2017年 9月 No.142
9月も後半になってきました。
今年は8月中旬はかなり暑い日が続いていました。
朝夕涼しくなり、秋が深まっていくのを感じます。
日中はまだ暑さを感じますが、朝晩は寒暖の差が大きいので、体調管理には十分御留意ください。
インフルエンザ予防接種が、10月2日から始まります。
今年度は、ワクチンの製造が遅れ、製造量も少なめになっています。
また、ワクチンの供給も少なめになっているそうです。
予約していても、接種できない可能性があります。
ご迷惑をおかけするかもしれませんが、ご了承ください。
13歳以上の方は一回接種でお願いします。
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、一般の方は3000円です。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないことです。
ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。
ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。
糖尿病の患者が1000万人を超える。
糖尿病が疑われる成人の推計が2016年に1,000万人に上ったことが、厚生労働省が実施した「2016年国民健康・栄養調査」で分かりました。
前回(2012年)調査より50万人増え、調査を開始してから最多です。
一方発症に至らない糖尿病予備群の人は、推計で1,000万人になり、前回調査時より100万人減りました。
調査は、20歳以上の男女約1万1,000人に血液検査を実施し、過去1 ~ 2ヵ月の血糖状態を示すHbA1c値を測定。
HbA1c(NGSP)値が6.5%以上の人を「糖尿病が強く疑われる」と判定。
HbA1c値が6.0%以上、6.5%未満を「糖尿病の可能性を否定できない」と判定しました。
その結果、「糖尿病が疑われる人」は12.1% (男性16.3%、女性9.3% )に上り、1997年以降増加していることが判明。
一 方、可能性が否定できない予備群も同じく12.1%(男性12.2%、女性12.1%)でした。
また、「糖尿病が強く疑われる人」のうち、現在治療を受けている割合は76.6%(男性78.7%、女性74.1%)で、男女とも増加しているそうです。
糖尿病は合併症が厄介なので、早期に発見し、ヘモグロビンA1cを7.0未満にしておくことが大事です。
ダウン症の出生前治療
染色体の21番目が一本多い先天性の疾患ダウン症は、発達の遅れや、心臓疾患などの合併症を伴うことがあります。
今回京都大学のグループはダウン症の子を妊娠したマウスに投与すると、生まれた子の脳の構造が変化して学習能力が向上する化合物を発見したと発表しました。
化合物の作用で神経細胞の増殖が促され、ダウン症の症状が改善されるという。
この化合物は「アルジャーノン」と命名されました。
脳手術を受けた天才ネズミの名前(アルジャーノンに花束を・小説、映画にもなりました。)からとったのでしょうか?
将来、出生前診断をした人の胎児を対象とした薬剤の開発につながる可能性があると期待されています。
ダウン症患者から作製した人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも効果を確認。
一日一回の経口投与でいいそうです。
ただ、人の胎児で臨床研究を行うことの是非など、早期の実現には倫理面でまだ課題があります。
しかし、遺伝子治療、ここまで来たか、との印象があります。
高齢者
総務省統計局では、「敬老の日」にちなんで、統計からみた我が国の高齢者のすがたについて取りまとめました。
その結果、総人口が21万人減少する一方、高齢者(65歳以上)は57万人増加、総人口に占める高齢者人口の割合は27.7%と、過去最高。
また、90歳以上人口が初めて200万人を超え、日本の高齢者人口の割合は、世界で最高でした。
この少子高齢化の傾向はまだまだ続くと予想されています。
10月7日、都合により休診にさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
米国歌手のレディー・ガガ(31歳)さんが、公演終了後の活動休止を発表され、線維筋痛症で治療中であることを公表されました。
痛みを我慢して、ライブ活動を行っていたようです。
「線維筋痛症」は、全身に激しい痛みが起こる原因不明の病気です。
しかも、確かに痛みは存在するのに体のどこにも異常は見られません。
血液や尿検査、脳波、心電図、X線検査、CT、MRI画像などでは異常がでないのです。
随伴症状として多彩な身体、神経・精神症状を伴います。
過敏性腸症候群、逆流性食道炎、過活動膀胱、うつ病、口腔内乾燥、睡眠障害、疲労感、朝のこわばり等です。
2007年の厚生労働省研究班調査によると日本での有病率は、人口の約1.7%。患者数は全国で約200万人と推定されています。
忠岡町の人口が17888人。
1.7%となると約300人の人が線維筋痛症に罹患していると考えられます。結構多いですね。
発症者は20~60歳代の女性に多く、とくに中高年の女性に多く発症します。
日本でも2007年、出産後に「線維筋痛症」を発症し、全身の疼痛に悩まされていた女性フリーアナウンサー・大杉君枝さんが自殺をするという痛ましいニュースが報じられました。
このニュースは医療関係者にはかなりのショックをもって受け入れられました。
線維筋痛症の存在をあまり知らない医師が多かったからです。
検査で何もないから大丈夫と思っていても実際にはかなり日常生活が制限され、困っている人がいるということを認識しました。
私も当時、線維筋痛症についてあまり知りませんでした。
これまではなかなか診断がつかず、何年も治療にたどり着けない病気だったのです。
線維筋痛症の診断
日本では、線維筋痛症の診療ガイドラインが発表されています。
3か月にわたる広範囲の全身の痛みが存在する。
他に痛みを説明できる疾病がないこと。
実際にはどの範囲が痛みがあるのか、どのような随伴症状があるのかを表に沿ってチェックしていきます。
本症は痛み刺激に対し、脳が過剰に反応してしまう疾患と考えられています。
何故、過剰に反応してしまうのか。
痛み刺激に対する神経伝達物質の過剰発現などの遺伝子異常があるようですが、詳しいことはまだわかっていません。
遺伝子異常に加えて、発症には誘因があることが示されています。
発症に関連のありそうな因子・リスクファクターとして、
などが揚げられます。
このような発症因子が慢性ストレスとして、神経内分泌免疫系の異常を誘発し、疼痛シグナル伝達制御のシステムが著しく撹乱し、このため、さらに多様な精神症状、疼痛異常を招くという悪循環が生じます。
また、随伴症状として、不眠、うつ病などの精神神経症状、過敏性腸症候群膀胱炎、ドライアイ、口腔乾燥などが認められ、多彩な全身症状を呈する重症型に進展していきます。
痛みに対する不安から精神疾患を併発することが多く、「うつ病」の合併率は30~50%との報告もあります。
線維筋痛症の重症度分類があります。
痛みがあるが、日常生活か可能か。
非常に重症になると、寝たきりになりますが、寝ていても痛いという気の毒な状態になることもあります。
これもチェック表があり、生活のしやすさ、自覚症状の程度をで評価します。
治 療
2012年に抗うつ薬のプレガバリン(商品名リリカ)が線維筋痛症の保険適用になりました。
痛みを起こす物質の放出を抑えて痛みをやわらげる作用があり、有効性が確認されています。
疼痛による不眠に対する治療も必要です。
抗うつ剤が有効な場合が多いです。
線維筋痛症の脳内では、刺激に対して過剰に反応する「知覚過敏」が起きていると考えられます。
抗うつ薬には、脳内のセロトニンの再取り込みを抑える働きがあります。
セロトニンが増えることで痛みの伝達経路の障害を治し、過剰な働きを抑えて痛みを改善します。
線維筋痛症は、痛み以外に「睡眠障害」や「疲労感」、「朝のこわばり」などの出現率が高く、これらの症状を改善するために漢方薬も用いられいます。
リリカ、抗うつ薬である程度痛みは改善されたものの、眠れないと訴える患者を対象に、漢方薬・抑肝散を処方。
不眠に効果があることが確認されています。
また、他の漢方薬では、八味地黄丸や桂枝茯苓丸も体を温める作用があるため、有効という報告もあります。
神経障害性疼痛には神経特異的転写抑制因子NRSF というタンパク質が関与していることが長崎大学のグループにより2010 年に報告されていました。
NRSF は非神経細胞や神経前駆細胞で神経遺伝子の発現を抑制するタンパク質で、、NRSFの働きが抑制されると、正常な神経細胞が出来ます。
反対に、神経細胞でNRSF の働きが完全に抑制されないと異常な神経細胞ができ、神経障害性疼痛の発症が報告されています。
横浜市立大学と長崎大学の共同研究で、このNRSFを抑制するmS-11 化合物を開発しました。
神経障害性疼痛のモデルマウスと長崎大学のグループが独自に開発したストレス誘発性の線維筋痛症のモデルマウスにそれぞれmS-11 化合物を投与すると、明らかな障害の改善効果が認められたとのことです。
線維筋痛症の治療につながる研究として、期待されています。
また、痛みは寒いと強く感じるため、冬は体を冷やさないことが大事です。
汗をかかない程度に保温することで、睡眠の質が高まり、痛みの改善につながります。
痛みの症状は、本人にしかわからない感覚です。
3か月以上続く体のあちこちの痛みは、線維筋痛症かもしれません。
我慢せずに医療機関を受診してください。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
脳の摂食中枢で働き、肥満の原因となる酵素を特定したと、基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)などの研究チームが発表しました。
体内では、脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンが摂食中枢に作用して食べる量を調整していますが、肥満の人では必ずしも食べる量が抑えられていない。
レプチンが働きにくくなっているためだが、その仕組みは分かっていなかった。
今回、摂食中枢にある神経細胞の表面で働き、さまざまな情報伝達に関わる酵素に着目。
PTPRJという酵素の一種がレプチンの働きを抑えていることを発見しました。
この酵素は血糖値を下げるインスリンの働きも阻害しているといい、「この酵素の働きを抑制する薬が開発できれば、肥満と糖尿病を改善できる」と研究チームは言っています。
これは楽しみですね。早く開発して頂きたいです。