2017年 3月 No.136
3月です。現在22日です。
3月21日に今回の院内報を発行予定でしたが、ちょっと遅れてます。
七十二項では、雀始巣・すずめはじめてすくう -雀が巣をかまえ始める時期- とあります。
そういえば、最近あまり雀の巣を見なくなったな、と思って調べてみると以前の9割程度、雀の数は全国的に減っているのだそうです。
理由として、エサ場の田畑と、巣を作る木造家屋の減少が挙げられていること。雀始巣も昔の言葉になった感があります。
となると今の時期にふさわしいのは三寒四温という言葉でしょうか。
中国では冬に使われる言葉ですが、日本では寒暖の変化がはっきりと現れる丁度今頃の春先に用いられます。
早春では低気圧と高気圧が交互にやってきて、低気圧が通過し寒気が流れ込んで寒くなった後、今度は高気圧に覆われて暖かくなる傾向が多いためです。
桜の開花のニュースも聞こえます。
春の気配を感じることが多くなってきました。
住民健診が3月末で一旦終了します。
次年度の住民(特定)健診は5月15日からの予定です。
肝炎ウィルス、大腸がん検診も今年度は3月31日までです。
来年度も無料で実施予定だそうです。
今年は花粉の飛散が多いようです。花粉症の方は花粉のブロックを。鼻水、目のかゆみなど症状があるようでしたら、受診してください。
今年は抗アレルギーの新薬で、いい薬が出ています。
当院の花粉症の職員が使用して、眠くならずとてもいいと評価しています。
今までの薬で効きがよくない方は新薬の使用も考えます。但し、新薬なので、14日処方です。
スギ花粉症の治癒が期待できる舌下免疫療法は当院でも処方できます。花粉の飛んでいる時期に開始するのは禁止されていて、スギ花粉飛散の終了した6月からの開始が望まれます。
スギのアレルギーが証明されている方は是非ご考慮ください。
また、ダニアレルギーの舌下免疫療法もあります。
京都大学iPS細胞研究所は、国が指定する難病(306種類)の約8割にあたる231種類について、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製したことを明らかにしました。
欧米でも同様の取り組みはありますが、保存する難病の細胞の種類としては最多です。
作製したのは、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)、腸に潰瘍や炎症が起きるクローン病などのiPS細胞です。
約5年かけて作ったとのこと。
それぞれの難病の遺伝情報を持つ患者の血液などを用いて作成したそうです。
患者が少ない難病は、薬の利益が見込めず、製薬企業が新薬開発を行いにくいことが問題視されています。
患者のiPS細胞を使えば、試験管内で病気を再現でき、薬の候補物質を試す研究が進むと期待されます。
難病の原因解明や薬の開発に役立つでしょう。
これが私の望んでいたiPS細胞の臨床応用です。
発展が期待されます。是非日本がリーダーとなって、研究開発していただきたい。
先月もお伝えした理化学研究所による目の難病患者本人から作製したiPS細胞を使って行った世界初の臨床研究の論文が一流の米学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されました。
素晴らしい実績です。
糖尿病のニュースも出ていました。iPS細胞から作った 膵島すいとう をサルに移植し、血糖値を下げることに成功したとする研究成果を東京大学などが発表しました。
5年後に患者に移植する臨床研究を始めることを目指しているそうです。
膵島は、膵臓にある細胞の集まりで、血糖値を下げるインスリンを分泌します。
人のiPS細胞で作った膵島数万個を極細のチューブに封入し、糖尿病の小型サル3匹の腹部に移植。数日後に血糖値が正常値に下がり、20日後まで持続したことが確認されました。
糖尿病治療では、脳死した人からの膵島移植が行われているが、提供者が不足しています。iPS細胞を使えば、人工の膵島を大量に作れる可能性があります。
また、大阪大学のチームは、人のiPS細胞から作製した肝細胞を移植し、肝障害を起こしたマウスの症状を改善することに成功したとする研究を発表しました。
肝硬変などの肝臓病の再生医療への応用が期待できます。
難病、糖尿病、肝臓病、眼科疾患。広い範囲でiPS細胞の応用が始まっています。
今後のiPS細胞のニュースに注目していきたいです。
女性に更年期障害があるということはよく知られています。
50歳前後で生理が止まると女性ホルモンの1種であるエストロゲンの分泌が極端に低下し、自律神経の乱れを引き起こします。
そのことにより、イライラして感情的になる、頭痛やめまい、ほてり、発汗、ホットフラッシュなどの様々な辛い症状が現れてきます。
このような更年期障害の症状は女性だけでなく男性にも起こることが知られるようになりました。
原因は、老化や生活習慣の乱れ、ストレスによる男性ホルモンの低下です。
現在、男性更年期障害は加齢男性性腺機能低下症候群:late-onset hypodonadismという名称が採用され、頭文字を取ってLOH症候群と言われています。
日本泌尿器科学会、日本 Men's Health 医学会より診療の手引きが出されていますので、これに沿って病態、診断、治療について概説します。
高齢者の QOL をいかに維持するかが,21 世紀の医療の大きなテーマとなっています。
女性に対するホルモン補充療法が国際的に広く普及しているのに対し、高齢男性に対する医療は ED に対するバイアグラなどの phosphodiesterase type 5(PDE5)阻害剤の普及以外、あまり医療の対象となってきませんでした。
このような高齢男性への医療対策の遅れが、近年女性と男性の平均寿命の差が大きく開き、本邦では約 7 歳男性の方が寿命が短い原因にもなっているのではないか、とも考えられています。
そのような流れを受け、LOH症候群の診療の手引きが発行されるようになりました。
LOH症候群の診断には、検査の前に問診が行われます。この問診の際に使用されるのが、
AMS(Aging Male’s Symptoms)質問票というチェックシートです。
AMS質問票は、身体の症状、精神の症状、性機能の症状の計17項目で構成され、
LOH症候群の程度を計るチェックシートとして世界中で使用されています。
LOH症候群の症状がほぼこの問診票に含まれていますので症状については割愛します。
以下の17の質問があります。
以上の質問項目に、なし1点、軽い2点、中等度3点、重い4点、非常に重い5点で評価し、点数をつけます。
最低が17点、最重症が85点ですが、26点以下は正常、27-36点:軽度、37-49点:中等度、50点以上重度のLOH症候群と判定します。
LOH 症候群ガイドライン検討ワーキング委員会としては遊離型テストステロンを LOH 症候群の診断検査とすることを推奨しています。
LOH 症候群の診断基準値として20歳代の mean-2SD である 8.5pg/ml を正常下限値としました。
さらに8.5pg/ml 以上であっても 20 歳代の平均値の 70% 値である 11.8pg/ml 未満までの症例は男性ホルモン低下傾向群(LOH のボーダーライン症例)として ART の対象とすることを提案する。
問診票、遊離型テストステロンの数値からLOH症候群と診断された方には、男性ホルモン補充療法(Andorogen Replacement Therapy ART)を考えます。
血中遊離型テストステロン値が 11.8pg/ml 以上の場合 ART は行わず、症状の内容により以下の治療を考慮します。
性機能症状が強い場合は バイアグラ等のPDE5 阻害薬の処方、心理症状が強い場合は抗うつ薬、抗不安薬をの処方、専門医の診察、身体症状が強い場合、骨粗しょう症が疑われる場合も薬物療法を検討します。
筋力低下に対しては生活習慣の改善などを指導します。
アンドロゲン補充療法では、
治療前前立腺の腫瘍マーカー(PSA)は2.0ng/ml以下であることが望まれます。
4.0ng/mlの場合は慎重な検討を要します。
アンドロゲン補充療法をしてはいけない(除外)基準があります。
血液検査でのPSA、肝機能・腎機能、脂質のチェックが必要です。
必要でしたら循環系の検査も追加します。
アンドロゲン補充療法のプロトコール
色々提唱されていますが、当院ではエナント酸テストステロン(テスチノンデポー)250mg を月1回筋肉注射します。
男性ホルモン軟膏を陰嚢に一回3g、一日1-2回塗布する方法もありますが、当院では扱いはありません。ご希望が多ければ考えますが。
アンドロゲン補充の副作用
肝機能障害、多血症、睡眠時無呼吸を悪化させる、体毛の増加などが報告されています。
PSA、一般血液検査による副作用チェックが必要となります。
また、3か月に一度の治療効果判定をします。
以下は診療の手引きにはありませんが、一般的に言われていることです。
LOH症候群(男性更年期障害)に悩む男性は、全国で600万人を超えると予想されています。
テストステロンを増やすには、筋トレ、十分な睡眠、食事、亜鉛が大事とも言われています。
テストステロンの原料はコレステロールです。
テストステロンを増やすには適度にコレステロールを摂り、コレステロール不足にならないようにすることは重要です。
コレステロールは、赤身の肉や卵の黄身などに多く含まれます。過剰摂取はいけませんが、適度なコレステロールの摂取を心掛けましょう。
最近元気がない、など問診票の17の項目に結構あてはまる、という方は一度遊離テストステロンを含む血液検査を考えてください。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
3月18日土曜日に休診させて頂いて、18日、19日の2日間、泉大津市立病院の緩和ケア研修会に参加してきました。
朝から晩までの研修で、終了した翌日の20日は解放感から院内報の作成ができませんでした。
あまり、言い訳にもなっていませんが。
懲りずに次回は4月17日の発行を目指します。