2015年 6月 No.115
ホームドクター通信

◆当院からのお知らせ

梅雨の季節です。蒸し暑い日が続いています。
そろそろ熱中症に注意が必要です。水分、塩分補給をお忘れなく。室内でも熱中症は起こります。
暑さを我慢せず、特に高齢者の方は遠慮せずエアコンを使うべきだと思っています。
若い人は涼しい恰好をして、水分・塩分を十分とり、エコな涼感グッズを使ってください。

舌下免疫療法

スギ花粉症に対する舌下免疫療法が8割に有効というニュースが出ていました(2015.06.12・日経新聞)。

スギ花粉のエキスを口に含んで花粉症を治す「舌下免疫療法」を受けた患者へのアンケートで、ほぼ8割が例年と比べて症状が改善したと答えたとの調査結果を、厚生労働省研究班が報告しました。
同療法の治療薬は昨年10月に発売され、12歳以上で健康保険適用となっています。
最低でも2年間は毎日服薬が必要。通院などの負担はありますが、2年目となる来年の方が効果の自覚は強くなるだろうとの期待が持たれています。 この報告では昨年10月から今年1月に治療を始めた13〜78歳の患者102人を対象に、今年の花粉飛散時期の症状などを調べました。
例年の症状との比較では「症状がなかった」(9%)と「軽かった」(69%)と回答した人が8割近くを占めました。「中程度だった」は20%、「重かった」は2%だった。効果の自覚についても「とても効いた」が26%で、「効いた」(33%)や「やや効いた」(19%)と合わせ、6〜8割が高い評価を付けた。「効かなかった」は4%だった。1日1回、薬を2分ほど口に含んで飲み込む必要があるが、「口のかゆみ」「のどの違和感」「くしゃみ」などの副作用があったと答えたのは23%でした。
副作用のため治療の継続を悩んだ方は7%でした。
通常2〜3カ月で効果が出始めるようです。当院でも治療可能です。スギ花粉症でお悩みの方は、スギ花粉症かどうか検査を受けた上で治療をお考えください。

俳優の今井雅之さんが54歳という若さで、大腸癌のため亡くなられました。

お亡くなりになる一ヶ月前、大腸癌のステージ4で闘病していることを表明した記者会見があり、「夜中にこんな痛みと闘うのはつらい」「モルヒネで殺してくれと言いました、安楽死ですね」といった趣旨の発言をされました。実際、この記者会見での今井さんは、かなり痩せ細り、いわゆる悪液質の状態であることが一目瞭然でした。病気が相当進行しているであろうこと、また病気に伴う苦痛症状も強いであろうことは容易に想像ができました。
しかし、夜中に眠れないくらいの痛みが生じる状態というのは、適切な緩和ケアを受けられていないのではないかと思いました。癌の痛みで眠れないというのは、全く疼痛緩和が図られていない状態です。現在では、医療用麻薬を含めた適切な鎮痛薬を用いることで、癌の痛みはほぼ確実に緩和されます。緩和ケアは癌治療中であっても必要であり、少なくとも夜に眠れないくらいの痛みを容認していたとすれば問題です。
その後、訃報が報じられ、「モルヒネを使っても取れない痛みに耐えた」「苦しみながら壮絶死」といった報道がありました。いまだに癌は痛いもの、苦しみながら亡くなっていくものというイメージがあるのか、と愕然としました。今井さんが強い痛みや苦痛に対する適切な緩和がなされずに、苦しんで亡くなられたのだとしたら、残念です。医療には残念ながら限界があり、どんな名医でも治せない病はあります。しかし、痛みは確実に緩和しなければなりません。今回の一連の報道により、緩和ケアの啓発がまだ不十分であることを実感しましました。

75歳以上のドライバーを対象に、記憶力や判断力を測る「認知機能検査」の強化を柱とした改正道路交通法が11日、衆院本会議で可決、成立しました。

免許更新時などの同検査で認知症の恐れがあると判定された人に医師の診察を義務付ける内容で、早期発見による事故防止が目的です。現在では75歳以上のドライバーは3年ごとの免許更新時に認知機能検査を受けています。現行法では「認知症の恐れ」と判定され、道路逆走や信号無視といった交通違反を犯していれば医師の診察を受け、認知症と判明すれば免許取り消しか停止となります。警察庁のまとめでは、14年に認知機能検査を受けたのは約143万8千人。このうち認知症と診断され、免許取り消し・停止に至ったのは356人だそうです。
改正法では同検査で認知症の恐れがあると分かれば、交通違反の有無にかかわらず受診を義務付ける。このほか一定の交通違反を犯した人も臨時に検査を受け、認知症の恐れがあれば受診が必要になる。近く公布され、2年以内に施行されるとのことです。厚生労働省によると、2012年時点の認知症の高齢者は推計約462万人。
25年には700万人に達し、高齢者の5人に1人が認知症になる見込みです。
改正法で検査や受診の機会が増えることで、免許取り消しなどが急増する可能性もあります。地方では鉄道やバスなど公共交通機関が少なく、車での移動が欠かせない。免許取り消しによって高齢者が外出の手段を失う恐れもあり、改正法には移動手段を確保する対策を求める付帯決議が付けられた。

◆神経障害性疼痛

武田鉄矢さんが神経障害性疼痛のCMをしておられます。
私はテレビCMは見たことがありませんが、ポスターは院内に掲示してありますので、見たことがあります。

神経障害性疼痛のCMポスター

このCMをご覧になって、あるいはポスターをみて、私その痛みがあります。薬ください、という方が増えてきました。
処方した方の中によく効いた、という方が何人かいらっしゃいました。
今回はその神経障害性疼痛について説明します。

痛みについて

私たちは「痛み」を感じることで、身体に何らかの異常や異変が生じていることに気づきます。もし、「痛い」という感覚がなかったら、危険を察知したり、回避することができず、ケガや病気を繰り返したり、命の危険につながることもあります。
しかし、なかには「生命活動に必要ではない痛み」もあります。必要以上に長く続く痛みや、原因がわからない痛みは、大きなストレスになり、不眠やうつ病など、ほかの病気を引き起こすきっかけにもなります。
このような場合は「痛み」そのものが“病気”であり、治療が必要です。
痛みにはいくつか種類があり、代表的なものとして侵害性疼痛、心因性疼痛、神経障害性疼痛があります。
その3種類につき、概説します。

侵害性疼痛

侵害性疼痛とは、体の組織の損傷によって起こる痛みのことです。この損傷には、切り傷、打撲、骨折、挫滅創(ざめつそう)、熱傷など、組織が傷つくものがすべて含まれます。
典型的には、うずくような痛み、鋭い痛み、またはズキズキする痛みとして感じられます。痛みの大多数は侵害性疼痛です。
組織の損傷を感知する痛みの受容体(侵害受容体)は、そのほとんどが皮膚と内臓に分布しています。手術後にほぼ必ず経験される痛みも侵害性疼痛です。痛みは持続的なこともあれば断続的なこともあります。
多くの場合は、体を動かしたり、咳をしたり、笑ったり、深呼吸したときや、手術の傷口を覆った包帯を交換するときに、痛みが強くなります。癌による痛みも、ほとんどが侵害性疼痛です。腫瘍が骨や臓器に広がる(浸潤する)と痛みが生じます。
これは、軽い不快感の場合もあれば、耐えがたい激痛の場合もあります。
手術や放射線療法など、一部の癌治療も、侵害性疼痛の原因となることがあります。
通常は、医療用麻薬も含めて、痛み止め(鎮痛薬)が有効です。

心因性疼痛

心因性疼痛とは、主として心理的な要因に関連して起こる痛みです。
持続性の痛みがある人で、心理的な支障を示す所見があり、かつ痛みやその強さを説明できるような疾患の所見がない場合に、心因性の痛みと説明されることがあります。
心因性疼痛は神経障害性疼痛や侵害性疼痛と比べてはるかにまれです。
また、どのような痛みも心理的要因によって悪化することがあります。心理的要因は慢性の痛みに関与していることが多く、痛みに関連した身体障害に関与していることもあります。
心理的要因を伴う痛みには治療が必要で、しばしば心理学者や精神科医も含めたチームによって治療が行われます。
このタイプの痛みの治療は患者ごとに異なり、医師は個々の患者のニーズに合った治療法を探ります。
慢性の心因性疼痛では、多くの場合、苦痛や不快感を軽減し、身体的および心理的な機能を改善することが治療の目標になります。

神経障害性疼痛

神経障害性疼痛は、神経、脊髄、または脳の損傷や機能障害によって起こる痛みです。
神経の圧迫(たとえば腫瘍、椎間板の破損、手根管症候群などによる圧迫)、神経の損傷(たとえば糖尿病などの代謝性疾患による損傷)、脳や脊髄による痛みの信号処理の異常または混乱などがあります。
幻肢痛、帯状疱疹後神経痛、複雑性局所疼痛症候群なども神経障害性疼痛です。

神経障害性疼痛の症状

次のような痛みは、「神経障害性疼痛」の疑いがあります。

神経障害性疼痛の原因

「神経障害性疼痛」の原因には、次のようなものがあります。

などです。

神経障害性疼痛のメカニズムとそのブロック

神経細胞にはカルシウムが流入するための受容体(カルシウムチャネル)が存在します。疼痛が起きている状態では、カルシウムチャネルを通じてカルシウムが神経細胞内に入ってきます。
これによって神経細胞が興奮し、神経伝達物質が過剰に放出されます。
この時に放出される神経伝達物質の中には痛みを引き起こす物質も含まれるため、結果として痛みが起こります。
これが、神経障害性疼痛が起こるメカニズムです。

この状態を改善するためには、神経細胞に存在するカルシウムチャネルを阻害すれば良いことが分かります。
プレガバリンという薬はカルシウムの流入を抑制することで、神経細胞の過剰興奮を抑えます。
これにより、神経伝達物質の過剰な放出を抑制し、神経障害性疼痛を鎮めます。
神経障害性疼痛は、今までの市販の鎮痛薬ではほとんど効果が得られない痛みです。
新しい薬で神経障害性疼痛が軽減することが期待できます。
ジンジン、ビリビリ、チクチクした痛みが長く続く場合はご相談ください。

リリカ作用機序

 

MERS

中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome:MERS)が韓国で蔓延しています。

現在感染者154人、死者19人とのことです。
元々はMERSは2012年にイギリスで初めて確認された疾患で、原因は新型のコロナウイルスです。

コロナウィルスは、普通の風邪の原因ウィルスで、自然に治癒していくものなのですが、重症化するウィルスに変異したようです。
ヒトコブラクダがMERSコロナウイルスを媒介する動物の一種ではないかと考えられています。

それは、中東地域では、ヒトコブラクダの世話をしたり、乳を飲んだりした人が感染していることなどからですが、あくまで推測の域を出ません。

日本にもヒトコブラクダが動物園などで飼育されていますが、検査の結果、感染の報告はありません。
MERSウイルスに感染すると2週間以内に、発熱、咳、息切れ、下痢が出現し、多くの場合肺炎を起こして呼吸困難に陥ります。
感染しても軽症の人もいますが、高齢者、糖尿病など基礎疾患のある人は重症化しやすいようです。
致死率は40%〜50%程度にもなるとみられています。

現在、予防の為のワクチンはなく、治療法も確立されていません。
まだ日本での発症は確認されていませんが、今後注意が必要です。

◆かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

◆編集後記

平成27年度の住民健診が始まっています。
町の努力もあって、自己負担はありません。
また、肝炎ウィルス、大腸がん検診については、40・45・50・55・60歳の方には無料クーポンが発行されています。それ以外の方では500円の負担で検査ができます。 対象となる方は是非受けて下さい。
また、65歳以上の方の肺炎球菌ワクチンの助成もありますので、また受付にお申し出ください。

ISO9001の外部審査が7月17日にあります。外来予約を制限させていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。