2016年 10月 No.131
10月も終わりかけです。
すっかり秋めいてきました。朝夜はもう寒いです。
院内報、月の最初に発行するよう目指してはいるのですが、 今月は第2週がとても忙しかったこともあり(第1週は準備に追われていた)、院内報の存在を月末まで忘れていました。
第3週は気が抜けてしまって、気が付いたのが、10月26日。 久しぶりの月末発行となってしまいました。
しかし、私が診療所を続ける上で、月一回の院内報、ISO9001、診察時の診療手帳は続けていこうと思っています。 次回は11月14日の発行を目指します。 その後は12月5日、ですね。 来年1月から月初め発行をします。
12月30日金曜日から1月4日水曜日まで、年末年始休暇を頂きます。 ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。 当方でも、薬が切れないよう注意しますが、皆様もご注意ください。
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、一般の方、3000円です。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないこと、です。
ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。
ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。
私は毎年二回ずつ打っていますし、職員にも打つように勧めています。
話題を二つ。
一つ目は、人のiPS細胞から心筋細胞を作り、新薬の効果、副作用を調べる検査方法を東京大学のグループが開発しました。
新薬の重要な副作用に、心臓への影響があります。
急な 動悸を起こしたり、拍動を弱めたりすれば命に直結するため、事前に影響を詳しく調べる必要があります。 東京大学のグループは、人のiPS細胞からひも状の心筋(長さ約1センチ)を作り、両端を台に固定した検査装置を開発。
心筋は自ら拍動して伸び縮みしており、 新薬の候補物質をふりかけ、長さの変化などから心筋への影響を調べます。
実際に強心剤をふりかけると縮む力が最大で約5割増え、心臓を休ませる薬では約5割弱まるなど、薬に敏感に反応することが確かめられているそうです。
このiPSからの心筋細胞を使って、薬の心臓に対する作用、副作用を調べることができそうです。
もう一つはiPSで卵子作製という話題です。
マウスのiPS細胞から体外で卵子を作ることに、世界で初めて成功したと、 九州大学のグループが発表しました。この卵子から健康なマウスが生まれることも確認したということです。
この手法を使えば、卵子が出来る過程を詳しく観察できるため、 不妊症の原因解明や治療法の開発につながる可能性もあります。 一方で、生命の誕生につながる卵子を容易に作製できるようになると、生命倫理上の問題が出てきます。人間に応用するには、まだまだ色々な課題が残されています。
来年3月施行の改正道路交通法では、75歳以上で認知症の恐れがある人への診断が義務づけられています。
75歳以上のドライバーが、3年に1度の運転免許更新時に受けている認知機能検査で「認知症の恐れがある」 と判定された場合、全員に医師の診断を義務づけ、運転の可否を判定することになっています。
現行の制度では、「認知症の恐れがある」と判定されても、原則、免許更新でき、違反があった場合のみ診断が求められています。
認知症の診断が義務づけられる75歳以上のドライバーは全国で年間約6万5000人と推計されています。
診断するのは、 専門医だけで対処するのは難しいことが予想され、かかりつけ医の診断能力の向上や診断の標準化が課題となっています。
9月3日に、大阪府医師会で、認知症の初期集中支援の発表をしたとき、私の前に厚生労働省の医師が認知症施策の発表をされてていました。
そのときに、まだ誰が診断するか?どのような方法で診断するか?
もし、診断で認知症ではないと判定しても、その後事故を起こしたら、判定した医師の責任は? などの質問が相次いだのですが、厚生労働省の医師は、まだ何も決まっていない。
今、関係省庁と擦りあわせて検討しているところ、とのお返事でした。 混乱しないことを期待します。
糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの作用不足により発症する疾患です。
インスリンの作用不足により、血糖が高い状態が続きます。
普通は血糖が高いだけではすぐにどうこうなることは少ないのですが(高くなりすぎると昏睡など意識障害などが起こります)、 血糖が高い状態を放置すると、眼・腎臓・神経などに細小血管合併症を引き起こします。
なので、失明、透析の原因となります。
また、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化症も進行させます。
認知症の危険因子としても知られています。
血糖を高い状態で放置することは好ましくありません。
食事療法、運動で血糖を下げる必要があります。食事、運動で血糖が下がらない方は薬物療法が必要です。
以前、ご紹介させていただきましたが(2014年 7月 No.104の院内報) 2013年熊本宣言というのが出て、糖尿病の合併症をおこさないために、ヘモグロビンA1cは7.0未満にしましょうという声明がなされました。
ヘモグロビンA1cは過去1~2ヶ月の血糖の平均値を反映する臨床検査値で、糖尿のコントロールの指標であります。
診療では院内で測定しています。
以後当院でも、糖尿コントロール中の人には、7.0未満を何度もお伝えしていました。
でも、色々あって、治療強化ができない人ははヘモグロビンA1C8.0でもいいように書かれていました。
今回は、高齢者の方の糖尿病の治療で、新しい基準ができたので、ご紹介します。
日本糖尿病学会と日本老年医学会が、合同で発表したものです。
高齢者は、認知機能、生活機能を鑑みて、もう少しゆるい基準でもいいのでは、 とにかく、低血糖をおこさないように管理しましょう、という提言のようです。 表をご参照ください。
高齢者糖尿病においても、認知症状も無く、元気な人は合併症予防のための目標は7.0%未満です。
認知機能や基本的ADL(着衣、移動、入浴、トイレの使用など)、 手段的ADL(IADL:買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理など)を評価して、 患者の特徴、健康状態をカテゴリー別に分けます。
そのうえで、年齢、併発疾患、余命などを考慮して、個々に血糖コントロール目標を設定します。
カテゴリー3の認知症がある場合、ADLが低下している場合で血糖を下げる治療 (インスリンやSU剤)をしている場合は8.5でもいいとされています。
重症低血糖が危惧される場合は、より安全な治療を行うことが付け加えられています。
高齢者糖尿病は増えています。
高齢者には特有の問題点があり、心身機能の個人差が著しいです。
それに加え、高齢者糖尿病では重症低血糖を来しやすいという問題点が存在します。
重症低血糖は、認知機能を障害するとともに、心血管イベントのリスクともなり得ます。
エンドオブライフの状態では、著しい高血糖を防止し、それに伴う脱水や急性合併症を予防する治療を優先します。
使う薬も、高齢者はできるだけ、SU剤などの低血糖を誘発する薬は避け、DPP-4阻害剤などの低血糖を起こしにくい薬を 選択すべき、となっています。
低血糖について
正常では、血糖値は70mg/dl以上に維持されています。
薬やインスリンの過剰により血糖が下がりすぎると、図のような症状が現れます。
血糖値が70mg/dl以下になると異常な空腹感が現れ、動悸・震えなどの症状が出てきます。
そして低血糖を放っておき血糖値が50mg/dl以下になると中枢神経の働きが低下、 血糖値が30mg/dl以下になると意識レベルが低下し、昏睡状態から死に至ることもあり、 その結果重大な事故につながることもあります。
このような状況になる前に対処することが重要です。
私が研修医になったころ、糖尿病の管理は、時々低血糖になるくらいの厳格なコントロールが一番いい、 低血糖になったら、患者も甘いものが食べられるから喜んでいる と教えられました。
いくら高齢者であろうとも、糖尿病の治療をしている以上は低血糖はついてまわる、と教えられていました。
しかし、 厳格にコントロールして、低血糖がよくおこるグループと少し甘めのコントロールで、低血糖はあまりおこらないグループを比較検討すると、 少し甘いコントロールをする群のほうが予後がよかったというアコード試験の結果が出てからは、その風潮は一変しました。
私にとっては、アコード試験の結果は信じ難いものでした。
今までしてきたコントロールが完全に覆されたのですから。
でも、その結果受けて、日本糖尿病学会も低血糖を避けるような方針に変わっています。
そのひとつが前述しました、高齢者の糖尿病コントロール、になると思います。
とにかく、低血糖をおこさないように管理すること、が最も大事になったと言えます。
低血糖、起こってしまえば、ブドウ糖を補給する必要があります。
以前は早めに食事、と指導していたのですが、今では低血糖の予兆があれば、ブドウ糖を服用するように指導しています。
とにかく、高齢者の糖尿病は、低血糖を起こすことなく、治療をするのが一番よろしいようで。
医学の常識は時に全く逆を提示することがあります。
しかし、また変わるかもしれませんが、現在はこの方針で、高齢者の糖尿病の方の診療にあたりたいと思います。
最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。
慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。
現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。
かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。
インフルエンザ予防接種を行っています。
ご希望の方は、受付またはお電話にてご予約を お取り下さい。
1回目 3000 円
2回目 2500 円
忠岡町に在住の 65 歳以上の方は、
1回目 1000 円で接種できます。
ワクチンの予防効果持続期間はおよそ 5 カ月と 推定されています。