在宅医療とは?
在宅医療
往診と訪問診療の違い
在宅医療の実際
               
  
ホームドクター通信
2007年1月 No.15

◆謹賀新年

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

どなたも思うことは同じでしょうが、「もう一年が経ったか……」これが実感です。
昨年もいろいろなことがありました。
年末・新年の新聞の昨年のニュース特集をみて考えたことです。

 医学の進歩はめざましく、ヒトのゲノム(遺伝子情報)30億個の文字配列が解読され、どのような細胞にも分化できるES細胞(胎生幹細胞)株が樹立、クローン動物が作製されるようになり、医学は新しい時代にはいっているといえます。さらに遺伝子診断、治療、再生医療が現実のものとなっています。

 しかし、一方では“祖母が孫を生む”、“病気の腎臓を人に移植する”、“死んだ父親の子が生まれる”など法律も予期しなかったような問題が昨年発生しました。医学・医療の進歩が以前は考えもしなかった問題を我々の前に提起しています。

 少年・少女のいじめによる自殺問題などとも相俟って、命(昨年の一文字だそうです)について再度考えないといけない時期にきているような気がします。

 
 当院は日頃より電子カルテを使い患者さまの健康管理と診療にあたらせていただいております。今度、さらに患者さまの利便を図るため、当院の携帯電話に患者さまの診療内容などを入れて、患者さまの健康管理やお問い合わせに対していつでもどこでも対応できるようにしました。これを使いますと、大災害時、停電時などでも患者さまの診療情報が携帯電話の中に入れてありますので診療の継続が可能になります。

 もちろん、安全面(セキュリティ)につきましては最大限の配慮をして取り扱いをします。患者さまの診療情報を当院の携帯電話に格納することに同意いただけますようお願いいたします。患者さまご本人以外からの問い合わせ(受診先の病院など)に対応することもございます。個人情報のことですから、この携帯電話での診療情報の格納、問い合わせへの対応に同意しない方がおいでになりましたら、格納いたしませんのでお申し出ください。

 また、近日中に当院の診療情報(薬剤情報、アレルギー情報、診療内容など)を患者さまの携帯に送信できるようになります(但し機種はNTTドコモのFOMA・MOVAに限られます)。 他院を受診されたときに提示いただければ、日頃の当院の診療内容を的確に伝えることができます。現在テスト中です。使用できるようになればお知らせします。詳しくは院長に問い合わせてください。
 

 本年1月1日付けで当院は医療法人になりました。

診療内容などで特におおきな変化はないと思います。在宅医療推進のための介護サービスを提供するのが、医療法人にした目的です。より地域に密着した医療サービスを提供していけるよう職員一同頑張りますので、ご支援のほどよろしくお願いします。





◆特集:在宅医療について





 
在宅医療という言葉は、新聞や雑誌などで取り上げられる事が多くなってまいりましたので、耳にした事がある人も少なくないでしょう。しかし、実際に在宅医療とはどのようなものか理解されている方は少ないのではないかと思います。

 これからの高齢化社会を控え、医療・介護の世界も様変わりしている途中です。厚生労働省は医療費抑制のため、在宅医療を推進しています。急性期病院は在院日数を減らすために病状が安定した患者さんは早期に退院することが勧められます。また、数年後には療養型病床が廃止される方向にあります。それにより、患者さんを自宅で介護する人が増えるであろう事は容易に想像がつきます。つまり、好むと好まざるとに関わらず、医療・看護・介護の場が自宅で行われるケースが増えてくるのです。在宅医療を理解し、上手に活用する事が必要になってくると思います。

 当院の先代の院長(父です)が癌末期になったときに、病院から自宅に連れて帰り、自宅で看取りました。12日間でしたが、麻薬が効いて痛みもなく穏やかな最期でした。以後、在宅医療もなかなかいいものだと思って、当院の方針にも挙げており、積極的に在宅のご依頼はお受けするようにしています。自宅での看取りもしています。






 その名の通り、何らかの理由で医療機関に行けない患者さんのご自宅での医療のことをさします。
手術や集中治療・血管造影・内視鏡などの検査・処置など高度な急性期医療は病院でないとできませんが、病状の落ち着いた方の療養(慢性期)、癌末期で治癒が望めない方で、ご本人・家族が希望される場合は在宅での医療が可能です。






 一般に往診とは患者の求めに応じて、患者の急変時に診察を行う事を指します。一方、訪問診療とは、何らかの疾患を抱え定期的に医療を受ける必要があるにも関わらず、外来通院が困難な場合に、ご自宅に定期的に訪問し診察を行う事です。
一回だけの緊急の依頼による訪問が往診で、患者の状態の維持・向上のため定期的に訪問するのが訪問診療です。
在宅医療では訪問診療が中心となります。一回かぎりの緊急の往診は出来ることはかなり制限されており、結局は診療所に来て頂いたり、病院に紹介することが多いです。往診の必要性は少なくなっているでは、と考えています。






 医師・看護師が患者様の家庭を訪問し、ご本人・ご家族と協力して医療を行います。
慢性期の患者さんと末期の患者さんでは対応が異なります。慢性期の患者さんでは訪問して状態観察、投薬・処置、悪くならないための予防処置が中心です。

末期の場合は症状の緩和が主な目的になります。
最近では医療・機械・システムの進歩により、家庭においても在宅ホスピスケア(緩和ケア)・がん疼痛管理・高カロリー輸液(中心静脈栄養)・輸血・人工呼吸・胃瘻による栄養療法などの比較的高度な医療を受けることができるようになりました。


 しかし、家族の協力がなければ、問題が解決できない事も多くあります。

 そういう意味では家族の負担が多い医療である事は事実です。少しでもご家族の負担が減るよう様々な福祉サービスがありますので、在宅医療を円滑に行うためにはヘルパー等の人的援助やショートステイ、デイサービス等の介護保険も利用した福祉援助の利用が必要になります。

 当院では病院の主治医、他の診療所の医師、訪問看護師、ケアマネージャー、ヘルパー、訪問入浴などいろんな職種の方と連携して、在宅医療にあたります。

 在宅医療は個々の患者さんの状態や取り巻く環境により対応が異なります。

当院では、重度の患者様でも、受け入れから緊急対応、ご自宅での看取りまで、サポートさせていただきます。どのような状況でも患者さん、ご家族によりよい方法を考えることは可能ですので、どうぞお気軽に相談ください。また、可能な限り自宅で・最期は入院で、というご希望にも対応できます。

 家に帰った時に何か起きたらどうしようか?痛んだり苦しんだりしたら、どうしよう?私にできるだろうか?こんなにチューブだらけでも、本当に大丈夫だろうか?など、ご家族も様々な不安を持っていて当然です。当院では訪問看護師を中心にサポート体制を組んで、24時間対応します。緊急時の訪問も可能です。ご家族の不安をとることも在宅医療チームの重要な役割となっています。

「自宅で療養・闘病生活を送る」「自宅で最期を迎える」という、「難しいことの様でありながら、昔だったらあたりまえのこと」が再び可能になりつつあります。

 実は病院で死ぬのが当然になったのは最近のことです。1951年(昭和26年)、自宅での死亡は82.5%を占めており、病院死9.1%でした。1977年(昭和52年)に自宅での死亡と病院での死亡の件数が逆転。2003年(平成15年)病院での死亡78.4%、自宅での死亡13.5%となっています。今後自宅での死亡が少しずつ増加するのでは、と予想されています。

住み慣れた家で過ごしたい…

家族と一緒に過ごしたい…

社会と関わりながら生活したい…

最期を家で過ごしたい…

患者さんにとって、これらはとても自然な希望だと思います。私たちが、患者さん、ご家族の幸福な人生にとって、少しでもお助けできればと思います。


尼崎の桜井先生の書かれたあなたの家に帰ろうという小冊子があります。在宅医療をお勧めする冊子でとてもよくできています。在宅での医療をお考えの方は御一読下さい。当院の待合にも置いておきます。


 















◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

あけましておめでとうございます。

2007年最初の院内報です。

今年こそは毎月1日発行を目指してがんばります(早速遅れ気味ですが…)。

よりよい紙面づくりを目指し、皆様からのご意見、ご要望などをお待ちしております。スタッフまで声をおかけください。