2018年 1月 No.146

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

新しい年になりました。今年もよろしくお願いします。

寒中お見舞い申し上げます。
寒波が日本列島を覆っていて、すごく寒いです。
平成で一番寒い日、と新聞に掲載されています。
関東地方が大雪で、交通機関がかなり乱れています。
こちらでは大雪情報や道路凍結情報は幸いにもありません。まだもう少し寒い日が続きそうです。
体調管理にはお気をつけください。
インフルエンザが猛威を振るっています。
今年はB型の流行が早い印象があります。
A型も出ています。寒さと相俟って流行が懸念されます。うがい、手洗い、マスクの着用、できれば人込みの中に行かないなど注意して、感染しないようにしてください。
インフルエンザは元気な人にとっては寝ていれば治る病気ですが、抵抗力の弱った人にとってはやはり軽視はできません。
インフルエンザの予防接種、品薄があった影響で、今年は忠岡町の65歳以上の方の助成(負担金1000円)は2月末までしています。
一般の方もまだ若干ワクチンがありますので、接種ご希望の方は受付までお申し出ください。

 咳エチケット 

厚生労働省が進撃の巨人で咳エチケットのポスターを作っています。
3つの咳エチケットをまもりましょう。1.マスク着用、2.ティッシュ・ハンカチなどで口や鼻を覆う、3.上着の内側や袖(そで)で覆う。
咳やくしゃみを手でおさえると、その手で触ったドアノブなど周囲のものにウイルスが付着します。
ドアノブなどを介して他の人に病気をうつす可能性があります。
エチケット違反です。何もしないのは論外。
咳やくしゃみをすると、しぶき が 2m ほど 飛びます。
しぶきには病原体が含まれている可能性があり、他の人 に病気をうつす可能性があります 。

 iPS残念なニュース二つ 

応援しているiPS細胞ですが、今回残念なニュースが二つありました。
ひとつは、ものが見えにくくなる目の難病「加齢黄斑変性」の他人のiPS細胞から作製した網膜の細胞を、移植する治療で、患者1人が、網膜が腫れる合併症を起こして入院したと、理化学研究所などが発表しました。
iPS細胞を用いた治療で、合併症が確認されて入院したのは初めて。注射で移植する際に細胞の溶液が漏れたことが原因とみられ、「他の細胞を移植しても起こりうる症状。iPS細胞の今後の研究に影響はない」としています。
もうひとつは、論文のデータ捏造事件。山中先生の辞任にも追い込まれかねない事件でした。
データ捏造した研究員は非正規雇用で、期限が今年の3月まででした。実績がないと、継続雇用されません。焦ったのでしょう。
iPS細胞実用化までの長い道のりを走る研究所の教職員は、9割以上が非正規雇用です。
これは、研究所の財源のほとんどが期限付きであることによるものです。
しかし、2030年までの長期目標を掲げ、iPS細胞技術で多くの患者さんに貢献するべく、日々の研究・支援業務に打ち込んでいます。
京都大学iPS研究所は随時寄付の受付をしています。
申し込みはフリーダイヤル0120 - 80 - 8748(ハシレ、ヤマナカシンヤ) 山中伸弥教授はマラソンもされ、自ら走る広告塔となっています。私も少しだけ協力しています。

年末・年始のマイブームは登美丘高校ダンス部でした。
大阪・堺の北野田にある高校・ダンス部は強豪で、2015年・2016年と高校選手権で優勝しています。
2017年は残念ながら、準優勝だったのですが、全国大会後youtubeに投稿された動画 (バブリーダンス、曲は荻野目洋子さんの35年前のダンシングヒーロー) は驚異の視聴回数を記録し (1月末現在4000万回以上)、2017年にYouTube国内動画ランキングで(音楽を除く)で第一位を獲得。
また、レコード大賞特別賞を獲得し、紅白にも郷ひろみさんのバックダンサーとして出場しました。
3年生が引退後も、本年2月公開の映画、グレイテストショーマンの日本PR大使を務め、華麗なダンスを披露されています。
このトレンドは登美丘高校ダンス部のコーチ・振付師のakaneさんが仕掛け人となっています。
すばらしい才能です。
本名宮崎朱音さんで、岸和田の出身だそうです。
大阪万博の誘致プレゼン、東京オリンピックなどでも活躍してほしいです。期待してます。

慢性便秘症

日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断治療研究会が『慢性便秘症診療ガイドライン2017』をまとめ、発刊しました。
今回はこのガイドラインを紹介します。

 便秘の定義 

従来、日本内科学会は「3日以上排便がない、または毎日排便があっても残便感がある場合」としていましたが、今回のガイドラインでは「本来なら体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されました。
この定義には排便回数や排便量が少ないために、糞便が大腸内に滞っている、直腸内にある糞便を快適に排出できない、という2つの状態が含まれています。

慢性便秘は、原因から器質性か機能性に、症状から排便回数減少型か排便困難型に、病態から大腸通過正常型か大腸通過遅延型、便排出障害に分類されます。
器質性とは大腸腸の形態的異常を伴う便秘で、大腸がんなどに代表される狭窄型、狭いところは無いのですが、大腸の形態的変化によっておこる非狭窄性便秘に分類されます。
非狭窄性便秘には排便回数の減少を伴う巨大結腸症、排便困難を伴う直腸瘤 (女性において,直腸腟中隔の脆弱化により直腸前壁が腟腔内に突出する病態) などがあります。
機能性は大腸の形態学的変化の無い便秘です。
排便回数減少型、排便困難型に分類され、更には大腸の通過時間などを加味して診断しますが、レントゲンに写るマーカーを口から飲んで、その移動をレントゲンで追跡する大腸の通過時間の検査はまだ保険に収載されておらず、まだあまり浸透していませ
ん。今後治療を考える上で必要となる検査のような気もします。

便秘の有病率は日本の平成25年度厚生労働省の国民生活基礎調査では、便秘の有訴者率は男性2.6%、女性4.9%でした。もっと多いだろう、と思うのですが、実際に便秘に悩む人は20%くらいかな、思います。
男性よりも女性に多く、明らかな性差が見られます。世間一般の便秘といえば若い女性が悩むものというイメージと合うのではないでしょうか。
便秘薬のCMといえばだいたい若い女性が出演していることが多いように感じます。
若年女性の便秘人口が多いのは、生理周期でホルモンバランスが変化することや、職場や外出先での排便をためらうことが原因と考えられています。

リスク区分別脂質異常症治療目標

人が便秘症状を訴えているかを示したものです。
特に50歳以下の若年者では、女性の比率が高いです。しかし、加齢に伴い、男女ともに有病率が増加し、特に男性の比率が増え、性差が無くなる傾向にあります。

 便秘の問診・診察 

排便回数(3回/日~3回/週が正常とされる)、便の性状(ブリストル便スケールを使う)、腹部症状(腹痛・膨満感など)、肛門症状(残便感・排便困難感など)、便秘をおこす薬剤を服用していないか、便秘をおこす疾患がないか病歴チェック。
他、血便・体重減少の有無などをチェックします。
現在問診票を学会が作成中とのことです。
診察・検査、腹部腫瘤・膨満の有無を確認。
必要あれば血液検査、腹部レントゲンなどを考慮。
器質的な疾患の除外のために大腸内視鏡が活用されます。
専門的な検査として、大腸通過時間、排便造影検査、バルーン排出検査がありますが、ここでは詳細な説明は省略します。
治療は、器質性の便秘で手術などが必要な病態を除くと保存的治療を基本としています。
便秘の治療といえば、「適切な食事と運動」など生活習慣改善を思い浮かべる人は多いでしょう。
中でもヨーグルトなどのプロバイオティクス(適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物・乳酸菌など)や食物繊維の摂取、腹壁マッサージは、手軽にできる便秘対策としてよく知られています。ところが、今回のガイドラインでは、これらの方法は、積極的に勧めるほどでない「弱い推奨」にとどまっています。
しかも、食物繊維については、「過剰摂取は便秘を増悪する」とし、多く摂取すればいいというものでもないようです。
さらに運動や腹壁マッサージも、科学的根拠のレベルは低いとされました。

内服療法の場合、臨床で用いることが多いのは、便をやわらかくする薬・浸透圧性下剤です。
浸透圧下剤には塩類下剤と糖類下剤があります。
一般的に使われるのはマグネシウムを含む塩類下剤です。
マグネシウムには腸内の水分保持作用があるので、便の量が多くなりやわらかくなります。
定期的な血中マグネシウムの測定が必要とされています。
高マグネシウム血症では、悪心・嘔吐,口渇,血圧低下,不整脈が出現することがあり、注意が必要です。特に気にしなければならないのは、高齢者、または腎機能が低下している人です。
血中マグネシウムが高くなれば、漢方薬に変更していましたが、同じ浸透圧性下剤の糖類下剤(ラクツロース・但、便秘に保険適応なし)に変えるほうがいいのかもしれません。
ラクツロースは、大腸で浸透圧作用により下剤効果を示すだけでなく、腸内での分解により発生した有機酸が腸蠕動を亢進させ、排便を促します。
乳酸菌を増やす効果、アンモニアを下げる効果もあります。次に新しい便秘薬剤である上皮機能変容薬が推奨されています。
ルビプロストン(商品名アミティーザ)やリナクロチド(リンゼス)です。
アミティーザは小腸のクロライドチャネルという腸液の分泌に関わる受容体を刺激し、小腸内への水分分泌を増やし便を柔らかくする薬です。
リンゼスは、腸粘膜上皮細胞に発現しているグアニル酸シクラーゼC受容体に結合して活性化することにより、腸管分泌及び腸管輸送能を促進するとともに、内臓痛覚過敏を改善します。
残念ながらリンゼスはまだ便秘症の適応が取れておらず、処方できるのは便秘型の過敏性腸症候群のみです。現在便秘の適応申請がされているので、近いうちに便秘の方にも処方できると思います。アミティーザは妊婦には使えません。
若年女性では悪心が生じやすいので注意が必要です。他の薬は推奨の強さが一段低くなっています。
プロバイオティクスや漢方は今後に期待というところでしょうか。
内服治療以外にも、浣腸や精神・心理療法などがありますが、現時点でエビデンスを示すことが難しく、今後の課題となっています。
ブリストルスケール 我が国で処方回数が多いのが刺激性下剤(センナ、プルゼニドなどのアントラキノン系下剤など)です。この薬も推奨度が低くなっています。
非常に強力な薬剤ですが、習慣性、あるいは依存性といった問題があり、大腸粘膜が黒色になるのも知られています。
そのため刺激性下剤は頓用とすべきで、常用は控えた方がいいようです。

便意を感じていないときは直腸に糞便はなく、空虚で、糞便は S状結腸より口側に貯留しています。
蠕動が S状結腸から直腸に移動して、直腸壁が伸展され便意が生じます。
せっかくの便意、我慢しないことが大事なので便意があればトイレにいくことが望ましいです。
便意を出勤前に誘導するよう、早く起きる、朝起きたら水を飲む、朝食をとるなどの習慣をつけることも大事です。また、排便姿勢(前傾姿勢)をとることも勧められます。ロダンの彫刻「考える人」のようなポーズが排便がしやすい姿勢です。
便が硬ければ排便を始めてから終わるまでの時間が掛かり、また分割されて直腸に便が残ってしまうと残便感を生みます。必要であれば薬を使用し、ブリストル便形状スケールの4を目指して薬剤を調整していくことが、満足感の高い治療につながります。
肛門疾患の観点からいうと、トイレは出ても出なくても 3分以内が勧められています。

 

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

現在レントゲンができなくなっています。
レントゲンは撮れるので、レントゲン室のモニターでは見られるのですが、診察室に画像が転送されてこない状態です。
修理完了まで、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。