2016年 9月 No.130

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

9月も後半になってきました。今年は8月中旬はかなり暑い日が続いていました。9月中旬はずっと雨、時々台風の状態でした。一雨ごとに秋が深まっていくのを感じます。日中はまだ暑さを感じますが、朝晩は寒暖の差が大きいので、体調管理には十分御留意ください。

インフルエンザ予防接種が、10月1日から始まります。
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、一般の方は3000円です。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないことです。ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。

10月8日、都合により休診にさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

虫よけスプレー

現在、シンガポールでジカウイルス感染症(ジカ熱)が流行しています。シンガポールへは、毎年多くの日本人が旅行や仕事で訪れるため、今後の影響も心配されています。ジカウイルス感染症は、蚊が媒介する感染症です。私はこの夏、蚊に刺されないよう外出時には頻繁に虫よけスプレーをしていました。これまで日本で認可されていた蚊よけ剤は、ディートという成分を含んだ製品でした。このディートは、本来は十分な効果を期待するためには、30%以上の濃度であることが望ましいとされています。しかし、皮膚への刺激性が高いことなどの問題も指摘されていたことから日本では乳幼児への使用を避けること、年齢によって使用制限することについての記載もありました。

そして、このような経緯もあってかこれまで日本にはディート濃度が5%程度、最大でも12%までの製品しかありませんでした。

虫よけ剤に使われている成分には、ディート以外にもイカリジンというものがあり、こちらも米疾病対策センター(CDC)などで正式に承認されています。イカリジンの特徴は、ディートよりも子どもへの影響が少ないとされていることです。さらに、イカリジンの濃度5%で、ディート濃度10%と同等の効果が期待できるとの基礎実験での報告があります。実は、イカリジンという成分を含んだ製品はあったのですが、5%のものばかりでした。
大手殺虫剤メーカー「フマキラー」と「アース製薬」は本年の7月1日、有効成分の濃度を高めた虫よけ剤の製造販売の承認を、厚生労働省に申請しました。これが迅速に承認され、9月15日からイカリジン15%の虫よけ製剤が発売されています。天使のスキンベープ プレミアム 200ml・スプレータイプとミストタイプです。皆様も虫刺されには十分ご注意ください。

iPS細胞

iPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製10年目、また新しい研究が発表されました。2件紹介します。

一件目は京都大が備蓄する他人のiPS細胞から作った網膜の細胞を、他の目の難病患者に移植する世界初の臨床研究計画です。有識者委員会の審査会が開かれ、一部修正はあったものの計画をおおむね承認されました。臨床研究は、神戸市立医療センター中央市民病院や理化学研究所など4機関が計画されています。

もう一件は、難病に対する薬剤の研究(創薬)の研究です。iPS細胞を使って難病の治療開発を進めている京都大と慶応大が、難病6疾患の薬の候補物質を見つけました。いずれも他の病気の治療に使われている医薬品で、両大学は今後、臨床試験(治験)などを行い、実用化を目指しています。
両大学は、6疾患の患者の血液などから作ったiPS細胞を、病気の特徴を再現した体細胞に変化させ、様々な薬の候補物質を加えて治療効果を調べた。

京都大学は軟骨無形成症やタナトフォリック骨異形成症の患者のiPS細胞は、軟骨に変化させると通常は異常な軟骨細胞ができるが、コレステロール降下剤「スタチン」を加えると、正常な軟骨細胞になるという効果があることを発見しました。

慶応大学は、子供の頃から難聴が生じるペンドレッド症候群に対するリンパ脈管筋腫治療薬シロリムスの効果を、心臓の筋肉が厚くなり、不整脈などを起こす「肥大型心筋症」に対するエンドセリンの効果を検討中です。他の2疾患は薬剤が公表されていません。

まだ研究途上なので、実際の臨床でこれらの薬を使用することは慎むようにとのことです。
iPS細胞を使った難病研究で、6疾患の薬の候補物質が見つかったのは、iPS細胞が創薬研究に役立つ可能性を具体的に示す成果として注目されます。

iPS細胞の医療応用は、失われた臓器や組織の機能を取り戻す「再生医療」と、患者の細胞で病気を再現して薬の候補を探す「創薬」研究が大きな柱ですが、今回は創薬に関する研究です。

日本主導の臨床研究・治療、期待したいです。

麻疹:はしか

麻疹:はしか

今年平成28年8月、兵庫県在住の男性がインドネシアのバリ島で麻疹に感染し、関西国際空港を通って帰国しました。
また、この男性は8月14日に千葉県の幕張メッセで開催されたコンサートに参加していました。
結果、関西空港での職員の麻疹の集団感染がおこり、千葉県内でも麻疹の感染が広がりました。

大阪市立大医学部付属病院では、関西空港で集団感染した患者が8月26日、同病院2階の皮膚科外来で受診し、3階の中央臨床検査部で検査を受けました。
患者が受診した診察室の隣の部屋で診察していた20歳代の女性医師は、9月9日から発熱と発疹があり、12日に麻疹と判明しました。
この医師が発症直前に診察した患者262人は9月14日現在、感染は確認されていないそうです。
20歳代の中央臨床検査部の女性事務職員、女性看護師にも感染が確認されました。
同病院は3人を発症直後から自宅待機にした。いずれも症状は軽いとのこと。

全国的に感染が広がっている麻疹について、国立感染症研究所は9月20日、今年1月から9月11日までの患者数が計115人になったと発表しました。
前週の発表から33人増えており、昨年の年間患者数(35人)の3倍を超えました。
都道府県別では、大阪が43人で最も多く、千葉と兵庫が21人、東京が11人でした。

実は、2015年3月27日に日本はWHO西太平洋事務局から麻疹排除の状態にあることが認定されていました。
WHO西太平洋地域の排除認定国・地域にはオーストラリア,マカオ,モンゴル,大韓民国,
ブルネイ・ダルサラーム,カンボジア,日本が含まれています。
インドネシアはまだ排除状態ではなかったようです。

我が国では、予防接種の普及により麻疹は激減しました。
私が小さいころは、麻疹にかかるのはあたりまえでした。
周りに麻疹患者がでたら、うつしてもらってこいという親もいたそう。
感染力が半端なく強いのです。
だれでも一度はかかる熱病という認識で、はしかのようなものは、「誰もが一度は若い時期に経験するもの」の比喩表現でした。
いわく、甘酸っぱい恋(初恋・失恋含む)、反抗期、いわゆる自己陶酔等々、「若気の至り」として幼少期から若年期にかけ多くの人々が通過する経験は、発熱を伴う、大抵そのうち快癒する、そのうち免疫が出来てかからなくなる、成人してからこじらせるとやっかいなことになる、などといった要素から「はしか」にたとえられていました。
そういえば、最近は聞きませんね。

では、麻疹につき説明します。
麻疹は麻疹ウイルスによる急性熱性発疹性感染症です。
空気感染・飛沫感染・接触感染で感染伝播し、感染力は極めて強く、免疫が無いと90%は近くにいるだけで発症するという報告もあるそうです。
感染から約10~12日の潜伏期を経て、発熱、カタル症状(咳嗽、鼻汁、咽頭痛など)、結膜炎症状、下痢などが出現します。(カタル期)

カタル【catarrh】というのは、粘液を分泌す
る粘膜細胞に炎症が起き、その結果多量の粘液分泌を起こす状態をいいます。
ギリシア語のkatarroos(下へ流れる)からきた言葉です。
炎症のはじめに生ずる血管拡張が粘液腺を刺激し、粘液細胞による粘液産生と分泌が亢進します。
風邪に伴う多量の鼻汁の流出、結膜炎の時の流涙、目やに、腸炎のときの下痢なども含まれます。
発症前日から周りの人への感染力がありますが、カタル期の感染力が最も強いようです。
カタル期が2~4日続いたあと、頬粘膜に麻疹に特徴的とされる白い粘膜疹(コプリック斑)が出現します。

コプリック斑

いったん解熱傾向を認めるがすぐに高熱となり、耳後部や顔面から発疹が出現します。
発疹は鮮紅色の紅斑で、融合傾向を示しますが、健康皮膚面は残ります。
コプリック斑は数日で消失し、発疹は数日以内に、躯幹から四肢末梢に至るまで全身に拡大します。

発疹

発疹は鮮紅色の紅斑で、融合傾向を示しますが、健康皮膚面は残ります。
コプリック斑は数日で消失し、発疹は数日以内に、躯幹から四肢末梢に至るまで全身に拡大します。
カタル症状はさらに増悪し、39~40℃台の高熱となり、全身の発疹はさらに3~5日間継続します。(発疹期)
合併症を併発しなければ、1週間~10日前後で軽快し、発疹は茶褐色の色素沈着を残します。落屑を伴う場合が多い。
概ね、定型的な経過をたどります。

私は麻疹を診断したことがありません。
子供の頃、はしかにかかっている友人をみたことはあります。小児科の同僚の先生に聞くと、麻疹はカタル症状がすごいとのことです。
あと、コプリック斑もみたことがありません。今の時期でしたら、関西空港に行ったか、関西空港で働く人に接触したか、近くのアウトレットなどに行っていないか、大阪市大病院にその時期受診していなかったかなどの病歴を聞く必要があります。
そのうえで、発疹の出ている人、カタル症状の強い人、口腔内粘膜に粘膜疹・コプリック斑があるような人が出た場合、保健所に連絡、指示を待つことになりそうです。
優秀な小児科医は、カタル症状とコプリック斑で、発疹の出る前に麻疹と診断します。
ただ、いったん熱が下がるものですから、小児科医に麻疹だから安静にしておくよう言われても、親は治ったと勘違いして、旅行などに連れて行き、旅行先で発疹が出て麻疹と診断されるケースも多かったと昔の温泉病院の小児科の先生のお話を聞いたことがあります。
国内では,患者が1人発生した時点で迅速な感染拡大予防策を講じる必要があることから、
麻疹と臨床診断したら最寄りの保健所に患者の氏名・住所などを含めて直ちに届け出ることになっています。
全例の検査診断が求められていますので、発症1週間以内の血液、咽頭ぬぐい液、尿の3点セットを保健所を通して地方衛生研究所に搬送する必要があります。
また、同時に血液で麻疹IgM抗体を調べます。

根本的な治療はなく、対症療法になります。熱に対してはアセトアミノフェンなどの解熱剤、補水が大事です。
解熱した後3日を経過するまでは出席停止期間です。
発症から約1か月間は細胞性免疫機能が低下した状態となり,ツベルクリン反応の陰転化や,結核の再燃がみられることがあります。
肺炎や中耳炎などの合併症を併発ることがあります。
発疹出現後2~6日頃になると,麻疹患者約1,000人に1人程度の割合で、脳炎を合併することがあるが、致命率は10~15%と高く、治っても重度の後遺症を残すことが多いです。
肺炎、中耳炎、脳炎を発症した場合は専門医の受診・治療が必要です。
また,治癒後数年~10年程経過してから発症する亜急性硬化性全脳炎があり、頻度は少ないものの治療法が確立されていない予後不良の脳炎です。
やはり合併症があるので、麻疹は注意する必要のあるできれば予防したい感染症といえます。

2016年現在の定期接種スケジュール
【第1期 】満1歳~満2歳未満の1年間
(ただし地域で流行しているときは、自費で生後6か月からでも受けられます)
【第2期】 小学校就学前年の4月1日 ~ 3月31日の2回です。

昭和52年4月1日以前に生まれた世代は、任意接種であったため、1度も接種していない可能性があります。ただし自然に感染し免疫を獲得している場合が多いようです。
昭和52年年4月2日~平成2年4月1日に生まれた世代は1回接種法であり、免疫がついていない可能性が高く、最も感染の危険が高い年代です。
現在26歳~39歳までの人です。
今回感染したのも大部分はこの年代だそうです。
平成2年4月2日以降に生まれた世代は、麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)を2回接種する機会がありました。
現在、自費の麻疹のワクチンは品薄になっており、当院にはありません。定期接種が優先されます。
麻疹の抗体価を測ってみると、十分な抗体があり、かかりにくい状態かどうかがわかります。
私はちなみに、十分な抗体価がありました。当院で5000円で検査できます。
ネット上でも私の知り合いの診療所に麻疹患者が来て大変だったとの記事があります。
もう少し注意してみていく必要ありそうです。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

私事ですが、腓骨骨折部のプレートを抜く手術を受けて一か月目です。
ランニングなどは自粛中です。11月頃からランニング再開予定としています。
来年の泉州マラソンはフルで申し込みました。現在抽選の結果待ちです。
最近あまりジムに行くという習慣も無くなって、体重も増加傾向、ちょっとまずいなぁ~、
ジムのプールでも行こうかな、と思っているところです。