。
私は当時診療報酬のことなど全く知らなかったので、事務の人に聞いて勉強し、なんとか簡単な事例のレセプト(診療費請求書です)は書けるようになりました。
しかし、あまりに効率が悪く、せめて電子レセプト、できれば電子カルテをと模索して、平成 13年 5月より今の電子カルテシステム・ダイナミクスを導入しました。
非常に満足のできるシステムで、他の業者に乗り換えること無く、現在に至っています。
このカルテシステムはネットにはつないでおらず、院内LANで動作しています。
電子カルテ、検査閲覧システム RS_Baseは日々進歩しており、その進歩についていくのも大変なので、事務の方、サポート業者にまかせっきりです。
導入当初は自分で、毎晩パソコンにかじりついて夜遅くまで作業していました。
残念ながら、現在パソコンに向かう気力、時間はありません。すべて当院事務、サポート業者に依存しています。これも、私自身もう戻ることはできませんが、有難いことに事務の方、サポート業者のおかげで、快適に使用できています。でも、パソコンは壊れるということを忘れないようにしないといけません。
最近、問診をとるパソコンが不調です。
現在問診のシステムを探していますが、あまりいいのがありません。
従来の紙を使用した問診に戻りそうな状況です。

 ISO9001、今年度も ISOの継続が認証されました。 ISO9001ポスター

わたしたちは ISO9001にもとづく品質マネジメントシステムの認証を受けています、というポスターが審査機関 BSiから送られてきましたので、院内に掲示しています。
先月も書きましたが、診療所も外部審査が必要と思って始めたのが ISO9001審査です。
いつも審査員の方には思いも
よらなかった事項が指摘されます。
なんとか対応しています。現在も続いています。
結構高い水準で診療所運営が回っていると自負しています。
今後も ISO9001認証継続を当院の目標にしたいと思っています。
当院受診される方にお願いなのですが、当院へのご意見をいただけると嬉しいです。
記入用紙は待合室に常時置いています。
当院が皆様のお役に立てる診療所になるよう、ご協力お願いします。

腸内細菌

7月15日に行った内痔核治療法研究会(東京・御茶ノ水)のランチョンセミナーで慶応の先生から腸内細菌の講演がありました。
昼ごはん食べながら、腸内細菌の話か~、と思ってましたが、聞いてみたらとても面白かったので、要点をお伝えします。

私たちの腸内には、重さにして約1~1.5kg、少なくとも1000種類、100兆個以上(一説には1000兆個とも)の微生物が生息しています。
我々人間の細胞数は約37兆個(以前は60兆個と言われていた)ですので、驚くべき数です。
これらの微生物群が織りなす生態系を、腸内細菌叢あるいは「腸内フローラ」と言います。
フローラはお花畑の意味です。

腸内細菌叢は、アレルギーや皮膚疾患、脳、神経系疾患など、さまざまな疾患に大きな影響があることが明らかになってきました。

腸内細菌はオランダのレーウェンフックという人が自作の顕微鏡を用いて発見しました。
画家フェルメールのスポンサーだった人で、1674年の頃です。

腸内細菌はほとんどが大腸にいます。
善玉菌、悪玉菌、日和見菌と分類されますが、善玉菌の中にも働きが悪いのがいたり、悪玉菌の中にもいいことをする菌がいたりで、まだまだ研究中です。
人間でも、家族の中で個性が違ったりするものなので。
善玉菌は食物繊維をエサにしています。

腸内細菌についての驚きの研究結果があります。
ワシントン大学のジェフリー・ゴードン博士らは、1人が肥満で、もう1人は痩せているという、一卵性双生児・双子のペアを募集しました。
一卵性双生児は遺伝子が同じで、離れて育つなど生活などの環境による影響を受けます。
最終的に、4組の女性の双子が選ばれました。
研究者らは、それぞれの双子から腸内細菌を集めて、無菌のマウスの腸に移植しました。
肥満の人からの腸内細菌を移植したマウス群と、痩せた人の腸内細菌を移植したマウス群で比較します。
この両群のマウスは、標準的なエサ(同内容・同量)を摂取するようにします。
その結果、肥満の人から腸内細菌を移植された無菌マウスは、痩せた人の腸から細菌を与えられた無菌マウスに比べて体重が増加し、より多くの脂肪が蓄積しました。
つまり、肥満の人の腸内細菌を移植されたマウスは肥満になったのです。
エサの条件が同じであるということは、この相違が、体内に入ってきた栄養素の代謝に変化があるとiいうことです。
原因は移植した腸内細菌?と考えられます。

研究者らはさらに、2つのグループのマウスを一緒のケージに収容しました。
マウスは糞を食べるのですが、そうなるとこれら2つのグループのマウスは、意図せずお互いの微生物によって、影響を受け合います。
ゴードン博士は、これを“細菌叢の戦い”と呼んでいます。
この戦いの結果、肥満の人から腸内細菌を移植された無菌マウスは、痩せた人の腸から細菌を与えられた無菌マウスの細菌叢の影響で、体重が減りました。

ところが、痩せた人から腸内細菌を移植された無菌マウスは、肥満の人からの腸内細菌の影響を受けず、痩せたままでした。
なぜでしょうか? 肥満の人は細菌叢の多様性が少なく、特定の菌種に偏るという報告があります。
これに対し、痩せた人の細菌叢は多様性に富むため、肥満の人の細菌叢を一方的に侵略できることが要因と推測されます。
痩せた人の腸内細菌が肥満の人の腸内細菌に勝つのです。コアラ

便を食べる?と眉をひそめた方もおられるかもしれませんが、自然界ではよくあることです。たとえば、コアラはユーカリを食べますが、ユーカリの中に含まれる有害なタンニンを消化する酵素は大人にはありますが、子供にはありません。
そこでコアラは母親の便をたべて、この酵素を得ます。

糞便による人の治療もあります。
糞便移植法という治療法です。
4世紀の中国に食中毒の患者に便を投与して軽快したという記録があるそうです。
2013年、オランダ・アムステルダムのニードロップ医師が人でクロストリジウム・ディディフィシル感染という抗生剤の効きにくい菌の腸感染症を糞便治療で治癒させました。
クロストリジウム・ディフィシル菌という腸内細菌は普段はそんなに悪さをしない日和見菌ですが、抗生物質の使いすぎたりして、善玉菌も悪玉菌も含めて腸内細菌が減ってしまうと、ガゼンのさばってきて、毒素を出して下痢を引き起こします。
偽膜性腸炎という疾患を引き起こします。
ことに免疫機能が低下した高齢者・癌などに罹患している人などは重症化してしまいます。
そもそも抗生物質の使いすぎがこのクロストリジウム・ディフィシル感染症の原因ですから、抗生物質の治療には限界があり、治療は難しいと考えられてきました。
そこでニードロップ医師は正常な人の糞便を洗浄して腸内細菌を精製して、クロストリジウム・ディフィシル感染症の患者の腸内投与しました。
結果は驚くべきもので、16人中 15人が短期間のうちに症状が大きく改善しました。

この研究に感銘を受けた慶応大学の金井Dr(今回私の受けた講演の講師です)は、この糞便移植法が日本でも治療法として導入できないかと考えられました。
クロストリジウム・ディフィシル感染は日本では少ないですが、潰瘍性大腸炎、難病のクローン病、腸管型ベーチェット病、過敏性腸症候群、慢性便秘への治療が臨床研究が進行中です。
成果に期待したいです。

今、日本人の腸内細菌では、善玉菌が少なくなってきているそうです。
原因として考えられるのは、食物繊維の摂取量が少なくなっていること。
金井先生はその原因が冷蔵庫にあると言われていました。
保存食である発酵食品の摂取が冷蔵庫によって少なくなっていると。
納豆、漬物、野菜、ワカメなどがいいと言われていました。
腸内フローラには個人差があり、何を食べればいいかは人によって異なる部分もあります。
また、食事からとる菌はそう簡単に腸にすみつけませんが、腸に良い菌や食物をとり続ければ少しずつ良い菌が増え、腸内環境を改善できます。
将来的にはいい腸内細菌をカプセルに入れて服用するような治療法が普及するのではないかと金井先生は考えられています。

今回は、腸内細菌について、糞便移植を中心に書いてきました。
まだまだ、腸内細菌にはいろいろな面があり(癌、動脈硬化、ストレスとも関係あり)、調べると面白いです。
腸内細菌の多様性、善玉菌の増やし方など、また、院内報でも続編を書いていきたいと思います。

 

図:テルモ財団:いま注目の最先端研究・技術探検・生命科学DOKIDOKI研究室
第 24回:糞便移植で腸の難病が治る、より

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

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かかりつけ患者になるには?

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以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

夏期休暇

8月15日(水)~19日(日)までです。
当院受診される方、薬がきれないように。
当方も注意しますが。毎年 1-2 例、休み期間中に薬が切れたと連絡があります。
薬局に無理を言って準備してもらっていますが、できればそういうことの無いようにしたいです。
よろしくお願いします。