2016年 4月 No.125

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

冬が過ぎ、過ごしやすい季節になってきました。
猛威をふるっていたインフルエンザも下火になったみたいです。
今年の桜は少し早かったようで、更に満開の日に嵐が吹き荒れたりして、入学式のときにはもう散っていたというところも多かったかもしれません。
在宅患者さんの訪問に行くとき、道の両サイドから桜が咲いてて、その間を通り抜ける、という場所があります。
まるでピンクのトンネルのような桜並木です。
今年はこれがただ一度の花見でした。
次の週に通ったときはほとんど花はありませんでした。
桜は、この短期間に咲き誇るというのがいいんでしょうね。来年も見たいです。

熊本の地震

このたびの「平成28年熊本地震」により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
九州・北海道には地震はないものと思っていましたが。
熊本で大きな地震がありました。
この地震は余震がとても多く、救助活動や復旧活動が思うように進まないとのことです。余震が多いので、自宅に帰るのが怖く、車で過ごす人も多いようです。
今回の医療情報は、エコノミー症候群を取り上げました。熊本地震被災にあわれた方に、何か自分にでもできることはないか、を考えてみ ます。

住民健康診断

今年度特定健診が5月16日より開始されます。
今年も無料とのことです。忠岡町在住の対象者の方、是非受けてください。今年からABC検診が始まります。
ご希望の方は、受付にてご予約をお願いします。
詳しくは、4 ページ目をご覧ください。

診療手帳

開院当初より、診察後に診察の所見をわかりやすく(と自分では思っている)記載した診療手帳をお渡ししています。診察の所見以外に、血液検査のデータも貼るようにしています。
いままでは手帳に診察所見(本日の診察の説明、とかサマリーとか書かれています)を全面糊付けしていました。
この3月末より、診察所見は上部だけ糊付けして、その下にはおくすり手帳に貼っていた処方内容シールを貼ってもらうことにしました。
なので、診療手帳+おくすり手帳、ということになります。
ご希望される方だけで、今までの診療手帳、おくすり手帳がいい、という方はそのままにしていただいています。検査結果、診察の説明、薬のシー
ルが一冊の手帳に記載されることになり、あってはいけないことですが、今回の熊本の震災のような被害時などにも有用な情報になるのでは、と思っています。
あと、他院受診時も是非当院の診療手帳を持参していただいて、担当医師にみせていただきたいと思います。
また、転居時は当院で検査したすべてのデータをCDに入力してお渡ししていますが、診療手帳も転居先の医師にも見せていただきたいと思います。
医療従事者にも有用な情報になっていると自負しています。

蚊の話

毎日新聞に興味深い記事がのっていたので、ご紹介します。ヒトにとって危険な動物は?というタイトルでその動物による世界の年間死亡者
数を表にしていました。一番危険な動物、サメ、ライオン、トラではありませんでした。3位が蛇、2位が人間、ダントツの1位は蚊、です。日本人にとって、蚊は季節の風物詩。危機感を持ちにくいですね。医療機関が助言している蚊の対策は、まず「肌を露出しない」。物理的に保護するので効果が期待できそうですが、高温多湿の地域ではかなり苦痛(せっかく塗った虫よけ剤も汗で流れそうです!)。服の上から刺してくる容赦のない蚊もいます。

次に「虫よけ剤」。効果は製品によってばらつきがあるので、一定時間たったら塗り直します。朝に塗ったら夕方までOKというわけではありません。現地の空港や薬局でより効果の高いものを入手することもできます。
日焼け止めも塗る場合は、最初に化粧水、その上から日焼け止め、最後に虫よけという順で塗ります。
行き先や季節によっては、宿泊先にあらかじめ連絡してモスキートネット(蚊帳(かや))を予約しておくこともお勧めです。ネットで購入もできます。
ゴールデンウイークや夏休みの海外旅行計画を立てる時期です。海外に行く時は厚生労働省検疫所のホームページ (http://www.forth.go.jp/) で、流行状況や対策の情報をゲットしましょう。また、今年はブラジルでのオリンピックがありますので、観戦に行かれる方は注意が必要ですね。蚊、咬まれてもいいわ、ちょっと痒いくらいだし、とは考えないようにしましょう。個人的には、虫よけ剤は常に持っていくとして、殺虫剤も常に持っていようかと考えています。

エコノミー症候群

熊本大地震で、余震が続くため怖くて家に入れず、車の中で過ごす人がいます。
車中で過ごす避難者のなかで、肺塞栓(そくせん)症(エコノミー症候群)により1人が亡くなったことが報道されました。
また、エコノミー症候群と思われる症状を訴えた人は熊本市内の4病院で少なくとも17人いたそうです。
県によると、県内約670カ所の避難所で過ごす人は約11万5千人。
車中で夜を明かす人も多く、長引く避難生活は深刻さを増しています。
エコノミー症候群の発症が危惧されます。
いわゆるエコノミー症候群。
エコノミークラス症候群、旅行者血栓症などという言い方もありますが、新聞にエコノミー症候群とかかれていたので、今回はエコノミー症候群と記載します。
どのような病態か、治療法、予防法、について書いてみます。

もともとは、飛行機のエコノミークラス(狭い)で長時間旅行した後、飛行機を降りてすぐ歩き始めた途端に呼吸困難・意識障害で発症し、時には亡くなることもある。これがエコノミー症候群です。
何が起こっているかといいますと、長時間狭いところで同じ姿勢を保っていると、足の血流がよどみ、血液の塊(血栓)が出来て、足の静脈をふさいでしまいます。
この血の塊・血栓が、歩行をきっかけに足の静脈からはずれ、下大静脈から右心房、右心室を経て、肺動脈まで到達して、肺静脈を閉塞してしまい、肺に行く血流が無くなってしまいます。
いわゆる肺塞栓・肺梗塞です。
血栓などがほかの場所の血管をつめてしまうことを塞栓症といいます。
血栓症は出来た場所の血管を詰めてしまうことをいいます。
ちなみに梗塞とは、臓器を栄養する血管が詰まったためにその臓器に血流がいかなくなり、臓器の組織が壊死(死んでしまう)を起こすことです。
脳梗塞、心筋梗塞が有名ですが、肺梗塞もあります。
この足の静脈の血栓が出来て、、血栓が静脈からはずれて肺動脈を閉塞してしまう、この一連の病態をエコノミー症候群と言っています。
サッカーの日本代表選手が罹患したことで有名になりました。

では、なぜ足の静脈に血栓ができるのでしょうか?
病的な理由として、静脈の内部血管壁が傷ついた場合(医療で使う静脈留置針や骨折などの外傷がある場合)、もともと血液が固まりやすい体質である場合(アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症など特殊な病態ですが)があります。
それ以外に、健康であった人にできる場合は血液がドロドロになった場合、足を全く動かさないため血がよどんでしまった場合に血栓ができやすくなります。
今回の熊本の場合、トイレが少なく行きたくないので、水分摂取をあまりしなかった、長時間車の中で座っていて、運動ができておらず、足の静脈の中で血液が停滞し、血栓をつくってしまったことが考えられます。

その血栓が足の静脈を外れて、肺動脈を詰まらせてしまった場合(肺梗塞)はどんなことがおきるか?ですが。
小さい血栓の場合はあまり問題になりません。
全く無症状のことも多いと思います。
ある程度大きな血栓が、下大静脈から心臓の右心房・右心室を経て肺動脈まで到達して、肺動脈を閉塞させたとしたら、、まず起こるのは呼吸困難です。
更に約半数の方に胸痛、重症の場合は失神発作、意識障害がおきることもあります。

肺梗塞の診断は少し難しいです。
一般に胸痛、意識障害、呼吸困難といえば、循環器系では心筋梗塞、大動脈瘤破裂・大動脈解離があります。
肺塞栓症の場合、胸部レントゲン、心電図では診断しにくいことがあるのです。
肺塞栓症を疑って、大きな病院で胸部CT、血液のD-Dimer検査、心臓のエコー検査ができると、診断は比較的容易です。
一般診療所ではなかなか難しいです。
突発的におこった呼吸困難、胸痛が一般診療所に来られることはあまり無いとは思いますが(実際私も自分の診療所では経験したことはありません)。
しかし、遭遇した場合はまず、肺塞栓症・エコノミー症候群ではないか、と疑うことが我々のようなプライマリー
ケア診療医には大事なことです。
疑ったら、設備の整った病院にお願いすることになります。

治療

肺動脈塞栓で、重篤な症状が出ている場合は、肺動脈に詰まっている血栓を取り除く必要があります。
新鮮な血栓の場合、組織プラスミノーゲンアクチベータ、ウロキナーゼという薬で血栓を溶かすことができます。
血栓が古い場合、カテーテル治療でで肺動脈に詰まっている血栓を直接取り出すような処置が選択されることもあります。
これができない場合は外科的に手術で肺動脈を切開して、血栓を取り除きます。
小さい血栓の場合は、血栓を溶かす薬を投与します。
ヘパリンやワーファリン、新規抗凝固剤などです。
肺動脈の血栓の処置が終了したら、足にまだ血栓が残っていないかを検査します。
下肢静脈の超音波検査が有用です。
血栓が残っていて、また外れたら肺動脈を閉塞させる恐れのあるときは、下大静脈にフィルターを留置します。
外れて血栓が飛んでも、その下大静脈フィルターでキャッチして肺にまで行かせないようにすることができます。
また、血栓を溶かすよう、抗凝固療法が主に内服で行われます。ワーファリン、新しい抗凝固剤が使用されます。

予防

飛行機のエコノミークラスに乗る方、被災地で車で過ごす人はどのようにしてエコノミー症候群を予防すればいいのでしょうか。
最大の予防法は、動くこと、歩くことです。2-3時間同じ姿勢で座っていたら、一度立つ、歩くようにしましょう。
これは日常生活でも同じです。立てない場合は足首を回す、膝の曲げ伸ばしなど足を動かす、下腿のマッサージをする、下腿に力をいれる運動をする、足の指でグーパーするなどが有効です。
中越地震の際に肺塞栓症の治療にあたった医師によると、車中泊で肺塞栓を発症し死亡したのは,全例朝まで車内で過ごした被災者であったといいます。
その一方で,救命できたのは夜間トイレに行った被災者でした。
4~5時間置きに車から外に出ることが望ましいとしています。
足を圧迫する弾性ストッキングも有効です。弾性ストッキングは足の外側から適度な圧力を加えることで血流を改善し、血が固まるのを防ぐ仕組みで、病院では手術時の血栓予防のため、使用されています。
できれば、医師・看護師にはき方を指導してもらうのがいいです。
病院の売店、薬局、介護用品を扱う店で購入できます。
備蓄しておかれるのもいいかもしれません。

また、水分を十分にとることがとても大事です。
被災地ではトイレに行きにくいから、飛行機では窓際の席の人が他の人を立たせてまでトイレに行くのが面倒だから、との理由で水分を控えることが多いようです。
これは結果血液を濃くしてしまうおそれがあり、静脈血栓症の危険因子です。
十分水分をとるようにしてください。
また、利尿作用のある珈琲・紅茶などのカフェイン飲料、アルコールは控えた方がいいです。

被災地で車中で過ごす方、飛行機を使った旅行をされる方、今後被災する可能性のある方(となると皆ですね)、はエコノミー症候群という疾患があることを十分周知して頂いて、足を自由に動かせない状況になったときは、下肢の運動、水分をとることに留意してください。

エコノミー症候群を防ぐには


かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

住民健診

今年度特定健診が5月16日より開始されます。
今年も無料とのことです。
忠岡町在住の対象者の方、是非受けてください。
今年からABC検診が始まります。
ヘリコバクターピロリIgG 抗体(Hp抗体)検査でピロリ菌感染の有無を、ペプシノゲン(PG)検査で胃粘膜萎縮度を調べ、その結果を組み合わせて胃がんのリスクをA,B,C,Dの4群に分類して評価する検診です。

A:ピロリ菌陰性、ペプシノゲン陰性 胃癌の危険性は低いです。

B:ピロリ菌陽性、ペプシノゲン陰性 胃癌発症のリスクあり。胃潰瘍にも注意

C:ピロリ菌陽性、ペプシノゲン陽性 胃癌発症のリスク高い。

D:ピロリ菌陰性、ペプシノゲン陽性 胃癌発症のリスク極めて高い。

A以外は胃の内視鏡検査をお勧めすることになります。

この検診は500円の自己負担があります。