2017年 2月 No.135

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

2月です。現在20日です。
2月20日に今回の院内報を発行予定でしたが、ちょっと遅れてます。理由は後程。
七十二項では、 土脉潤起 ( つちのしょううるおいおこる )  雨が降って土が湿り気を含む冷たい雪が暖かい春の雨に代わり、大地に潤いをあたえる頃。
寒さもゆるみ、眠っていた動物も目覚めます、とあります。
まだまだ寒い日が続きますが、先週から、訪問している在宅患者さん宅の梅の花が綺麗に咲いていました。ちょっとずつ春の気配を感じることができます。

インフルエンザは現在は峠を越えた、と報道されています。でも、まだ、ちらほらとインフルエンザの方がおられます。まだまだ油断大敵。
うがい、手洗い、マスクの着用、できれば人込みの中に行かないなど注意して、感染しないようにしてください。

花粉が飛び始めています。今年の花粉は多いことが予想されています。花粉症の方は花粉のブロックを。
・鼻水、目のかゆみなど症状があるようでしたら、受診してください。

iPS細胞・眼科領域での成果

理化学研究所(理研)の研究チームは、マウス網膜変性末期モデルを用いて、マウスiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の網膜組織を移植することにより、光に対する反応が回復することを確認しました。
網膜は光の情報を感知するセンサーの役割を担う目の奥の組織です。
再生力が低い組織で、障害を受けると自然な治癒は見込めません。
今回理研のグループは網膜変性末期マウスの網膜細胞と移植片内の視細胞がつながったことを確認しました。
また、光に対する反応が向上し、さらに上流の脳につながる神経節細胞からも光応答が得られることを確認しました。
これらの結果はiPS細胞より分化した網膜組織が実際に移植素材として有効であること、さらに開発した視機能の評価方法も有効であることが確認できました。
本研究は、研究チームは網膜色素変性患者に対するiPS細胞由来網膜組織の移植治療を目指しています。

理研のグループは平成26年9月12日に、神戸市立医療センター中央市民病院眼科と共同で、滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究の第一症例目の移植手術を行っています。
経過は順調で、視機能は維持されています。腫瘍の形成もみられないとのことです。
 また、目の難病の患者に他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した目の網膜細胞を移植する、世界初の臨床研究計画をが厚生労働省厚生科学審議会の再生医療等評価部会に了承されました。
これも理化学研究所が担当しています。

本人のiPS細胞を使う場合に比べ、コストと時間を大幅に削減でき、iPS細胞の本格的な医療応用への一歩となる。今月中に厚労相が正式に承認し、今年前半にも実施されるとのこと。
目に関してのiPSの研究はかなり進んでいるようです。

世界の科学者がこぞってiPSの臨床研究をしてます。
日本はiPS発祥の地として、トップを走ってほしいものです。
iPS細胞による糖尿病治療と神経難病治療は私がその中でも一番注目しているところです。

2月19日は泉州マラソンでした。とてもいい天気で、絶好のランニング日和でした。
しかし、残念ながら私の結果は、途中リタイアで終わりました。
ちょっと風邪気味、というところもあったのですが、明らかに準備不足でした。
泉州マラソンは42.195㎞、5時間以内ですので、準備にはマラソン前3か月、月200㎞以上のランニングが必要とされています。
今回、11月-1月の走行距離が全然足りませんでした。2月に入って慌ててトレーニングしましたが、間に合いませんでした。
まだジョギングは続けたいと思ってます。
今年はいろんなランニングイベントに参加して、出来たらまたフルマラソンに挑戦したいです。

3月18日土曜日、休診にさせていただきます。
朝から泉大津市立病院の緩和ケア講習会にファシリテーターとして参加します。

ある勉強会で、貴院の強みは何ですか?という質問を受けました。
は?、、という感じで即答は難しかったのですが、聞くと他院との差別化は?とのことでした。
診療手帳をつくっていること、ISO9001を取得していること、院内報を出していること、をあげました。
なので、院内報は続けます。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群

先月、慢性下痢のところで少し触れた過敏性腸症候群について書いてみます。
過敏性腸症候群は大腸に器質的な異常が無いにもかかわらず、
便通異常(下痢・便秘)とそれに伴う腹痛や腹部不快感が出現する機能的消化管疾患です。
最近、増えていて、一般人口の15%に起こるといわれています。
慢性下痢の約70%は過敏性腸症候群である、という報告もあります。
ストレスや緊張、不安などによる精神的な影響や、疲れや睡眠不足などが原因となっていることが多く、午前の通勤通学途上など自由行動が制限されると腹痛、下痢などがおこりやすいのが特徴とされています。
不安や緊張などのストレスが原因で、小腸や大腸などの消化管の動きをコントロールする自律神経のバランスが崩れてしまいます。
その結果、腸管の蠕動運動が必要以上に活発化してしまい、便の通過速度が速くなります。
そして大腸では便の水分を十分に吸収できず下痢が引き起こされることがあります。
また、便秘になることもあります。
好発年齢は二峰性を示し、若年成人と50~60歳代に多いとされ、便性状から、下痢型、便秘型、混合型、分類不能型に分類されます。男性には下痢型が多く、女性には便秘型が多い、ようです。
原因は不明ですが、脳腸ペプチド corticotropin-releasing hormone(CRH)、セロトニンが原因物質として関与している可能性があるとのことです。
脳腸ペプチドとは脳、神経系、腸管もしくはその誘導器官に共通して存在するペプチド、ソマトスタチンなどを指しており、研究がすすめられています。

診断にはROMEⅢという診断基準があります。
最近ROMEⅣが出たようですが、日本消化器病学会ではROMEⅢを適用しています。

 

下痢の病態

ROMEⅣでは腹部不快感が除外されたとのことです。
炎症性の腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、腸結核、ベーチェット病、偽膜性腸炎など)と大腸癌などの腫瘍性の病変は除外しておく必要があり、大腸内視鏡は必須と言えます。また、うつや精神症状を伴うことがあるので、チェックが必要です。

治療ですが、2014年に日本消化器病学会から「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014―過敏性腸症候群(IBS)」が出ているので、これを参照してみます。目標は患者自身による主症状の改善です。
基本的留意事項として、診療内容について医師が患者に十分な説明を行い、良好な関係を築くことで効果が上がるとされています。
そのうえで、食事、生活習慣の改善、薬、です。

(A)食事療法

炭水化物、脂質、コーヒー、アルコール、香辛料を控える、
最近、オーストラリアで開発された低フォッドマップダイエットの有用性が欧米で証明されています。
フォッドマップ食事法(FODMAP)のフルネームは「Fermentable、Oligo-、Di-、Mono-saccaharides and Polyols」で、「発酵性のオリゴ糖、2糖類、単糖類、ポリオール」という意味です。
過敏性腸症候群の人はこの発酵性のある炭水化物が短時間に体内で発酵し、小腸でうまく吸収されない可能性があります。
腸管内の水分量や浸透圧が変わることで、小腸や大腸の腸管が不具合をおこし、過敏性腸症候群の原因になっているという考えに基づいています。 
FODMAP食事法とは、FODMAPの摂取をまず1~2週間ごく最小限にします。
その後、少しずつ摂取を開始していき、お腹の不調を起こす食品があるかを探っていきます。

【フルクトース(果糖)が多いもの】
りんご、マンゴ、梨、フルーツの缶詰など、

【ラクトース(乳頭)が多いもの】
牛乳、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームなど

【フルクタン・イヌリン・ガラクタン(オリゴ糖が多いもの】
玉ねぎ、にんにく、グリーンピース、ブロッコリー、麦、など

【糖アルコール・ポリオールが多いもの】
さくらんぼ、プラム、アボガド、添加物キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど

ちょっと難しそうですが、試す価値はあるように思います。

(B)運動療法・生活習慣の改善

運動は肥満の方の過敏性腸症候群には効果があります。
また、運動はストレス軽減、便通促進効果があり、便秘型には効果を示します。
精神的ストレスだけでなく、身体的ストレス、食物繊維の少ない食事、不規則な生活習慣が原因で症状が起こることもあります。
多忙な毎日を過ごしていても、息抜きの時間をつくり、規則正しい生活で体のリズムを整えるなど、日常生活でできる予防を行いましょう。
禁煙、禁酒、良好な睡眠、休養も勧められます。

(C)薬物療法

下痢の場合は、脱水予防も必要です。
下痢型、便秘型、混合型、病態に応じた薬物が選択されます。混合型、分類不能型を含むすべての型にはプロバイオティクス(ラックビー 、ビオスリー )や高分子重合体(ポリフル 、コロネル )、消化管機能調節薬(セレキノン )が用いられます。
下痢型には5-HT3 受容体拮抗薬(イリボー )や止瀉薬(ロペミン )を使います。
イリボーはセロトニンの受容体である5-HT3受容体をブロックすることで、消化管運動の改善をさせる薬です。
セロトニンは脳からのストレスの信号で腸で過剰分泌されることにより腸の異常運動がおこります。
最初は男性のみでしたが、現在は女性も使用できます。但し量は半分です。ロぺミンは下痢止めの薬です。
便秘型には粘膜上皮機能変容薬(アミティーザ )や下剤(マグミットなど)が使用されます。
IBSの便秘型はけいれん性便秘なので、刺激性下剤(センナ、ラキソベロン など)は避けるようにします。
腹痛には抗コリン薬(ブスコパンなど)を用います。

ストレスが大きく影響している場合は、不安や焦りをやわらげる抗不安薬、気持ちの落ち込みと抑うつ状態を改善する抗うつ剤の併用を考えます。

これで効果がみられない場合は心身医学的治療に移るので、心療内科、精神科と連携あるいは紹介します。
カウンセリングが有効な場合もあります。

また、過敏性腸症候群にアレルギーが関与しているという報告もあり、抗アレルギー薬の処方をすることもあります。

一般的に、炎症性腸疾患の治療薬(ステロイド、メサラジンなど)は無効、抗菌剤の処方、麻薬の処方も控えることとガイドラインには記載されています。

使い方はわかりませんでしたが、ペパーミントオイルが過敏性腸症候群の症状緩和に有効である、ガイドラインに書いてありました。
調べてみると、腸溶のカプセルに入ったペパーミントのようですね。
医薬品ではないので、サプリメントになります。そういえば、当院の内視鏡のときに、ペパーミントオイルから抽出されたメントール製剤を胃の中に散布して、胃の動きを止めています。
効き方は人によって違うな、という印象ですが、確かに動きが止まります。
ネットではペパーミントのカプセルを飲んで過敏性腸症候群がよくなったという記事もありました。
ガイドラインにも掲載されているのであれば、製剤化して、医薬品として販売してほしいものですね。

あと、市販薬でストッパや小粒赤玉はら薬という下痢止めの薬が過敏性腸症候群の下痢に有効という記事がウェブ上でありますが、当然こちらの検証はガイドラインではありませんでした。
過敏性腸症候群の治療法も少しずつ進歩しているようです。
緊張・ストレスでお腹が痛くなる方、下痢が続くなど症状ありましたら、ご相談ください。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

今月の院内報、2月20日に発行予定でした。
泉州マラソンの準備等で、2月11日から2月18日までパソコンに向かうことが出来ませんでした。
で、書き始めたのは20日になってしまいました。
その後、体調不良(マラソンの日から風邪)もあったりして、24日金曜日に間に合わず、27日提出になってしまいました。
次回は3月21日の発行を目指します。院内報の医療情報は自測自健の予定です。