2017年 11月 No.144

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

11月も終わりかけです。今年も残すところあと1カ月。
いろいろ準備しないといけません。

秋を通り越して、冬になったようです。朝夜は寒いです。
診察室にも暖房入れてます。白衣も長袖になったし、そろそろインナー着ようかな、と思っているところです。台風で歪んだ南海本線のレールは復旧しました。
尾崎、鳥取ノ荘の知り合いは随分不便だったらしい。
泉州南部地域の人たちにも日常が戻ってきたようです。

インフルエンザの季節が始まりそうで、嫌ですね。
シーズン中毎月書いていることですが、インフルエンザは予防が大事。一番は手洗い、マスク。次にうがいです。人込みをさけることも大切です。身体は保温につとめてください。私は、ウィルス感染の一番の原因は手だと思っています。ドアノブ、吊り革、机、いろんなところにインフルエンザを含むウィルスがいて、それを素手で触って、顔の鼻、目、口などの粘膜に接触することにより、ウィルスが人間体内に入るのではと考えます。いろんなところ触ったら、手洗いを。
手で顔などをさわらないようにしましょう。

インフルエンザ予防接種をしています。
先月同様まだ供給量が少ない状況です。
かかりつけの方の接種をを優先しており、新規で予約される方は制限させていただいています。
ご迷惑をおかけしていますが、ご了承ください。
ワクチンの予防効果持続期間は5 ヶ月程度と推定されています。13歳以上の方は一回接種でお願いします(厚生労働省の通達です)。忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、一般の方、3000円です。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないことです。
ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。

 iPS細胞関連 

いつも注目しているiPS細胞のニュースです。 
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から運動神経細胞の集合体を作製することに成功したと、東京大学の研究グループが発表しました。

発表によると、東大グループらが作製したのは、脊髄から延びて手足の筋肉を動かすよう指令を出す運動神経細胞。

iPS細胞から運動神経細胞を単体で作製した事例はありましたが、集合体での作製例はありませんでした。
運動神経細胞は、情報を処理する細胞体と情報を伝えるひも状の軸索などから構成されます。
人の体では細胞体が集まり、軸索も束になって存在しています。

研究グループは独自に開発した培養容器を用いることで、約1万個の細胞体の集まりから軸索が延びて、数千の束になる状態を再現しました。
東大グループは「さらに人の神経組織に近づけ、病気の状態を再現したり、創薬につなげたりしたい」と話す。

一方、慶応大学と順天堂大学の研究チームは、iPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)の培養時に三つの化合物を加えることで、目的とする細胞を効率的に作成できるようになったとする成果を発表されました。
まだ詳細は確認していませんが。
神経細胞の作成、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など神経難病の原因解明や治療につながる可能性がありますね。期待したいです。

実際の神経難病臨床関連では、今まで神経難病の方の在宅医療でお世話になっていた栂・美木多駅近くにある近畿大学付属堺病院が病棟は今年いっぱいで閉鎖。
病院自体来年3月末をもって閉院になります。
近大堺の多くの科が、狭山の近畿大学に統合され、再来年(だったかな?)の泉が丘移転を目指しますが、近大堺の神経内科は和泉市立病院に来られるそうです。
近畿大学付属堺病院は国立泉北病院から変わって、私個人的には腫瘍内科(特に肺癌治療)と緩和ケア勉強会と神経内科にお世話になっていました。
近大堺の神経内科は、神経難病患者の救急医療とレスパイト入院でほぼ完璧なシステムを組んでいて、実際に在宅で診る私にはとても心強かったです。
何かあれば、近大堺がとってくれる、という安心感がありました。
他の病院も近大堺と同じシステムをとってくれたらいいのにと思ってます。
この病院が無くなるのは寂しいですが、神経内科が和泉市立病院(来年4月からは和泉市立総合医療センター)に来られることになり、近くなるので私は喜んでいます。

12月20日(水)、都合により休診させていただきます。

12月29日(金)午後から1月4日(木)まで年末年始休暇を頂きます。 ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。 当方でも、薬が切れないよう注意しますが、皆様もご注意ください。。

心不全

 心不全 

日本循環器学会と日本心不全学会は平成29年10月31日、一般向けには心不全を下記のように定義すると発表しました。

<心不全の定義>

『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。』
同じ日に1000人を対象にしたアンケート調査によると、心不全という名称の認知率は約100%ですが、症状や内容まで理解している人は3割弱にとどまっています。
国内の心不全の患者数は100万人と推定され、今後は増えて2030年には130万人に達するとのデータを示しました。
心不全の怖さ(例えば、5年生存率50%、完治しない等)については、国民にあまり知られていないのが現状でした。
そのため、心不全について、国民によりわかりやすく理解して貰うため、新たに「心不全の定義」を日本循環器病学会と日本心不全学会で連携して作成されたのです。

心不全は・・・・病気です

“心不全”は、病名ではないと我々も聞いてきました。これについて、学会は、医学の専門用語としては、「病気」ではありませんが、 心臓が悪いことを総合的に表現する言葉として、今回は「病気」と表現されました。

心臓が悪い

心臓は、いろいろな原因で正常な機能(血液を全身に送り出すポンプ機能)を発揮できなくなることがありますが、それらを総称して、“心臓が悪いため”にと表現しています。
悪くなる原因としては、

  1. 血圧が高くなる病気(高血圧)
  2. 心臓の筋肉自体の病気 (心筋症)
  3. 心臓を養っている血管の病気 (心筋梗塞)
    (十分に心臓を養えていないために起こる)
  4. 心臓の中には血液の流れを正常に保つ弁があるが、その弁が狭くなったり、きっちり閉まらなくなったりする病気(弁膜症)
  5. 脈が乱れる病気 (不整脈)

この中では、心臓を養っている血管が詰まるための虚血性心疾患が一番多い原因とされています。
心臓を栄養する動脈・冠動脈、これが動脈硬化や痙攣で狭くなって心臓に届ける血液が十分にいきわたらない状態です。
一時的に血流が途絶えて、すぐに再開通するのが狭心症。再開通しないで、血流が全然行かなくて、心筋の細胞が死んでしまう状態が心筋梗塞です。
これらの病気のために、心臓の血液を送り出す機能が悪くなっていることを意味します。
またそれぞれの病気には、それぞれ適した治療法があります。

息切れやむくみがおこり、心不全の初期によく見られる症状が、運動時の息切れや、両足、特に下腿の前面や足首、足の甲を指で抑えると、くぼみができるようなむくみです。
むくみは両方の足に出現することが特徴です。
その他には、「疲れやすい」という症状もあります。
息切れもむくみも、心不全だけで生ずる症状ではありません。
「疲れやすい」という症状は、心臓が悪くなくてもよく感じる症状ですので、今回の定義には含まれていません。
だんだん悪くなり心不全の臨床経過のイメージを下図に示しました。

心不全の臨床経過

心不全を発症しても、適切な治療によって、一旦、症状は改善します。
しかし残念ながら、心不全そのものが完全に治ることはなく、症状がぶり返すことがあります。また、過労、塩分や水分の摂りすぎ、風邪、ストレスや、薬の飲み忘れなどにより心不全の症状が悪化、あるいは再発することもあります。そして、安静、治療の適切化によって、心不全の症状は再度改善します。
しかし、このような、悪化と改善を繰り返しながら進行して行くことを、“だんだん悪くなる”と表現しました。

 生命を縮める病気 

どれくらい生命を縮めるかは、個人差があり、1年以内に生命を落とす人から、何十年と普通の生活を送る人まで様々です。
循環器の専門医なら経験上、大まかに予測することはできますが、がんのように、「余命何年です」と説明しにくい状況にあります。それは、がんのように、早期がん、末期がんといったステージングが、十分に定められていないからです。
現段階ではありますが、心不全で入院したことのある人は平均5 年間で約半数の方が亡くなっています。5年生存率50%というわけですが、これは肺がんよりは良好ですが、大腸がんとほぼ同等、前立腺がんや乳がんよりは不良です。
心不全の原因となっている心臓の異常が、完全に治ることは少ないです。しかし、原因疾患を治療することにより心不全のリスクを低減させることは可能です。たとえば、心房細動などの頻脈性の不整脈は側副伝導路を焼灼することにより、治療可能です。また、弁膜症についても、手術での弁の取替え、弁の形成で改善が期待できる場合があります。また、最近では手術せず、カテーテル治療だけで大動脈弁を人口弁に変える治療も行われています。心不全が治らないといっても、現在、心不全の治療法はずいぶん進歩しています。
心不全の薬は、症状を改善したり、入院の回数を減らしたり、生命そのものを延伸することが明らかになっています。
従って、これらの薬をきちんと内服していただくことは重要です。その他には、外科手術、ペースメーカー、心臓の収縮を整える機械の装着、究極的には心臓移植が治療法となります。

 心不全の予防について 

心不全を予防することは可能です。
心不全の予防には、心臓が悪くならないようにする予防と、一旦、心不全を発症した人の再発予防の 2 つがあります。心臓が悪くならないようにする予防には、心臓の働きを悪くさせる要因を除くことが必要です。
つまり、高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロール等が高い病気)、肥満を未然に防ぐことです。
そのためには、禁煙、減塩、節酒、適度な運動が重要です。そして、心臓が悪くなりかけていることに早く気付き、医療機関を受診し、上記の生活習慣の改善に加えて、適切な薬物治療をすることにより心不全の発症や悪化を防ぐことができます。心不全の再発予防としては、上記の事項に加えて、過労、水分の過剰摂取を避けること、また、冬には風邪を契機に心不全の悪化がよく見られますので、風邪予防も重要です。また、高齢者の心不全では、軽度の労作が大きな負担になって、再発することもよくありますので、患者さん自身のヘルスケア、ご家族、あるいは医療・介護関係者、地域でのケアが心不全の予防では特に重要です。
急性心不全と慢性心不全急性心不全は、それまでは悪くなかった心臓、あるいは悪いと全く気づいていなかった心臓が急に悪くなった場合を言います。
激しい息苦しさで発症することが多く、適切に治療しないと生命を落とすことがあります。急性期を乗り切ると、その後は慢性心不全となります。

1980年頃、私が勉強していた頃の心不全のイラストを紹介します。
私は今でも心不全の患者さんを診ると、この絵を思い出します。
心不全の方、当院でできることは、胸部レントゲン、心電図、血液検査のみです。

でも、この血液検査もすぐに結果が出るわけではないので、急ぎの場合は病院循環器紹介しています。時間外で放っておいては危ないという方は救急にお願いしてます。急性期は病院にお任せですけど、急性心不全を脱却して、内服薬のみでコントロールできるようになったら、紹介を受けて診てます。薬の調整もします。コントロールできなくなったら、早めに循環器に紹介しています。泉州地域は循環器の充実した地域だと思ってます。
実は、心不全5年生存率50%に驚いてました。
当院には、心不全入院後10年以上の方が何人かおられます。専門医との連携をとりながら、これからも心不全の患者さんを診ていこうと思ってます。また、心不全の早期発見にも気をつけます。
息切れやむくみのある方、ご相談ください。
このような症状のある方は是非医療機関を受診してください。

 

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

院内報、月の最初に発行するよう目指してはいるのですが、 今月は特に忙しいことは無かったのですが、院内報発行に気が付いたのが、11月27日。
また月末発行となってしまいました。

私が診療所を続ける上で、月一回の院内報、ISO9001、診察時の診療手帳は続けていこうと思っています。
次回は12月15日の発行を目指します。
その後は 来年1月から月初め発行したいです。
しかし、記録を見ていると、毎年同じようなことを書いています。
進歩していません。